“匂滴”の読み方と例文
読み方割合
にほひこぼ100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
打霞うちかすみたる空ながら、月の色の匂滴にほひこぼるるやうにして、微白ほのじろき海は縹渺ひようびようとして限を知らず、たとへば無邪気なる夢を敷けるに似たり。寄せては返す波の音もねむげに怠りて、吹来る風は人を酔はしめんとす。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼はあやふきをすくはんとする如くひしと宮に取着きて匂滴にほひこぼるる頸元えりもとゆる涙をそそぎつつ、あしの枯葉の風にもまるるやうに身をふるはせり。宮も離れじと抱緊いだきしめて諸共もろともに顫ひつつ、貫一がひぢみて咽泣むせびなきに泣けり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)