獨立どくりつ)” の例文
新字:独立
かうして襷掛たすきがけはたらいてゐるところると、うしても一獨立どくりつしたあん主人しゆじんらしくはなかつた。納所なつしよとも小坊主こばうずともへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乍去さりながら日本人にほんじん從來じゆうらい習慣しふくわんでありませうが、斯樣かやうことめて無頓着むとんちやくおほい。責任せきにんおもんずるのねんとぼしい。獨立どくりつしてものをさめてくといふことすこしもい。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
まち獨立どくりつ立派りつぱ病院びやうゐん維持ゐぢされやうはいとか、かくわるいながらも病院びやうゐんるのはいよりもましであるとかと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
けれども、わざ/\つくりかへようといふかんがへをつたときには、たいてい失敗しつぱいして、もとうたから獨立どくりつしたねうちのない、文學的ぶんがくてきにはだめなものがおほいのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ときにはまた、あのおそるべき打撃だげきのために、かへつ獨立どくりつ意志いし鞏固きようこになつたといふことのために、彼女かのぢよくゐふたゝ假面かめんをかぶつてみづかやすんじようとこゝろみることもあつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
またアメリカにはおほきな博物館はくぶつかん附屬ふぞくし、また獨立どくりつ兒童博物館じどうはくぶつかんといふのがたくさんあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
英米えいべいせうすれば、靡然ひぜんとして英米えいべいはしり、獨國どくこく勢力せいりよくれば翕然きうぜんとして獨國どくこくき、佛國ふつこく優位いうゐむれば、倉皇さうこうとしてふつしたがふならば、わが獨立どくりつ體面たいめん何處いづこにありや。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
くみしが可々よし/\某しは元來天地のあひだ差構さしかまへのなき身分主人もつではなし母親は兄半作が世話せわをするし全く獨立どくりつの天下浪人又義を見てせざるはゆうなしと云る事あり某し今より駈着かけつけ其者どもを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しなはゝ百姓ひやくしやうとしては格別かくべつはたらきをたなかつたから、寡婦ごけとして獨立どくりつしてくには非常ひじやう困難こんなんでなければらぬだけ身體からだ何處どこにかやはらかな容子ようすがあつて、清潔好きれいずき卯平うへいこゝろいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此の意味で周三は、一家内から相應さうおう手厚てあつ保護ほごを受けることになツた。繪を研究する爲には、てい内に、立派な獨立どくりつの畫室もてゝ貰ツた。そして他から見ると、言分いひぶんの無い幸な若様わかさまになツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
〔譯〕獨立どくりつ自信じしんたふとぶ。ねつえんくのねん、起す可らず。
野蠻未開やばんみかいの社會に於ては分業盛に行はれず、大工、土方の如き固り獨立どくりつして存す可き職業しよくぎやうにあらず。此故に住居新築じうきよしんちくの擧有れば隣人りんじんあひたすけて土木の事にしたかふを常とす。コロボックルも亦然りしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
日本につぽん朝鮮ちようせん支那しなとは獨立どくりつ發達はつたつをしてをつた民族みんぞくんでゐたものとなければなりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
インドにおいては、地理ちり歴史れきし關係くわんけいから、北部ほくぶ南部なんぶとでは根本こんぽんから言語げんごがちがふので、インドじん同士どうし英語えいごもつ會話くわいわこゝろみてゐるのをてインドが到底たうてい獨立どくりつざるゆゑんをさとつた。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
自分じぶん自分じぶん仕事しごとをしてたくてならない矢先やさきへ、おなくわ出身しゆつしんで、小規模せうきぼながら專有せんいう工場こうば月島邊つきじまへんてゝ、獨立どくりつ經營けいえいをやつてゐる先輩せんぱい出逢であつたのがえんとなつて、その先輩せんぱい相談さうだんうへ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
じつのところ人麿ひとまろるまでは、短歌たんかは、まだうみのものともやまのものともきまらないありさまでありました。このひと短歌たんかといふかたちを、はじめて獨立どくりつさしたものとて、まづさしつかへはないとかんがへます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)