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なま
ふりがな文庫
“
怠
(
なま
)” の例文
その
逼迫
(
ひっぱく
)
している急場の足もとをつけこみ、故意に
怠
(
なま
)
けてはそれを
揶揄
(
やゆ
)
し、
鞭
(
むち
)
で
強
(
し
)
いられれば俄然不平を鳴らすというふうであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
畢竟
(
つまり
)
は慾張りと
怠
(
なま
)
け者の熱心さで、氣狂ひ染みた
雷同性
(
らいどうせい
)
に引摺られて、春の夜の薄寒さも、
餓
(
うゑ
)
も
疲
(
つか
)
れも物の數ではありません。
銭形平次捕物控:301 宝掘りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれど、
兄
(
あに
)
のほうも、
弟
(
おとうと
)
のほうも、そろって
怠
(
なま
)
け
者
(
もの
)
でありました。
兄
(
あに
)
のほうは、一
日
(
にち
)
仕事
(
しごと
)
もせずに、ぶらぶらと
家
(
いえ
)
の
中
(
なか
)
で
遊
(
あそ
)
んでいました。
星と柱を数えたら
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そりゃ僕は
怠
(
なま
)
けて学校に出ないのは事実だけれど、これにはまた色々な事情があることで、天願さんには判らないこともあると思うんだ。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
蟻は一匹の王を
戴
(
いただ
)
いて毎日朝から晩まで働いている。一匹も
怠
(
なま
)
けるものがなく、そして大きな仕事にぶつかれば大勢一緒になってそれに掛かる。
首を失った蜻蛉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
▼ もっと見る
現にこの私は
上部
(
うわべ
)
だけは温順らしく見えながら、けっして講義などに耳を
傾
(
かたむ
)
ける性質ではありませんでした。始終
怠
(
なま
)
けてのらくらしていました。
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もとからぼんやりとした私はまた
怠
(
なま
)
け者でもあるし、ほかの方たちのこととこんがらがってしまうこともあって、済まない結果にもなるのですよ
源氏物語:23 初音
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
とッつきが
怠
(
なま
)
けがちの
鍛冶屋
(
かじや
)
で、いつもその山の神に
怒鳴
(
どな
)
られてる。その次ぎが女髪結いで、男が何人代ったか分らない。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
だから
學校
(
がくかう
)
を
怠
(
なま
)
けては
不可
(
いけな
)
い、
從
(
したが
)
つて
教
(
をそ
)
はつた
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れては
不可
(
いけな
)
い、
但馬
(
たじま
)
の
圓山川
(
まるやまがは
)
の
灌
(
そゝ
)
ぐのも、
越後
(
ゑちご
)
の
信濃川
(
しなのがは
)
の
灌
(
そゝ
)
ぐのも、
船
(
ふね
)
ではおなじ
海
(
うみ
)
である。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
このごろ稽古を
怠
(
なま
)
けている、そんなことでは上達しないぞ、どうして道場へ来ないんだ、とたたみかけるように云った。
饒舌りすぎる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「何も出せないとはどうしたことです。
怠
(
なま
)
けてはいけないね、君のような若い会員が出品しないなんて困りますね。是非何か出すようにして下さい」
幕末維新懐古談:59 矮鶏の作が計らず展覧会に出品されたいきさつ
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
というのは、それはクシベシという、貧乏は貧乏なのですが、それというのも、その男は大変な
怠
(
なま
)
け
者
(
もの
)
で、そして心の
善
(
よ
)
くないアイヌだったのです。
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
外では
勉強
(
べんきょう
)
に見せて内では
怠
(
なま
)
ける。表向きではすこぶる
謹厳
(
きんげん
)
の
風
(
ふう
)
を装いながら、裏面ではすこぶる
放蕩
(
ほうとう
)
する。あるいはまた表面
節倹
(
せっけん
)
で裏面
濫費
(
らんぴ
)
する。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「だっておめえ、
知
(
し
)
らねえもなァ
仕方
(
しかた
)
がねえや。——いってえ、あの
怠
(
なま
)
け
者
(
もの
)
が、どこでそんなに
儲
(
もう
)
けやがったたんだ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「どうも通信員のガツ/\した商売気にも困つたものだ。早速『第一夕
揷話
(
さふわ
)
』なぞと書きなぐつて、そのかはり明日は半日
怠
(
なま
)
けようといふのだらう!」
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
怠
(
なま
)
けがちに日を送って、母親にのみ苦労をかける父親がかれにははがゆくってしかたがなかった。かれは病身でそして思いやりの深い母親に同情した。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
怠惰
(
たいだ
)
の一団が勉強家を
脅迫
(
きょうはく
)
して答案の回送を負担せしめる。もし応じなければ
鉄拳
(
てっけん
)
が頭に
雨
(
あま
)
くだりする。
大抵
(
たいてい
)
学課に勉強な者は腕力が弱く
怠
(
なま
)
け者は強い。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
彼の持っている竹の先きには皮がついていた。それは工場で
怠
(
なま
)
けているものを機械の
枠越
(
わくご
)
しに、向う側でもなぐりつけることが出来るように、造られていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
私は、毎日、あらゆる努めを果たさうと努力してゐた。さうして私は、朝から晝まで、晝から晩まで、横着で、
怠
(
なま
)
け者で、すね者で、卑屈者だと云はれ通した。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
彼方
(
かなた
)
の造船場からは五時半の
喉
(
のど
)
太い汽笛が鳴り響いて来た。自分勝手に工場を
怠
(
なま
)
け休んで此の一日を無為に遊惰に過ごした者はその汽笛の声を喜ぶ資格はなかつた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
小利口にするばかりじゃアねえか!
怠
(
なま
)
け者やお
洒落
(
しゃれ
)
にするばかりじゃねえか! 悪く
狡猾
(
こうかつ
)
にするばかりじゃアねえか! お前達がいい証拠だ! 女狂いや遊び
三昧
(
ざんまい
)
や
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
俺たちの無能力が彼を怒らせさえしなければ、彼は実に人の善い無邪気な子供のような男だ。八戒はいつも
寐
(
ね
)
すごしたり
怠
(
なま
)
けたり化け
損
(
そこな
)
ったりして、怒られどおしである。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
君も知っている通り、おれはよく学校を
怠
(
なま
)
ける。だから、近頃ずっと休んでいるのを、たれも別に
怪
(
あやし
)
まない。ところが、妹の奴、兄さんは何故学校へ出ないのだと聞くのだ。
疑惑
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
看病に追われて
怠
(
なま
)
けていた上、一代が死んだ当座ぽかんとして半月も編輯所へ顔を見せなかったのだ。寺田はまた旧師に泣きついて、美術雑誌の編輯の口を世話してもらった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
少年のをり、土井は誰よりもその兄に愛されてゐた。
頑
(
かたくな
)
で
我儘
(
わがまゝ
)
で、そして
時
(
とき
)
としてはひどい
怠
(
なま
)
けものであつた異腹の末弟の彼を、兄は何んな場合にも自分の子供のやうに愛した。
閾
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
愕然
(
がくぜん
)
としてわれに返ると、余り
怠
(
なま
)
けた結果、私は六科目の注意点を受けてゐたので、
俄
(
にはか
)
に
狼狽
(
ろうばい
)
し切つた勉強を始め、例の便所の入口の薄明の下に書物を
披
(
ひら
)
いて立つたが、さうしたことも
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
あまりに精神上の
怠
(
なま
)
け者だった。何か直接のはっきりした事に取りかかっていないときには、まったく何にもしていなかった。夢想さえしていなかった。夜寝床に入ってさえそうだった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
僕はもちろん、勤めは
怠
(
なま
)
けないから、ぜひ保護をしていただきたいと頼んだ。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼がはじめてこの土地に家を建てた時に、民さんという男をつかっていたが、どうにも
怠
(
なま
)
け者で朝出の時間が
喰
(
く
)
い
違
(
ちが
)
ったり、不意に休んだりするので
我慢
(
がまん
)
ができなくなり、納得ずくで別れた。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
働く時にも
怠
(
なま
)
ける時にも、僕らは絶えずその
苛虐
(
かぎゃく
)
の
鞭
(
むち
)
に打たれているのだ。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「今日は僕なんにも仕事なかったのんで事務所
早退
(
はやび
)
きして来てん、お前らも学校
怠
(
なま
)
けててんなあ」いうて、「お茶でも入れて何ぞうまいお菓子ンでも出さんかいな、お客さんもあるし、……」
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ただ宿題を
怠
(
なま
)
けるんだ。おい、にんじん、
真面目
(
まじめ
)
にやろうという気になれ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
お互い
怠
(
なま
)
けているから、こんどのようなそんな
阿呆
(
あほ
)
らしい問題が起る。互いに励まし合って勉強して居れば、誤解も
嫉妬
(
しっと
)
も起るものじゃない。和というのは、決して消極的なものではないのです。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
小林は
沖人夫
(
おきにんぷ
)
であったが
稀
(
まれ
)
に見る
怠
(
なま
)
け者だった。で、彼を下宿させていた——事実は夫婦だったのだが——前科二、三犯もある
年増
(
としま
)
の後家さんも手にあまして、それを私の母に押しつけたのだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
砥石
(
といし
)
は
庖丁
(
ほうちょう
)
に刃をつける時に使え。使用後の手入れをちょっと
怠
(
なま
)
けると、すぐに庖丁はさびのきものをきてしまう。たまねぎも、きものを脱がして食べるのだから、庖丁も、きものを着たまま使うな。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
怠
(
なま
)
けゐてくるしき時は門に立ちあふぎわびしむ富士の高嶺を
樹木とその葉:05 夏を愛する言葉
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「私なぞはいくら暇でも、
怠
(
なま
)
けてばかり居りますわ。」
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
怠
(
なま
)
け者とには
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
父親
(
ちちおや
)
は、
怠
(
なま
)
け
者
(
もの
)
で、その
子
(
こ
)
の
教育
(
きょういく
)
ができないために、
行商
(
ぎょうしょう
)
にきた
人
(
ひと
)
にくれたのが、いま一
人前
(
にんまえ
)
の
男
(
おとこ
)
となって、
都会
(
とかい
)
で
相当
(
そうとう
)
な
店
(
みせ
)
を
出
(
だ
)
している。
空晴れて
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
卜斎
(
ぼくさい
)
は、つれてきた半助などには目もくれず、頭からこの
怠
(
なま
)
け者の抜け作などとどなりつけて、さんざん油をしぼったあげく
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
煩悶
(
はんもん
)
しているのを見ては親の入道も不安になって、極楽の願いも忘れたように、仏勤めは
怠
(
なま
)
けて、源氏の君の通って来ることを大事だと考えている。
源氏物語:13 明石
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
其
間
(
あひだ
)
に立つて僕
一人
(
ひとり
)
が、何と云つたつて、何を
為
(
し
)
たつて、仕様がないさ。僕は元来
怠
(
なま
)
けものだ。いや、君と一所に往来してゐる時分から
怠
(
なま
)
けものだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「馬鹿野郎、——水仕事一つしないやうな、
怠
(
なま
)
け者の手なんか見て感服したつて、何んの足しになるんだ」
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ははは、勝手に道楽で忙しいんでしてな、つい
暇
(
ひま
)
でもございまするしね、
怠
(
なま
)
け仕事に
板前
(
いたまえ
)
で
庖丁
(
ほうちょう
)
の腕前を
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いや、さうぢやない、ジエィン。この世は達成の世界ではないのです。そんな風に考へを
𢌞
(
めぐ
)
らすのはよくない。また休息の世界でもない。
怠
(
なま
)
け者になつてはいけませんよ。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
私は学校の方は
怠
(
なま
)
けて落第しそうになりながらも、文学の本ばかり読み
耽
(
ふけ
)
っていた。
骨を削りつつ歩む:――文壇苦行記――
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その様子を見る度に、以前の物語の
聴手
(
ききて
)
達は、この
莫迦面
(
ばかづら
)
の
怠
(
なま
)
け者に、貴い自分達の冬籠りの食物を頒けてやったことを腹立たしく思出した。シャクに
含
(
ふく
)
む所のある長老達は
北叟笑
(
ほくそえ
)
んだ。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「——皆、あまり働かないで、
怠
(
なま
)
けたり、ずる寝をしたがる傾きがあるが、戦争に勝てば、いくらでも休めるじゃないか、
奉公
(
ほうこう
)
するのも、今をのぞいて何時奉公するんだ、と隊長は言われました」
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
あまり好かないのは、
怠
(
なま
)
け者だからで、できないからではない……。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
仕事を少しでも
怠
(
なま
)
けたと見るときには大焼きを入れる。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
怠
常用漢字
中学
部首:⼼
9画
“怠”を含む語句
倦怠
怠惰
懈怠
懶怠
怠慢
過怠
惓怠
怠惰者
怠屈
怠業
気怠
緩怠
間怠
倦怠期
懶怠者
怠緩
緩怠至極
倦怠感
倦怠相
怠儀
...