トップ
>
沸
>
に
ふりがな文庫
“
沸
(
に
)” の例文
「だつてあれが浴びるやうに啼き立てると、たゞでも暑い日光が油でじり/\
沸
(
に
)
え立つやうな気がしていかにも暑くるしいからね。」
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
沸
(
に
)
たたせてそれへこのセンを入れてザット湯煮て水でよく洗います。塩で締りますから切れません。今度は水を入れて塩とお砂糖で味を
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
誰
(
だれ
)
にいうともない
独言
(
ひとりごと
)
ながら、
吉原
(
よしわら
)
への
供
(
とも
)
まで
見事
(
みごと
)
にはねられた、
版下彫
(
はんしたぼり
)
の
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
は、
止度
(
とめど
)
なく
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
が
沸
(
に
)
えくり
返
(
かえ
)
っているのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
あの暗い闇の色、闇に聞ゆる囁き、ああそのとき子供心にも全身にしみて感じた怒りは今でも総身の血が
沸
(
に
)
えくりかえるようだ。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
「何んなりとも承りましょう、妙高山の硫黄の
沸
(
に
)
える中へでも、
地震
(
ない
)
の滝壺の渦巻く底へでも、飛込めとならきっと飛び込んでみせまする」
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
▼ もっと見る
道具と言つては唯これ一つしかないと言つても好い長火鉢、その上には
鉄瓶
(
てつびん
)
がかゝつて、しかも
沸
(
に
)
え立つてプウ/\白い湯気を立ててゐた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
父は
沸
(
に
)
える腹をこらえ手を握って
諭
(
さと
)
すのである。おとよは
瞬
(
まばた
)
きもせず
膝
(
ひざ
)
の手を見つめたまま黙っている。父はもう
堪
(
たま
)
りかねた。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
心の水は
沸
(
に
)
え立ッた。それ
朝餉
(
あさがれい
)
の
竈
(
かまど
)
を跡に見て跡を追いに出る
庖廚
(
くりや
)
の
炊婢
(
みずしめ
)
。サア鋤を手に取ッたまま尋ねに飛び出す畑の
僕
(
しもべ
)
。家の中は大騒動。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
沸
(
に
)
たった鉄びんは、またもともとに
冷
(
さ
)
めてしまって、急いで七輪にかけて沸かさなければならないようなわけになります。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
拝むような娘の群の視線はこの若者の横顔に
注
(
あつま
)
りました。全く、源は
業
(
ごう
)
が
沸
(
に
)
えて、この男の通るのを見ていられません。嫉妬は一種の苦痛です。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
新吉は此の金を持って遊び歩いて
家
(
うち
)
へ帰らぬから、自分は
却
(
かえ
)
って面白いが、只
憫然
(
かわいそう
)
なのは女房お累、次第/\に胸の
焔
(
ほむら
)
は
沸
(
に
)
え返る様になります。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
沸
(
に
)
えかえる満身の血が、眸からも、耳の穴からも、流れ出るかと思った。きっと、上野介の背へ向けた内匠頭の眉に、深く、針のような線が
凶
(
きょう
)
を描いた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
時計の音が一分ずつ柱を刻んで、
潮
(
うしお
)
の
退
(
ひ
)
くように鉄瓶の
沸
(
に
)
え
止
(
や
)
む
響
(
ひびき
)
、心着けば
人気勢
(
ひとけはい
)
がしないのである。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
葛城は
新英州
(
ニューイングランド
)
の大学で神学を修めて居た。欧米大陸の波瀾万丈
沸
(
に
)
えかえる様な思潮に心魂を
震蕩
(
しんとう
)
された葛城は、非常の動揺と而して
苦悶
(
くもん
)
を感じ、大服従のあと大自由に向ってあこがれた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
髪の毛が伸び過ぎて
領首
(
えりくび
)
がむさくなっているのが手拭の下から見えて、そこへ日がじりじり当っているので、細い首筋の赤黒いところに汗が
沸
(
に
)
えてでもいるように汚らしく少し光っていた。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
親方の
意気地
(
いくじ
)
なしは今始まつたではなけれど、私の気にもなつて見て下され、未練ではござりませぬ、
唯
(
た
)
だ
業
(
ごう
)
が
沸
(
に
)
えてなりませぬ、親方の帰つた
迹
(
あと
)
ではいつもの
柳連
(
やなぎれん
)
の二人が来てゐたこととて
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は
危
(
あやふ
)
きを
拯
(
すく
)
はんとする如く
犇
(
ひし
)
と宮に取着きて
匂滴
(
にほひこぼ
)
るる
頸元
(
えりもと
)
に
沸
(
に
)
ゆる涙を
濺
(
そそ
)
ぎつつ、
蘆
(
あし
)
の枯葉の風に
揉
(
もま
)
るるやうに身を
顫
(
ふるは
)
せり。宮も離れじと
抱緊
(
いだきし
)
めて
諸共
(
もろとも
)
に顫ひつつ、貫一が
臂
(
ひぢ
)
を
咬
(
か
)
みて
咽泣
(
むせびなき
)
に泣けり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
樂
(
たの
)
しみは、
晝寢
(
ひるね
)
めざむる
枕
(
まくら
)
べに、こと/\と
湯
(
ゆ
)
の
沸
(
に
)
えてある
時
(
とき
)
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
「ああ、周さん、薬が
沸
(
に
)
え
溢
(
こぼ
)
れるよ。」というと
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私はちょうど
沸
(
に
)
え
湯
(
ゆ
)
を飲んだように胸が燃えた。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
りまする。が奥様、今の先まで、それはそれは舌たるい。私でさへ業が
沸
(
に
)
えて、じだんだ踏んだお迎ひが、これでてうど三度目でござりまする。同じ事なら、あんなとこ、お眼に懸けたふござりましたに。今はどうやらお幕切れ。惜しい事を
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
と
叱
(
しか
)
りつけられて
我知
(
われし
)
らずあとじさりする
意氣地
(
いくぢ
)
なさまだ
霜
(
しも
)
こほる
夜嵐
(
よあらし
)
に
辻待
(
つじまち
)
の
提燈
(
ちやうちん
)
の
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
えかへる
迄
(
まで
)
案
(
あん
)
じらるゝは
二親
(
ふたおや
)
のことなり
馴
(
な
)
れぬ
貧苦
(
ひんく
)
に
責
(
せ
)
めらるゝと
懷舊
(
くわいきう
)
の
情
(
じやう
)
のやる
方
(
かた
)
なさとが
老體
(
らうたい
)
の
毒
(
どく
)
になりてや
涙
(
なみだ
)
がちに
同
(
おな
)
じやうな
煩
(
わづら
)
ひ
方
(
かた
)
それも
御尤
(
ごもつと
)
もなり
我
(
われ
)
さへ
無念
(
むねん
)
に
膓
(
はらわた
)
の
沸
(
に
)
え
納
(
をさ
)
まらぬものを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
牛乳を
沸
(
に
)
てその中へ梅や桃の液を
滴
(
たら
)
すと牛乳中の脂肪が水分と分離して白い
固形
(
かたまり
)
になる。それと似たように鰻の毒分へ何か化学作用を起すのに違いない。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
白い光の
紋流
(
もんりゅう
)
は
五
(
ぐ
)
の
目
(
め
)
みだれに美しく
沸
(
に
)
えあがって、深みのある
鉄色
(
かねいろ
)
の烈しさと、無銘ではあるが
刃際
(
はぎわ
)
の匂いが、幾多の血にも飽くまいかと眺められる。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はあ、昼間見る遠い処の山の上を、ふわふわと
歩行
(
ある
)
くようで、底が
轟々
(
ごうごう
)
と
沸
(
に
)
えくり返るだ。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
屋根に出たとき、露八は初めて、この世が常の
相
(
すがた
)
とはまるでちがって、天体も地体も、
憤怒
(
ふんぬ
)
の火と煙にぐらぐらと
沸
(
に
)
えているようなこの世であることを知った。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三
厘
(
もん
)
でもありさえすりゃ、
中汲
(
なかくみ
)
だろうが、
焼酎
(
しょうちゅう
)
だろうが、徳利の口へ
杉箸
(
すぎばし
)
を
突込
(
つっこ
)
んで、ぐらぐら
沸
(
に
)
え立たせた、ピンと来て、脳天へ
沁
(
し
)
みます、そのね、
私等
(
わっしら
)
で御覧なさい、
香
(
におい
)
を
嗅
(
か
)
いだばかりで
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これでも黄身まで半熟になりますが最初鍋の端から
辷
(
すべ
)
らせるように入れないと玉子が割れます。沢山の玉子は一々入れると前のが
沸
(
に
)
え過ぎますから
笊
(
ざる
)
へ玉子を入れてそっと
沸煮
(
にえゆ
)
の中へ入れます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
どういうわけか自分らにも分らないが、
未
(
ひつじ
)
、
申
(
さる
)
、
酉
(
とり
)
の時刻以外は、
濛々
(
もうもう
)
と
瘴烟
(
しょうえん
)
が起り、地鳴りして
岩間
(
いわま
)
岩間から
沸
(
に
)
え立った硫黄が噴くので、人馬は恐れて近づけない。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
揺々
(
ようよう
)
たる大波は
沸
(
に
)
え立ち、真っ赤な熱風はその舟も人も、またたく間に焼こうとする。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
籠城側は
新手
(
あらて
)
の戦術に出て、城壁にたかる寄手の兵に
沸
(
に
)
えたぎった
熔鉄
(
ようてつ
)
をふりまいた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弁円は、いよいよ
業
(
ごう
)
を
沸
(
に
)
やして
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
沸
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
“沸”を含む語句
沸騰
湯沸
沸々
沸立
沸返
沸然
沸上
珈琲沸
湯沸器
沸燗
沸湯
鼎沸
沸沸
沸出
大沸
赤沸石
荒沸
大沸騰
熱沸
煮沸
...