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費
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ついや
ふりがな文庫
“
費
(
ついや
)” の例文
これに反して鰐博士は、むしろ子宮や
乳房
(
ちぶさ
)
の自然退化を促進する方を
捷径
(
しょうけい
)
と見て、既に三十年をその研究に
費
(
ついや
)
して来た権威者である。
わが心の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
翌
(
あく
)
る日はまる一日じゅう、
諸方
(
しょほう
)
の訪問に
費
(
ついや
)
された。新来の旅人は
先
(
ま
)
ずこの
市
(
まち
)
のお歴々がたを訪問した。初めに県知事に敬意を表した。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
全体
我邦
(
わがくに
)
の家庭は主人一人の翫具や慰みのために多額の金を
費
(
ついや
)
して家族一同のためには一銭二銭の買物さえ惜しがるという
風
(
ふう
)
がある。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
迷庵が精出して文字を覚えるといい、抽斎が小学に熟練するといっているこの事業は、これがために
一人
(
いちにん
)
の生涯を
費
(
ついや
)
すかも知れない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
すべての行動が、いかにも
馴
(
な
)
れ切った世界に、大したエネルギーを
費
(
ついや
)
すことなしに、いとも正確にすすめられてゆくという風に見えた。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
吉野、松島の如きはその占有する所の空間広くして一見なほ幾多の時間を
費
(
ついや
)
す者、これ天然の美ありとするも美術的ならざるなり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
乃
(
すなわ
)
ち三丰の
居
(
お
)
りし所の
武当
(
ぶとう
)
大和山
(
たいかざん
)
に
観
(
かん
)
を営み、
夫
(
ふ
)
を
役
(
えき
)
する三十万、
貲
(
し
)
を
費
(
ついや
)
す百万、
工部侍郎
(
こうぶじろう
)
郭𤧫
(
かくつい
)
、
隆平侯
(
りゅうへいこう
)
張信
(
ちょうしん
)
等
(
ら
)
、事に当りしという。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ミリガン
夫人
(
ふじん
)
が両親のことを言いださなかったなら、わたしは親方がくれた十分の時間
以上
(
いじょう
)
をさようならを言うために
費
(
ついや
)
したであろう。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
つまりは百年前には一人の力で、一月以上も
費
(
ついや
)
すべかりし仕事を、今では
丸
(
まる
)
一日もかからずに片づけるようになってしまったのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼はこの「私はあなたを愛する」というたった一言を伝える為に、たっぷり三ヶ月の
日子
(
にっし
)
を
費
(
ついや
)
したのです。ほんとうにうその様な話しです。
日記帳
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
只今なれば
直
(
じ
)
きに棒を持って来てこれ/\と人を払って、詰らぬものを見ていて時間を
費
(
ついや
)
すより早く往ったが好かろうと保護して下さるが
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
柿右衛門
(
かきえもん
)
という人などは、
熟柿
(
じゅくし
)
が枝に下っているのを見て、その色を出そうとして、生涯を
費
(
ついや
)
して出来ず、その子がこれをついで半ば完成し
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
一体、自然派の文学者は、経験だの真理だのをいやに重大視して居ながら、「
美
(
び
)
」と云う事に就いては一言も
費
(
ついや
)
して居ない。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
兄さんが学問以外の事に時間を
費
(
ついや
)
すのが
惜
(
おし
)
いんで、万事
人任
(
ひとまか
)
せにしておいて、何事にも手を出さずに華族然と澄ましていたのが悪いんですよ。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
愚劣な小説ほど浅薄な
根柢
(
こんてい
)
から取捨選択され一のことに十の紙数を
費
(
ついや
)
すに
拘
(
かかわ
)
らず、なお一の核心を言い得ないものである。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
今日までの
成跡
(
せいせき
)
を以て見れば
未
(
いま
)
だ失望の箇条もなく、先ず
費
(
ついや
)
したる財と労とに
報
(
むくい
)
る
丈
(
だ
)
けの功をば
奏
(
そう
)
したるものというべし。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
登る時には長い時間と多くの汗水とを
費
(
ついや
)
させた八溝山も、その
降
(
おり
)
る時は
頗
(
すこぶ
)
る早い。しかし
降
(
お
)
り道も決して楽ではなかった。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
その金は
悉
(
ことごと
)
く、不正と乱行のために
費
(
ついや
)
されているんだ。いゝですか、僕は、警官としての君にこれを言つてるんだぜ。いや、それはどつちでもいゝ。
この握りめし
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
私信の一部を公にしては悪いが、わたしの筆に幾万言を
費
(
ついや
)
して現わそうとするよりも、この書簡の断片の方がどれだけ雄弁に語っているか知れない。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
口で言うと、単にこれだけの手つづきであるが、これだけのことを確かめるまでに殆んど一年間を
費
(
ついや
)
したのであった。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
また、さっきの待合室のソファに、二人並んで腰をかけると、新子は一時間も食事に時間を
費
(
ついや
)
したことに気がついて
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
善悪
正邪
(
せいじゃ
)
はとにかく、
損徳
(
そんとく
)
の点から
打算
(
ださん
)
しても、なんの必要もなきところに、感情を
費
(
ついや
)
すことはおろかな
業
(
わざ
)
である。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そのピーボディーは彼の一生涯を何に
費
(
ついや
)
したかというと、何百万ドルという高は知っておりませぬけれども、金を溜めて、ことに黒人の教育のために使った。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
その点からいって、それに
費
(
ついや
)
された紙数は、これまでの記録にくらべて、あまりにも多過ぎたように思える。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
七兵衛はここで時間を少しよけいに
費
(
ついや
)
したいのだから、わざと気長く構えて、親方と話をしているところへ
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なにも、面倒な臨床学など習って実地研究の何年間など
費
(
ついや
)
す必要は無いわけです。処が、その必要がある。
慈悲
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
カロン自身も、不幸な災厄を避けたい気があって、六月の中頃まで、あれこれと試射の方法を論議することに日を
費
(
ついや
)
し、ひたすら遷延の策を講じていたのである。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あるが故に、小柴角三郎は、肺も心臓も、へとへとになるまで、指笛に息を
費
(
ついや
)
した。しまいには、血を吐くと思われるほど、音が
嗄
(
か
)
れ、全身がつかれてしまった。
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうしておよそ
二刻
(
ふたとき
)
あまり山路で時を
費
(
ついや
)
したが、その時突然間近の峰から勇ましい
鬨
(
とき
)
の
声
(
こえ
)
が湧き起った。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
赤穂
(
あこう
)
の城を退去して以来、二年に近い月日を、
如何
(
いか
)
に彼は焦慮と
画策
(
かくさく
)
との
中
(
うち
)
に、
費
(
ついや
)
した事であろう。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし彼女は、少々の金を
費
(
ついや
)
してもこれさえ覚えておけばまさかの時に役立つといって習い続けた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
東北の旅に思わずも長い時を
費
(
ついや
)
しました。ここから
踵
(
きびす
)
を返し中部を見学することに致しましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
私はその金でカルカッタに居る時分随分沢山参考書を買い、なおネパール国王に上げる
家苞物
(
みやげもの
)
にもなかなか沢山金を
費
(
ついや
)
したけれども、三百ルピーの金が余って居ったです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
紳士は十六ミリ映写機の
滑
(
なめ
)
らかなる廻転を賞し、その運動の美しさに
惚込
(
ほれこ
)
み、自動車の車体の色彩に興味を覚え、エンジンの分解に一日を
費
(
ついや
)
し、その運動に
見惚
(
みと
)
れたりする。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
それに対して山田博士云、「遣唐使の派遣が大命を奉じて死生を
賭
(
と
)
して数年を
費
(
ついや
)
して往復するに、綿のみにても毎年二十万屯づつを輸入せりとすべきか」(講義)と云った。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
愈
(
いよ/\
)
利根の
水源
(
すゐげん
)
に
沿
(
そ
)
ふて
遡
(
さかのぼ
)
る、
顧
(
かへりみ
)
れば両岸は
懸崖絶壁
(
けんがいぜつぺき
)
、加ふるに
樹木
(
じゆもく
)
鬱蒼
(
うつさう
)
たり、たとひ
辛
(
から
)
ふじて之を
過
(
す
)
ぐるを得るも
漫
(
みだ
)
りに時日を
費
(
ついや
)
すの
恐
(
おそれ
)
あり、故にたとひ
寒冷
(
かんれい
)
足
(
あし
)
を
凍
(
こふ
)
らすとも
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
小道具など色々の細工物に金銀を
費
(
ついや
)
し高価の品を作り、革なども武具の
縅
(
おど
)
しにも致すべきものを
木履
(
ぼくり
)
の
鼻緒
(
はなお
)
に致し、
以
(
もっ
)
ての外の事、
沓
(
くつ
)
は新しくとも冠りにはならずと申すなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
今突然意外な機会が目の前に現われて来たのを見ては、とかくの思慮を
費
(
ついや
)
す暇もない。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
上京の途中は大阪の知人を
尋
(
たず
)
ね、
西京
(
さいきょう
)
見物に日を
費
(
ついや
)
し、神戸よりは船に打ち乗りて、両親および兄弟両夫婦および東京より迎えに行きたる妾と弟の子の
乳母
(
うば
)
と都合八人いずれも打ち興じつつ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
自分はそのために青春の精力の半ば以上を
費
(
ついや
)
したといってもいい。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
この問題は抽斎をして思慮を
費
(
ついや
)
さしむることを要せなかった。
何故
(
なにゆえ
)
というに、渋江氏の勤王は既に久しく定まっていたからである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして礎石の爆発よりホテルの完全
倒壊
(
とうかい
)
まで約一分十七秒を
費
(
ついや
)
したという数字の方が、より一層読者の科学する心を
刺戟
(
しげき
)
することであろう。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
取調べには
可成
(
かなり
)
の時間を
費
(
ついや
)
したけれど、被害者鶴子の母親が提出した一通の封書の
外
(
ほか
)
には、別段これという手掛りもなかった。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
我
(
わが
)
越後のごとく年毎に
幾丈
(
いくじょう
)
の雪を視ば何の楽き事かあらん。雪の
為
(
ため
)
に力を尽し財を
費
(
ついや
)
し千辛万苦する事、下に説く所を視ておもひはかるべし。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
第一は四寸ばかりの高さの首なるがこは自分の顔を鏡に写しながら二日を
費
(
ついや
)
して
捏
(
こ
)
ねあげし者なれど少しも似ずと人はいふ。
明治卅三年十月十五日記事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
予定の時日を京都で
費
(
ついや
)
した自分は、友達の
消息
(
たより
)
を一刻も早く耳にするため停車場を出ると共に、岡田の家を尋ねなければならなかったのである。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
早く申せば旨くもねえものをこんなに数々とりはせぬぞ、長居をして
時間
(
とき
)
を
費
(
ついや
)
し、食いたくもない物を取り、むだな
飲食
(
のみくい
)
をしたゆえ代は払わんぞ
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
毎日御出勤なさるという御用もないのにかつ二本のお足も御満足であるのに抱車や車夫のため毎月三、四十円をお
費
(
ついや
)
しになるのは何のためですか。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その往復だけでも相当の時間を
費
(
ついや
)
してしまうので、肝腎の読書の時間が案外に少ないことになるにはすこぶる困った。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
はなはだしきは権家に出入して官の事業を探索する等、無用の時を
費
(
ついや
)
して本業を忘るるにいたる。その失、二なり。
学校の説:(一名、慶応義塾学校の説)
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
費
常用漢字
小5
部首:⾙
12画
“費”を含む語句
費用
入費
浪費
冗費
消費
旅費
費消
費府
濫費
小費
物費
無駄費
経費
出費
生計費
失費
諸入費
徒費
放蕩費
金費
...