“古:いにしえ” の例文
“古:いにしえ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治15
正岡子規11
坂口安吾7
幸田露伴6
福沢諭吉6
“古:いにしえ”を含む作品のジャンル比率
哲学 > 倫理学・道徳 > 人生訓・教訓31.2%
文学 > フランス文学 > 小説 物語15.4%
哲学 > 東洋思想 > 日本思想4.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
幕府倒れて王政いにしえかえ時津風ときつかぜなびかぬ民草たみぐさもない明治の御世みよに成ッてからは
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
幕政の組織を改めて王政のいにしえふくしたるそのきょなづけて王政維新おうせいいしんと称することなれば
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もし今の人間の口先にかかったら、耶蘇ヤソ孔子の如きいにしえの大宗教家といえども、恐らく三舎を避けるであろうと思う。
女子は殖産と小児の養育とのために忙殺せられて、最早いにしえの如く男子と協力して戦闘に従事することは不可能であった。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
などあるを見るにいにしえの人は皆実地を写さんとつとめたるからに趣向にも画法にもさまざま工夫して新しきを作りにけん。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかしこの不快を与うるその大機関は、またいにしえの武蔵野をこの戸山の原に、余らのために保存してくれるものである。
世界も今は何になろう? なごやかな逸楽の夢に眠ってるいにしえのアンドロジーヌのように、彼らの眼は世界に向かって閉じている。
さういふ中でも特に念頭を去らないのが、あの下婢の異国風な、いにしえ希臘ギリシアの女を思はせる顔なのである。
木々の精、谷の精 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
勝永も涙を面にうかべ「さりながら、今日の御働き、大軍に打勝れた武勇の有様、いにしえの名将にもまさりたり」と称揚した。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
厩橋の下、右岸にはいにしえの米廩の跡なほ存し、唱歌にいはゆる「一番堀から二番堀云〻」の小渠数多くありて、渠ごとに皆水門あり。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
だから儀式の現状を説くいにしえの口述が、あるいは禊ぎのための水たまりを聯想するまでになっていたのかも知れぬ。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
イヴに禁断の果実を与えた楽園の蛇の故事に呼応して、東洋のいにしえにも次の箴言しんげんがある。曰く「智慧出でて大偽あり」と。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
もっといにしえを訪ねれば多くの蝦夷えぞがいた土地でありましょうが、それらのことは歴史家の筆に任せましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
一つは後戻りしていにしえに復するという、一つは将来に向って帝国は旧国なりといえども世界的に活動して新たな運命を開こうという。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
多くの悲哀かなしみが神に仕える人を起こすように、この世にはまだいにしえをあらわす道が残っていると感づくのも、その彼であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしもし大胆なる想像を許さるれば、いにしえの連歌俳諧に遊んだ人々には、誹諧の声だけは聞こえていてもその正体はつかめなかった。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
我らは中国がこの際唐朝以前のいにしえかえり正しき国民軍隊を建設せん事を東亜のために念願するのである。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
伊勢いせ大廟たいびょうを二十年ごとに再築するのはいにしえの儀式の今日なお行なわれている一例である。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
生贄ということは何時から始まったか知らぬが、吾がくにでは清らな神代のいにしえにはなかったようである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みずから自我の衣を脱いで、世界を吹き渡る多衆的熱情の衣をまとう、いにしえの楽詩人に見るような、生きたる客観主義であるべきだった。
いにしえより世にかかる人物なかりせば、わが輩今日に生まれて今の世界中にある文明の徳沢を蒙るを得ざるべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ならば、王政一新の実はどこにおくか。幕府をめ、まつりいにしえかえすなどは空名になる」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いにしえより忠は宦成におこたり病いは小に加わり、わざわいは懈惰けだに生じ孝は妻子に衰うという、また礼記らいきにも
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
国学者としての大きな諸先輩が創造の偉業は、いにしえながらの古に帰れと教えたところにあるのではなくて、新しき古を発見したところにある。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
燭台の光が煌々こうこうとかがやき渡って、金泥きんでいふすまに何かしらいにしえの物語めいた百八つの影を躍らせているのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この初めの「いにしえを考うる事」というのを「物理学上のいかなる問題にても」と改めて、もう一ぺんはじめから読み返してみるとおもしろい。
人の言葉――自分の言葉 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今日の軍人政治家が未亡人の恋愛にいて執筆を禁じた如く、いにしえの武人は武士道によって自らの又部下達の弱点を抑える必要があった。
堕落論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
またこれに驚くも至当の事なれども、論者はこれを憂い、これに驚きて、これをいにしえに復せんと欲するか。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いわんや後進は先進にまさるべき約束なれば、いにしえを空しゅうして比較すべき人物なきにおいてをや。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いにしえの武蔵七党が割拠したところで、この郡にユカリのあるのは、児玉党、丹党、猪俣党の三党である。
「そちたちも忘れたか。九月九日、重陽ちょうようの佳節。きょうはいにしえから菊見る日とされてある」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今俳句いまだ発達せざるいにしえに身を置きて我言を聴かば、必ずやうたがいを解くことを得ん。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
過去何百年の山王を誇った御嶽大権現の山座はくつがえされて、二柱の神のいにしえに帰って行った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうであろうとも、あのお方などはいにしえの剣聖にも勝るとも劣らぬ、立派な腕前を持っておられる」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私が女子の経済的独立を主張しているのは、いにしえ希臘ギリシャの哲人が「人は理想的に生活する前に先ず現実的に生活することを要す」といい
いにしえの三人の美の女神に加えて第四の憂愁の女神というのがあり、しかもそれがほほえんでいるのだとすれば、彼女はまさしくそれであったろう。
古書こしょ堆裏たいりひとり破几はきりていにしえかんがえ道をたのしむ。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
古豪族 の事で、この種族はその名のごとくいにしえの豪農あるいは豪商らの子孫であって、今なお多くの財産土地を持って地方において権力がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
金堂と講堂は、奈良朝以後屡々の災禍をこうむり、現存の御堂は後代の再建になるものだから、いにしえの結構はむろんうかがうことは出来ない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
だから、くわの家に、奴隷やっこになって住みこんだいにしえあてびともあった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「かかる狭小な地に、長く聖駕せいがをおめするわけにはゆかぬ。洛陽はいにしえから天子建業の地でもあれば——」と皆、還幸を望んでいた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべてが剥落し崩れて行くこの御堂に在って、いにしえのそういう荘厳を私は幾たびも心に描いてみた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
濂又曰く、いにしえわゆる体道たいどう成徳せいとくの人、先生誠に庶幾焉ちかしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いにしえから美女は京都を主な生産地としていたが、このごろ年ごとに彼地へ行って見るが、美人には一人もわなかったといってよいほどであった。
明治大正美人追憶 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
けだわが神州、万国の上游に屹立きつりつし、いにしえより威を海外に耀かがやかす者、上は則ち神功皇后、下は則ち時宗、秀吉数人のみ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
いにしえより今に至るまで、成敗せいばいの跡、禍福の運、人をしておもいひそめしめたんを発せしむるにるものもとより多し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次に九経きゅうけいをよく読むべし。漢儒の注解はみないにしえより伝受あり。自分の臆説おくせつをまじへず。故に伝来を守るが儒者第一の仕事なり。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
大根河岸のバラックも夜となれば、美しく、何となしにいにしえの東京のおもかげをみせてくれる。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
いにしえより文人墨客の輩綾瀬以上に遡らずして、たまたまかゝる地あるを知らざりしかば、詩文に載せられて世に現るゝことなく、以て今日に至りしならん。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しかるにいにしえよりこれを混同したる歌多きは歌人が感情の言ひ現はし方に注意せざる罪なり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そして駅にはいにしえもかわらぬ可哀かあいい女がいただろうから、そこで、「妹が直手ただてよ」という如き表現が出来るので、実にうまいものである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いにしえ曾子そうしのいわく「もって六尺の孤を託すし、以て百里の命を寄す可し、大節に臨んで奪う可からず、君子人か君子人なり」と。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
彼はいにしえの武将の書き残したもの逸事などから、秀吉にない素質を見ると大袈裟に感動し、つまらぬ武将の一面を賞讃して秀吉への否定をたのしんでゐた。
我鬼 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
いでや事成れば天が下の君とはなれずとも一国の主たらんとのいにしえの人の言葉慕うにたえたり
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これに反して上士はいにしえより藩中無敵の好地位をしむるが為に、漸次ぜんじ惰弱だじゃくおちいるは必然のいきおい、二、三十年以来
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
詩ハ淡雅たんがたっとブトイヘドモマタ郷野きょうやノ気有ルベカラズ。いにしえ応劉鮑謝李杜韓蘇おうりゅうほうしゃりとかんそ皆官職アリ。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これは呉郡富春ごぐんふしゅん(浙江省・富陽市)の産で、孫堅そんけんあざな文台ぶんだいという者です。いにしえの孫子が末葉であります。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いにしえの太郎・二郎・三郎は、今日の太郎・二郎・三郎のごとく人の名ではないのであります。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
正徳せいとく十五年七峯が蘭亭らんていいにしえのように修禊しゅうけいの会をした時は、唐六如とうりくじょが図をつくり、兼ねて長歌を題した位で
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
部下の心を得てこれに死力を尽くさしむること、いにしえの名将といえどもこれには過ぎまい。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
中津藩にして古来度々たびたびの改革にて藩士の禄をけずり、その割合をいにしえに比すればすでにおおい減禄げんろくしたるがごとくなるを以て
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それでいにしえの人のへいはどんな事かというと、多少いつわりの点がありました。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
支那の鱷は只今アリガトル・シネンシスとクロコジルス・ポロススと二種知れいるが、地方により、多少の変種もあるべく、またいにしえありて今絶えたもあろう。
女の来るのを待ちあぐねているいにしえの貴公子のようにわれとわが身を描いたりしながら。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「余かついにしえの豪傑。皆善く産を治む。馬文淵ばぶんえんの如し……」
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
神武のいにしえに復して、しかして人心を新にし全く新しい政治を行い、即ち精神上にも物質上にも旧物をことごとく捨てて、新たに国政を行おうとせられた。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
既に標準といふ、いにしえの歌を評すると今の歌を評するとによりて相異なるべくもあらず、東洋の歌を評すると西洋の歌を評するとによりて相異なるべくもあらず。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「見えるわ。見えるわ。瓜、一面の瓜だ。」見覚えのあるような所と思ったら其処はいにしえ昆吾氏こんごしあとで、成程到る処累々たる瓜ばかりである。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「宮中、府中の別がなくなることは、いにしえより、その家の滅亡の基とされております」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
殿「いにしえの英雄加藤清正とも黒田長政とも云うべき人物じゃ、どうも顔が違うのう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「王政のいにしえに復することは、建武中興けんむちゅうこうの昔に帰ることであってはならない。神武じんむの創業にまで帰って行くことであらねばならない。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すべて遠きいにしえの事、考え知らんにも今如何ともし難けれど、我等凡愚にはただ因縁不可思議とのみ存ずる、何様いうものでござろうか、と意外な逆手に出られた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いにしえの学者の言に、「好悪こうあくりょう夜気やききざす」と。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
今日の芸術家はかのいにしえのブロメシヤスの如く絶へず経済的必迫の巖上に縛せらるるが故に自由なる創造に従事することが出来ないのであると一般に云はれてゐる。
少数と多数 (新字旧仮名) / エマ・ゴールドマン(著)
鎌倉時代はあの別種な仮面を製作した時代であるから、いにしえの舞曲に対する正しい理解があったとは思えないが、少なくとも藤原末の伝統は保たれていたであろう。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
草木のさやぎにも神の声が聞かれた遠いいにしえの代から、歌は神や人とともにあった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
昇平しょうへい百年にして奢侈しゃしならいとなり、費用いにしえに十倍せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ありもせぬ意味をこしらへて句に勿体もったいをつけるはいにしえの註釈家の弊なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いにしえの大家は、後世啓発の道を開いたことに対して、当然尊敬をうくべきである。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
しかし魔方陣のことをかたるだけでも、支那印度のいにしえより、その歴史その影響、今日の数学的解釈及び方法までを談れば、一巻の書を成しても足らぬであろう。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
又男女席を同うせず云々とていにしえの礼を示したるも甚だ宜しけれども、人事繁多の今の文明世界に於て、果して此古礼を実行す可きや否や、一考す可き所のものなり。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしてその裏にいにしえのキリスト信者の標徴であった所の、魚の形を見つけました。
いにしえのギリシアやローマにおけるが如く、わが英国にももし公共の恩人に対して彫像を贈る法令が発布されるならば、この輝ける市民は確かにそれを受けるであろう。
夢見ゆめみさととももうすべき Nara la Morte にはかりよんのおとならぬ梵鐘ぼんしょうの声あはれにそぞいにしえを思はせ候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それでいて、皆ひとかどの武術にけ、スワ城下に喧嘩でもあるとかいって、猛然と、かれらの群が、吉野川の流域を下る時は、ほうふつとしていにしえの野武士だ。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何しろ蕪村という怪物が京に出たのですから、ただに当時の天下を動かしたばかりでなく、いにしえの俳風を一変して、明治の新俳風の種をいて置いた位です。
俳句上の京と江戸 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
この恐しい山蛭やまびる神代かみよいにしえからここにたむろをしていて、人の来るのを待ちつけて、永い久しい間にどのくらい何斛なんごくかの血を吸うと
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宋史そうし鄭樵ていしょうの伝に、名山めいざん大川たいせんあそび、奇を捜しいにしえを訪い、書を蔵する家にえば、必ず借留しゃくりゅう
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『五山ノ称ハいにしえニ無クシテ今ニアリ。今ニアルハ何ゾ、寺ヲとうとンデ人ヲ貴バザルナリ。古ニ無キハ何ゾ、人ヲ貴ンデ寺ヲ貴バザルナリ。』またこうも言われた。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
あるとき白石がシローテに向つて、同じ東洋のうちには日本の外にチイナがあり、その文物声教はいにしえより中土と称するほどであるがその実状はどうであらうかと尋ねた。
『五山ノ称ハいにしえニ無クシテ今ニアリ。今ニアルハ何ゾ、寺ヲとうとンデ人ヲ貴バザルナリ。古ニ無キハ何ゾ、人ヲ貴ンデ寺ヲ貴バザルナリ。』またかうも言はれた。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
良辰佳会古難並 〔ときかいいにしえより並び難し
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そこで話を遠い遠い昔の、今より推算すれば約五十万年前のいにしえにかえす。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
——むかし、昔、と何でもいにしえかつぎ出して今をおとす。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
たがいに争闘してる老若の世界、また一都会の住民のように彼のうちに生きている、き魂の断片、いにしえの客人寄食者、それらが地平線の四方からき上がってきた。
彼は出発した。彼女から遠ざかった。しかし彼女から少しも離れはしなかった。いにしえの遊行詩人が言ったように、「魂の同意あらざる限りは、人は愛する者のもとを離れず。」
天より我に与へ給へる家のまずしきは我仕合しあわせのあしき故なりと思ひ、一度ひとたび嫁しては其家をいでざるを女の道とする事、いにしえ聖人のおしえ也。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
山から流れてくるけれども、耳成山だの天ノ香具山だのウネビ山だのという箱庭程度の小づくりの山からチョロ/\と流れてきて、いにしえの帝都の盆地を走っているにすぎない。
従って問題になるものではありますまい。私は前山さんを評するわけではありませんが、もし直評を許されるならば、前山さんの今の製陶認識では失礼ながらいにしえを偲ぶに足る
このわずか一、二の例からいにしえにまで遡って一律に取り扱うことは、大胆な推断のようであるが、暗黙の間に事想の一脈相通ずるものがあることは誰しも認めるであろう。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)