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痩
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や
ふりがな文庫
“
痩
(
や
)” の例文
安宅さんはその時、三十七八の、背の高い、
痩
(
や
)
せぎすの男の方と立ち話をされていた。それは私も一面識のある森於菟彦さんだった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
この次席家老は
痩
(
や
)
せてしなびたような躯に、しなびた猿のような顔をして、いつも精のない、悲観的な調子でものを云う癖があった。
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、
呻
(
うめ
)
きながら、枕元で途方に暮れている、吾が子をぎょろりと睨むように見詰めると、枯木のように
痩
(
や
)
せ細った手で、引き寄せて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それでも割合に
痩
(
や
)
せも
窶
(
やつ
)
れもしないのが矢張り気違いの生理状態なのかと
呆
(
あき
)
れる。呆れながら加奈子は却ってそれが余計不憫になる。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「人妻ゆゑにわれ恋ひにけり」、「ものもひ
痩
(
や
)
せぬ人の子ゆゑに」、「わがゆゑにいたくなわびそ」等、これらの例万葉に
甚
(
はなは
)
だ多い。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
▼ もっと見る
それらの線のうちには、直角定規で引いたような堅い荒い冷やかな構図があって、
痩
(
や
)
せた女の
肱
(
ひじ
)
のように鋭角をなして曲がっていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
実直さとともに
老
(
ふ
)
け、
痩
(
や
)
せぎすな体で、
賄
(
まかな
)
い方の辛労をひき受けて来たのだ。無限の実直さには何らの価値もみとめてはいなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
極
(
きは
)
めて
狹
(
せま
)
い
周圍
(
しうゐ
)
を
有
(
いう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
然
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
の
痩
(
や
)
せた
小
(
ちひ
)
さな
體躯
(
からだ
)
は、
其
(
そ
)
の
狹
(
せま
)
い
周圍
(
しうゐ
)
と
反撥
(
はんぱつ
)
して
居
(
ゐ
)
るやうな
關係
(
くわんけい
)
が
自然
(
しぜん
)
に
成立
(
なりた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
四人の鵜飼のうちで鵜を持ったほうの一人は、四十前後の
痩
(
や
)
せぎすな男で、一人は三十五六の
角顔
(
かくがお
)
の体のがっしりした男であった。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
腕も脚も、胸も腰も、
痩
(
や
)
せているようで肉づきの豊かな、そして肉づきの水々しくやわらかな、見あきない美しさがこもっていた。
私は海をだきしめていたい
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
円髷
(
まるわげ
)
に結ひたる四十ばかりの
小
(
ちひさ
)
く
痩
(
や
)
せて色白き女の、
茶微塵
(
ちやみじん
)
の糸織の
小袖
(
こそで
)
に黒の
奉書紬
(
ほうしよつむぎ
)
の紋付の羽織着たるは、この家の
内儀
(
ないぎ
)
なるべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
歳は三十の前後、
細面
(
ほそおもて
)
で色は白く、身は
痩
(
や
)
せているが骨格は
冴
(
さ
)
えています。この若い武士が峠の上に立つと、ゴーッと、
青嵐
(
あおあらし
)
が
崩
(
くず
)
れる。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
痩
(
や
)
せて、背の高いひとであった。顔は細長くて蒼白く、おしろいも口紅もつけていないようで、薄い唇は白く乾いている感じであった。
父
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
子供の時分は色白な顔をしていたようでしたが、今逢う晃一郎氏は
痩
(
や
)
せ形の浅黒い見るからに
凜々
(
りり
)
しい一高の学生になっているのです。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
僅
(
わず
)
かばかりの
痩
(
や
)
せた畑もこの
老爺
(
ろうや
)
が作るらしかった。破れた屋根の下で、牧夫は私達の為に湯を沸かしたり、茶を入れたりしてくれた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
女は
籐椅子
(
とういす
)
を離れながら、恥しそうに
会釈
(
えしゃく
)
をした。見れば球を拾ったのは、今し方女中と噂をした、
痩
(
や
)
せぎすな隣室の夫人である。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは、最後に残った山口の分の一つに、彼の
痩
(
や
)
せた青白い手が
躊躇
(
ちゅうちょ
)
なくのびたのを見とどけたとき、ほとんど、感謝にまで成長した。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
背後で、子供に乳を含ましている女房に注意されて、そッちの窓外をみると、
田圃
(
たんぼ
)
の
畔
(
あぜ
)
に青く
痩
(
や
)
せこけた若者がウロウロしていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
あのよく
肥
(
ふと
)
っていた人が、げっそりと
痩
(
や
)
せて、半白の髪が、更に一層白さを増していたことによっても、十分察することが出来た。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
痩
(
や
)
せさらばえた姿を、ひどく馬鹿馬鹿しく、
憤
(
いきどお
)
ろしく思い出すと共に何かしら解放されたような、安易さを覚えて来るのであった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そう
昂然
(
こうぜん
)
と言って、(——私は昂然たる朝野を、ここで初めて見た。)朝野はポンと、はだけた
痩
(
や
)
せた胸を叩き、みずからよろめいた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
蘆の中に、色の白い
痩
(
や
)
せた
嫗
(
おうな
)
、
高家
(
こうけ
)
の後室ともあろう、品の
可
(
い
)
い、目の赤いのが、
朦朧
(
もうろう
)
と
踞
(
しゃが
)
んだ手から、
蜘蛛
(
くも
)
の
囲
(
い
)
かと見る糸
一条
(
ひとすじ
)
。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見知らぬ男はあまり背の高くない、
痩
(
や
)
せぎすな、真っ黒な房々とした髪をパラリと肩あたりまでのばした二十三、四の男であった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
少し
痩
(
や
)
せて
可憐
(
かれん
)
さの添った顔を見ながら源氏は、それを他人に譲るとは、自身ながらもあまりに善人過ぎたことであると残念に思われた。
源氏物語:31 真木柱
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
掌馬人
(
うまかい
)
かの馬決して病まずと答え、厩へ往きて馬に
対
(
むか
)
い、汝は瓦師方にありて碌に食料をくれず骨と皮ばかりに
痩
(
や
)
せて困苦労働したるに
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
少なくも記録に
拠所
(
よりどころ
)
がなく、顔などは
面長
(
おもなが
)
であったか、
丸顔
(
まるがお
)
か、また肥えていたか、
痩
(
や
)
せていたか、そういうことが一切分らんのでした。
幕末維新懐古談:68 楠公銅像の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
僕は先生の
部屋
(
へや
)
でいつの間にか泣寝入りをしていたと見えます。少し
痩
(
や
)
せて
身長
(
せい
)
の高い先生は
笑顔
(
えがお
)
を見せて僕を見おろしていられました。
一房の葡萄
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
無数の
痩
(
や
)
せた青ざめた顔が、壁の石のように積みかさなって、いわば鉄格子の身にみなはめこまれたようにしてしっかりくっついていた。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
夫人は、灯もない夕暮の自室に、
木乃伊
(
ミイラ
)
のように
痩
(
や
)
せ細った
躰
(
からだ
)
を石油箱の上に腰うちかけて、いつまでもジッと考えこんでいた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
其でなくては、此病気は、陰影を亡くするという意味でもなく、「わが身は陰となりにけり」の実体を失う程
痩
(
や
)
せると言うことでもない。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
こんな小さな
痩
(
や
)
せっぽちな伯父がこれから一人ぼっちで棺の中に入らなければならないのかと思って、ひどく
傷々
(
いたいた
)
しい気がした。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その年ごろは十八、九で、
二十歳
(
はたち
)
までは行ってはいないだろう。
身長
(
せい
)
が高くて
痩
(
や
)
せぎすである。首なんか今にも抜けそうに長い。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この問題が内部動乱の中心に
蟠
(
わだかま
)
り、苦悩の大部分を占めるであろう。私はいうが、私はこの対人関係について思索するに
痩
(
や
)
せた。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
死んだと思ったなら
猶更
(
なおさら
)
幽霊に違いない、其のマア女が糸のように
痩
(
や
)
せた骨と皮ばかりの手で、お前さんの首ッたまへかじり付くそうだ
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
耳門
(
くぐり
)
から邸内へはいつて行くと信者ででもあらうか、
痩
(
や
)
せ細つた中年の女が、
大麦藁帽子
(
おほむぎわらばうし
)
をかぶつて、庭の草むしりをしてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
田舎でみっちり養生をして、
癒
(
なお
)
ったらまた出て来て、運を盛り返そうという心組みのあることは、
痩
(
や
)
せ衰えた叔父の顔にも現われていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いつでも半分位で
辛抱
(
しんぼう
)
してろくに茶を飲むことも出来ず水を呑んで居るという
始末
(
しまつ
)
。ですから赤い顔が青くなってだんだん
痩
(
や
)
せてしまう。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
油蝉の暑苦しく鳴いている木の下で、私は厚く礼をいって僧と別れた。僧の
痩
(
や
)
せた姿は大きな芭蕉の葉のかげへ隠れて行った。
磯部の若葉
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女は
痩
(
や
)
せて器量も落ちたので、往来で行き会う人々ももはや以前のように彼女をしげしげと見たり、にっこり笑いかけたりはしなかった。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
相変らずの美貌であるが、少しく
痩
(
や
)
せぎすで、手足など
蚊細
(
かぼそ
)
すぎるうらみがあった。胸の病いがあるのではないかと疑われた。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
人が顔を見て存外に
痩
(
や
)
せずに居るなどと言はれるのに腹が立ちて
火箸
(
ひばし
)
の如く細りたる足を出してこれでもかと言ふて見せる事
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
モニカのそばへ行くと、モニカは助かったのだと思いこんでいるらしく、
痩
(
や
)
せ細って眼だけになったような顔で、ほんのりと笑ってみせた。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おれもひじを畳についた、がっきと手と手を組んだ、おれはいい
加減
(
かげん
)
にあしらうつもりであった、先生の
痩
(
や
)
せた長い腕がぶるぶるふるえた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
「じいさん。つかねえことを訊くようだが、眼のするどい、ひょろッと
痩
(
や
)
せた野郎が、
朱革
(
あかがわ
)
の
鎧櫃
(
よろいびつ
)
を背負って通るのを見かけなかったかい」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして、それとともにやる瀬のない、悔しい、無念の涙がはらはらと
溢
(
こぼ
)
れて、夕暮の寒い風に
乾
(
かわ
)
いて総毛立った私の
痩
(
や
)
せた
頬
(
ほお
)
に熱く流れた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
いかにも
後家相
(
ごけそう
)
をした、色の黒い、小欲で眼の光っている、
痩
(
や
)
せた長顔の、綿入れを三枚重ねて着て、もてるだけの荷物の包を両手にさげて
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お霜の方はあまり愚痴を言いませんでしたが、だんだん
痩
(
や
)
せて憂鬱になって行くのは、心の悩みが一段と深いせいでしょう。
銭形平次捕物控:043 和蘭カルタ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ある時、何かの事で葡萄の木の下を掘つてゐた欣之介は、土の中から出て来た水気のない
痩
(
や
)
せた
鬚根
(
ひげね
)
を
摘
(
つま
)
み上げて、
劇
(
はげ
)
しい痛ましさを覚えた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
俺あ
直
(
ぢ
)
き見分けらあ。機関兵は
痩
(
や
)
せて色が
蒼白
(
あをじろ
)
いや。水兵はまる/\と
肥
(
ふと
)
つて色が黒いや。
何故
(
なぜ
)
つてよ、機関兵は石炭のこなほこりや、油煙を
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
彼等の随喜する
薪
(
まき
)
を焚く炉が切ってあるけれど、そのほかの場所では、大がい
痩
(
や
)
せこけたステイム・パイプが部屋の片隅に威張ってるだけだ。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
痩
常用漢字
中学
部首:⽧
12画
“痩”を含む語句
痩肉
痩形
痩身
痩世帯
痩骨
痩躯
痩馬
夏痩
面痩
痩脛
痩立
着痩
痩法師
痩削
痩地
痩狗
痩型
痩畑
痩顔
痩土
...