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瀕
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ひん
ふりがな文庫
“
瀕
(
ひん
)” の例文
それもそのはず、これは父信玄を傷つけられ、自分の隊もひとたびは
潰滅
(
かいめつ
)
に
瀕
(
ひん
)
した太郎義信が新手を得て再編制して来た一隊である。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家が破産に
瀕
(
ひん
)
して昔なら
身売奉公
(
みうりぼうこう
)
でもしなければならぬ場合に、備えるような教育ばかりを与えたがり、また受けたがることである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ここに病人があって死に
瀕
(
ひん
)
して苦しんでいる。それを救う手段は全くない。そばからその苦しむのを見ている人はどう思うであろうか。
高瀬舟縁起
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
病気だということは前に天願氏に聞いていたけれど、天願氏の言葉を聞いたとたん、死に
瀕
(
ひん
)
した娘の寝顔が私の眼底に浮んで来た。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そして嫁の寝ている胸の真上と
覚
(
おぼ
)
しき
処
(
ところ
)
まで、その足音が来たかと思う時、その死に
瀕
(
ひん
)
した病人が
跳
(
はね
)
ッ
返
(
か
)
えるように
苦悶
(
くもん
)
し始めた。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
▼ もっと見る
鋭い頭脳は死に
瀕
(
ひん
)
した彼に「
病牀録
(
びやうしやうろく
)
」を作らせてゐる。が、かう云ふ彼は一面には「沙漠の雨」(?)と云ふ散文詩を作つてゐた。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だが、実をいうと、君の様な名探偵を
煩
(
わずら
)
わすまでもなく、僕はもう破滅に
瀕
(
ひん
)
していたのですよ。遅いか早いかの違いがあるばかりです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ついに群衆は陣屋へ殺到して、勘定方役向を取囲んで口々に歎願を叫んでいる。幕府勘定方役人の
生命
(
いのち
)
も刻々危急に
瀕
(
ひん
)
している——
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
袁世凱はすでに帝号を称して即位、支那革命は
瓦解
(
がかい
)
に
瀕
(
ひん
)
していた。しかも東北革命軍の頼みの綱の武器は門司でおさえられたままである。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
さて着眼点を
更
(
か
)
えて私は思います。寺内内閣は、どうして民衆の生命に関する問題をこうまで危険に
瀕
(
ひん
)
せしめたのでしょうか。
食糧騒動について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
(死に
瀕
(
ひん
)
している人間を前にして、道が何だ。音楽が何だ。そんなものは、行詰った揚句の自己欺瞞でしかないではないか。)
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
もはや身を守り得ないほど死に
瀕
(
ひん
)
してはいるがまだ苦痛を感ずるくらいの命はある病める
牡牛
(
おうし
)
を、初めて引き裂きかけた
豪狗
(
ごうく
)
の喜びである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ゆえに筆者はにんじゅつの真なる発祥と、その流祖の
煙滅
(
えんめつ
)
に
瀕
(
ひん
)
せる事跡を記し、もって世道人心に
裨益
(
ひえき
)
するところあらんと決心したのである。
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
死に
瀕
(
ひん
)
したおぼえのある人は誰も語ることだが、
将
(
まさ
)
に死せんとする時は幼き折の
瑣事
(
さじ
)
が鮮やかに心頭に
蘇
(
よみが
)
えるものだという。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
風習である以上政右衛門が敵を討とうとするのは当然である。しかし今ここに妻子が死に
瀕
(
ひん
)
するという重大事件が起こった。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
美貌花をあざむく繭子夫人の
失踪
(
しっそう
)
後、ここに第三日を迎えた。しかし依然としてその手懸りはない。夫人の生命は今や絶対に
危殆
(
きたい
)
に
瀕
(
ひん
)
している。
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
シカゴ、ワシントンストリートの、ライリリック座の座主の令嬢こそ、この哀れな、餓死に
瀕
(
ひん
)
した一行の救い主であった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大苦難、大絶望、あたかも死に
瀕
(
ひん
)
する如きを心に
味
(
あじわ
)
う時、そこに咲く花は来世の希望である。わが愛する者の死に会してこれを独り彼世に送る。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
およそ船長たるものは、その船をかかる境遇に
瀕
(
ひん
)
せしめたる場合にあっては、みずから大いなる責任を負うべきである。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
彼は、その破滅に
瀕
(
ひん
)
した自分の家で、疲れ衰え弱った、妻や、子供らと一緒に飢え凍えている状態を想像して、震えながら、船長の所へと行った。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
その上
肋膜
(
ろくまく
)
を病んで以来しばしば
病臥
(
びようが
)
を余儀なくされ、後年郷里の家君を
亡
(
うしな
)
ひ、つづいて実家の破産に
瀕
(
ひん
)
するにあひ、心痛苦慮は一通りでなかつた。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
部将はこの度胸を賞でゝ、それから
眷顧
(
けんこ
)
を深くしたという。太兵衛はこの調子で衰運に
瀕
(
ひん
)
していた池上の家を立直したのみか、今日の基礎を作った。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
梶の耳に這入って来た確かな
検
(
しら
)
べによると、ほとんど商人の九割までが破産状態に
瀕
(
ひん
)
しているということであった。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
この恐るべき危機に
瀕
(
ひん
)
して、貫一は
謂知
(
いひし
)
らず自ら
異
(
あやし
)
くも、
敢
(
あへ
)
て
拯
(
すくひ
)
の手を
藉
(
か
)
さんと為るにもあらで、しかも見るには堪へずして、
空
(
むなし
)
く
悶
(
もだ
)
えに悶えゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
すべての文学よりも以上に、今、「少年、少女文学」は危機に
瀕
(
ひん
)
していることを考えなければならない。これらは将来の文学の一つの重大な使命である。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
二人の患者が死に
瀕
(
ひん
)
している。一人は腹部をやられた者。顔をゆがめつつ、しかし沈黙せる・
傷々
(
いたいた
)
しき人事不省。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
物質と愛に恵まれた夫婦の生活が、その時すでに破産の危機に
瀕
(
ひん
)
していようなどとは夢にも思いつかなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
祖国が危険に
瀕
(
ひん
)
しているのだ。わが祖国ヨーロッパが——なかんずく君たちの小なる祖国フランスが、危険に瀕している。君たちの無情無感がそれを殺すのだ。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれど、
私
(
わたくし
)
は
常
(
つね
)
に
確信
(
かくしん
)
して
居
(
ゐ
)
ます、
天
(
てん
)
には
一種
(
いつしゆ
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
なる
力
(
ちから
)
があつて、
身
(
み
)
も
心
(
こゝろ
)
も
美
(
うつ
)
くしき
人
(
ひと
)
は、
屡々
(
しば/″\
)
九死
(
きゆうし
)
の
塲合
(
ばあひ
)
に
瀕
(
ひん
)
しても、
意外
(
いぐわい
)
の
救助
(
すくひ
)
を
得
(
う
)
る
事
(
こと
)
のあるものです。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
年齢も四十となり貧窮も
甚
(
はなはだ
)
しくなるにつれて、彼の作品は益々「ポーズ的に」高雅なものとなりつつあり、やがてポーズのためにガンジがらめの
危殆
(
きたい
)
に
瀕
(
ひん
)
しつつあった。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼こそは最も殺される可能性があり、事実その危険に
瀕
(
ひん
)
した度数は誰よりも多かったであろう。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
裏切りを宣言した瞬間からわたしの生命はたちまち危険に
瀕
(
ひん
)
するわけですが、阪井の
扶持
(
ふち
)
から離れるとたちまち無一文になってしまうこのわたしが、廃人同様の男を抱え
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ただたった一つの場合を除けば、それは即ち、道子が死に
瀕
(
ひん
)
して、わが愛人の名を呼んだのではないかという考えであります。ともかく、最大の不利益は被告人の自白です。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
そして突然、そんな死に
瀕
(
ひん
)
した娘の影像が思いがけない烈しさで私を打った。私はあたかも夢から覚めたかのように何んともかとも言いようのない恐怖と羞恥とに襲われた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
今かんがえてみてさえ何よりも恐ろしいのは、こんなつまらないことのために、危うく破滅に
瀕
(
ひん
)
していたことである。危うく自分で自分をほろぼそうとしていたことである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ほとんど破産に
瀕
(
ひん
)
した
一
(
いち
)
騎兵大佐
(
きへいたいさ
)
にすぎず、母よりも六つも年下であるばかりか、その性格も冷やかで、弱気で
優柔
(
ゆうじゅう
)
で、おまけに
頗
(
すこぶ
)
る女好きな
伊達者
(
だてしゃ
)
であったと伝えられています。
「はつ恋」解説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
ヘンデルは幾度か破滅に
瀕
(
ひん
)
して、とうとうイギリスに
愛想
(
あいそ
)
を尽かしてしまった。三十年来住み
馴
(
な
)
れたイギリスを去る決心をして、最後の演奏会を開いたのは一七四一年の春である。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
ハークマのブッシュかブッシュのハークマかと
謳
(
うた
)
われていたくらい、つまりこの怪談の場所は
此処
(
ここ
)
になるのだが、その
倫敦
(
ロンドン
)
から帰ってきた時は、
恰
(
あだ
)
かもその妻は死に
瀕
(
ひん
)
していた時で
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
それから今一つは少々さもしいお話ですが、
流石
(
さすが
)
の炭坑王、谷山家の財政が、その当時の炭界不況と、支配人の不正行為のために、殆んど危機に
瀕
(
ひん
)
する打撃を受けていたことでした。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
病弱ほとんど死に
瀕
(
ひん
)
しておられる、
将軍様
(
うえさま
)
後継者
(
およつぎ
)
に関する件につき、死に物狂いに策動し、自分の自由になるお方を立て、ふたたび権勢を盛り返そうと、苦心しているとの噂もある。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
坂田村の豪農として何代も続いた小森家は彦太郎の代になって
壊滅
(
かいめつ
)
に
瀕
(
ひん
)
して居る。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
ここに赤穂義士の連盟も分裂の危機に
瀕
(
ひん
)
したのである。が、幸か不幸か、七月の二十二日になって、江戸の吉田忠左衛門から浅野大学が
芸州
(
げいしゅう
)
広島へ
流謫
(
りゅうたく
)
を命ぜられたことを報じてきた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
すると、この山の、あツち側の急傾斜に
瀕
(
ひん
)
したところで、女がこツちの來たのも知らず、松の枝に自分の細帶を結びつけ、その出來た輪につかまつて、今にも首をかけようとしてゐた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
昭和二年十月
(
しようわにねんじゆうがつ
)
、プラーグに
於
(
お
)
ける
地震學科
(
ぢしんがくか
)
の
國際會議
(
こくさいかいぎ
)
へ
出席
(
しゆつせき
)
した
歸
(
かへ
)
り
途
(
みち
)
、
大活動
(
だいかつどう
)
に
瀕
(
ひん
)
せるヴエスヴイオを
訪
(
と
)
ひナポリから
郵船
(
ゆうせん
)
筥崎丸
(
はこざきまる
)
に
便乘
(
びんじよう
)
し、
十三日
(
じゆうさんにち
)
アデン
沖
(
おき
)
を
通過
(
つうか
)
する
頃
(
ころ
)
本稿
(
ほんこう
)
を
記
(
しる
)
し
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
今は母の愛母の威光母の恩をもってしてなお死に
瀕
(
ひん
)
したる一浪子の愛に勝つあたわざるを見るに及び、わが威権全くおちたるように、その子をば全く浪子に奪い去られしように感じて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
忠次の
身体
(
からだ
)
が、赤城山中の地蔵山で、危険に
瀕
(
ひん
)
したとき、みんなは命を捨てて働いてくれた。平生は老ぼれて、物の役には立つまいと思われていた
闇雲
(
やみくも
)
の
忍松
(
おしまつ
)
までが、見事な働きをした。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかしこれは高き見地より見てのことであって、社会がいまだ
法治
(
ほうち
)
の階段に進まない時代には、武勇は社会の安全に対する
保障
(
ほしょう
)
で、武勇なければ生命も財産も危険に
瀕
(
ひん
)
するばかりである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
私は死に
瀕
(
ひん
)
している父の手前、その父に幾分でも安心させてやりたいと祈りつつある母の手前、働かなければ人間でないようにいう兄の手前、その
他
(
た
)
妹
(
いもと
)
の夫だの
伯父
(
おじ
)
だの
叔母
(
おば
)
だのの手前
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さうして朽ちかゝつた家々のランプのかげから、死に
瀕
(
ひん
)
した
虎列拉
(
コレラ
)
患者
(
くわんじや
)
は恐ろしさうに蒲團を
匍
(
は
)
ひいだし、ただぢつと
薄
(
うす
)
あかりの
中
(
うち
)
に色
變
(
か
)
えてゆく五色花火のしたゝりに疲れた瞳を集める。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
近代西洋画が存在の危機に
瀕
(
ひん
)
した時に唯一の救済策として日本画の空気を採り入れたのは何故であろう。単に眼先を変えるというような浅薄な理由によるだろうか。自分はそうは思わない。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
瀕
漢検準1級
部首:⽔
19画
“瀕”を含む語句
瀕死
瀕死者
瀕々
瀕海