ちげ)” の例文
「なるほど少し筋になりそうだな。足を出したんなら、幽霊が殺されて人間になったにはちげえねえ。一体その幽霊は誰だったんだ」
こりゃア神様のお引合せにちげえ、何うも大きく成りやアがったなア此畜生こんちきしょうちいせえ時分別れて知れやアしねえ、本当に藤屋の娘か
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
手前なんぞは横町の黒や斑と大したちげえがあるものか。黒や斑はおれの顏をみると、をふつて來るだけも可愛らしいや。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「なに、もうすぐぶっ倒れちまうにちげえねえ。もうやがておしめえだよ、皆の衆!」と群衆の中から一人の弥次馬やじうまが言った。
どっちも生死の境だからこうなったにはちげえねえが、何とかさばきはつかねえものか、両方ともに生きたいがために水が欲しいんだ、それだのに
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それで奴さん、頭から冷水でもぶつかけられたやうに、ぞうつとしたちふこつた。またしても、あの⦅赤い長上衣スヰートカ⦆がとびだすにちげえねえだよ!
「だってあの御気色みけしき御覧ごろうじろ、きっとあれだ、ちげえねえね、八丁堀で花札ふだが走った上に、怨み重なる支那チャンチャンと来ちゃあ、こりゃおごられッこなし。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「とぼけちゃいけねえ。人間にんげん人形にんぎょう見違みちがえるほどおに七ァまだ耄碌もうろくしちゃァいねえよ。ありゃァ菊之丞きくのじょうちげえあるめえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『義務は義務だ。』ってやっこさんはよく言う。またそれにゃあちげえねえ。お前もうあの船長に近よらねえようにしろよ。
「全くこれにちげえねえ。」と嘉吉は読み終つてしきりに感心した。然し丸田はそれにさへ今日は気のりがしなかつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「蔦の奴だ。蔦の奴は、お嬢さまに手向かったにちげえねえ。そんで、お嬢さまに鉄砲で撃ち倒されたのに違えねえ」
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ここで何度も何度もテニスを遣って、ドンナ大きな声を出しても、ほかに聞こえない事をチャンと知っている奴が、思い付いた事にちげえねえじゃねえか。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今のは半襟はんえりの間違いだろう。——なに、人形の首だッさ。——ちげえねえ。またしても口をそろえて高笑い。——あんまりだから、いい! とお勢は膨れる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「これに見覚えがあらうがッ。お主の物だらうッ。いくら地蔵さまみてェに澄ましてをつたとて、つまりはお主は、煙草吸ひの昼とんびにちげェなからう。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
姐御あねごはやっぱり、眼がたけえぜ。代物しろものは、ボール函包みの中だア、絶対ぜってえちげえはねえ。もう袋の中のねずみだア」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
新九郎さまの御一念が、天に通じたというものか、今日、ふもとの立場から乗せた侍が、どうもかねてお話に聞いていた奴にちげえねえと思って、今この上で当りを
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんだが勘次かんじさんは本當ほんたうけえな。のおとつゝあたあ、たえしたちげえだな」といつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そうにはちげえねえ。——いくら何だって土地の氏神の消えてなくなるわけはねえだろうから。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
どうも旦那、おになるかならないかあやふやだったけれども、あっしゃあ舟を持って来ておりました。この雨はもうじきあがるにちげえねえのですから参りました。御伴おとも
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いんにゃ文だ。文にちげえねえ。すると——こうっと——何だか、きさつが少し変だぜ。うん、そうか、やっぱりそうか。するてえとやっこさん、驚ろいちまってからに……
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『兄貴はきっとおれの声まで、さらって行ったにちげえねえ。だからそんなにうめえのだ』とね。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やや斜に拡げて弥助と見較みくらべ「こつちを向いて見ろ」といひ、絵姿を拡げしまま右手の方へ廻して見較べ「これにちげえねえ」といひて、絵姿を思はず前の方へ持つて来て、慌てて後へ廻し
「そうですよ。お高さんが本人であることにちげえはねえのです。わっしも、金剛寺の一空さまも、それはよくわかっているのですが、生きた証人がねえことには何も口をきくものがねえのです」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「そいつあおめえのためにゃよくあるめえぜ、ジェリー。ジェリー、おめえは実直な商売人なんだからな、そいつあお前の商売にゃ向くめえよ! よみが——! うん、旦那は一杯飲んで酔っ払ってたにちげえねえや!」
ちげえねえ、そいつも食いつけらあ」
ちげえねえ、あめの中からお多福さんが出たよだ——さあさあ、これなる唐茄子から何が出ますか代価だいは見てのおもどり——ハッ来た、とくりゃあたいしたものだが、文福茶釜じゃあるめえし、鍋に入れたからって踊りだしゃあしまい。」
「ア、ちげえねえ、狸だ」
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
新「うも、ななんだってそれは、何うも、エおいあんにい外の事と違って大恩人だもの、何ういう訳で思いちげえて其様そんな事を、え、おいあんにい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「テニハの合わない殺しがあったら、そう思え。与母吉でなきゃア、女三人のうち、誰かが下手人を知っているにちげえねえ」
彌作 ちげえねえ。坂田の何とかいふ奴と一緒になつて、その白柄をひねくり𢌞したのを、俺あちやんと覚えてゐるんだ。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
その万人まんにん万人まんにんきできでたまらねえおんなの、これが本当ほんとうにおいだろうじゃねえか。ほどはだにおいもある。かみにおいもある。ちちにおいもあるにァちげえねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これもおめえを尊敬してるからのことだぜ、——尊敬だぞ、ちげえねえぜ! もしお前が好きでなけりゃあ
「たしかにあいつだ! ちげえねい! 阿女あまめ、あんな所を、いけしゃアしゃアと通っていやがる。見ていろよ。今、この宅助が、首ッ根っこを捕まえてくれるから」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旦那だんな様来やしたぜ、いよいよ来やしたぜ……昨夜よんべいになったのは、あの辺とちげえやすかね?」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
で、先棒がいう事には、何も男の所まで、担いで行くにゃああたるめえ、大の男が二人まで、ここに揃っているのだからな。なるほど縹緻きりょうは悪かろう、肌だって荒いにちげえねえ。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そんだがお内儀かみさんさうえぜに自分じぶんのげやくてせえしなけりやどうしてもちげえあんすべえね」勘次かんじ内儀かみさんにわかつてもわからなくても、そんなことをかんがへる餘裕よゆうがなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「清次郎の野郎だ。清次郎の野郎の悪戯いたずらちげえねえ。よしっ! 煮干にぼしを持って来い。」
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
一体十九日の紛失一件は、どうもくるわにこだわってるにちげえねえ。たたるのは妓衆こどもしなんだからね、少姐ねえさんなんざ、遊女おいらんじゃあなし、しかも廓内くるわうちに居るんじゃあねえから構うめえと思ってよ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「フウン。そういえば理窟がわかるような気もする。女ならS・O・Sにちげえねえ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「これだ。まつたくこれにちげえねえや。」と嘉吉は読み終つて昂然かうぜんとなつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
道理もっとも千万せんばんちげえねえ、これから売るものアてめえ身体からだより他にゃあえんだ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「そうよ、そりゃ寺限てらぎりとまりっこねえ訳だ。どっかへ行くにちげえねえ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「きッと、留守に、菱川から何とかいって来ているにちげえねえ。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「ははははは、そういえば、まあ、それにちげえはねえのだが——」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ちげえねえ、こいつは一本参った」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此奴こいつア成程姐さんの云う通りなんでも彼奴あいつい旦那どりをしてこっそり金を呉れる奴が有るにちげえねえ、彼様あんなけちな千代紙で貼った糸屑を
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
銭形の兄哥あにい、——こういう始末だ。溝口屋は確かに人手に掛って殺されたにちげえねえが、締めきった奥の部屋へ、ねずみ一匹入った様子はないのだ。
「船底潜らせだと? 大層てえそうお似合なこったよ。ちげえねえや。元んとこへ戻れ、トムの間抜まぬけ野郎め。」
それにちげえねえやな。でえいち、ほかにあんなにおいをさせる家業かぎょうが、あるはずはなかろうじゃねえか。雪駄せったかわを、なべるんだ。やわらかにして、はりとおりがよくなるようによ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「でも、まあ、よく訪ねておいでになりました。これでお嬢様二人も、お泛ばれになりやすでしょう。それで、お二人で喜んで、そこまで送っておいでになったにちげえごぜいません」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)