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擾
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みだ
ふりがな文庫
“
擾
(
みだ
)” の例文
同十年に到り、彼を送還し、かつ先年来
樺太
(
からふと
)
、
択捉
(
えとろふ
)
を
擾
(
みだ
)
せしは、露国政府の意にあらざるを告げ、かつ八人の俘虜を還さんことを請う。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
お墓参りの後の、澄み渡つたやうな美奈子の心持は、忽ち掻き
擾
(
みだ
)
されてしまつた。彼女ののんびりとしてゐた歩調は、急に早くなつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
○
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
の通商を
妨
(
さまた
)
げ、かつその
平穏
(
へいおん
)
を
擾
(
みだ
)
せし
希臘
(
ギリシア
)
国の戦争を
平
(
たいら
)
げんがため、耶蘇教の諸大国、
魯西亜
(
ロシア
)
国とともにこれを和解、
鎮定
(
ちんてい
)
せり。
「ヒリモア」万国公法の内宗教を論ずる章(撮要)
(新字新仮名)
/
ロバート・フィリモア
(著)
千里眼の方は
益々
(
ますます
)
流行を極め、「天下その真偽に惑い
奸
(
かん
)
催眠術者の徒
忽
(
たちま
)
ちに
跋扈
(
ばっこ
)
を極め迷信を助長し暴利を
貪
(
むさぼ
)
り思想界を
擾
(
みだ
)
る」
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
庭の
橄欖
(
かんらん
)
や
月桂
(
げっけい
)
は、ひっそりと夕闇に聳えていた。ただその沈黙が
擾
(
みだ
)
されるのは、寺の
鳩
(
はと
)
が軒へ帰るらしい、
中空
(
なかぞら
)
の
羽音
(
はおと
)
よりほかはなかった。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
南家
(
なんけ
)
の
郎女
(
いらつめ
)
は、一茎の草のそよぎでも聴き取れる
暁凪
(
あかつきな
)
ぎを、自身
擾
(
みだ
)
すことをすまいと言う風に、見じろきすらもせずに居る。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
彼は、いま、
竊
(
ぬす
)
むやうに眼を上げた。おづ/\した、またかき
擾
(
みだ
)
された
容子
(
ようす
)
で、私をちらと見た。彼は再び繪に眼を移した。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
呉羽之介は不思議にも、先程の恐ろしい出来事と今聴く
淋
(
さび
)
しき
看経
(
かんきん
)
の声とに頭が
擾
(
みだ
)
され、今迄の来し方を思い出しました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
明の太祖の辺海
毎
(
つね
)
に
和寇
(
わこう
)
に
擾
(
みだ
)
さるゝを怒りて洪武十四年、日本を征せんとするを
以
(
もっ
)
て
威嚇
(
いかく
)
するや、王答うるに書を以てす。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
こういう瞬間のとき子の姿全体に流れている寂しさに通じるような静けさは厳粛で、いい加減な自分の声でそれを
擾
(
みだ
)
すことが憚かられるのであった。
今朝の雪
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
不必要ではないが、かく世の中が忙しくなって人間の心が刺激に
攪
(
か
)
き
擾
(
みだ
)
される時代に、さとろうとする修業なんかしている暇がないのだというのであります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
水陸到る処物の声に正念を
擾
(
みだ
)
されたちゅう譚から出たらしいは、この辺で熊野の神が、田辺町より三里足らずの富田の海辺に鎮坐し掛かると、波の音が喧しい
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「ですけれど、
私
(
わたし
)
はドウやら悩みに悩むで
到底
(
たうてい
)
、救の門の開かれる望がない様に感じますの」梅子は
只
(
た
)
だ風なくて散る
紅
(
くれなゐ
)
の一葉に、層々
擾
(
みだ
)
れ行く波紋をながめて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
會話は甚だ輕く、交ふるに
笑謔
(
せうぎやく
)
を以てす。セヰルラの
剃手
(
とこや
)
の曲の爲めに登場する俳優は、
乍
(
たちまち
)
ち去り乍ち來り、演戲のその心を
擾
(
みだ
)
さゞること
尋常
(
よのつね
)
の社交舞に異ならず。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その波濤の
面
(
おも
)
の金と紅とが乳黄となり、やや寒い
瓏銀
(
ろうぎん
)
となり、ブリュブラックとなり、重く暗くなり、そうして今は舷下の飛沫と
潮漚
(
しおなわ
)
とがただ白く青く駛って、
擾
(
みだ
)
れて
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
雞を
揺
(
ゆ
)
り豚を
奮
(
ふる
)
い、
嗷
(
かまびす
)
しい
脣吻
(
しんぷん
)
の音をもって、
儒家
(
じゅか
)
の
絃歌講誦
(
げんかこうしょう
)
の声を
擾
(
みだ
)
そうというのである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
あまりといえばあまりな出来事に心が
擾
(
みだ
)
れて、そういう頭の君に対する思いがけない程のはげしい憤りやら、自分のした事に対する悔いやらを感ぜずにはいられなかったが
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
冬の
夜嵐
(
よあらし
)
吹きすさぶころとなっても、がさがさと騒々しい音で幽遠の趣をかき
擾
(
みだ
)
している。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
冷な海風も今は彼女を煩はさなければ、懶い海のつぶやきも今は彼女の注意を
擾
(
みだ
)
さない。
「ケルトの薄明」より
(新字旧仮名)
/
ウィリアム・バトラー・イエイツ
(著)
サタンよ
退
(
しりぞ
)
け、汝の巧言を以て我を
擾
(
みだ
)
すなかれ、我は目前の救助は為し得ずとも、我は国人の知る所とならず幽陰以て世を終るとも、我の事業は事物の上に現われずといえども
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
擾
(
みだ
)
れて 騒ぐ この 大きい 夕雲は
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
午後の
懶
(
ものう
)
さを
擾
(
みだ
)
しているだけだった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
お墓参りの後の、澄み渡ったような美奈子の心持は、
忽
(
たちま
)
ち
掻
(
か
)
き
擾
(
みだ
)
されてしまった。彼女ののんびりとしていた歩調は、急に早くなった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
如何
(
いか
)
に
南北朝
(
なんぼくちょう
)
の戦乱が、
我邦
(
わがくに
)
の武備機関を膨脹せしめ、
而
(
しこう
)
してその余勇は、漏らすに
由
(
よし
)
なく、
延
(
ひ
)
いて
支那
(
シナ
)
辺海を
擾
(
みだ
)
したるよ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼自身の
擾
(
みだ
)
れた考へから離れて、平凡な、實際的な答へが屹度一番いゝ、そしてこんな氣持になつてゐる彼に最も安心を與へるものだと思つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
が、今、読んだ所からうけとつた暗示の中には、先生の、湯上りののんびりした心もちを、
擾
(
みだ
)
さうとする何物かがある。武士道と、さうしてその
型
(
マニイル
)
と——
手巾
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鮨というものの生む
甲斐々々
(
かいがい
)
しいまめやかな雰囲気、そこへ人がいくら
耽
(
ふけ
)
り込んでも、
擾
(
みだ
)
れるようなことはない。万事が手軽くこだわりなく行き過ぎて仕舞う。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
だから、自分は来年はますますきちんとして、ちゃんと自分の日程は守って暮し、気持を
擾
(
みだ
)
されたりして自分たちの生活の不秩序を来したりは決して致しますまい。
獄中への手紙:10 一九四三年(昭和十八年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
象月に謝罪せんとて鼻を水に入るるに水掻き月影
倍多
(
ふえ
)
たり、兎象に向い汝湖水を
擾
(
みだ
)
せし故月いよいよ
瞋
(
いか
)
ると言い象ますます
惶
(
おそ
)
れ
赦
(
ゆるし
)
を乞い群象を
帥
(
ひき
)
いてその地を去る
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
女狐よりも
狡
(
ずる
)
い奴——どうせ、
狡猾
(
こうかつ
)
な手段で、
囚
(
とら
)
われの家を抜け出して来たに相違ないが、今も今、口先の嚇しにかけて、心を
擾
(
みだ
)
させ、何か良からぬ計略をめぐらそうとしているに相違ない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
燕王
悦
(
よろこ
)
んで
曰
(
いわ
)
く、敵必ず兵を分ちて之を
護
(
まも
)
らん、其の兵分れて勢弱きに乗じなば、
如何
(
いか
)
で
能
(
よ
)
く支えんや、と
朱栄
(
しゅえい
)
、
劉江
(
りゅうこう
)
等
(
ら
)
を
遣
(
や
)
りて、軽騎を率いて、
餉道
(
しょうどう
)
を
截
(
き
)
らしめ、又
游騎
(
ゆうき
)
をして
樵採
(
しょうさい
)
を妨げ
擾
(
みだ
)
さしむ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
朱
(
しゆ
)
の
蝋涙
(
ろふるい
)
は
毒杯
(
どくはい
)
の
紫
(
むらさき
)
擾
(
みだ
)
し照り
雫
(
しづ
)
く。
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
が、その夜の
烈
(
はげ
)
しい経験は、——彼女が生れて以来初めて出会ったような複雑な、烈しい出来事は、彼女の神経を、極度に
掻
(
か
)
き
擾
(
みだ
)
していた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
あたかも彼がシベリヤの極東オコツク海岸に達したるの時にして、
爾来
(
じらい
)
満州を
侵
(
おか
)
し、
黒竜江
(
こくりゅうこう
)
の両岸を
擾
(
みだ
)
し、機に臨み変に応じ、
経略
(
けいりゃく
)
止むなく
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
けれども、同時に恐しさの
動悸
(
どうき
)
がそれをかき
擾
(
みだ
)
す。一時間たつてもまだ獨りきりだつた時、恐怖は勝を占めてしまつた。私は
呼鈴
(
ベル
)
を鳴らさうと思つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかしこれさへ、座敷の中のうすら寒い沈黙に抑へられて、枕頭の香のかすかな匂を、
擾
(
みだ
)
す程の声も立てない。
枯野抄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三昧
(
さんまい
)
を
擾
(
みだ
)
してはならない。人々は
敬虔
(
けいけん
)
に本能に
祷
(
いの
)
り入っている。人々の態度はいう。
食魔に贈る
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
つい
先達
(
せんだって
)
まで、寛永寺畔一帯に
擾
(
みだ
)
れ咲いていた桜は、もはや名残もなく散り果てて、岡のべの新緑は斜めに差すあざやかな光に、物なやましく映え渡り、
木
(
こ
)
の間がくれに輝やいている大僧坊の
金碧
(
こんぺき
)
が
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
深く燃え立つ
悲哀
(
かなしみ
)
は彼らを
擾
(
みだ
)
す。
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
信一郎の頭は、この短い文句でスツカリ掻き
擾
(
みだ
)
されてしまつた。彼は十七八の少年か何かのやうに、我にも非ず、頬が熱くほてるのを感じた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
そこで
珈琲
(
コオヒイ
)
が尽きたのを
機会
(
しお
)
にして、短くなった葉巻を捨てながら、そっと
卓
(
テエブル
)
から立上ると、それが静にした
心算
(
つもり
)
でも、やはり先生の注意を
擾
(
みだ
)
したのであろう。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ここまで煩わされた以上、もう仕事のために河沿いの家を選んだことは無駄にしても、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、この
擾
(
みだ
)
された気持ちを澄ますまで、私はあの河沿いの家に取付いていなければならない。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
死
(
し
)
と
悔恨
(
くわいこん
)
の闇
擾
(
みだ
)
し
壊
(
くづ
)
れくづるる。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
瑠璃子夫人の美しい脅威に戦いて、家庭の平和の裡に隠れようとすると、相手は、先廻りして、その家庭の平和をまで、掻き
擾
(
みだ
)
さうとしてゐる。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
お鈴は母の気もちの外にも一家の空気の
擾
(
みだ
)
されるのを
惧
(
おそ
)
れ、何度も母に考え直させようとした。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
狼狽
(
らうばい
)
の
銅羅声
(
どらごゑ
)
擾
(
みだ
)
し
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
瑠璃子夫人の美しい脅威に
戦
(
おのの
)
いて、家庭の平和の裡に隠れようとすると、相手は、先廻りして、その家庭の平和をまで、
掻
(
か
)
き
擾
(
みだ
)
そうとしている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
廊下
(
ろうか
)
を通る人の足音とか、
家中
(
かちゅう
)
の者の話声とかが聞えただけで、すぐ注意が
擾
(
みだ
)
されてしまう。それがだんだん
嵩
(
こう
)
じて来ると、今度は
極
(
ごく
)
些細
(
ささい
)
な刺戟からも、絶えず神経を
虐
(
さいな
)
まれるような姿になった。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
急激な
報知
(
しらせ
)
の為に、
掻
(
か
)
き
擾
(
みだ
)
された感情が静まりかけて、其処に恩人の死と云う事実が、何物にも紛ぎらされずに、彼の心に喰い込んで来たからである。
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
また
縦令
(
たとえ
)
、如何なる信仰を持って居たにしろ、咄嗟に生命を奪われた、死際の刹那を苦悶と忿怒との思いで魂を
擾
(
みだ
)
したものが極楽なり天国なりへ行かれようとは、思われません。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
擾
漢検準1級
部首:⼿
18画
“擾”を含む語句
騒擾
紛擾
擾乱
騷擾
喧擾
大騒擾
乱擾
争擾
煩擾
擾々
昏迷乱擾
侵擾
騒擾者
騒擾事件
公山弗擾
騒々擾々
纒擾
大紛擾
紛々擾々
私闘騒擾
...