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蓆
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むしろ
ふりがな文庫
“
蓆
(
むしろ
)” の例文
繩や
蓆
(
むしろ
)
やわら束などを売るのがしょうばいで、五尺そこそこの肥えた
躯
(
からだ
)
で、十二月だというのに吹き出るような汗をかく
躰質
(
たいしつ
)
だった。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
故郷
楼桑村
(
ろうそうそん
)
の
茅屋
(
あばらや
)
に、
蓆
(
むしろ
)
を織って、老母と共に、貧しい日をしのいでいた一家の姿が、ふと熱い
瞼
(
まぶた
)
のうちに憶い出されたのであろう。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御主人は、ジャンパーなど召して、何やらいさましい
恰好
(
かっこう
)
で玄関に出て来られたが、いままで縁の下に
蓆
(
むしろ
)
を敷いて居られたのだそうで
十二月八日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
これらの者のためには地面へ
蓆
(
むしろ
)
をしいてありました。我れ勝ちに前へ進んで、その蓆の下へ履物を押込んで、
固唾
(
かたず
)
を呑んで見物します。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ベースには
蓆
(
むしろ
)
の切れ端やぞうきんで用が足りた。ボールがゴムまり、バットには手ごろの竹片がそこらの畑の垣根から容易に略奪された。
野球時代
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
其中に這入ると
蓆
(
むしろ
)
が敷いてあって、其奥に一人の人が居て手桶に汲んだ水が置いてある他に、
竈
(
かまど
)
や、鍋や釜などが置いてあった。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
小屋の中は六畳敷程の広さで、入口に続く一畳足らずの土間の外は、床板を張って
蓆
(
むしろ
)
を敷き、左手の炊事場に炉が切ってあった。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
欲しいものは、なるべく大きな板切れと、なるべく広い
布
(
きれ
)
であった。それにつづいて
蓆
(
むしろ
)
か綿か、さもなければ濡れた畳であった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ガヴローシュはその位置を
蓆
(
むしろ
)
の上によくなおしてやり、毛布を耳の所までかぶせてやり、それから伝統的な言葉で三度命令をくり返した。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼はそこの、
蓆
(
むしろ
)
の座席で田舎の兄さんの
脛
(
すね
)
や、娘さんのお尻にもまれながら、窮屈な思いをして、曲馬と軽業を
一巡
(
ひとめぐり
)
見物した。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
蓆
(
むしろ
)
のようなものを床に敷いて何か低い声で
呟
(
つぶや
)
いている。簡単な洋装だが髪の形といい顔の様子といい、明かに邦人の女である。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
見所は地面に敷いた
蓆
(
むしろ
)
で大体いはゆる首本党が前に坐り、その後方に私たちのやうな弥次馬が立たり坐つたりして見物する。
能の見はじめ
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
厚い氷に一尺四方くらいの穴をあけ、尻に
蓆
(
むしろ
)
を敷き、傍らに石油缶を切った火鉢を置いて冬の朝、紫光の公魚を手にする興味はまことに深い。
氷湖の公魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
左の方には入口の
掘立柱
(
ほったてばしら
)
から奥の掘立柱にかけて一本の丸太を土の上にわたして土間に麦藁を敷きならしたその上に、所々
蓆
(
むしろ
)
が
拡
(
ひろ
)
げてあった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
頭の上は大空で、否、大空の中に、
粗削
(
あらけず
)
りの石の
塊
(
かたまり
)
が挟まれていて、その塊を土台として、
蒲鉾形
(
かまぼこなり
)
の
蓆
(
むしろ
)
小舎が出来ている。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
私の好んで入つたのはその断崖の根の温泉で、入口には
蓆
(
むしろ
)
が垂らしてあるばかり、板の壁はあらかた破れて湯に入りながら渓の瀬がみえてゐた。
渓をおもふ
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
家の南側のまばらな
生垣
(
いけがき
)
のうちが、土をたたき固めた広場になっていて、その上に一面に
蓆
(
むしろ
)
が敷いてある。蓆には刈り取った
粟
(
あわ
)
の穂が干してある。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
また、
竃
(
かまど
)
を塗り、井を掘り、
味噌
(
みそ
)
、酒を製し、新
蓆
(
むしろ
)
を敷くに至るまで、一定の吉日と凶日とがある。かくのごときの類、実に枚挙にいとまあらぬ。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
空地に
蓆
(
むしろ
)
を敷いて皆其上に坐つてお骨のあがるのを待つて居た。もう三十分もしたらお骨があがると番人の人が言つた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
と言い出した清助をはじめ、庄助も、勝之助も、その土間の片すみに壁によせて置いてある
蓆
(
むしろ
)
の類を見つけ、あり合うものを引きかぶって逃げた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
公園
(
こうゑん
)
の
廣場
(
ひろば
)
は、
既
(
すで
)
に
幾萬
(
いくまん
)
の
人
(
ひと
)
で
滿
(
み
)
ちて
居
(
ゐ
)
た。
私
(
わたし
)
たちは、
其
(
そ
)
の
外側
(
そとがは
)
の
濠
(
ほり
)
に
向
(
むか
)
つた
道傍
(
みちばた
)
に、やう/\
地
(
ち
)
のまゝの
蓆
(
むしろ
)
を
得
(
え
)
た。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
トラックにのぼった男が、貸蒲団らしい薄っぺらなのを、
蓆
(
むしろ
)
でも扱うように鋪道にじかにストンストンと落している。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
望月さんの死骸へは
蓆
(
むしろ
)
をきせてありました、私は頭の髪か手足の指か何か一ツ形見に切て置きたいと思ひましたが番人が一パイ居つて取れないのです。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
「困つたやつちや——わしの責任になるがな」そして、今まで、爺さんの寝臥してゐた
蓆
(
むしろ
)
を靴の先で蹴り飛ばした。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
例えば「麦をツボへ干す」、「子供がツボへ
蓆
(
むしろ
)
を敷て遊ぶ」、「ツボで独楽を舞わす」などと言わるるツボである。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
席にあることが、さながら針の
蓆
(
むしろ
)
に坐するがごとく、その夜逃ぐるがごとき気持でビョルゲ家より帰って来たことを、今なお予は忘るることができぬ。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その
椅子
(
ベンチ
)
が針の
蓆
(
むしろ
)
か、何かでもあるように、幾度も腰を上げようとした。が、距離は、わずかに二間位しかない。草を踏む音でも聞えるかも知れない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
着いた翌日は
先
(
ま
)
ず階下の部屋の一隅に
蓆
(
むしろ
)
を敷いて
隙間風
(
すきまかぜ
)
を防ぎ、その上に携帯用暗幕を張って急造の暗室を作る。
雪の十勝:――雪の研究の生活――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それから二人は善コのお母さんが持って来た
蓆
(
むしろ
)
の上に座りました。お母さんたちはうしろで立って
談
(
はな
)
してゐます。
十月の末
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
芭蕉
(
ばしょう
)
がずたずたに切れて、茶色ながら立往生をしている。地面は皮が
剥
(
む
)
けて、
蓆
(
むしろ
)
を
捲
(
ま
)
きかけたように
反
(
そ
)
っくり返っている。道也先生は庭の
面
(
おもて
)
を
眺
(
なが
)
めながら
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蓆
(
むしろ
)
のうえには、醤油と黒砂糖を容れた皿が二つ置かれていた。しかし、彼には、もうほとんど食慾がなかった。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
彼女が、田簑橋のほとりについた時には、
蓆
(
むしろ
)
をきせられた水死人を見物するために往来は人で黒くなっていた。
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
俺は饑饉魔だ。若い女どもが
塵芥
(
ごみ
)
をふりかけ、
蓆
(
むしろ
)
の上から踏みつけたって、俺の姿を見あらわすことはできない。ところが、君など、人からも、犬からも姿を
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
艫の方の化粧部屋は
蓆
(
むしろ
)
で張られ、昔ながらの廢れかけた舟舞臺には櫻の造花を隈なくかざし、欄干の三方に垂らした
御簾
(
みす
)
は
彩色
(
さいしき
)
も褪せはてたものではあるが
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そう言い終って、彼は
起
(
た
)
って
厠
(
かわや
)
へゆくと、その壁に
蓆
(
むしろ
)
を巻いたような物が見えた。高さ五尺ばかりで、白い。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或る人が
中
(
なか
)
ノ
郷
(
ごう
)
の
枳殻寺
(
からたちでら
)
の近所を通ると、紙の旗や
蓆
(
むしろ
)
旗を立てて、大勢が一団となり、
鬨
(
とき
)
の声を揚げ、米屋を
毀
(
ぶ
)
ち
壊
(
こわ
)
して、勝手に米穀を
奪
(
さら
)
って行く現場を見た。
幕末維新懐古談:18 一度家に帰り父に誡められたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「
蓆
(
むしろ
)
敷いて
長臑
(
ながすね
)
抱きぬ
夜水番
(
よみずばん
)
泊月」などという句も、この意味において軌を同じゅうするものであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
此の御方を母とし、
御前様
(
おんまへさま
)
を夫と致候て暮し候事も相
叶
(
かな
)
ひ候はば、私は土間に
寐
(
い
)
ね、
蓆
(
むしろ
)
を
絡
(
まと
)
ひ
候
(
さふらふ
)
ても、
其楽
(
そのたのしみ
)
は
然
(
さ
)
ぞやと、常に及ばぬ事を
恋
(
こひし
)
く思居りまゐらせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼が家では、夏の
夕飯
(
ゆうめし
)
をよく芝生でやる。椅子テーブルのこともあり、
蓆
(
むしろ
)
を敷いて低い食卓の事もある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
もうこの辺はプンプンと、薬草の香に馨っていたが、その一
所
(
ところ
)
に立っているのは、障子の代りに
蓆
(
むしろ
)
を垂らし、茅の代りに杉葉を葺いた、粗末な黒木の小屋であった。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蓆
(
むしろ
)
の上に、嘔吐物が散らばって居たばかりなので、恐らく食あたりをしたのだろうと考えたそうです。
狂女と犬
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そのくねくね曲った方の一方に
攀
(
よ
)
じのぼると、背中に負って来た棒や板や
蓆
(
むしろ
)
などを、その枝と枝との間に打付けて、
忽
(
たちま
)
ち其処に即製の
桟敷
(
さじき
)
をこしらえ上げて了った。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
是より少し前
鹿島宮
(
かしまぐう
)
に
参詣
(
さんけい
)
して、老女が
蓆
(
むしろ
)
の上に
坐
(
ざ
)
してこの歌をうたうのを聴いたという記事もある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
二時
(
やつ
)
過ぎの
陽
(
ひ
)
が
門口
(
かどぐち
)
に一本ある柿の木を染めていた。一人の老人が
庭前
(
にわさき
)
の
蓆
(
むしろ
)
の上で縄を
綯
(
な
)
うていた。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一番
(
いちばん
)
はじめの
歌
(
うた
)
は、
蓆
(
むしろ
)
を
敷
(
し
)
いて、そこに
坐
(
すわ
)
りこんで、ぢっとしてゐる
心
(
こゝろ
)
の
寛
(
くつろ
)
ぎを
喜
(
よろこ
)
んでゐるのです。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
座敷のまわりを
雑巾掛
(
ぞうきんがけ
)
してそれから庭に広げてある
蓆
(
むしろ
)
を倉へ片づけてから野へゆけと言いつけた。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
千鳥の話は
馬喰
(
ばくろう
)
の娘のお長で始まる。小春の日の夕方、蒼ざめたお長は軒下へ
蓆
(
むしろ
)
を敷いてしょんぼりと坐っている。干し列べた
平茎
(
ひらぐき
)
には、もはや糸筋ほどの日影もささぬ。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
が、姑がそれを見た頃には、
蓆
(
むしろ
)
を敷き、その上に仔牛を載せた荷車に、もう親牛はついていた。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
興行場は棒を立て、たるきを横に渡した場所に、天井に
蓆
(
むしろ
)
を使用し、壁もまた蓆で出来ていた。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
裏口の戸を閉め切つて、納家の
蓆
(
むしろ
)
の上で、京子に知れぬやうに、お駒の酌で酒を飮んでゐた道臣は、腰の邊に藁屑の附いたまゝ、
微醉
(
ほろゑひ
)
で病室に入つて來て、何も知らずに
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
“蓆(
莚
)”の解説
莚(むしろ、筵・席・蓆)とは、藁(わら)やイグサなどで編んだ簡素な敷物。
(出典:Wikipedia)
蓆
漢検1級
部首:⾋
13画
“蓆”を含む語句
蓆張
藁蓆
蓆巻
蓆売
蓆囲
蓆旗
荒蓆
蓆戸
古蓆
蓆掛
花蓆
薦蓆
蓆織
蓆機
蓆筵
蓆籘
蓆帆
蓆莚
蓆蓋
藺蓆
...