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燈
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ひ
ふりがな文庫
“
燈
(
ひ
)” の例文
新字:
灯
そして、どこをあてどもなしに走って、やっと気が
注
(
つ
)
いたところで、そこに板屋根の小窓から威勢のいい
燈
(
ひ
)
の見えている家があった。
馬の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は深い心に泣き乍ら幻想の
燈
(
ひ
)
かげに弱つた
身体
(
からだ
)
を労つてゆく、
潤
(
しめ
)
つた霧がそこにもここにも重い層をなして私の身辺を圧へつける。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ところが、お台所口から射し出している
燈
(
ひ
)
の光で、その男の地に倒れている姿が、女中衆や下男衆に見えたとみえて、飛び出して来て
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
燈
(
ひ
)
の消えたその洗面所の
囲
(
まわり
)
が暗いから、肩も腰も見えなかったのであろう、と、
疑
(
うたがい
)
の幽霊を消しながら、やっぱり
悚然
(
ぞっ
)
として
立淀
(
たちよど
)
んだ。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼方
(
あなた
)
の
燈
(
ひ
)
の洩れる
蔀
(
しとみ
)
から、天界の音楽は聞えるのだった。そこは、
子等之館
(
こらのたち
)
といって、大神宮に仕える可憐な清女たちが住む家だった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
それから
老女
(
おば
)
さん、
燈
(
ひ
)
が
点
(
つ
)
いて後、
此家
(
こちら
)
へ連れて来て戴いたのですがネ、あの土橋を渡つて烏森の方を振り返つて見た時には
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
忽
(
たちま
)
ち下手の方賑はしき唄の声(楽屋にて
囃
(
はやし
)
)。若きうかれ男、舞妓白萩。つづきて屋号を染めたる提灯を持つ男。
燈
(
ひ
)
はいまだ
点
(
とぼ
)
されず。登場。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
客はなんにも所在がないから江戸のあの
燈
(
ひ
)
は
何処
(
どこ
)
の燈だろうなどと、江戸が近くなるにつけて江戸の方を見、それからずいと東の方を見ますと
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかし、
襖
(
ふすま
)
のまえに、畳にへばり付いている人影は、身うごきもしないのだ。顔を隠すように
俯伏
(
うつぶ
)
せた
額部
(
ひたい
)
に、燭台の
燈
(
ひ
)
が蒼白く
反映
(
はんえい
)
している。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
万坊ヶ原の一本松は、暁の
暗
(
やみ
)
に隠れた、那須野ヶ原あたりの開墾地にありそうな、
板葺小舎
(
いたぶきごや
)
から、かんがりと
燈
(
ひ
)
がさす。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
はるか向うの薄暗く木立の群がつたあたりにちらちらと見えがくれする病舎や病棟の
燈
(
ひ
)
もぼんやりと光芒がただれて
青春の天刑病者達
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
闇に
四隣寂寥
(
しりんせきりょう
)
として
手燭
(
てしょく
)
の弱い
燈
(
ひ
)
に照らされた木立の影が長く地に
印
(
いん
)
せられて時々桐の葉の落ちる音がサラサラとするばかり、別に何物も見えない。
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
僕がスイッチをひねった為に
燈
(
ひ
)
がついたと思ったのは間違で、あの時、慌てて電燈を動かしたので、一度切れたタングステンが、つながったのですよ。
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
頭が割れるように痛むので寝たのだと聞いて磯は別に怒りもせず驚きもせず自分で
燈
(
ひ
)
を
点
(
つ
)
け、
薬罐
(
やかん
)
が
微温湯
(
ぬるまゆ
)
だから火鉢に炭を足し、水も汲みに行った。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
瞼
(
まぶた
)
が、
磁気
(
じき
)
を帯びたように、両方から近づく。彼は、消えそうで消えないガスの
燈
(
ひ
)
をじっと見つめていようと思う。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
かれが泣きながら訴えるのを聞くと、ゆうべも前夜とおなじ
燈
(
ひ
)
ともし頃に、お菊はわが家へおなじ形を現わした。
半七捕物帳:02 石灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鬱陶しいほど両側から梢の蔽い重なった
暗闇阪
(
くらやみざか
)
を降り尽して、左に曲れば
曙湯
(
あけぼのゆ
)
である。雨の日には浴客も少なく静かでよい。はいっているうちにもう
燈
(
ひ
)
がつく。
やもり物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
庭の
風情
(
ふぜい
)
は
添
(
そは
)
りけれど、
軒端
(
のきば
)
なる
芭蕉葉
(
ばしようば
)
の
露夥
(
つゆおびただし
)
く夜気の侵すに
堪
(
た
)
へで、やをら内に入りたる貫一は、障子を
閉
(
た
)
てて
燈
(
ひ
)
を
明
(
あか
)
うし、
故
(
ことさら
)
に床の間の置時計を見遣りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
通りの家々はもう何処も戸を閉めて何処からも家の中の
燈
(
ひ
)
は洩れて来なかつた。街燈だけがボンヤリと、降りしきる雪の中に夜更けらしい静かな光りを投げてゐた。
乞食の名誉
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
秀才は自分で
長山
(
ちょうざん
)
の張という者であるといった。秀才はその時詩を作って贈別してくれた。その詩の中に、「花有り酒有り春
常
(
つね
)
に在り。月無し
燈
(
ひ
)
無し夜
自
(
おのずか
)
ら明らか」
考城隍
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
どこの山小舎にも、ちらちらと、ランプの
燈
(
ひ
)
が明滅してゐた。雨は何時の間にか、雪になつてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
街道へその家の
燈
(
ひ
)
が光を投げている。そのなかへ突然姿をあらわした人影があった。おそらくそれは私と同じように提灯を持たないで歩いていた村人だったのであろう。
蒼穹
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
全生徒は二人づゝ列を作つて、その順序のまゝ階段を下り、寒いぼんやりした
燈
(
ひ
)
の
點
(
とも
)
つた教室へ這入つた。此處で、ミラア先生がお祈りを
誦
(
よ
)
んで、それから彼女は叫んだ——
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
烏賊釣舟の
燈
(
ひ
)
が、ちやうど電気玉をならべたやうにみえ、そして、茂作の屋根の上のあたりの空には、きれいな金色の尾をひいた
箒星
(
はうきぼし
)
がひとつ、きらきらと光つてをりました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「
違
(
ちげ
)
えねえ、奴らはここに
燈
(
ひ
)
を残してゆきやがった。」と窓のところにいる奴が言った。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
おお眼の前を走る多數の襤褸の市の民、
貧者
(
ひんじや
)
の
酒場
(
さかば
)
、
燈
(
ひ
)
の町、
灯
(
ほ
)
の影暗祕密の路次
展望
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
南から北へ——町が盡きて、家が盡きて、
燈
(
ひ
)
が盡きる北の果迄通らねばならぬ。
京に着ける夕
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
食卓の上に
燈
(
ひ
)
を置いて 母親のヱプロン着の姿が しばらく窓際に見られた
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
此藥
(
このくすり
)
をのませ給はば、疑なかるべき
也
(
なり
)
。
闇
(
やみ
)
なれども、
燈
(
ひ
)
入
(
い
)
りぬれば
明
(
あきら
)
かなり。
濁水
(
だくすゐ
)
にも
月
(
つき
)
入
(
い
)
りぬればすめり。
明
(
あきら
)
かなる
事
(
こと
)
日月
(
じつげつ
)
にすぎんや。
淨
(
きよ
)
き
事
(
こと
)
蓮華
(
れんげ
)
にまさるべきや。法華經は
日月
(
じつげつ
)
と
蓮華
(
れんげ
)
なり。
尼たちへの消息:――よく生きよとの――
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
父母と別れてから四五日は、
燈
(
ひ
)
ともし頃になると悲しそうで、独り庭へ出ていっては、涙の溜った眼でじっと遠い
山脈
(
やまなみ
)
を見ていたりした。寝床のなかで微かに
噎
(
むせ
)
び泣いている声も二三ど聞いた。
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
俊亮は土間で自転車に
燈
(
ひ
)
を入れながら、お祖母さんに向かって言った。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
ただ、
美
(
うつく
)
しい
燈
(
ひ
)
が、あちらこちらに、もやの
中
(
なか
)
からかすんでいました。
飴チョコの天使
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
海面
(
うなも
)
から
立騰
(
たちのぼ
)
る水蒸気が、
乳色
(
ちちいろ
)
の
靄
(
もや
)
となって、色とりどりに
燈
(
ひ
)
のつけられた海浜のサンマー・ハウスをうるませ、南国のような情熱——、若々しい情熱が、爽快な海風に乗って、鷺太郎の胸をさえ
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
彼らは
燈
(
ひ
)
の消えた道路の上から死体を露路の中へ引き摺り込んだ。板のように張りきった死体の頭は、引き摺られるたびごとに、筆のように頭髪に含んだ血でアスファルトに黒いラインを引き始めた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
くらき炭素の
燈
(
ひ
)
に照りて、
飢饉
(
けかつ
)
供養の
巨石
(
おほいし
)
並
(
な
)
めり。
文語詩稿 一百篇
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
時
(
とき
)
どき
営庭
(
えいてい
)
の
燈
(
ひ
)
に
反射
(
はんしゃ
)
する
銃剣
(
じうけん
)
を
見詰
(
みつ
)
めながら
一九三二・二・二六:―白テロに斃た××聯隊の革命的兵士に―
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
カンテラがひっくりかえって
燈
(
ひ
)
が消えた。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
峽の奧 杉の林に 發電所の
燈
(
ひ
)
がともる
山果集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
うぐひすや有明の
燈
(
ひ
)
のありやなし
舎羅
(
しゃら
)
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
薄闇を縫ふて、紅い々々
燈
(
ひ
)
の華が
古街
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
千萬の
瓦斯
(
ガス
)
の
燈
(
ひ
)
は
金光
(
きんくわう
)
の林の如く
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
湯帰
(
ゆがへ
)
りや
燈
(
ひ
)
ともしころの雪もよひ
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
秋の
燈
(
ひ
)
やゆかしき奈良の道具市
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
憲兵三
燈
(
ひ
)
を
点
(
つ
)
けろ、燈を!
安重根:――十四の場面――
(新字新仮名)
/
谷譲次
、
林不忘
(著)
滝口に
燈
(
ひ
)
を呼ぶ声や春の雨
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
停電へ蝋燭の
燈
(
ひ
)
の有難さ
鶴彬全川柳
(新字旧仮名)
/
鶴彬
(著)
右側の
雑木
(
ぞうき
)
の一団が月の陰をこしらえている処に、細ぼそとしたカンテラの
燈
(
ひ
)
が
点
(
つ
)
いて、女が一人
裁縫
(
さいほう
)
しながら外の方を見ていた。
草藪の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一樹が立留まって、繁った
樫
(
かし
)
の陰に、表町の淡い
燈
(
ひ
)
にすかしながら、その「——干鯛かいらいし——……蛸とくあのくたら——」
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
家の内にも明りが
映
(
さ
)
しているが武蔵の眼に見えたのは、その家の軒先に、誰か、
紙燭
(
ししょく
)
を持って立ってでもいるらしい
燈
(
ひ
)
であった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その足音に気が付いて、振り返った十兵衛の左側を影のように素早く走り抜けたが、小手をハラリと振ったのは提燈の
燈
(
ひ
)
を消すためである。
村井長庵記名の傘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
燈
部首:⽕
16画
“燈”を含む語句
燈火
提燈
燈明
軒燈
燈籠
油燈
行燈
電燈
燈光
幻燈
角燈
洋燈
街燈
走馬燈
燈台
高燈籠
点燈
御燈
燈影
燈心
...