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さんこく
ふりがな文庫
“
山谷
(
さんこく
)” の例文
浴室
(
よくしつ
)
の
窓
(
まど
)
からも
此
(
これ
)
が
見
(
み
)
えて、
薄
(
うつす
)
りと
湯氣
(
ゆげ
)
を
透
(
すか
)
すと、ほかの
土地
(
とち
)
には
餘
(
あま
)
りあるまい、
海市
(
かいし
)
に
對
(
たい
)
する、
山谷
(
さんこく
)
の
蜃氣樓
(
しんきろう
)
と
言
(
い
)
つた
風情
(
ふぜい
)
がある。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私
(
わたし
)
が、こちらへ
帰
(
かえ
)
ります
時分
(
じぶん
)
には、
王
(
おう
)
は、
南
(
みなみ
)
の
島
(
しま
)
へ
船
(
ふね
)
を
出
(
だ
)
されて、その
島
(
しま
)
の
山谷
(
さんこく
)
に
咲
(
さ
)
いているらんの
花
(
はな
)
をとりにまいられました。
珍しい酒もり
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
仙人
(
せんにん
)
張三丰
(
ちょうさんぼう
)
を
索
(
もと
)
めんとすというを
其
(
その
)
名
(
な
)
とすと
雖
(
いえど
)
も、
山谷
(
さんこく
)
に仙を
索
(
もと
)
めしむるが如き、永楽帝の
聰明
(
そうめい
)
勇決にして
豈
(
あに
)
真に
其
(
その
)
事
(
こと
)
あらんや。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
昔は老年になりてものの役に立たぬ人を無残にも
山谷
(
さんこく
)
に捨てし地方もありきとぞ。信州の
姨捨山
(
おばすてやま
)
はその遺跡となん聞えし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
此日放牧場の西端に立って遙に
斗満
(
とまむ
)
上流の
山谷
(
さんこく
)
を望んだ時、余は翁が
心絃
(
しんげん
)
の
震
(
ふる
)
えを
切
(
せつ
)
ないほど吾
心
(
むね
)
に感じた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
なるほど静かなものだなあ、まるで四方千里、
人烟
(
じんえん
)
を絶した
山谷
(
さんこく
)
の中に置き放されたような心持がする。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
不撓不屈
(
ふとうふくつ
)
な菊池だましいの本領である。——そこ北筑後から西肥後の
山谷
(
さんこく
)
へ隠れてしまっては、もう寄手は、幾万の兵力を
以
(
もっ
)
てしても、彼らに手はとどかなかった。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余イヘラク、コノ語非ナリト。何ゾヤ。則チ
少陵
(
しょうりょう
)
ハ
虁州
(
きしゅう
)
以後、
山谷
(
さんこく
)
ハ随州以後更ニソノ妙ニ
臻
(
いた
)
ル。而シテ
放翁
(
ほうおう
)
七十余ノ作イヨ/\絶妙ト称セラル。
豈
(
あに
)
頽唐ニ属センヤ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
此等は公の古人の詩をかかせ給へるを見て、後人しらずして編集せしなり。
賈至
(
かし
)
の詩を
山谷
(
さんこく
)
集に入れし類ならんか。〕毎幅二行字三四寸大にして
遵勁瀟灑
(
いうけいせうしや
)
たる行書なり。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一人おいて向こうに寐ているはずの
悟空
(
ごくう
)
の
鼾
(
いびき
)
が
山谷
(
さんこく
)
に
谺
(
こだま
)
するばかりで、そのたびに頭上の木の葉の露がパラパラと落ちてくる。夏とはいえ山の夜気はさすがにうすら寒い。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その
嘷
(
ほ
)
ゆる声百雷の、一時に落ち
来
(
きた
)
るが如く、
山谷
(
さんこく
)
ために震動して、物凄きこといはん方なし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
その上部落の女たちの中には、尊を非凡な
呪物師
(
まじものし
)
のように思っているものもないではなかった。これは尊が暇さえあると、
山谷
(
さんこく
)
の間をさまよい歩いて、薬草などを探して来るからであった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『
山谷
(
さんこく
)
の風をしてほしいままに汝を吹かしめよ』、自分はわが情とわが身とを投げ出して自然の
懐
(
ふところ
)
に任した。あえて佐伯をもって湖畔詩人の湖国と同一とはいわない、しかし
湖国
(
ここく
)
の風土を叙して
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
本棚の片隅には、
帙入
(
ちついり
)
の唐本の『
山谷
(
さんこく
)
詩集』などもありました。真中は洋書で、医学の本が重らしく、一方には
馬琴
(
ばきん
)
の
読本
(
よみほん
)
の『八犬伝』『巡島記』『
弓張月
(
ゆみはりづき
)
』『美少年録』など、予約出版のものです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
吾人
(
ごじん
)
は乃ち伯叔と共に余生を
山谷
(
さんこく
)
の
蕨草
(
けつさう
)
に托し候はむかな。
渋民村より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
扨
(
さて
)
徳太郎君は
和歌山
(
わかやま
)
の
城下
(
じやうか
)
は申すに
及
(
およば
)
ず
近在
(
きんざい
)
なる
山谷
(
さんこく
)
原野
(
げんや
)
の
隔
(
へだて
)
なく
駈廻
(
かけめぐ
)
りて
殺生
(
せつしやう
)
し
高野
(
かうや
)
根來等
(
ねごろとう
)
の
靈山
(
れいざん
)
後
(
のち
)
には
伊勢
(
いせ
)
神領
(
しんりやう
)
まであらさるゝ
故
(
ゆゑ
)
百姓共
迷惑
(
めいわく
)
に思ひしが
詮方
(
せんかた
)
なく
其儘
(
そのまゝ
)
に
捨置
(
すておき
)
けり
爰
(
こゝ
)
に勢州
阿漕
(
あこぎ
)
が
浦
(
うら
)
といふは
往古
(
わうこ
)
より
殺生禁斷
(
せつしやうきんだん
)
の場なるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
雪枝
(
ゆきえ
)
はハツと
身
(
み
)
を
伏
(
ふ
)
せて、
巌
(
いは
)
に
吸込
(
すひこ
)
まれるかと
呼吸
(
いき
)
を
詰
(
つ
)
めたが、
胸
(
むね
)
の
動悸
(
だうき
)
が、
持上
(
もちあ
)
げ
揺上
(
ゆりあ
)
げ、
山谷
(
さんこく
)
尽
(
こと/″\
)
く
震
(
ふる
)
ふを
覚
(
おぼ
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
山谷
(
さんこく
)
に答え
心魂
(
しんこん
)
に徹して、なんとも形容のできないすさまじき気合ともろとも、夜の如く静かであった島田虎之助は、
颶風
(
ぐふう
)
の如く飛ぶよと見れば、ただ一太刀で
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
若者は空想から
破
(
やぶれ
)
た。この時悲哀な声で
研手
(
とぎて
)
の悪者が歌い出した——その声は
寂然
(
ひっそり
)
とした
山谷
(
さんこく
)
に響く。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
炭焼君
(
すみやきくん
)
の家で昼の
握飯
(
にぎりめし
)
を食って、
放牧場
(
ほうぼくじょう
)
の
端
(
はし
)
から二たび斗満
上流
(
じょうりゅう
)
の
山谷
(
さんこく
)
を回顧し、ニケウルルバクシナイに来ると、妻は鶴子を
抱
(
だ
)
いて
駄馬
(
だば
)
に乗った。
貢君
(
みつぎくん
)
が
口綱
(
くちづな
)
をとって行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
むかし
或
(
あ
)
る
深山
(
みやま
)
の奥に、一匹の虎住みけり。
幾星霜
(
いくとしつき
)
をや経たりけん、
躯
(
からだ
)
尋常
(
よのつね
)
の
犢
(
こうし
)
よりも
大
(
おおき
)
く、
眼
(
まなこ
)
は百錬の鏡を欺き、
鬚
(
ひげ
)
は
一束
(
ひとつか
)
の針に似て、
一度
(
ひとたび
)
吼
(
ほ
)
ゆれば声
山谷
(
さんこく
)
を
轟
(
とどろ
)
かして、
梢
(
こずえ
)
の鳥も落ちなんばかり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
上山を発してからは
人烟
(
じんえん
)
稀
(
まれ
)
なる
山谷
(
さんこく
)
の間を過ぎた。
縄梯子
(
なわばしご
)
に
縋
(
すが
)
って
断崖
(
だんがい
)
を
上下
(
しょうか
)
したこともある。
夜
(
よる
)
の宿は
旅人
(
りょじん
)
に
餅
(
もち
)
を売って茶を供する休息所の
類
(
たぐい
)
が多かった。宿で物を盗まれることも数度に及んだ。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
おなじ美丈夫ながら、兄宮は六尺ゆたかな体躯で、
叱咤
(
しった
)
は
山谷
(
さんこく
)
に
木魂
(
こだま
)
する
概
(
がい
)
を持っていたが、この弟宮のほうは、
蒲柳
(
ほりゅう
)
であった。——歌よみの家の、冷泉家から出たおん母に似たものか、いと優しい。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一様に空々寂々たる
山谷
(
さんこく
)
の夜となりましたから、二人はまさしく物につままれたような気分で、なお暫く形勢をみていましたが、用心のため、更にもう一発を切って放ち、そうして
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
きいても気の
滅入
(
めい
)
る事は、むかし
大饑饉
(
おおききん
)
の年、近郷から、湯の煙を慕って、
山谷
(
さんこく
)
を
這出
(
はいで
)
て来た
老若男女
(
ろうにゃくなんにょ
)
の、救われずに、菜色して餓死した骨を拾い集めて葬ったので、その塚に沿った松なればこそ
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
汝ら、生をうけて、何ぞこの
狭隘
(
きょうあい
)
の
山谷
(
さんこく
)
に、雲と児戯するや。雲すでに起つ、雲に
駕
(
が
)
せよ。行くこと西方三千里、
廬山
(
ろざん
)
に臥し
峨眉峰
(
がびほう
)
を指さし、足を長江に
濯
(
すす
)
ぎ、気を大世界に吸う。生命真に伸ぶべし。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
激戦がつづき、毎日、大軍の魔のこだまが
山谷
(
さんこく
)
にくり返された。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
鼾
(
いびき
)
たるやまた
山谷
(
さんこく
)
を揺するがごときものであった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山谷
(
さんこく
)
笑
(
わら
)
う
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“山谷”の意味
《名詞》
山 谷(さんこく)
山と谷。
山中にある谷。
《固有名詞》
地名に多く用いられる漢字列。
(出典:Wiktionary)
山
常用漢字
小1
部首:⼭
3画
谷
常用漢字
小2
部首:⾕
7画
“山谷”で始まる語句
山谷堀
山谷通
山谷戸
山谷橋
山谷等
山谷間
山谷風
山谷険難
山谷勘兵衛