“痩:や” の例文
“痩:や”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花72
太宰治44
芥川竜之介28
吉川英治23
紫式部23
“痩:や”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語40.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語12.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)1.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「それも一段の趣じゃが、まだ持って出たというためしを聞かぬ。」と羽織を脱いでなおせた二の腕を扇子でさする。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると、一人の血色の悪い、せこけた青年が、お前と並んで、肩と肩とをくっつけるようにして、立っているのを私は認めた。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
褐色かっしょくの細葉を房々ふさふさとつけ、ねじれた面白い体躯たいくせたしなやかさを示してる、秋の樹木。
戸を開けて這入はいって来たのは、ユダヤ教徒かと思われるような、褐色かっしょくの髪の濃い、三十代のせた男である。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
薄暗うすぐらつるしランプの光がせこけた小作こづくりの身体からだをば猶更なほさらけて見せるので
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一族から、このような大病人がひとり出たばかりに、私の身内の者たちは、皆せて、一様に少しずつ寿命をちぢめたようだ。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
せぎすであったけれども顔は丸い方で、透き徹るほど白い皮膚に紅味あかみをおんだ、誠に光沢つやの好い児であった。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
年若く身はせて心のままに風と来り風と去る漂遊の児であれば、もとより一攫千金いっかくせんきんを夢みてきたのではない。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
その向い側には嫁女よめじょの実父で、骨董品然とせこけた山羊鬚やぎひげ頓野とんの羊伯と、その後妻の肥った老人。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何、唐銅からかねの八千貫、こうせさらぼえた姥が腕でも、指で挟んで棄てましょうが、重いは義理でござりまするもの。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時、切髪きりかみ白髪しらがになって、犬のごとくつくばったが、柄杓の柄に、せがれた手をしかとかけていた。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女には自分が見るかげもなくせさらばえて、あさましいような姿になっているのがそのとき初めて気がついたように見えた。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ようやく頭を上げることができるようになり、食事もするようになったころにかえって重い病中よりも顔のせが見えてきた。
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
肺病やみのようにせた・髪の長い・受持の教師が、或日何かの拍子で、地球の運命というものについて話したことがあった。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
彼女の容色さえも――その身振り、動作、顔立ち、くちびるしわ、眼、手、上品なせ方、――皆理知の反映であった。
潜門くゞりもん板屋根いたやねにはせたやなぎからくも若芽わかめの緑をつけた枝をたらしてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おもては白く筋肉はせて、たとえば松籟しょうらいに翼をやすめているたかの如く澄んだひとみをそなえている。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
腕も脚も、胸も腰も、せているようで肉づきの豊かな、そして肉づきの水々しくやわらかな、見あきない美しさがこもっていた。
私は海をだきしめていたい (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
私の夫という人は優形やさがたせぎすな外見だけがやや木村さんに似ているけれども、その他の点では何も似ていない。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
同時に平生尊重する我慢がまんも何も忘れたように、今も片手を突こんでいたズボンの中味を吹聴ふいちょうした。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私の母はこの頃少しせ、顔があおくなっているらしかった。そして一度会えないものかどうか、ときいたというのだ。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
三聲みこゑつゞけていたとおもふと……ゆきをかついだ、ふとたくましい、しかしせた
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
せた蜀黍もろこしねむつたかとおもふやうにしつとりとしてては、やがてざわ/\とつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ばちあはせる一どうこゑしなびてせたのどからにごつたこゑであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ずらっと並んだ処を見渡すと、どれもどれも好く選んでそろえたと思う程、色のあおせこけた顔ばかりである。
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
寧国寺さんはほとんど無間断むげんだんに微笑をたたえている、せた顔を主人の方に向けて、こんな話をし出した。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「生れつきだから、どうも仕方がありません、せたいと思っても、痩せられやしません、削るわけにもゆきませんからね」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのままつつと膝を掛ける、と驚いて背後うしろへ手をく、葛木のせたせなに、片袖当ててもすそを投げて、
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よそよそしい、偏屈な娘としてのみ映ることよ!……それから去年よりずっと顔色も悪くなり、せこけている私の競争者を見た時は
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それから、もう一人の色つやの悪い、せた、貧相な女の子の姿が、そのかたわらに色褪いろあせて、ぼおっと浮ぶ。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
蒲留仙 五十前後のせてむさくるしいなりをしている詩人、胡麻塩ごましおの長いまばらな顎髯あごひげを生やしている。
一品いっぽんみやのお姿にも劣らず、白く清らかな皮膚の色で、以前より少しおせになったのがなおさらお美しく見せた。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
薄暗い中にむっくり起きあがったのは、なんと! 大たぶさがバラリ額にかかって、隻眼片腕のせさらばえた浪人姿――。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼女のせた姿は、じっと身動きもせず、少しがっかりしたような様子で、足を軽く組み、両手をひざの上に平たく重ねていた。
勝てばどっと降兵を加えて強大となり、負くれば一夜にその旗営きえいせ細ってしまうのが、今の合戦の特徴だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君の眼は、嘘つきの眼ですね、と突然言ってその新来の客を驚愕きょうがくさせるせた男は、これも男爵でなかった。
花燭 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし一代は衰弱する一方で、水の引くようにみるみるせて行き、癌特有の堪え切れぬ悪臭あくしゅうはふと死のにおいであった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
何故というのに、秋貞というのはその店に折々見える、紺の前掛をした、せこけた爺さんの屋号と名前の頭字とに過ぎないのである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
キヨ子さんといって、マア坊と同じくらいの年恰好としかっこうで、せて、顔色の悪い、眼のり上ったおとなしい娘さんだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そうして、夫子がそれを咎めたまわぬのは、せ細るまで苦しんで考え込んだ子路の一本気をあわれまれたために過ぎないことを。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
せた土地を投げつけるように与えられ、じっと我慢していた彼らの気持の大根には、こういう旧主の心遣いが貫ぬいていたのである。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
と、治明博士は、横に立っていた褐色かっしょくの皮膚を持ったせた男へおどろきの目を向けた。どこかで見た顔ではあるが……。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と尋ねると、大熨斗おおのしを書いた幕の影から、色のあおい、びんの乱れた、せた中年増ちゅうどしまが顔を出して、
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長い長いせた青い顔、額に深い大きなきずあとがあって、そのために片っぽの眼がつりあがり眼玉が飛出している。
「肥料をやらなければ、第一土地がせてしまって収穫がいよいよ低下するばかりです、どうしても肥料に金を懸けなければ駄目です」
落第坊主即低能と推定されて自分の手に渡されたこのせこけた子供が、こんなによどみなく胸にひびく言葉をまくしたてるのだ。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
そう云いながら父は、彼のせた胸懐むなぶところに顔をうずめている娘の美しい撫肩なでがたを、軽く二三度たたいた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「馬鹿じゃの、妻をもち、一家をなし、子孫の計をする、人倫の大道じゃないか。考えることがいるか。せ我慢するな」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜかといえばそれは二匹とも、形は見すぼらしいせ馬でしたが、顔は夢にも忘れない、死んだ父母の通りでしたから。
杜子春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その、ものしずかに、謹みたるさまして俯向うつむく、背のいとせたるが、取る年よりも長き月日の、旅のほど思わせつ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
色が俗であったり、姿がせたり、じきにこわれたり、げたりするのも、用途に対する不誠実から来るのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
平次はそっと後ろへ回ると、新吉の肩をポンと叩きました。掌への感触は、物心つく前の女の子のような、せた弱々しい感じでした。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
もしそれでも得られるとすれば、炎天に炭火をようしたり、大寒に団扇うちわふるったりするせ我慢の幸福ばかりである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僕はいつか西廂記せいそうきを読み、土口気泥臭味の語に出合った時にたちまち僕の母の顔を、――せ細った横顔を思い出した。
点鬼簿 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
思いもかけない山麓さんろくの傾斜面にせた田畑があったり、厚い薮畳やぶだたみの蔭に、人家があったりした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
崖から下りて来て、珍らしく金魚池を見物していた小造りでせた色の黒い真佐子の父の鼎造ていぞうはそう云った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
思いがけない情景のなかで突然、娘にって周章あわてた私の視覚の加減か、娘の顔は急にせて、その上、ゆがんで見えた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
老人はせぎすの中背ちゅうぜいで、小粋な風采といい、流暢な江戸弁といい、まぎれもない下町の人種である。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
非常な手数をかけて一々燕麦をぬいたが、最早もう肝腎かんじんの麦は燕麦に負けてそのせこけたものになって居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おぼつかない手にせ土を掘りかえし、芽生えて来るであろう作物のしなびた葉に驚いた彼らは、ともに前後を錯乱していたのであろう。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
女学生のうちの年上で、せた顔の表情のひどく活溌かっぱつなのが、汽車の大分遠ざかるまで、ハンケチを振って見送っていた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、破れ布子ぬのこの上から見ても骨の触って痛そうな、せた胸に、ぎしと組んだ手を解いて叩頭おじぎをして、
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして、彼の長躯ちょうくは、不弥うみを追われて帰ったときの彼のごとく、再び矛木ほこぎのようにだんだんとせていった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あの黒い髪の毛が、せた首筋にほつれている、凄いほどの美人の年増の奥様といったような魅力があるのではないか。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
続いてあそばされたお物思いのせいかほっそりとせておいでになるのが、お召し物越しに接触している大将によく感ぜられるのである。
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と、総司は、グッと肩をそびやかした。せている肩ではあったが、聳かすと、さすがに殺気がほとばしった。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其でなくては、此病気は、陰影を亡くするという意味でもなく、「わが身は陰となりにけり」の実体を失う程せると言うことでもない。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
彼はなかなかの健啖家けんたんかで、せほそってはいたものの、大蛇のように胃袋をふくらますことができたのだ。
女盛りの、燃える炎を包まれて、美がえるほど肺がせ、気のとがるほど凄艶せいえんさが目立ってきた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つかれなされておせなされて介抱かいはうしてくださるのを孝行かう/\のおまへ何故なぜわからない
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その隣りの寝台には、せこけた不精髯ぶしょうひげを生やした五十がらみの親爺おやじがいて、息子らしい若者が世話をしていた。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
ウィリアムは身のたけ六尺一寸、せてはいるが満身の筋肉を骨格の上へたたき付けて出来上った様な男である。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかもこの情操の供給を杜絶すれば、吾人に大切な涵養物かんようぶつを奪われたると一般で日に日にてるばかりであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして本当に神々こうごうしく、その辛酸にせた肉体を、最上の満足の為めにあしの下に踏みにじった。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
で、軽く衣紋えもんおさえ、せた膝で振り返ると、娘はもう、肩のあたりまで、階子段はしごだんに白地の中形を沈めていた。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せて青黒いくまの多い長身の肉体は内部から慾求するものをみたし得ない悩みにいつもあえいでいた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、うめきながら、枕元で途方に暮れている、吾が子をぎょろりと睨むように見詰めると、枯木のようにせ細った手で、引き寄せて、
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ですから、強い近眼鏡をかけ、ひげぼうぼうのせた小さい顔をもった大利根博士を見た人は、よほど運がよかったことにされていました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
少しおなかがふっくりとなって悪阻つわりの悩みに顔の少しおせになった宮のお美しさは、前よりも増したのではないかと見えた。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
病気ではないが、頬にせが見えるのに、化粧みじまいをしないので、顔の生地は荒れ色は蒼白あおざめている。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
それらの線のうちには、直角定規で引いたような堅い荒い冷やかな構図があって、せた女のひじのように鋭角をなして曲がっていた。
彼女はせて器量も落ちたので、往来で行き会う人々ももはや以前のように彼女をしげしげと見たり、にっこり笑いかけたりはしなかった。
可愛い女 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一カ月以上も元気でお湯に入らなかったし、何日も一日一度の飯で歩き廻って、ゲッそりせてしまったこともある。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
三左衛門は笑いながら縁側えんがわの方へちょと眼をやった。色の蒼白あおじろせた僧がそこに立っていた。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
M氏より十歩ばかり先へ歩いていた私は、或る家の縁の下に一人のせた女がバンドを編んでいる所を見付けた。
一夜に、せ衰えた舞姫は、その夜から囈言うわごとに、子と良人のことばかり云いつづけて、夏の中も病のとこから起てなかった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、時には、草雲の眼にも、神の如く見えたお菊も、女である。近頃は、しょうこんも、衰えたように、せが目についてきた。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の六時間学校に在りて帰来かへりきたれるは、心のするばかり美きおもかげゑて帰来れるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その様な生命いのちはの、殿、殿たちの方で言うげな、……やみほうけた牛、せさらぼえた馬で、私等わしらがにも役にも立たぬ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くまごと荒漢等あらをのこら山狗やまいぬかとばかりおとろへ、ひからせて、したんで
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの怪しげな烏瓜を、坂の上のやぶから提灯、逆上のぼせるほどな日向ひなたに突出す、せた頬の片靨かたえくぼは気味が悪い。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小さい身体からだで女の大難を経てきたのであったから、少し顔がせ細って非常にえんな姿になっていた。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「人妻ゆゑにわれ恋ひにけり」、「ものもひせぬ人の子ゆゑに」、「わがゆゑにいたくなわびそ」等、これらの例万葉にはなはだ多い。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
雪隱せちいんわきには、紫陽花あじさゐの花がせひよろけてさびしくいてゐた。花の色はもうせかゝツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
つやのない火にほてった赤毛の小娘が、そのせ細った両腕を肩の近くまで裸にし、胸衣をくつろげて、火熨斗ひのしをかけていた。
せ細つて、背はむしろ低い方、両ほおがこけて、ちよつとスプーンのやうな妙な恰好かっこうをしたあごひげを生やしてゐます。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
布子ぬのこの袖なし、よごれくさりし印半纏しるしばんてんとともに脱ぎ、せたる皺膚しわはだを露出す。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
連れてったせた車掌がいい男で、たしかに煙草入を――洋服の腰へ手を当てて仕方をして――見たから無銭ただのりではありません。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
子供の時分は色白な顔をしていたようでしたが、今逢う晃一郎氏はせ形の浅黒い見るからに凜々りりしい一高の学生になっているのです。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
四人の鵜飼のうちで鵜を持ったほうの一人は、四十前後のせぎすな男で、一人は三十五六の角顔かくがおの体のがっしりした男であった。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
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