トップ
>
囲炉裏
>
いろり
ふりがな文庫
“
囲炉裏
(
いろり
)” の例文
旧字:
圍爐裏
その縄に巻かれると、大力の与八が、もろくも
囲炉裏
(
いろり
)
のそばまで引き戻されてしまいました。それは
拒
(
こば
)
めば首がくくられるからです。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「お父さんな、まだ帰らんのか。」と浅七は外から
這入
(
はい
)
って来た。家の中は暗かった。
囲炉裏
(
いろり
)
の中には
蚊遣
(
かやり
)
の青葉松が
燻
(
いぶ
)
って居た。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
家の男女の一年間の
隠
(
かく
)
しごとを、随分と露骨にいってしまうのだが、それを黙って
囲炉裏
(
いろり
)
ばたで首を垂れて
聴
(
き
)
いているのだそうである。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それだけでも驚く
価値
(
ねうち
)
は十分あるが、その広い原の中に大きな
囲炉裏
(
いろり
)
が二つ切ってある、そこへ人間が約十四五人ずつかたまっている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
じいさんがじっと
囲炉裏
(
いろり
)
の横に坐っていると、遠くの峠のあたりから、ぞうっと肌が寒くなるような狼の声が聞えて来たりするのでした。
すみれ
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
▼ もっと見る
彼女の
継母
(
ままはは
)
は、祖父のこの
呟
(
つぶや
)
きを、快く聞き流しながら、背中に小さな子供を不格好に背負い込んで
囲炉裏
(
いろり
)
で沢山の握り飯を焼いていた。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
名古屋へ向けて半蔵がたつ日の朝には、お民をはじめ下男の佐吉まで暗いうちから起きて、
母屋
(
もや
)
の
囲炉裏
(
いろり
)
ばたや勝手口で働いた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
例えば、雪国生活の衛生の問題で一番問題になるのは
囲炉裏
(
いろり
)
である。
生木
(
なまき
)
のいぶる室内の煙の中の生活は何とかして止めなければならない。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
大将の鬼は
旦那座
(
だんなざ
)
から一足
飛
(
と
)
びに土間へ
跳
(
は
)
ね下りようとして、
囲炉裏
(
いろり
)
にかけた
自在鉤
(
じざいかぎ
)
に鼻の
穴
(
あな
)
を引っかけてしまった。すると
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
煤
(
すす
)
けた
梁
(
はり
)
や柱に黒光りがするくらい年代のある田舎家の座敷を、そっくりそのまま持ち込まれた茶座敷には、
囲炉裏
(
いろり
)
もあり、
行灯
(
あんどん
)
もあった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と、雲水の僧は、やおらかたえの
囲炉裏
(
いろり
)
の上へ半身をかがめた。左手に右の衣袖を収めて、
紅蓮
(
ぐれん
)
をふく火中深くその逞しい片腕を差し入れた。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
僅かに
馬士歌
(
まごうた
)
の哀れを止むるのみなるも改まる
御代
(
みよ
)
に余命つなぎ得し白髪の
媼
(
おうな
)
が
囲炉裏
(
いろり
)
のそばに
水洟
(
みずばな
)
すゝりながら孫
玄孫
(
やしゃご
)
への語り草なるべし。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
『あれ……あの
囲炉裏
(
いろり
)
のそばにかたまっている浪士衆の中に……指角力をやって負けたらしい、ほんのりと、紅い顔している十七、八の若衆』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家の央に
囲炉裏
(
いろり
)
があって、東側の窻のある方が上座、上座から見て右が eshiso 左が harkiso。上座に坐るのは男子に限ります。
アイヌ神謡集
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
小さい
囲炉裏
(
いろり
)
のような私一個の安心立命は思い捨て、この人生が彼にとって根本に寂しと観じられているならそれなり刻々の我が全生活をかけて
芭蕉について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
囲炉裏
(
いろり
)
端で、一家、にぎやかな夕食がはじまった。善助、イワ、長兄倉助、その嫁ミキ、その子の三歳になる松男、弟
牛三
(
ぎゅうぞう
)
、それに、マンの七人。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
あの灯の
点
(
とも
)
っている
懐
(
なつ
)
かしい窓の障子を明けると、年をとったお父さんとお母さんとが
囲炉裏
(
いろり
)
の
傍
(
そば
)
で
粗朶
(
そだ
)
を
焚
(
た
)
いていて
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
おばあさんは、
囲炉裏
(
いろり
)
にまきをくべて、
暖
(
あたた
)
かくしてくれたり、おかゆを
炊
(
た
)
いてお
夕飯
(
ゆうはん
)
を
食
(
た
)
べさせてくれたり、いろいろ
親切
(
しんせつ
)
にもてなしてくれました。
安達が原
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
雲水
(
うんすい
)
に似た旅人芭蕉も、時には一定の住所に
庵
(
いおり
)
を構えて、冬の
囲炉裏
(
いろり
)
を囲みながら、
侘
(
わび
)
しく暮していたこともある。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「
前
(
まえ
)
にも一
度
(
ど
)
こういうことがあった。
人
(
ひと
)
さらいにつれていかれたか、たぬきにでもばかされたのであろう。」と、
囲炉裏
(
いろり
)
に
粗朶
(
そだ
)
をたきながら
話
(
はなし
)
しました。
谷にうたう女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
北の国々は寒い地方ですから
囲炉裏
(
いろり
)
とは離れられない暮しであります。それ故必然に
炉
(
ろ
)
で用いるもの、
自在鉤
(
じざいかぎ
)
とか、
五徳
(
ごとく
)
とか
火箸
(
ひばし
)
とか
灰均
(
はいならし
)
なども選びます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
満蔵は二俵目の米を倉から出してきて
臼
(
うす
)
へ入れてる。おはまは芋を鍋いっぱいに入れてきて
囲炉裏
(
いろり
)
にかけた。あとはお祖母さんに頼んでまた繩ないにかかる。
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
船頭宿の
常式
(
じょうしき
)
どおり、帆綱や
漏水桶
(
あかおけ
)
や油灯などが乱雑につみあげられた広い土間からすぐ二十畳ばかりの框座敷になり、二カ所に大きな
囲炉裏
(
いろり
)
が切ってある。
顎十郎捕物帳:13 遠島船
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ただし榾とは言っても
囲炉裏
(
いろり
)
にくべるのではなくて、
白樺
(
しらかば
)
など
脂
(
あぶら
)
の多い木の榾を暖炉の上に立てて
蝋燭
(
ろうそく
)
代りにともすのがロシヤの貧しい農家のならいであった。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
……待たっせえ、腰を円くそう坐られた
体裁
(
ていたらく
)
も、森の中だけ狸に見える。何と、この
囲炉裏
(
いろり
)
の灰に、手形を一つお
圧
(
お
)
しなさい、ちょぼりと
落雁
(
らくがん
)
の形でござろう。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蛩によって
分
(
わか
)
てば秋になり、
囲炉裏
(
いろり
)
によって分てば冬に入る。その辺は分類学者に任せて置いて差支ない。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
支那人の給仕人が丸太作りの灰色の窓を
閉
(
とざ
)
すと、客のない閑散とした部屋々々は
妾
(
わたし
)
達と胡月の
女将
(
おかみ
)
である四十前後の小柄な日本婦人花子とが
囲炉裏
(
いろり
)
をかこんでいた。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
風さえ加わって、
庫裡
(
くり
)
の杉戸の
隙間
(
すきま
)
から時折り雪を舞い入らせる。そのたびに灯の穂が低くなびく。板敷の間の
囲炉裏
(
いろり
)
をかこんで、問わず語りの雑談が
暫
(
しばら
)
く続いた。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
定番
(
じょうばん
)
を相手に、
囲炉裏
(
いろり
)
のそばでしばらく話していると、やがて善八は大工の勝次郎をつれて来た。
半七捕物帳:43 柳原堤の女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
珠運
(
しゅうん
)
も思い
掛
(
がけ
)
なく色々の始末に七日余り
逗留
(
とうりゅう
)
して、
馴染
(
なじむ
)
につけ
亭主
(
ていしゅ
)
頼もしく、お
辰
(
たつ
)
可愛
(
かわゆ
)
く、
囲炉裏
(
いろり
)
の
傍
(
はた
)
に極楽国、
迦陵頻伽
(
かりょうびんが
)
の
笑声
(
わらいごえ
)
睦
(
むつま
)
じければ客あしらいされざるも
却
(
かえっ
)
て気楽に
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は、眼に色ガラスのようなものでもかかったのかと思い、それをとりはずそうとして、なんどもなんども
目蓋
(
まぶた
)
をつまんだ。私は誰かのふところの中にいて、
囲炉裏
(
いろり
)
の焔を眺めていた。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一隅に小さい
葛籠
(
つづら
)
、その傍に近所の人の情けで
拵
(
こしら
)
えた
蒲団
(
ふとん
)
に
赤児
(
あかご
)
がつぎはぎの着物を着て寝ていて、その向こうに一箇の
囲炉裏
(
いろり
)
、黒い竹の
自在鍵
(
じざいかぎ
)
に
黒猫
(
くろねこ
)
のようになった
土瓶
(
どびん
)
がかかっていて
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
それで電燈は、出居と
囲炉裏
(
いろり
)
の
間
(
ま
)
との仕切の
鴨居
(
かもい
)
に
釘
(
くぎ
)
を打ちつけて、その釘にコオドを引き掛けてあるのを、夕食のおりだけはずして来て、食卓を側面から照らすように仕向けるのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
茣蓙
(
ござ
)
か、
囲炉裏
(
いろり
)
か、
飯台
(
はんだい
)
か。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
部屋はやっぱり広いが、自分の泊った所ほどでもない。電気灯は
点
(
つ
)
いている。
囲炉裏
(
いろり
)
もある。ただ
人数
(
にんず
)
が少い、しめて五六人しかいない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その考えから、彼はお民に言い付けて下女を起こさせ、
囲炉裏
(
いろり
)
の火をたかせ、中津川の方へ出かける前の朝飯のしたくをさせた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そう気をもまれてはかえって困ると言って、ごろりと
囲炉裏
(
いろり
)
のほうを枕に、
臂
(
ひじ
)
を曲げて寝ころぶと、外は
蝙蝠
(
こうもり
)
も飛ばない静かな
黄昏
(
たそがれ
)
である。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そこも雨は
漏
(
も
)
り、
畳
(
たたみ
)
は
腐
(
くさ
)
り、
天井
(
てんじょう
)
には
穴
(
あな
)
があき、そこら中がかびくさかった。勘太郎は土間の
上
(
あ
)
がり
框
(
かまち
)
のところにある
囲炉裏
(
いろり
)
の所へ行ってみた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
「ですから、わたし、もう起きちゃいますわ。起きて、あなたと一緒に、その
囲炉裏
(
いろり
)
の傍でお話をしましょう」
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ごろりと、そこらへ横になると、
高鼾
(
たかいびき
)
をかいて眠ってしまう者があるし、大きな
囲炉裏
(
いろり
)
のそばにかたまって
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風さへ加はつて、
庫裡
(
くり
)
の杉戸の
隙間
(
すきま
)
から時折り雪を舞ひ入らせる。そのたびに灯の穂が低くなびく。板敷の間の
囲炉裏
(
いろり
)
をかこんで、問はず語りの雑談が
暫
(
しばら
)
く続いた。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
かねちゃんは、泣きあぐんで、少し気が
労
(
つか
)
れて、火もない
囲炉裏
(
いろり
)
の傍で、まりの温かいむくむくとした毛の中に可愛らしい頬を埋めて、居眠りをしたのであります。
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
卓の上には
韮付焼麺麭
(
ショポンパン
)
が山のように盛られ、
囲炉裏
(
いろり
)
の大鍋には、サフランの花を入れた肉と
野菜
(
ラグウ
)
のごった煮が煮えあがって、たまらない匂いを村中に振りまいている。
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
勿論、そんなことは
他人
(
ひと
)
にうっかりしゃべられないんですが、それでも酒に酔った時などには、
囲炉裏
(
いろり
)
のそばで弟に話したことがあるので、作兵衛はそれをよく知っていたんです。
半七捕物帳:18 槍突き
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しばらくすると、誰か
囲炉裏
(
いろり
)
の方へ起きて行く気配がした。お婆さんは耳を澄ました。足音は戸外へ出て行った。ごくりと唾を
嚥
(
の
)
み
下
(
くだ
)
して、お婆さんは出来るだけ小さく身を縮めた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
大きな
囲炉裏
(
いろり
)
の中に仕込むもので、火を長く保たせるのに役立つといいます。四角なもの
円
(
まる
)
いもの共にありますが、多くはその二つをつなぎ
炉縁
(
ろべり
)
と五徳とを合せたようなものであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ある日、姉さんとふたりで、
囲炉裏
(
いろり
)
を中にはさんで針仕事をしながら、
四方山噺
(
よもやまばなし
)
をしていると、もう日も暮れようとする頃、戸外に人の歩く足音がして、誰か咳ばらいをしながら入って来た。
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
如才
(
じょさい
)
なく立ちまわれよ、と編輯長に言われて、ふだんから生真面目の人、しかもそのころは未だ二十代、山の奥、竹の柱の草庵に文豪とたった二人、
囲炉裏
(
いろり
)
を挟んで徹宵お話うけたまわれるのだと
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
榾
(
ほだ
)
を
焚
(
た
)
く田舎の
囲炉裏
(
いろり
)
……
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こう考えながら半丁ほどの路を降りて
飯場
(
はんば
)
へ帰って、二階へ上がった。上がると案のじょう大勢
囲炉裏
(
いろり
)
の
傍
(
そば
)
に待ち構えている。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“囲炉裏”の解説
囲炉裏(いろり、居炉裏とも表記)とは、屋内に恒久的に設けられる炉の一種。伝統的な日本の家屋において床を四角く切って開け灰を敷き詰め、薪や炭火などを熾すために設けられた一角のことである。主に暖房・調理目的に用いる。数える際には「基」を用いる。古くは、比多岐(ひたき)や地火炉(ぢかろ)とも言った。
(出典:Wikipedia)
囲
常用漢字
小5
部首:⼞
7画
炉
常用漢字
中学
部首:⽕
8画
裏
常用漢字
小6
部首:⾐
13画
“囲炉裏”で始まる語句
囲炉裏端
囲炉裏側
囲炉裏縁