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囲炉裡
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いろり
ふりがな文庫
“
囲炉裡
(
いろり
)” の例文
旧字:
圍爐裡
座敷とは事かわって、すっかり暗くなった
囲炉裡
(
いろり
)
のまわりには、集まって来た小作人を相手に早田が小さな声で浮世話をしていた。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
同じこの宿の住民と見えて
囲炉裡
(
いろり
)
を囲んで五、六人が
賑
(
にぎや
)
かに話をしていたが、武兵衛の姿を一目見るや互いに眼と眼を見合わせた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
岡浪之進は、卜伝流のさっそくの働き、
囲炉裡
(
いろり
)
に掛けてあった、
粥鍋
(
かゆなべ
)
の蓋を取って、続け様に飛んで来る、平次の投げ銭を受けたのです。
銭形平次捕物控:277 和蘭の銀貨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがて井筒屋へ行くと、吉弥とお貞と主人とか
囲炉裡
(
いろり
)
を取り巻いて坐っている。お君や正ちゃんは何も知らずに寝ているらしい。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
身仕度
(
みじたく
)
を整えた伝吉は
長脇差
(
ながわきざし
)
を引き抜いた
後
(
のち
)
、がらりと地蔵堂の
門障子
(
かどしょうじ
)
をあけた。
囲炉裡
(
いろり
)
の前には坊主が一人、
楽々
(
らくらく
)
と足を投げ出していた。
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
山家
(
やまが
)
の茶屋の店さきへ倒れたが、火の
赫
(
かっ
)
と起つた、
囲炉裡
(
いろり
)
に
鉄網
(
てつあみ
)
をかけて、亭主、女房、
小児
(
こども
)
まじりに、
餅
(
もち
)
を焼いて居る、此の
匂
(
におい
)
をかぐと
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
三毛は、もうすつかり一人前の大きな猫になつて、雨のふる日には、
囲炉裡
(
いろり
)
ばたへうづくまつて、しづかに眠つてゐます。
身代り
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
お小夜はお汁鍋を
囲炉裡
(
いろり
)
へかけ、火を移した。祖母と国吉は、火のはたで田雀の毛をむしっている。お小夜は明日の朝の米を研ぎに井戸端へ出た。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しかし、百瀬秀人の後につゞいて勝手口の土間へはいつた彼は、
囲炉裡
(
いろり
)
ばたの薄暗い光線の中に手拭を頭にかぶつた小萩の姿をちらと見てしまつたのである。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
迷惑千万
(
めいわくせんばん
)
なる話なれど是非もなく、
囲炉裡
(
いろり
)
の側にて
煙草
(
タバコ
)
を吸いてありしに、死人は老女にて奥の方に寝させたるが、ふと見れば
床
(
とこ
)
の上にむくむくと起き直る。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
垣根に
房楊枝
(
ふさようじ
)
をかけて井戸ばたを離れた栄三郎を、孫七と割りめしが
囲炉裡
(
いろり
)
のそばに待っていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その眼にも様々あったが、
爛
(
ただ
)
れ目が殊に多かった。冬籠りに
囲炉裡
(
いろり
)
の煙で痛めたらしかった。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
茶道の講釈を遊ばすと云う有様でござりましたが、その
囲炉裡
(
いろり
)
の縁までが沈の木で出来ておりましたので、妙なる異香があたりに
熏
(
くん
)
じて、並みいる方々の心も空になったと申します
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
小屋は屋根を板で
葺
(
ふ
)
いて、その上に木を横たえてある。周囲は薄や粟からで囲ってある。中は入口近くに三尺四方ほどの
囲炉裡
(
いろり
)
があって、
古莚
(
ふるむしろ
)
を敷いたところは
曲
(
かぎ
)
の
手
(
て
)
の一畳半ほどもない。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
というのはこの地方では
不相変
(
あいかわらず
)
囲炉裡
(
いろり
)
で
焚火
(
たきび
)
をやっているが、それは燃料の経済からいっても、住居の構造と衛生からいっても損するところが多いものだ、それに
薪
(
まき
)
の材料も年々不足して来るし
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
火の気が
無
(
な
)
えから
些
(
ちっ
)
とばかり
麁朶
(
そだ
)
を
突燻
(
つっくべ
)
て
燃
(
もや
)
して居るだが、己が
家
(
うち
)
でなえから泊める訳にはいきませんが、今
主
(
あるじ
)
が
帰
(
けえ
)
るかも知んねえ、困るなれば、
此処
(
こゝ
)
へ来て、
囲炉裡
(
いろり
)
の
傍
(
はた
)
で濡れた着物を
炙
(
あぶ
)
って
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
五軒目には人が住んでいたがうごめく人影の間に
囲炉裡
(
いろり
)
の
根粗朶
(
ねそだ
)
がちょろちょろと燃えるのが見えるだけだった。六軒目には
蹄鉄屋
(
ていてつや
)
があった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
するとある年のなたら(
降誕祭
(
クリスマス
)
)の
夜
(
よ
)
、
悪魔
(
あくま
)
は何人かの役人と一しょに、突然
孫七
(
まごしち
)
の
家
(
いえ
)
へはいって来た。孫七の家には大きな
囲炉裡
(
いろり
)
に「お
伽
(
とぎ
)
の
焚
(
た
)
き
物
(
もの
)
」
おぎん
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
毎日夕がたになると、家族は
囲炉裡
(
いろり
)
を取りまいて、吉弥の口のかかって来るのを今か今かと待っている。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
囲炉裡
(
いろり
)
の灰の中に、ぶすぶすと
燻
(
くすぶ
)
っていたのを、抜き出してくれたのは、
串
(
くし
)
に刺した
茄子
(
なす
)
の焼いたんで。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
喪
(
も
)
の間は火の
気
(
け
)
を
絶
(
た
)
やすことを
忌
(
い
)
むがところの
風
(
ふう
)
なれば、祖母と母との二人のみは、大なる
囲炉裡
(
いろり
)
の
両側
(
りょうがわ
)
に
坐
(
すわ
)
り、
母人
(
ははびと
)
は
旁
(
かたわら
)
に
炭籠
(
すみかご
)
を置き、おりおり炭を
継
(
つ
)
ぎてありしに
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
爾来
(
じらい
)
杉右衛門は
憂欝
(
ゆううつ
)
になった。自分の家の
囲炉裡
(
いろり
)
の側からめったに離れようとはしなかった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いま現に利用しつつあるところのこの半壊の
囲炉裡
(
いろり
)
を修理して、これに格子か、或いは
櫓
(
やぐら
)
を載せて、そうして
炬燵
(
こたつ
)
の形式にすることが最も簡単で、そうして効果のあることだと思い当ったらしく
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と上りましたが、新吉もお賤もあつかましいから、
囲炉裡
(
いろり
)
の側へ参り
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
係蹄で捕れた兎の肉を、串にさして
榾火
(
ほたび
)
で焼きながら、物語をしたら楽しかろうと思った。
囲炉裡
(
いろり
)
の火は快よく燃える。
銘々
(
めいめい
)
長く双脚を伸して、山の話村の話、さては都の話に時の移るをも知らない。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
鋭い口笛のようなうなりを立てて吹きまく風は、小屋をめきりめきりとゆすぶり立てた。風が
小凪
(
おな
)
ぐと
滅入
(
めい
)
るような静かさが
囲炉裡
(
いろり
)
まで
逼
(
せま
)
って来た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
僕が
囲炉裡
(
いろり
)
のそばに坐っているにもかかわらず、ほとんどこれを意にかけないかのありさまで、ただそわそわと立ったりいたり、——少しも落ちついていなかった。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
帳場の
傍
(
はた
)
にも
囲炉裡
(
いろり
)
の
際
(
きわ
)
にも
我勝
(
われがち
)
で、なかなか足腰も伸びません位、
野陣
(
のじん
)
見るようでござりまする。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
委細
(
いさい
)
を聞き終った日錚和尚は、
囲炉裡
(
いろり
)
の側にいた
勇之助
(
ゆうのすけ
)
を招いで、顔も知らない母親に五年ぶりの対面をさせました。女の言葉が嘘でない事は、自然と和尚にもわかったのでしょう。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
便用に行きたしといえば、おのれみずから外より便器を持ち来たりてこれへせよという。夕方にもなりしかば母もついにあきらめて、大なる
囲炉裡
(
いろり
)
の
側
(
かたわら
)
にうずくまりただ泣きていたり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
岩を畳んだ巨大な
囲炉裡
(
いろり
)
が、広場の中央に築いてあった。そこで猛火が燃えていた。炉の上に大きな鍋があった。何かグツグツ煮えていた。湯気が
濛々
(
もうもう
)
と立ち上がり、悪臭が強く鼻を刺した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
新「
何
(
ど
)
うして、お前まア恐ろしい怪我をして、エヽ、なに
何
(
なん
)
だか
判然
(
はっきり
)
と云わなければ、もっと傍へ来て、え、
囲炉裡
(
いろり
)
へ落ちて、何うも火傷するたって、何うも恐ろしい怪我じゃアないか、まアえゝ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
がんりきは、お絹の手を取って、やはり
囲炉裡
(
いろり
)
の一端に坐らせる。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
仁右衛門は押黙ったまま
囲炉裡
(
いろり
)
の
横座
(
よこざ
)
に坐って佐藤の妻の狂態を見つめていた。それは仁右衛門には意外の結果だった。彼れの気分は妙にかたづかないものだった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
見上げた
破風口
(
はふぐち
)
は峠ほど高し、とぼんと野原へ出たような気がして、
縁
(
えん
)
に添いつつ
中土間
(
なかどま
)
を、
囲炉裡
(
いろり
)
の前を向うへ通ると、
桃桜
(
ももさくら
)
溌
(
ぱっ
)
と輝くばかり、
五壇
(
ごだん
)
一面の
緋毛氈
(
ひもうせん
)
、やがて四畳半を
充満
(
いっぱい
)
に雛
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庫裡には釜をかけた
囲炉裡
(
いろり
)
の側に、勇之助が
蜜柑
(
みかん
)
を
剥
(
む
)
いている。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
竜之助の手を引いて坐らせたのは大きな
囲炉裡
(
いろり
)
の
横座
(
よこざ
)
。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
多勢
(
おおぜい
)
囲炉裡
(
いろり
)
の
周囲
(
まわり
)
へ
塊
(
かたま
)
って
茫然
(
ぼんやり
)
して居ります。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あやうく
囲炉裡
(
いろり
)
へ踏み込もうとした。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
禿
(
は
)
げ上がった額の生え
際
(
ぎわ
)
まで充血して、手あたりしだいに巻煙草を
摘
(
つま
)
み上げて
囲炉裡
(
いろり
)
の火に持ってゆくその手は激しく震えていた。彼は父がこれほど怒ったのを見たことがなかった。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼は軽い捨て鉢な気分でその人たちにかまわず
囲炉裡
(
いろり
)
の横座にすわりこんだ。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
囲
常用漢字
小5
部首:⼞
7画
炉
常用漢字
中学
部首:⽕
8画
裡
漢検準1級
部首:⾐
12画
“囲炉裡”で始まる語句
囲炉裡側
囲炉裡火
囲炉裡端