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温
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ぬる
ふりがな文庫
“
温
(
ぬる
)” の例文
水が
温
(
ぬる
)
み、草が
萌
(
も
)
えるころになった。あすからは外の為事が始まるという日に、二郎が邸を見廻るついでに、三の木戸の小屋に来た。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
温
(
ぬる
)
い、いや熱くさえある血潮が彼の二ノ腕までまみれさせ、彼は蒼白となった
面
(
おもて
)
に、その双眼を、じっと、ふさいだままにしていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不規則なる春の
雑樹
(
ぞうき
)
を左右に、桜の枝を上に、
温
(
ぬる
)
む水に根を
抽
(
ぬきん
)
でて
這
(
は
)
い上がる
蓮
(
はす
)
の浮葉を下に、——二人の活人画は包まれて立つ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俳句ではこれを水
温
(
ぬる
)
むと申します。水温むということも時候の変化につれて起ってきた現象の一つであります。……地理上の現象
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
そこから上は水がまつたく涸れてゐる
温
(
ぬる
)
川の谷伝ひに、
径
(
みち
)
らしい径もない熊笹の生ひ茂つた斜面を、右へ左へ分け登つて行く一人の男がゐた。
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
▼ もっと見る
ガラッ八はそう言いながらも、悪い心持がしないらしく、縁台に腰をおろして、お町がくんでくれた
温
(
ぬる
)
い茶を
啜
(
すす
)
りました。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
政「
温
(
ぬる
)
いからおあがり、お夜食は未だゞろうね、
大澤
(
おおさわ
)
さんから戴いた
鰤
(
ぶり
)
が味噌漬にしてあるから、それで一膳おたべよ」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
湯は
槽
(
ふね
)
の四方に
溢
(
あぶ
)
れおつ、こゝをもつて此
湯
(
ゆ
)
温
(
ぬる
)
からず
熱
(
あつ
)
からず、天
工
(
こう
)
の
地
(
ち
)
火
(
くわ
)
尽
(
つく
)
る時なければ
人作
(
じんさく
)
の湯も
尽
(
つく
)
る
期
(
ご
)
なし、見るにも
清潔
(
せいけつ
)
なる事いふべからず。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
何しろ折からの水が
温
(
ぬる
)
んで、桜の花も流れようと云う加茂川へ、大太刀を
佩
(
は
)
いて
畏
(
かしこま
)
った侍と、あの十文字の護符を捧げている
異形
(
いぎょう
)
な沙門とが影を落して
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
裏日本の川の方が早く水が
温
(
ぬる
)
み、そして盛夏の候には表日本の川より水温が高くなることを経験したのである。
水と骨
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
湯は
温
(
ぬる
)
かつたが後はポカ/\した。
晝飯
(
ひる
)
には鷄を一羽ツブして貰つた。肉は獸のやうに
強
(
こは
)
かつた。骨は叩きやうが荒くて皆な齒を傷めた。しかし甘かつた。
伊豆の旅
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
肝臓ヂストマの
中次豆田螺
(
なかつぎまめたにし
)
は、右巻の尖つた屋根を横倒しに、小菴の扉をかたく閉したまま、身動き一つせず、たまに午過の暖い日ざしに水が
温
(
ぬる
)
みかけると
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
しかし地の上にはまだまだ長い冬が残っていて、水
温
(
ぬる
)
む春がいつ来るかもしれないというふうにみえた。
荒野の冬
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「猪のはん、藥鑵は
温
(
ぬる
)
いやろか、勝手に漬けてやりなはれ。」と、猪之介の尖つた鼻ツ先きに置いた。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
弁当には玉子焼きと
漬
(
つ
)
け
物
(
もの
)
とが入れられてあった。小使は
出流
(
でなが
)
れの
温
(
ぬる
)
い茶をついでくれた。やがて
爺
(
じじい
)
はわきに行って、内職の
藁
(
わら
)
を打ち始めた。夜はしんとしている。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ひとしきり水の中に素早いさざ波を立てて沈む
雀
(
すずめ
)
ほどの小さい水鳥は、春の
温
(
ぬる
)
んだ水の面にうかんでいるあいだは、またたきするくらいの
迅
(
はや
)
い一瞬のうちであった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
これでは今日も、一日頭痛。まどしやまどしやの、難題も、それだけならば済ましもせう。まだその後で、手水の湯が、
温
(
ぬる
)
いの熱いの、大小言。かなぎり声で、金盥。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
搖起
(
ゆりおこ
)
し是十兵衞
最早
(
もはや
)
今のは
寅刻
(
なゝつ
)
の
鐘
(
かね
)
殊
(
こと
)
に此鐘は何時も少し
遲
(
おそ
)
き故夜の明るに間も有まい眼を
覺
(
さま
)
して支度せよ
鐵瓶
(
てつびん
)
の湯も
温
(
ぬる
)
んで有と聞て十兵衞は起上り
顏
(
かほ
)
を
洗
(
あら
)
はず支度を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
畑の麦の穂は黄色く干乾び、稲田の水はどんよりと
温
(
ぬる
)
み、小川には
小魚
(
こうお
)
が藻草の影に潜んだ。
土地
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
温泉はこゝまで引かれる途中で
温
(
ぬる
)
くなるらしかつたが、石炭を少したけば可い程度であつた。
芭蕉と歯朶
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
真暗に曇った晩で海岸の方からすこし風が吹いていたが生
温
(
ぬる
)
い気もちの悪い風でした。それにビールをたくさん飲んでいるからすこし歩くと汗がだくだく出て困ったのです。
提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
土橋を潜る水は
温
(
ぬる
)
みて夢ばかりなる水蒸気は白く
顫
(
ふる
)
え、岸を蔽えるクローバーは柔らかに足裏の触覚を
擽
(
くすぐ
)
りて、いかにわれをして試みんとする春の旅の楽しきを思わしめしよ。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
やれ懐かしかったと喜び、水は
温
(
ぬる
)
み下草は
萌
(
も
)
えた、
鷹
(
たか
)
はまだ出ぬか、
雉子
(
きじ
)
はどうだと、
終
(
つい
)
に
若鮎
(
わかあゆ
)
の
噂
(
うわさ
)
にまで先走りて若い者は
駒
(
こま
)
と共に元気
付
(
づき
)
て来る中に、さりとてはあるまじき
鬱
(
ふさ
)
ぎ
様
(
よう
)
。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
で、
上
(
あが
)
り
框
(
がまち
)
に腰掛けたまゝ、暫く戸惑ひの形でもぢ/\してゐると、お信さんは遠慮でもしてゐると思つたか、折角冷えてゐるのだから、
温
(
ぬる
)
くならぬうちに早く飲めと
頻
(
しき
)
りに勧めるのだつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
女房がすぐに持ち出して来た煙草盆と駄菓子の盆とを前に置いて、長次郎は
温
(
ぬる
)
い番茶を一杯のんだ。店の前には大きい
榎
(
えのき
)
が目じるしのように突っ立って、おあつらえ向きの日よけになっていた。
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
俳句の季題に「水
温
(
ぬる
)
む」というのはあるが、「金温む」というのはない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
火にかけると、初めは
温
(
ぬる
)
まつて来て、次ぎに空中に飛んで行く水蒸気を
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
水
温
(
ぬる
)
むといいたげないろをめっきり川面へただよわせてきているすみだ川の景色もきょうばかりは曇り日のよう暗く見えた。ホンノリとした青空さえが、果てしらぬ灰いろの
帳
(
とば
)
りかと感じられた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
水
(
みづ
)
温
(
ぬる
)
き運河の
上
(
うへ
)
、
七日
(
なのか
)
七夜
(
なゝよ
)
を舟にて行くを思はしむ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「
温
(
ぬる
)
加減もまず上等、いざお
験
(
ため
)
しくださいますよう」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
白楊
(
はくやう
)
の
温
(
ぬる
)
き
吐息
(
といき
)
にくわとばかり
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
温
(
ぬる
)
き
霞
(
かすみ
)
を
纏
(
まと
)
ふらむ。
騎士と姫
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
温
(
ぬる
)
い、むず
痒
(
かゆ
)
い、虫のように生きてる液体が、どこからともなく噴き出して、彼女の手に、膝に、ふとんに、気の遠くなるほど溢れた。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
温
(
ぬる
)
川の谿谷は奇ならずと雖も閑寂、樹々は五分の芽立ちで、桜は散りそめ、山吹は盛り、つゝじも、早咲きが見頃である。
旅の苦労
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
ガラツ八はさう言ひながらも、惡い心持がしないらしく、縁臺に腰をおろして、お町がくんでくれた
温
(
ぬる
)
い茶を
啜
(
すゝ
)
ります。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
湯は
槽
(
ふね
)
の四方に
溢
(
あぶ
)
れおつ、こゝをもつて此
湯
(
ゆ
)
温
(
ぬる
)
からず
熱
(
あつ
)
からず、天
工
(
こう
)
の
地
(
ち
)
火
(
くわ
)
尽
(
つく
)
る時なければ
人作
(
じんさく
)
の湯も
尽
(
つく
)
る
期
(
ご
)
なし、見るにも
清潔
(
せいけつ
)
なる事いふべからず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
が、池はもう
温
(
ぬる
)
んだらしい底光りのする水の
面
(
おもて
)
に、堤をめぐった桜や柳を鮮にじっと映したまま、いつになっても竜などを天上させる
気色
(
けしき
)
もございません。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
薄濁
(
うすにごり
)
のする水に、泥は沈んで、上皮だけは軽く
温
(
ぬる
)
む底から、
朦朧
(
もうろう
)
と
朱
(
あか
)
い影が静かな土を動かして、浮いて来る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
久「へい/\恐入ります、惜しい事に
周囲
(
まわり
)
がポツ/\
兀
(
は
)
げて居りますナ、
些
(
ち
)
とお茶がお
温
(
ぬる
)
いようでございます」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
こういう時にいつでも思い出される「水
温
(
ぬる
)
む」という季題のことを私はまた考えずにはいられませんでした。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
修善寺の湯は熱過ぎたし、湯が島では
温
(
ぬる
)
過ぎたし、湯が野も惡くはなかつたが、入り心地の好いのは是處だ。
伊豆の旅
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
三十度近くなると、もう
日向
(
ひなた
)
水と同じな
温
(
ぬる
)
さを持ってくるのである。鮎でも、鮒でも入れればすぐ死にそうな、こうした温かい川で鮎は盛んに水垢を食っている。
水と骨
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「すこしお
温
(
ぬる
)
いかも知れません、お温ければなおします、
如何
(
いかが
)
でございます」
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
博士はつと立つて、南側の障子を
開
(
あ
)
けて庭を見てゐる。
木瓜
(
ぼけ
)
と
杜鵑花
(
さつきつつじ
)
との花が真赤に咲いて、どこか底に
温
(
ぬる
)
みを持つた風が額に当る。細君の部屋では又こと/\音がする。着更をするのであらう。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
『
温
(
ぬる
)
いから駄目でさ。これが、本当の湯なら、それは大変ですがな』
田舎からの手紙
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
有情
(
うじやう
)
温
(
ぬる
)
みの春の夜の
騎士と姫
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
獣
(
けもの
)
の
温
(
ぬる
)
き
肌
(
はだ
)
の
香
(
か
)
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
血汐
(
ちしお
)
である、
血煙
(
ちけむり
)
である。夕闇なのと、深い霧で、よくは分らないが、
温
(
ぬる
)
い血液のかたまりが、ぱッと、側の者へ
刎
(
は
)
ねかかった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お小夜も、お冬もそれに
慣
(
なら
)
ひました。お茶は少し
温
(
ぬる
)
くなりましたが、宇治の玉露は、大して味を失つては居りません。
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
落ちついた調子のうちに、何となく
温
(
ぬる
)
い
暖味
(
あたたかみ
)
があった。すべての枝を緑に返す用意のために、
寂
(
さ
)
びたる中を人知れず通う春の脈は、甲野さんの同情である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
温
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
“温”を含む語句
温順
温和
温泉
温柔
温気
生温
微温
温暖
温習
温味
温雅
微温湯
温泉宿
温泉場
温厚
温室
温湯
温石
温突
温度
...