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却
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かえ
ふりがな文庫
“
却
(
かえ
)” の例文
先生は各人が自分の個性を伸ばしてゆくことを望まれて、
徒
(
いたず
)
らに先生の真似をするが如きことは
却
(
かえ
)
って苦々しく感じられたであろう。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
……実になんといったらいいか、要するにそんなふうに編集所にはぴったりし過ぎて
却
(
かえ
)
って不自然なくらい傍若無人なようすだった。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
所詮は喜右衛門の臆病から、こんな
拵
(
こしら
)
えものにおびやかされたのである。しかし臆病が
却
(
かえ
)
ってかれの仕合わせであったかも知れない。
半七捕物帳:41 一つ目小僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私たち兄弟のこうした申合わせは、
却
(
かえ
)
って正反対の結果を招く原因となってしまったのです。……と申しますのは外でもありませぬ。
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
さか
鱗
(
うろこ
)
を立てて、
螺旋
(
らせん
)
に
蜿
(
うね
)
り、
却
(
かえ
)
つて石垣の穴へ引かうとする、
抓
(
つか
)
んで飛ばうとする。
揉
(
も
)
んだ、揉んだ。——いや、
夥
(
おびただ
)
しい
人群集
(
ひとだかり
)
だ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「尽日春を尋ねて春を得ず。
茫鞋
(
ぼうあい
)
踏み
遍
(
あまね
)
し
隴頭
(
ろうとう
)
の雲。還り来って
却
(
かえ
)
って梅花の下を過ぐれば、春は枝頭に在って
既
(
すで
)
に十分」(宋戴益)
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
大「いえ/\何う致しまして、再度お礼では
却
(
かえ
)
って恐入ります、
殊
(
こと
)
に
御親子
(
ごしんし
)
お揃いで斯様な処へおいでは何とも
痛入
(
いたみい
)
りましてござる」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「訊くな。訊くな。訊かぬ方がいゝ。聞くと
却
(
かえ
)
って気を悪くするから。あんな
賤
(
いや
)
しい人間の云うことは、一切耳に入れぬことじゃ。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「わたしは、もういただかぬ——飲みませぬ。そなたのような人と、酒ごとなぞいたしたとて
却
(
かえ
)
って胸が
蓋
(
ふた
)
がるばかりでござります」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
成程
(
なるほど
)
過ぎ去った歴史上には種々優れた人もあるが、同時代にいた、しっかりした友達の方に、
却
(
かえ
)
って教えられた事は多いのである。
北村透谷の短き一生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは
物
(
もの
)
をつめたくする。どんなものでも水にあってはつめたくなる。からだをあつい
湯
(
ゆ
)
でふいても
却
(
かえ
)
ってあとではすずしくなる。
学者アラムハラドの見た着物
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
どうも夢中遊行症らしいが、
併
(
しか
)
し一度位の発作でそんなに心配しなくともよい、そうして神経を使うのが
却
(
かえ
)
って病気を
昂進
(
こうしん
)
させる元だ。
二癈人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然
(
しか
)
るに南蛮宗は一切の
施物
(
せもつ
)
を受けず、
却
(
かえ
)
つて
之
(
これ
)
を
施
(
ほどこ
)
して
下民
(
げみん
)
……いや人民の甘心を買ひ、わが一党の邪魔をすること
尤
(
もっと
)
も奇怪なり。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
もし生死の関門を打破して二者を眼中に
措
(
お
)
かぬ人生観が成立し得るとすると今の
所謂
(
いわゆる
)
第一義は
却
(
かえ
)
って第二義に堕在するかも知れぬ。
高浜虚子著『鶏頭』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この女のためには
経
(
けい
)
を講じ史を読むのは、家常の茶飯であるから、道家の言が
却
(
かえ
)
ってその新を
趁
(
お
)
い奇を求める心を
悦
(
よろこ
)
ばしめたのである。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
もしそれにも反対する生徒があったら、その生徒こそ
却
(
かえ
)
って全生徒を不穏な行動にかり立てる者ではないか、というのだそうです。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「病人が
臥
(
ね
)
ているから、上っては困ります。どういう御用事ですか。」と頻りに
押止
(
おしと
)
める様子が、
却
(
かえ
)
って二人に疑惑の念を抱かしめた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
悪く云えば小生意気なこの鼻先の笑い方が彼女の癖ではありましたけれど、それが
却
(
かえ
)
って私の眼には大へん
悧巧
(
りこう
)
そうに見えたものです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
目まいが
酷
(
ひど
)
くなると
却
(
かえ
)
って肉体が酔うものであることを初めてかんじたのであった。かれは階段をいくつも下りながら考えていた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
目を見合せては流石に哀れに堪兼ねて立退くものもあったが、鳴き居るは、などと
却
(
かえ
)
って興じ笑いつつ猶もむしり立てる
強者
(
つわもの
)
もあった。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
却
(
かえ
)
って、幸福でない例を見ても、
総括
(
そうかつ
)
した民心というものにも、艱難する時代と、
共栄謳歌
(
きょうえいおうか
)
する時代と、こもごもの起伏があっていい。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、重苦しく
足蹴
(
あしげ
)
りに出来ないものは、
却
(
かえ
)
ってしがない職人である彼自身の内にあった。これもやっぱり
一聯
(
いちれん
)
の支配者なのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
病気なれば気の毒、
早速
(
さっそく
)
医者の手にかかるがいいが、もし我儘だったらあんまり
卑屈
(
ひくつ
)
にへいへいしていると、
却
(
かえ
)
って
増長
(
ぞうちょう
)
させていけない。
良人教育十四種
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私の幼いころは今日よりも交通不便であったが、
却
(
かえ
)
って落ちついた文化的アトモスフェアが田舎の町や村をつつんでいたようだ。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
との一言を
放
(
はな
)
ち、
却
(
かえ
)
って反対者の
喝采
(
かっさい
)
を
獲
(
え
)
たところなどは、その公平無私かつ
度量
(
どりょう
)
の寛大なるところは、ほとんどドラマチックであった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
死生の覚悟などというものは常に白刃の下にある武芸者だの軍人などには
却
(
かえ
)
って縁の遠いもので、文化的教養の高いところに自ら結実する。
咢堂小論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
衣食住の問題の科学的研究は、半分くらいはいわゆる常識で解決されそうに見えるが、本当のところは、それだけに
却
(
かえ
)
って困難なのである。
満洲通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
世の中には
怪物
(
ばけもの
)
が沢山居る、学問が進んで
怪物
(
ばけもの
)
の数が
少
(
すくな
)
くなったと云うがそれはいい加減なことで
却
(
かえ
)
って
殖
(
ふ
)
えたかも知れない
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
同じ鋳掛屋がもしも一風呂浴びてここを通りかかったのだったら、同じ絃歌の音は
却
(
かえ
)
って彼の唱歌を誘い出したかもしれない。
電車と風呂
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
勞働者勞働者と一口に
賤
(
いやし
)
んだツて、
我々
(
われ/\
)
も其の勞働者と些ツとも違やしないぢやないか。下らぬ
理屈
(
りくつ
)
を
並
(
なら
)
べるだけ
却
(
かえ
)
ツて惡いかも知れない。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
いささかの手違いのために、思想を持ちながら古語表現の完全に出来なかった先輩がある。北村透谷でなくて、
却
(
かえ
)
って湯浅半月氏であった。
詩語としての日本語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
が、そうすればする程、
却
(
かえ
)
ってあの鬼のような金兵衛の顔は、まざまざと夜具の中の闇から、歌麿の前に迫るばかりであった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
リノリウムの
床
(
ゆか
)
には
何脚
(
なんきゃく
)
かのベンチも背中合せに並んでいた。けれどもそこに腰をかけるのは
却
(
かえ
)
って
人目
(
ひとめ
)
に立ち兼ねなかった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし運動性の狂躁は鎮まるどころか、
却
(
かえ
)
って募る一方だった。
枷
(
かせ
)
から自由になろうとして、彼は何時間もぶっ通しの
執拗
(
しつよう
)
な努力を試みた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
この頃の夜のように打ち解けていたのが、
却
(
かえ
)
って男の健康を
恢復
(
かいふく
)
させ掛けたのではあるまいか。女の考えはこんな風にとつおいつしていた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
僕は、あまりにも悲惨だから、武夫君を
却
(
かえ
)
って苦しませると思って、その後彼に会わないでいるのです。もうこうなれば仕方がありません。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
税金の問題よりゃ戦争の方が実は
却
(
かえ
)
って身近の大事なのである。文芸家協会など、これに対してどう動いているのであろう。
烈婦
(新字新仮名)
/
高田保
(著)
それで少しも小酒井さんの影が薄くもならず、いや
却
(
かえ
)
って小酒井さんという人の印象を強く人に与え、尊敬を招く人でした。
小酒井さんのことども
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いったい下の
婆
(
ばばあ
)
は何者だろう——
却
(
かえ
)
って茫然とした、あの罪がないような顔が、
獰悪
(
どうあく
)
の
面構
(
つらがまえ
)
よりも意味ありげに思われて、一刻も
居堪
(
いたたま
)
らない。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかし、大昔に、ノアがこの通りの事をして、誰にも責められぬでは無いか、
却
(
かえ
)
って後々まで
褒
(
ほ
)
められ敬われるでは無いか。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
が、人選を決する事は非常に大切で、一たびその人選を誤れば、
却
(
かえ
)
って国利民福を傷つけ、国民を敵とするに至るのである。
勢力の中心を議会に移すべし
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
て
法
(
ほう
)
を
説
(
と
)
けとやら、こんな
場合
(
ばあい
)
には
矢張
(
やは
)
り
段違
(
だんちが
)
いの
神様
(
かみさま
)
よりも、お
馴染
(
なじみ
)
みの
祖父
(
じじ
)
の
方
(
ほう
)
が、
却
(
かえ
)
って
都合
(
つごう
)
のよいこともあるものと
見
(
み
)
えます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
六臂如意の意味をそのまま忠実に具体化して、六本の腕を与え、各々の威神力を示そうとした結果
却
(
かえ
)
って感銘が薄くなったのではなかろうか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
内容もまた複雑にすることが出来るが、それをするといけない事を意識して、
却
(
かえ
)
って単純にするために繰返しを用いている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
一つは彼は、このハンガリヤについてはそれ以外の
狂躁曲
(
きょうそうきょく
)
より何も知らぬ白紙の状態で、
却
(
かえ
)
ってそれが彼の曇りを
拭
(
ふ
)
き払っていたのかもしれぬ。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
然し群集は、
却
(
かえ
)
って非常な親しみを以て、兵卒の前の焚火の廻りに集まった。警察は
森
(
しん
)
として音も立てない。兵卒は退屈らしく
欠伸
(
あくび
)
をしていた。
四谷、赤坂
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
却
(
かえ
)
って意外の結果を見た。或日、学校の帰りに草刈り小僧達の取り巻くところとなったのである。皆小若い衆だから、中学一年生よりも大きい。
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
冬のま中に山から里へ、おりおりは下りて来られることもあるといって、雪は
却
(
かえ
)
ってその足跡を見せたものでありました。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
丸鑿というのは丸くしゃくれるから、巧くやるとすっきりしていい代りに、下手をすると
却
(
かえ
)
っていいところを取って了う。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
処女でないということが——一度節操を破ったということが、
却
(
かえ
)
って年多く子供ある自分の妻たることを容易ならしむる条件となるかも知れぬ。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
却
常用漢字
中学
部首:⼙
7画
“却”を含む語句
却説
退却
忘却
冷却
返却
困却
滅却
売却
却々
閑却
脱却
破却
却而
却歩
却下
沒却
没却
擲却
砍却
却〻
...