くん)” の例文
ぼくはそのかおながめた時、おもわず「ずいぶんやせましたね」といった。この言葉ことばはもちろん滝田くん不快ふかいあたえたのにちがいなかった。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
蝉取りの妙味はじっと忍んで行っておしいくんが一生懸命に尻尾しっぽを延ばしたりちぢましたりしているところを、わっと前足でおさえる時にある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「よう、虫めがねくん、お早う」といますと、近くの四、五人の人たちが声もたてずこっちもかずにつめたくわらいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「もうこれからは君をわが子と見て、他の子供たちと一切区別はしない。したがつて呼び棄てにする」(それまで父はくんをつけて私を呼んでゐた)
母たち (新字旧仮名) / 神西清(著)
何か改つてものをいふ時にはくんづけにし、標準語でものをいふのがかつて巡査であつたことのあるこの男の癖である。
一過程 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
その遊戯を知らない何とかくんという、ひどく太い眉毛の若者が傍のソファで仮睡をし、夢で女賊マジャーンに出会するという筋なのだが——マジャーンが
茶色っぽい町 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「アア、ま、もる、くんか。わしは、ひ、ひどい、めに遭った」と、もつれる舌で、やっとそれだけ云うと、ガッカリと疲れた様に、目をふさいで、又かすかに唸り始めた。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
山田やまだともかず石橋いしばしとも付かずでお茶をにごしてたのです、其頃そのころ世間せけん持囃もてはやされた読物よみものは、はるのやくん書生気質しよせいかたぎ南翠なんすゐくんなんで有つたか、社会小説しやくわいせうせつでした、それから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「それは普通ふつう無智むちおんなたいしてのことさ。IならS、Hくんでもきつとおとなしくするよ。」わたし自家じかけん遜の意味いみつたが、いくらかの皮肉ひにくもないとはへなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かつ寺内内閣てらうちないかく議會ぎくわいで、藏原代議士くらはらだいぎし總理大臣そうりだいじんから「ゾーバラくん」とばれて承知しやうちせず、「これ寺内てらうちをジナイとぶがごとし」と抗辯かうべんして一ぜう紛議ふんぎかもしたことがあつた。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
とまた三人くんづけで、以下呼びずてにもどる。若殿様が教室にいると、先生はやりにくい。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
M君は綱島つなしま梁川りょうせんくんの言として、先ず神を見なければ一切の事悉く無意義だ、神を見ずして筆を執るなぞ無用である、との説に関し、自身の懊悩おうのうを述べ、自分の様な鈍根の者は
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
また仏国のくんに土国人の宗教にあずかるの権利ありとは、土国の君もたえて想像せざりしところなり。わが先官「レ、マルキス、デ、ボンネ」氏、このことの建言中に云えることあり。
御存生ごぞんじやうなら川田かはだらうくんだね、はらふくれてゐるところから体格かつぷくと云ひ、ニコヤカなお容貌かほつきと云ひ、えり二重ふタヘつてゐる様子やうすはそつくりだね、なにしろもうかみになつちまつてやうがない
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
くん夫人は正弘の第六女にして正桓の初の室寿子ひさこか。寿子は当時二十一歳であつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これにはクックしや桑港支社長さうかうししやちやうストークスくんやら、朝日新聞社あさひしんぶんしや桑港特派員さうかうとくはゐん清瀬規矩雄君きよせきくをくんなどが便乗びんじようしてたので、陸上りくじやう模様もやう明日あす見物けんぶつ次第しだいなどをかたつて、大方だいぶにぎやかになつてた。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
友人なれば入口の障子しょうじをがたぴしあけて——くんはいますかと大きな声を立ててからあがって来るはずであった。下の主人夫婦にしてもすこし荒い跫音であった。彼はふときき耳をたてた。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さちよくんはね、いつでも、こんなこと、平気でやらかすものだから、弱るです。
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
「——くんに聞きますと、大層私のものがお好きださうで、大きに有難う。」
佐山——くん?……どうしたんだ、? おい君? なぜ
胎内 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
ロミオ マーキューシオーくん、まア/\、けんを。
並木 ……くんはよさうぢやないか。
屋上庭園 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ニャンくんになんか負けるもんか
滝田くんはじめてぼくの家へ来たのはぼくの大学を出た年のあき、——ぼくはじめて「中央公論ちゅうおうこうろん」へ「手巾はんけち」という小説しょうせつを書いた時である。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この時つくつくくんは悲鳴を揚げて、薄い透明な羽根を縦横無尽に振う。その早い事、美事なる事は言語道断、実に蝉世界の一偉観である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
写本しやほん挿絵さしゑ担当たんたうした画家ぐわか二人ふたりで、一人ひとり積翠せきすゐ工学士こうがくし大沢三之介おほさはさんのすけくん一人ひとり緑芽りよくが法学士はうがくし松岡鉦吉まつをかしやうきちくん積翠せきすゐ鉛筆画えんぴつぐわ得意とくいで、水彩風すゐさいふうのもき、器用きよう日本画にほんぐわつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さちよくんはね、いつでも、こんなこと、平気でやらかすものだから、弱るです。
火の鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「山下君、これは、長船おさふねろうくんといって、○○高等学校の先生です」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ニヤンくん よくしつてゐるね
目下もくかでは大倉おほくららうくんさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あゝMくんですか」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
滝田くんについてはこのほかかたりたいこともないわけではない。しかし匆卒そうそつあいだにもかたることの出来るのはこれだけである。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そもそ硯友社けんいうしやおこつたについては、わたし山田美妙やまだびめうくん其頃そのころ別号べつがう樵耕蛙船せうかうあせんひました)と懇意こんいつたのが、動機どうきでありますから、一寸ちよつと交際かうさい大要たいえう申上まをしあげて置く必要が有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)