“金(がね)” の例文
聖壇の上にひろげられている聖書のかざり金(がね)を、キラキラと照らしました。そこには、預言者ヨエルの言葉が書いてありました。
それから考えるとそれは当時新聞社の慣用手段のふところ金(がね)をむさぼろうという目論見(もくろみ)ばかりから来たのでない事だけは明らかになった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「あいにく、頭を下げるのは、大ッ嫌いな性分だ。ははん、この乞食坊主、難クセつけて、端(はし)た金(がね)でもセビろうっていうんだな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、ふと、死んだ實母があか金(がね)の足つきだらひに向ひ、おはぐろを付けてゐるのを、自分はそのわきで見てゐたことがあたまに浮んだ。
一々仏の形のきまりを大握(おおつか)みに掴(つか)んで拵えて行かせるのですが、兄貴の大工さんも、差(さ)し金(がね)を持って見込みの仕事をするのなら何んでも出来るが
蜂矢は、うなずいて、戸のところへ行って向う側へ声をかけ、やはり長戸検事たちであることをたしかめたうえで、かけ金(がね)をはずして戸を開いた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
聞くところによると、小諸(こもろ)の牧野遠江守(まきのとおとうみのかみ)の御人数が追分(おいわけ)の方であの仲間を召し捕(と)りの節に、馬士(まご)が三百両からの包み金(がね)を拾ったと申すことであるぞ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まどは、ぜんぶしめて、かけ金(がね)をかけ、二つのドアも、げんじゅうにしめて、中からかぎをかけてしまいました。
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
蕾(つぼみ)はみんなできあがりましてございます。秋風(あきかぜ)の鋭(するど)い粉(こな)がその頂上(ちょうじょう)の緑(みどり)いろのかけ金(がね)を削(けず)って減(へ)してしまいます。今朝(けさ)一斉(いっせい)にどの花も開くかと思われます
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あくた金(がね)をあつめてはみたもののその使いみちを知らず、あるいはそれからのがれることも知らず、つまりは自分をつなぐ金銀の鎖を鍛えあげた、あの
腰には真鍮のびじょ金(がね)のついた古びた革帯を巻いていたが、それが彼の服装全体の中で唯一の確かなものだった。
「黒い革の財布で、止(と)め金(がね)のところに、銀の小さな菊の花がついています。横が五寸くらい、縦は三寸ほどです」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
グレーテルはすばやく、鉄(てつ)の戸をバタンとしめて、かけ金(がね)をかけました。ううっ、と、ばあさんはほえだしました。それはそれはものすごいうなり声でした。
モルガンは歩みを停(と)めて、動揺する林を注意深く窺いいたり。彼は何事をも語らざりき。しかも、その銃の打ち金(がね)をあげて、何物をか狙うがごとくに身構えせり。
青服(あおふく)は、屋根(やね)にとまっているすずめをねらっていたが、パチリ! と、引(ひ)き金(がね)をひくと、たまが命中(めいちゅう)して、すずめはもんどり打(う)って、とよの中(なか)へころげ込(こ)みました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それは然(そ)うです。渡米労働者なら見(み)せ金(がね)って奴ですな、卒業証書は。入場券ですよ。それですから、入ってさえしまえば、学問なんかは些(ち)っとも要(い)らないんです」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
見ると五十両ではなくして八十両の包み金(がね)、表書(うえ)には「本堂再建(さいこん)普請金、世話人萬屋源兵衞(よろずやげんべえ)預(あずか)る」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見られなくなつてしまつたやうお由の夫長次が返り討に遭ふ曲(まが)り金(がね)薄暮の場の嘗て都下の劇場で上演されたことを識つてゐる人々も亦追々とこの東京からなくなつて行くであらう。
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
云ったけど気の毒だ。馬鹿な。納めるんなら十や二十の端(はし)た金(がね)じゃ駄目だよ。勿体(もったい)なくも麻雀の密輸入じゃないか。百や二百じゃ承知しないぜ……ナニ……それじゃ算盤(そろばん)に合わない。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鍵は内側からのみ閉められる簡単な落(おと)し金(がね)式の物で、そのカキガネは長さ約一尺、巾一寸五分、厚さ五分位の相当重い堅木で作られていてこれにも、アラベスクの象眼がされていた。
雪 (新字新仮名) / 楠田匡介(著)
妖精たちは失望してさってしまうと、ジェミイは家のかけ金(がね)をはずしてはいった。
ジェミイの冐険 (新字新仮名) / 片山広子(著)
「ああ、お姉さんは、なんでもかんでも光ちゃんのした事僕の指(さ)し金(がね)や、僕が操(あやつ)ってるのんやとお思いですやろ? そら、そう思われてもしょうがない訳あるいうことはよう分ってます」
卍 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
蚤(のみ)が刺したくらいのことで、ほんのはした金(がね)を使ったというだけのことであっても、もしかくのごとくにして一夜の歓楽をむさぼるということが、ただにその人の健康に益なきのみならず
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
しかし何しろ一流どこばかしの顔寄せで、作家としてこの上もない名誉の事だから、その名誉に甘んじて、この際原稿料などは包(つゝ)み金(がね)で辛抱して戴きたい。実は私の方でも作家を相手に原稿料を
わづかばかりの目腐(めくさ)れ金(がね)に人の足を運ばせるはかへつて素人(しろうと)に多し。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一 まゐり来てこの橋を見申せば、こ金(がね)の辻(つじ)に白金のはし
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
百(ひやく)や二百(にひやく)の目腐(めくさ)れ金(がね)はお前(まへ)にもあげるよ。
見れば鐵(てつ)の延(の)べ金(がね)にて四尺ばかりも有んかと思はれ然(しか)も握(にぎ)り太(ふと)なる禪杖なり因て下男彌助は戰々(ぶる/\)慄(ふるへ)ながら心のうちには是は何でも盜賊の頭(かしら)に相違なし慥(たし)かに今の駕籠舁(かごかき)どもの仲間ならん飛だ奴が這入(はひり)こんだと思ひ怖々(こは/″\)ながら腰(こし)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
遽(あわ)てゝかけ金(がね)よ釘(くぎ)よと騒いだりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
止(と)め金(がね)には金剛石(ダイヤモンド)がついている。
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「お蔭さまで、助りますよ」歯の抜けたお婆さんが、臍繰(へそく)り金(がね)の財布を片手でソッと抑えながら、これに和した。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その蓋を内部から開く唯一の方法は、ホラ、あすこに見えている留(と)め金(がね)を、グッと四十五度丈け廻すことじゃ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「お千絵をかどわかしたのも旅川の指(さ)し金(がね)であったと見える。おお、しかも明日は、禅定寺(ぜんじょうじ)で待ちあわせて」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おふきが隣家まで行って帰って見たころには、半蔵とお民とが起きて来ていて、二人で松薪(まつまき)をくべていた。渡し金(がね)の上に載せてある芋焼餅も焼きざましになったころだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私(わちき)はお前(ま)はんのような人は嫌いなの、お前大層な事を云っているね、金ずくで自由になるような私(わちき)やア身体じゃアないよ、二十両ばかりの端金(はしたがね)を千両金(がね)でも出したような顔をして
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さあ、あたしたちの髪(かみ)をすいておくれ。くつもみがいておくれ。それから、しめ金(がね)で胸(むね)をぎゅっとしめておくれ。あたしたちは、王さまの宴会によばれて、お城(しろ)へいくんだからね。」
猟師(りょうし)は、鉄砲(てっぽう)のしりを肩(かた)につけて、ねらいを定(さだ)めました。名人(めいじん)といわれるだけ、万(まん)に一つも打(う)ちそんじはないはずです。そして、引(ひ)き金(がね)をおろしかけて、ふと打(う)つのをやめてしまいました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
北洋工船、黒潮漁業の両会社は彼奴(あいつ)の臍繰(へそく)り金(がね)で動いていると云っていい位だ。……その次が現在大阪で底曳大尽(そこひきだいじん)と謳(うた)われている荒巻珍蔵(あらまきちんぞう)……発動機船底曳網の総元締だ。知っているだろう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それからにせ金(がね)製造場へ自分で降りて行って、ばらの実をるつぼに入れました。それからすきとほらせる為に、ガラスのかけらと水銀と塩酸を入れて、ブウブウとふいごにかけ、まっ赤に灼(や)きました。
よく利く薬とえらい薬 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ダリアは割合(わりあい)に元気に窓のところに歩みよっては、パタンパタンと蝶番式(ちょうつがいしき)にとりつけてある雨戸(あまど)を合わせてピチンと止(と)め金(がね)を下(お)ろし、その内側に二重の黒カーテンを引いていった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「太い奴だ。手ぶらで帰るのが嫌ならのべ金(がね)をやろう! どいつだ、酒代(さかて)がほしいのは」と、さなきだに、弦之丞を討ち損じた腹立ちまぎれ、そぼろ助広を抜いて脅(おど)しにふりこむと
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五十両も有れば出来ました、立派な花魁(おいらん)の身請をしても三百両で出来たがね、それが今は法外の話、五十や六十の目腐れ金(がね)では出来ません、相場がねえ何うも誠に申すもお気の毒だが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「畜生……そんな目腐(めくさ)れ金(がね)で俺達が帰れると思うか」
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
兄の額(ひたい)は焼(や)け金(がね)のようです。私はハッと思いました。兄をこの儘(まま)で放って置いたのでは死んでしまうかも知れないぞと思いました。そうなると、もうワアワア泣いてなど居られません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山口屋善右衞門さんという立派な家(うち)だから、廿や三十の目腐れ金(がね)を貰って帰(けえ)ったと云っちゃア盗人仲間(ぬすっとなかま)へ恥辱(はじ)だ、さアどうか突出して下せい、私(わっち)が突出されゝばお前さんには遺恨はねえが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)