なだ)” の例文
ことに瀬戸内海のように外洋そとうみとの通路がいくつもあり、内海の中にもまた瀬戸が沢山あって、いくつものなだに分れているところでは
瀬戸内海の潮と潮流 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「小三郎さんの自慢の脇差ですよ。何んとか言ふ船頭が、遠州なだで海坊主を斬つた脇差ですつて、多分小三郎さんの父さんのでせう」
なお余力よりょくあるに於ては、長駆カシマなだよりトーキョー湾に進撃し、首都トーキョー及びヨコハマの重要地点を攻撃すべし。ブラック提督
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「満州なんかだめだよ、酒は高粱きびの酒で、うものは、ぶたか犬かしかないと云うじゃねえか、だめだよ、魚軒さしみなだ生一本きいっぽんでなくちゃ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
どうだ、正月じゃないか、なにを好んで田舎いなかの寺になどくすぶっていられるか。なだの銘酒、京の女、加茂の川千禽ちどり、都は恋しくないか。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この酒をためしてくれ」と又左衛門が云った、「なだの蔵元からじかに送らせているんだが、酢のきいた物や焼き魚にはよく合うと思う」
燕(つばくろ) (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
前年さきのとし江戸にありし時右の事をさき山東翁さんとうをうにかたりしに、をういはく世路せいろなだ総滝そたきよりも危からん、世はあしもとを見てわたるべきにやとてわらへり。
ぞ出帆したり追々おひ/\かぜも少し吹出ふきいだ眞帆まほを七分に上てはしらせハヤ四國のなだを廻りおよそ船路ふなぢにて四五十里もはしりしと思ふ頃吉兵衞はふねみよしへ出て四方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
現在でも酒屋の酒造り、なだ蔵人くらびととも百日男ひゃくにちおとこともいう者を、トウジと呼ぶのは普通で、「杜氏とじ」の字を宛てた理由というのが出たら目である。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一挺の櫓と一枚か二枚ので、自由自在に三十六なだを突破しながら、「絶海遥かにめぐる赤間関」と来る。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
若布わかめのその幅六丈、長さ十五ひろのもの、百枚一巻ひとまき九千連。鮟鱇あんこう五十袋。虎河豚とらふぐ一頭。大のたこ一番ひとつがい。さて、別にまた、月のなだの桃色の枝珊瑚一株、丈八尺。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すこぶるよろしい! では、あすの朝にでも河岸かしへ行って、江戸一番の大鯛おおたいをととのえてな、それからなだの生一本を二、三十たるほどあつらえておきなよ。
ずっと後になって私は、ある新聞記事に「××首相はきょうは夕食になだ生一本きいっぽんでまぐろのさしみを食べた。」
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
……酒はなだ都菊みやこぎく産地もと仕入れでございますから量はたっぷりいたします。なにとぞ嚮後きょうこうごひいきに、へい
といって、七歳のおそのやんが一本のなだの銘酒を五合ばかり飲んで、親たちや養母を驚ろかせたりした。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
なだの酒造家より、お取引先に限り、酒荷船に大阪まで無料にてお乗せいたします。定員五十名。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そのころ本芝四丁目鹿島明神かしまみょうじんの近くになだの出店で和泉屋いずみやという大きな清酒問屋があった。召使の二、三十人も置いてたいそう裕福な家だが、土間の一隅で小売りもしている。
この酒はどんなたちで、どう口当りがして、売ればいくらくらいの相場で、舌触りがぴりりとして、あと淡泊さっぱりして、頭へぴんと答えて、なだか、伊丹いたみか、地酒じざけ濁酒どぶろくかが分るため
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
八つまではなだへうちこむ五斗兵衛ごとべえ末胤まついん酔えば三郎づれが鉄砲の音ぐらいにはびくりともせぬ強者つわものそのお相伴の御免こうぶりたいは万々なれどどうぞ御近日とありふれたる送り詞を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
またある時は二つの船は互いに遠く乗り放し矢合わせをして戦った。闇の夜にはかがりき、星明りには呼子よびこを吹き、月の晩には白浪しらなみを揚げ、天竜の流れ遠州えんしゅうなだを血にまみれながらただよった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ひびきなだも無事に過ぎた。海上生活二、三日ののちである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
高々たかだかと山のうへより目守まもるとき天草あまくさなだ雲とぢにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
わだつみのなだは荒れて、風を痛み、甚振いたぶる波を
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
現住所 神戸市なだ区青谷四丁目五五九番地
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「五フラン! 光ってるわ、王様だわ、このでこの中にね。しめだわ。あなたは親切なねんこだわ。あたしあなたにぞっこんでよ。いいこと、どんたくだわ。二日の間は、なだと肉とシチュー、たっぷりやって、それに気楽なごろだわ。」
なだ遠くらいするけはひ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
七十五里のなだの上
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「小三郎さんの自慢の脇差ですよ。何とかいう船頭が、遠州なだで海坊主を斬った脇差ですって、たぶん小三郎さんの父さんのでしょう」
「どうぞお重ねくだされ」使節が盃を置いたのを見て彼はすすめる、「なだより取り寄せた銘酒でござる、どうぞ御遠慮なくお過ごしくだされ」
「ウフ、名探偵帆村荘六さえ、そう思っていてくれると知ったら、蠅男は後からなだ一本かなんかを贈ってくるだろうよ」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして内地に帰って来て一箇月ばかりの間に飲み馴染なじんでいたなだの酒に、いよいよ別れて往かなくてはならぬと云う軽いのこり惜しさを感じて来た。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「あの、あすこになだたるがみえるようだが、ちょっと一本つけてちょうだいな……いいえ、さかなはべつにいらないよ、あるなら枝豆か新生姜しんしょうがでも……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みちすがら、遠州なだは、荒海あらうみも、颶風はやても、大雨おおあめも、真の暗夜やみよ大暴風雨おおあらし。洗いもぬぐいもしませずに、血ぬられた御矢はきよまってござる。そのままにお指料さしりょう
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠州なだの荒海——それはどうやらこうやら乗切ったが、掛川かけがわ近くになると疲労しつくした川上はふなばた脇腹わきばらをうって、海の中へころげおちてしまった。船はくつがえってしまった。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「長ながひでりつづきのところへ、なだからついた新酒というんじゃ、聞いただけでも待ちきれねえ」
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
わだつみのなだは荒れて、風を痛み、甚振いたぶる波を
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「わたしそう思います。———しかし神戸も水出ました。なだも、六甲も、大石川も、皆水、水、水。………わたしの旦那さん、ペータア、ローゼマリー、皆どうしましたか、………何処にいますか、………わたし、大変々々心配。………」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
荒きなだ高くくだけて
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「此處で用意したなだ一本を開けよう、——善公なんかに呑ませちや勿體ないくらゐの酒だが、お仕着せに一本づつだぜ」
思い出せば、その酒と鮪の最中、いや、なだの生一本を樽からでなくっちゃ飲めない、といったひと時代もあったが、事、志と違って、当分かくの通り逼迫ひっぱくだ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なだの酒だの都の女だの、又八の知った都会生活のあらゆるものが彼に未練をささやいてやまなかった。まして彼にはまだそれ以上の執着がこの都会にある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よかろう。おい、オルガ姫、なだ一本を、倉庫から出してこい」
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ようよう、眼もと千両ときたな、本気も疝気せんきも脚気もねえ、十八万六千石の若殿さまだ、いいからぐっといきねえ、明日の朝あたまが痛えなんという酒じゃねえなだの生一本、おまけに勘定つけの心配がねえとくるから安心だ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なだ大波おほなみはてしなく
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
なだ酒廻船さけかいせんか」
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「いや、申譯ないことだが、私は酒だけはやかましくてなだ一本を、徳利に目印めじるしをつけて、私の分にして置きました」
「なにもありませぬが、ここになだの銘酒と、牡丹の薪だけは、夜が尽きても尽きないほどございますから」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なだ銘酒めいしゆ白鶴はくつるを、白鶴はくかくみ、いろざかりをいろもりむ。娘盛むすめざかり娘盛むすめもりだと、おじやうさんのおしやくにきこえる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
倉賀屋は特に取寄せたといふなだ一本、それを三本の徳利に入れて、お燗番の杉之助が念入りに燗をつけました。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
陸近くがぢかなれば憂慮きづかいもなく、ただ景色のさに、ああまで恐ろしかったばばの家、巨刹おおでらやぶがそこと思うなだを、いつ漕ぎ抜けたか忘れていたのに、何を考え出して、また今のいなな年寄。……
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)