“火桶:ひおけ” の例文
“火桶:ひおけ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花7
山本周五郎6
夏目漱石4
吉川英治4
永井荷風2
“火桶:ひおけ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.8%
文学 > 日本文学 > 詩歌0.2%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
火桶ひおけを右にして暖かげに又安泰に坐り込んでいるのは、五十余りの清らなあから顔の、福々しいふとじしの男
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こうなると炉や火桶ひおけをスビツと謂った古語に近くなってくるが、単なる一端の事例だけをもって対比することはできない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
惣左衛門はにおちない顔をした。甲斐は密書を読み、それをすぐ、火桶ひおけの火にくべながら、ふと太息といきをついた。
道也先生は火桶ひおけのなかの炭団たどん火箸ひばしの先でつっつきながら「御前から見れば馬鹿馬鹿しいのさ」と云った。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
手が凍えてきたので、筆をき、火桶ひおけで手指を暖めていると、声をかけて、同僚の岡田朔太郎さくたろうがはいって来た。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼はその手紙に行燈の火を移し、立っていって、火桶ひおけの中ですっかり灰にしながら、使いの部屋子を待たせてある座敷へいった。
甲斐はその手紙をすぐ火桶ひおけにくべながら、湯島へ寄るのがどうして危険なのかと、不審に思いながら、喜兵衛を見た。
周防すおうの来たのは十時すぎであった。おくみの狭い寝間に屏風びょうぶをまわし、灯をくらくして、火桶ひおけを中に二人は坐った。
おみやは黒田玄四郎を見ると、微笑しながら、ぽっと頬を赤らめ、火桶ひおけをずらせて、彼のために席を設けた。
ランプの光はくまなく室のすみずみまでも照らして、火桶ひおけの炭火は緑の絨氈じゅうたんの上に紫がかりしくれないほのおを吐きぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「寒中の獄へ、火桶ひおけをまいらせたり、三名の典侍を、おそばにおく計らいをしたなども、みな彼だとか」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おみやが立ってゆくと、濡縁に火桶ひおけが置いてあり、娘の姿はもう見えなかったが、おみやが火桶を持って戻ると、すぐにまた茶の道具をはこんで来た。
兄の半兵衛に命じられて、深夜ながら取り急いで、おゆうは小書院に明りをともしたり、火桶ひおけへ火を入れたり、客のしとねをそろえたりし始めた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清少納言は、すさまじきものの中に「火おこさぬ火桶ひおけ」を数えているが、夕暮になって火の入らぬ行燈は、それよりも一層、すさまじいものかも知れません。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ある時は、朝早くから訪れて午過ひるすぎまで目ざめぬ人を、雪の降る日の玄関わきの小座敷につくねんと、火桶ひおけもなくまちあかしていたこともあった。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「今日よりはお獄舎ひとやへ、夜の灯も、火桶ひおけ(火鉢)も差し上げますゆえ、昼や御寝ぎょしの座までも、充分おしのぎよいように、お用いください」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜具は申すまでもなく、絹布けんぷの上、枕頭まくらもと火桶ひおけ湯沸ゆわかしを掛けて、茶盆をそれへ、煙草盆に火を生ける、手当が行届くのでありまする。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冬の寒夜に火桶ひおけを抱えて、人生の寂寥せきりょうと貧困とを悲しんでいた蕪村。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
若松屋惣七は、火桶ひおけを抱きこんで、ふうむと口を曲げた。考えこんでいるのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人なき一室に二人は坐った。火桶ひおけもないが、障子越しの春の日が程よく暖かい。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに燭台をかたわらにして、火桶ひおけに手を懸け、怪訝けげんな顔して、
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火桶ひおけおもてそむけると、机に降込ふりこんだ霞があった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冬となりてここにまた何よりも嬉しき心地せらるるは桐の火桶ひおけ置炬燵おきごたつ枕屏風まくらびょうぶなぞ春より冬にかけて久しく見ざりし家具に再び遇ふ事なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
甲斐は「薬湯やくとうを」と宇乃に云い、火桶ひおけへ手をかざした。
火桶ひおけを中に浩さんと話をするときには浩さんは大きな男である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて手を取つて、其のまゝなやし/\、お表出入口の方へ、廊下の正面を右に取つて、一曲ひとまがり曲つて出ると、杉戸すぎといて居て、たたみの真中に火桶ひおけがある。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふじこはすぐに二人の席を設け、かれらに火桶ひおけを持って来た。
夕冷えのする京都は、もう火桶ひおけが欲しいほどの寒さである。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と主人は巻煙草まきたばこの灰を火桶ひおけの中へはたき落す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことばはしばし絶えぬ。両人ふたりはうっとりとしてただ相笑あいえめるのみ。梅の細々さいさいとして両人ふたり火桶ひおけを擁して相対あいむかえるあたりをめぐる。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
夫人この時は、後毛おくれげのはらはらとかかった、江戸紫の襟に映る、雪のようなうなじ此方こなたに、背向うしろむき火桶ひおけ凭掛よりかかっていたが、かろく振向き、
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
佐伯さえきの叔母の尋ねて来たのは、土曜の午後の二時過であった。その日は例になく朝から雲が出て、突然と風が北に変ったように寒かった。叔母は竹で編んだ丸い火桶ひおけの上へ手をかざして、
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なりて」の語をやめて代りに「火桶ひおけ」の形容詞など置くべく、結句は「火桶すわりをる」のごとき句法を用うるか、または「○○すわりをる」「すわり○○をる」のごとく結びて「哉」を除くべし。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
木枯こがらしさけぶすがら手摺てずれし火桶ひおけかこみて影もおぼろなる燈火とうかもとに煮る茶のあじわい紅楼こうろう緑酒りょくしゅにのみ酔ふものの知らざる所なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
——その耳をじっと澄ますようにして、目をうっとりと空をながめて、火桶ひおけにちょこんと小さくいて、「雀はどうしたろうの。」引越しをするごとに、祖母のそうつぶやいたことを覚えている。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今もまた、仲時召さるというので、何事かと参ってみると、侍側の者から、ご幽所ゆうしょに火のも無うては、夜の御寝ぎょしもおこごえでいらせられる、火桶ひおけをそなえよ、という申しつけだ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その部屋には火桶ひおけがなかった。
我ながら相応そぐはない事を云つて、火桶ひおけ此方こなたへ坐つた時、違棚ちがいだなの背皮の文字が、稲妻いなずまの如く沢のひとみた、ほかには何もない、机の上なるも其の中の一冊である。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白紙はくしうえに、ぽつんと一てん桃色ももいろらしたように、芝居しばい衣装いしょうをそのままけて、すっきりたたずんだ中村松江なかむらしょうこうほほは、火桶ひおけのほてりに上気じょうきしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
夜はもう火桶ひおけが欲しいほどじゃが、昼はさすがに暖かい。孝行なそなたが夜ごとの清水詣で、止めても止まるまいと思うて、心のままにさせて置くが、これからの夜はだんだん寒くなる。露も深くなる。風邪ひかぬように気をつけてくれよ。夏から秋、秋から冬の変わり目はとかく病人の身体にようないものじゃ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私もまだ若い身空でしたが、何んだかこうすっかりその琵琶の音が心にって、ほんとうに夜の明けるのも惜しまれた位でした。——それからというもの、私はそんな冬の夜の、雪なんぞの降っている晩には極まってその夜の事を思い出し、火桶ひおけなどかかえながらでも、かならず端近くに出ては雪をながめて居ったものでした。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
勿論もちろん俳味をもっぱらとする処から大きな屏風びょうぶや大名道具にはふだを入れなかったが金燈籠きんどうろう膳椀ぜんわん火桶ひおけ手洗鉢ちょうずばち敷瓦しきがわら更紗さらさ広東縞かんとんじま古片こぎれなぞすべて妾宅の器具装飾になりそうなものは価を問わずどしどし引取った。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)