豫期よき)” の例文
新字:予期
不幸ふかうにも、この心配しんぱいくれ二十日過はつかすぎになつて、突然とつぜん事實じじつになりかけたので、宗助そうすけ豫期よき恐怖きようふいたやうに、いたく狼狽らうばいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
卯平うへい勘次かんじとのあひだ豫期よきしてごとひやゝがではあつたが、丁度ちやうど落付おちつかない藁屑わらくづあしいてはにはとり到頭たうとうつくるやうに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ありていに云うと、それらはむしろ作り物のように清潔になっていて、彼の豫期よきしていたような戦場の実感や勇士の面目などは、少しも感ぜられなかった。
いかに不公平ふこうへい教員けうゐん生徒せいとでも、今度こんどこそ自分じぶん實力じつりよく壓倒あつたうさるゝだらうと、大勝利だいしようり豫期よきして出品しゆつぴんした。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
草葉くさばつゆえてしまはねばならぬのであるから成敗せいばいもとより豫期よきがたいが、出來得できうけの手段しゆだんつくさねばならぬとかんがへたので、つひけつして、吾等われらこの急難きふなんをば
おきみは、さう來ることを豫期よきしてゐたが、いざさう出て來られると、はら/\しながら
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
ところが去來いざ取懸とりかかツて見ると、ちつとも豫期よきした調子てうしが出て來ない。頭の中に描かれた作品と、眼前がんぜんに描出される作品とはなまり鋼鉄かうてつほどの相違さうゐがある。周三は自分ながら自分の腕のなまくらなのに呆返あきれかへツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あいちやんは、やがまたそれがあらはれるだらうと豫期よきして、しばらくのあひだつてゐました、が、それは到頭とうとう姿すがたせませんでした、良久しばらくしてあいちやんは、三月兎ぐわつうさぎんでるとはれたはうあるいてきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
我々われ/\は、そんなこと豫期よきする權利けんりのない人間にんげんぢやないか」とおもつてして仕舞しまふ。細君さいくんやうやいてくちつぐんで仕舞しまふ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
瞬間しゆんかん處々ところ/″\くぼんでやつれた屋根やねまつたつゝんでしまつた。卯平うへい數分時すうふんじまへ豫期よきしなかつた變事へんじ意識いしきしたときほとんど喪心さうしんしてにはたふれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
勿論もちろんこと成敗せいばい豫期よきがたいが、萬一まんいち氣球ききゆう空中くうちう破裂はれつするとか、其他そのた異變ゐへんために、使命しめいはたこと出來できなければ夫迄それまでこと此方こなた電光艇でんくわうていは、約束やくそく本島ほんたうはつし、橄欖島かんらんたうおもむいて、數日すうじつつても
それから一週間しうかんほどは、學校がくかうるたんびに、今日けふ安井やすゐかほえるか、明日あす安井やすゐこゑがするかと、毎日まいにち漠然ばくぜんとした豫期よきいだいては教室けうしつけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しか自分じぶんでもとき自分じぶん變事へんじおこらうとすることはすこし豫期よきしてなかつた。かれ圍爐裏ゐろりそばで、よるむしつめたにあたりながらふとかはつてついとにはた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)