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懸念
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けねん
ふりがな文庫
“
懸念
(
けねん
)” の例文
そして、若しその峠へ人でも通り合せてはといふ
懸念
(
けねん
)
から路を離れて一二町右手の金時山の方に登つて、枯芒の眞深い中に腰を下した。
樹木とその葉:06 四辺の山より富士を仰ぐ記
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
のみならずこれからやる中味と形式という問題が今申した通りあまり乾燥して
光沢気
(
つやけ
)
の乏しいみだしなのでことさら
懸念
(
けねん
)
をいたします。
中味と形式
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女学校から英文専修科までを優秀な成績で卒業した雪子としては、さきざきその人を尊敬することが出来そうもない
懸念
(
けねん
)
があった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
勘次
(
かんじ
)
はお
品
(
しな
)
が
病氣
(
びやうき
)
に
罹
(
かゝ
)
つたのだといふのを
聞
(
き
)
いて
萬一
(
もし
)
かといふ
懸念
(
けねん
)
がぎつくり
胸
(
むね
)
にこたへた。さうして
反覆
(
くりかへ
)
してどんな
鹽梅
(
あんばい
)
だと
聞
(
き
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そして突然彼女は彼に近寄って、召使どもに聞かれはすまいかという
懸念
(
けねん
)
から、また自分自身の心痛のあまりに、声をひそめて言った。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
何しろいつ敵に包囲されて、自分らも、そこらに転がっている死骸と同じ姿になろうやも知れない、そうも思う
懸念
(
けねん
)
のほうが強かった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
松島さんは、まだ年が若いので、自分ひとりで縁談の掛合いなどに来ては信用が薄いという
懸念
(
けねん
)
から、お母さん同道で来たらしいのです。
鰻に呪われた男
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
長吉
(
ちやうきち
)
は月の
夜
(
よ
)
に連れられて来た
路地口
(
ろぢぐち
)
をば、これは
又
(
また
)
一層の苦心、一層の
懸念
(
けねん
)
、一層の疲労を
以
(
も
)
つて、やつとの事で
見出
(
みいだ
)
し得たのである。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
藤堂と沖田とは
面
(
かお
)
を見合せて、土方と近藤との方に眼を向ける。助けようか殺そうかとの
懸念
(
けねん
)
。近藤勇は首を縦に振らなかった。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その
懸念
(
けねん
)
が先に立って、過ぐる慶応三年は
白粥
(
しらかゆ
)
までたいて村民に振る舞ったほどの凶年であったことなぞが、旅の行く先に思い出された。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
話が進むにつれて、彼の顏は單なる驚愕以上に深い
懸念
(
けねん
)
を表はした。私が話し終へても、彼は直ぐに口を開かうとはしなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「家鴨馴知灘勢急、相喚相呼不離湾」
何処
(
どこ
)
ぞへ往ってしまいたいと
口癖
(
くちぐせ
)
の様に云う二番目息子の
稲公
(
いねこう
)
を、
阿母
(
おふくろ
)
が
懸念
(
けねん
)
するのも無理は無い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「わしもこの家は、借りておる。もしそうなれば、一軒借りて移っていってもいい。そうするなら
懸念
(
けねん
)
もなくなる道理じゃ。」
阿繊
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
そのことを始めから誰よりも大きく
懸念
(
けねん
)
していたのは貞子であったかもしれぬが貞子は遠慮で、十分のことを言葉に出せなかったのだろう。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
それは母か姉のような気持だった。こうしているうちに一つの
懸念
(
けねん
)
がお蘭の心に
浮
(
うか
)
んだ。あるとき彼女は四郎にこう
訊
(
き
)
いた。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岡は生活に対して
懸念
(
けねん
)
などする必要はないし、事業というようなものはてんで持ってはいない。木村とはなんといっても立場が違ってはいる。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その超人的論理に魅了されて、検事も熊城も、
痺
(
しび
)
れたような顔になり、容易に言葉さえ出ないのだった。勿論そこには、一つの
懸念
(
けねん
)
があった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
散逸してしまうかもしれぬ
懸念
(
けねん
)
があるので、やはり最初の計画の通り、重複せぬかぎりは皆これを付載することにした。
遠野物語
(新字旧仮名)
/
柳田国男
(著)
その無鉄砲とも無茶苦茶とも形容の出来ない一種の
虚構
(
うそ
)
の天才である彼女が、貴下の御
懸念
(
けねん
)
になっている彼女であり
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
といいますと根が
善人
(
おとな
)
しい人ですから「それもそうです」というて
済
(
す
)
んでしまったものの余程
懸念
(
けねん
)
して居られました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
寧
(
むし
)
ろ封建制度其のものに必随し来たる一種の現象と言ふの当たれるにはあらざるか、更に国家の運命を
懸念
(
けねん
)
するを以て日本国民の特質なりと言はんか
国民性と文学
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
母は大方かかる事と
今朝
(
けさ
)
よりの
懸念
(
けねん
)
うたがひなく、
幾金
(
いくら
)
とねだるか、ぬるき旦那どのの処置はがゆしと思へど、我れも口にては勝がたき石之助の弁に
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
貫一もそれをこそ
懸念
(
けねん
)
せしが、果して
鰐淵
(
わにぶち
)
は彼と満枝との間を疑ひ初めき。彼は又鰐淵の疑へるに由りて、その人と満枝との間をも
略
(
ほぼ
)
推
(
すい
)
し得たるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
惣助はそのあくびの大きすぎるのを気に病み、祝辞を述べにやって来る
親戚
(
しんせき
)
の者たちへ肩身のせまい思いをした。惣助の
懸念
(
けねん
)
はそろそろと的中しはじめた。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
だが、わたしは、この老紳士があまりに頑迷に自分の信条を守りすぎるのではないかという
懸念
(
けねん
)
の意を表した。
クリスマス・イーヴ
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
寢顏
(
ねがほ
)
に
電燈
(
でんとう
)
を
厭
(
いと
)
つたものであらう。
嬰兒
(
あかんぼ
)
の
顏
(
かほ
)
は
見
(
み
)
えなかつた、だけ
其
(
それ
)
だけ、
懸念
(
けねん
)
と
云
(
い
)
へば
懸念
(
けねん
)
なので、
工學士
(
こうがくし
)
が——
鯉
(
こひ
)
か
鼈
(
すつぽん
)
か、と
云
(
い
)
つたのは
此
(
これ
)
であるが……
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
こう云いかけた野村の眼には、また
冷評
(
ひやか
)
されはしないかと云う
懸念
(
けねん
)
があった。が、俊助は案外
真面目
(
まじめ
)
な調子で
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして私の知らない間に互に親しくなりだしているのではないかと云うような
懸念
(
けねん
)
さえ私は持ちはじめていた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
足下
(
そっか
)
は在獄なればせん方なし。僕においては苦しからざる事には候えども、諸友の
踈濶
(
そかつ
)
は志の薄き故かと大いに
懸念
(
けねん
)
致し候。この事兄出牢せば一論あるべし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼は私のこの
懸念
(
けねん
)
をさとったらしく、わたしを安心させようとして
殊更
(
ことさら
)
に快活をよそおい、ほんのつまらない冗談にも、わざとからからと笑ったりしてみせた。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
それでもまだ艶子が動かぬので、増長した指共は、
懸念
(
けねん
)
と安心と半々の足どりで、遂に艶子のえくぼの入った手先まで伸び、アッと思うまに、それを握り締めた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
幼時の思い出にはさすがに
絶
(
た
)
ちがたいものがあり、ことに二人とももう八十に近い
高齢
(
こうれい
)
なので、遠く
隔
(
へだ
)
たったらいつまた会えるかわからないという
懸念
(
けねん
)
もあった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
しかし野田の方では、その飯島が、食後の休息に隣の部屋に来てゐはしまいかといふ
懸念
(
けねん
)
を持つてゐた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
醤油壜
(
しやうゆびん
)
に小便を
溜
(
た
)
めて置きこつそり捨てることなど嗅ぎ知つて、押入を調べはすまいかを
懸念
(
けねん
)
した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
もしやという
懸念
(
けねん
)
から、だしぬけに家へ電話をかけて、不意打ちを食わせたが、いちども留守だったことはなく、夕方、玄関へ出迎えるのは、いつも柚子で、そのうちに
春雪
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
女の子をその人が生みました時に、宮様がそんなことが起こるかもしれぬという
懸念
(
けねん
)
を持っておいでになったものですから、それ以後の御態度がすっかりと変わりまして
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
米國經濟界
(
べいこくけいざいかい
)
全般
(
ぜんぱん
)
には
何等
(
なんら
)
懸念
(
けねん
)
すべき
状態
(
じやうたい
)
を
認
(
みと
)
めざるも、
人氣
(
にんき
)
の
中心
(
ちうしん
)
たる
證劵市場
(
しようけんしぢやう
)
が
大變動
(
だいへんどう
)
を
來
(
きた
)
したことであるから
勢
(
いきほ
)
ひ
生糸相場
(
きいとさうば
)
にも
波及
(
はきふ
)
して十
月
(
ぐわつ
)
初旬
(
しよじゆん
)
より
低下
(
ていか
)
の
趨勢
(
すうせい
)
となり
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
実際そんなことを
懸念
(
けねん
)
する理由は少しもなかったのですから。ところが、たちまち、ヘルゼッゲンの峰越しに吹きおろす風のために、船は裏帆
(10)
になってしまいました。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
だが、何にせよ、その樫田武平の身柄を捜査してみなければ、或は
現場不在証明
(
アリバイ
)
などの
懸念
(
けねん
)
もあるので、色めき立った刑事連は、赤羽主任の命を待つものの様にその面を
仰
(
あお
)
いだ。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
物悲
(
ものがな
)
しく寂しくてたまらなくなった、二三日寝汗をかいたことを思い出し、人々の希望にそむくようになりゃしないかという
懸念
(
けねん
)
が、むらむらと胸先へ
激
(
たぎ
)
りきて涙がぼろぼろと落ちた。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
こうした
懸念
(
けねん
)
のうちには、下僚の身分であること、労働者であることの、恐れていたような結果をはっきり示しているのだ、そして、そうした結果がはっきりと表われてきているここで
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
カピ妻
敵
(
かたき
)
は
一定
(
きっと
)
取
(
と
)
ってやります。
懸念
(
けねん
)
には
及
(
およ
)
ばぬ。すれば、
最早
(
もう
)
泣
(
な
)
きゃんな。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
刑死
(
けいし
)
する
己
(
おのれ
)
の姿なら想像してみることもできるし、武帝の気に逆らって
李陵
(
りりょう
)
を
褒
(
ほ
)
め上げたときもまかりまちがえば死を賜うようなことになるかもしれぬくらいの
懸念
(
けねん
)
は自分にもあったのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
御馳走
(
ごちそう
)
の
美味
(
おいし
)
きに大原はツイうかうかと時間を過ごして
懸念
(
けねん
)
する所あり
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それが
懸念
(
けねん
)
で、さぐりを入れて見ると、こないだの芝居見物以来、何とないブラブラ
病
(
やま
)
い、それで、御本人が、のびのびと、おうちで保養をしたら、すぐによくなろうと、いい出されたとかでな。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
太夫
(
たゆう
)
。つまらない
面
(
つら
)
あてでいう
訳
(
わけ
)
じゃないが、お
前
(
まえ
)
さんは、いいお
上
(
かみ
)
さんを
持
(
も
)
ちなすって、
仕合
(
しあわせ
)
だの。——
帯
(
おび
)
はたしかにわたしの
手
(
て
)
から、おせんのとこへ
返
(
かえ
)
そうから、
少
(
すこ
)
しも
懸念
(
けねん
)
には、
及
(
およ
)
ばねえわな
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
幻覚なのかも知れないという
懸念
(
けねん
)
もあった。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
もう
休
(
や
)
めるかと思ったら最後にぽんと
後
(
うし
)
ろへ
放
(
な
)
げてその上へ
堂
(
ど
)
っさりと尻餅を突いた。「君大丈夫かい」と主人さえ
懸念
(
けねん
)
らしい顔をする。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長吉は月の
夜
(
よ
)
に連れられて来た
路地口
(
ろじぐち
)
をば、これはまた一層の苦心、一層の
懸念
(
けねん
)
、一層の疲労を以って、やっとの事で
見出
(
みいだ
)
し得たのである。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お
品
(
しな
)
の
病氣
(
びやうき
)
を
案
(
あん
)
ずる
外
(
ほか
)
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
には
何
(
なに
)
もなかつた。
其
(
その
)
當時
(
たうじ
)
には
卯平
(
うへい
)
に
不平
(
ふへい
)
をいはれやうといふやうな
懸念
(
けねん
)
は
寸毫
(
すこし
)
も
頭
(
あたま
)
に
起
(
おこ
)
らなかつたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
“懸念”の意味
《名詞》
懸 念(けねん)
気になって不安に思うこと。
一つのことに心を集中させること。
(出典:Wiktionary)
懸
常用漢字
中学
部首:⼼
20画
念
常用漢字
小4
部首:⼼
8画
“懸念”で始まる語句
懸念貌