“いろり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
囲炉裏53.4%
囲炉裡23.3%
10.3%
地炉5.2%
居炉裏1.7%
囲爐裏0.9%
囲炉0.9%
囲爐裡0.9%
圍爐裏0.9%
地爐0.9%
0.9%
煖炉0.9%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「お父さんな、まだ帰らんのか。」と浅七は外から這入はいって来た。家の中は暗かった。囲炉裏いろりの中には蚊遣かやりの青葉松がいぶって居た。
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
同じこの宿の住民と見えて囲炉裡いろりを囲んで五、六人がにぎやかに話をしていたが、武兵衛の姿を一目見るや互いに眼と眼を見合わせた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「大きな声じゃ言えんがね、それは造作ぞうさなくやれるんだよ」とその女は、いろりそばで小さな声で母に話し始めたのだった。
漁師の勘作かんさくはその日もすこしも漁がないので、好きな酒も飲まずに麦粥むぎかゆすすって夕飯ゆうめしをすますと、地炉いろりの前にぽつねんと坐って煙草をんでいた。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
立木を柱に取って板屋根を差掛けた掘ッ立小屋で、入口が土間になり、四、五畳の古畳を敷いたところに居炉裏いろりが切ってある。山番が雨に逢った時の避難所だッたが、今は立寄るものもない。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
宿直室は六畳で、その隣に小使べやがあった。小使室には大きな囲爐裏いろりに火がかっかっと起こって、自在鍵じざいかぎにつるした鉄瓶てつびんはつねに煮えくりかえっていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その日はふなの料理に暮れた。爼板まないたの上でコケを取って、金串かなぐしにそれをさして、囲爐裏いろりに火を起こして焼いた。小使はそのそばでせっせと草鞋わらじを造っている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
... 火鉢へでも囲炉いろりへでも好き自由にかかりますからかえって自分で造らせた方が大小長短自在なものが出来ます」玉江嬢
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
すると、こつそり起きて、圍爐裏いろりに薪を添へ、パチパチと音して勢ひよく燃える炎に老の顏を照らされながら、一つしか無い目に涙を湛へて、六十年の來し方を胸に繰返す。——
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その怪しい女の姿は翌朝また地爐いろりの傍に見えた。その時小三郎はまだ眠っていたので小三郎の父の家から付けてある重左衛門じゅうざえもんと云う小男げなんが見つけた。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これで大和も、河内との境ぢやで、もう魂ごひのぎやうもすんだ。今時分は、郎女さまのからだは、いろりの中で魂をとり返してぴち/\して居られるぞ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
チャーミングさんは、すらりとした長身をゆったりと椅子の中にのばし、沈鬱メランコリックな眼ざしで静かに煖炉いろりの火を見つめている。