めえ)” の例文
「もっとも、おめえにはそこまでは聴かせなかったよ、土壇場になって、聟の身代りになるのが嫌だなんて言い出されると困るからな」
ハツ/\うも御親切ごしんせつ有難ありがたぞんじます、何卒どうか貴方あなたたくかへつてくださいまし。金「かへらんでもいからおあがりな、わつしの見てめえで。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「今日十二時半の汽車ぢや。今、電報が来ただ。えれエ急なこンだで、おめえけて貰はにや、へえ、庭の掃除が間に合はんで……」
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
こっちはおめえ、河岸で一番首を討取る気組みで、佳いものを仕入れてよ、一ツおいしく食わせてやろうと、汗みずくで駈附けるんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
フリントの手下は? それぁ、大抵はこの船にいて、プディングを貰って喜んでやがるが、——そのめえにゃ乞食をしていた奴もある。
「奇態なことだよ、まつたく! 時に煙草を一服くんなよ! 教父とつつあん、おめえの煙草はえらく上物だのう! どこで買ふだね?」
別段、おめえの機嫌なんぞ、取るわけじゃなえ。変なことなんぞ、ちっともなえじゃないけゃ! わしは先から、そうかんげえとったんじゃ。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
で、だんだん探ったところが、吉野川を舟でおめえたちが上ったということが知れたから、やッとこうして道づれになれたてえものよ
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
え? 「モナコの岸」? マアセル? このマアセルか。せよジョウジ、冗談じゃあねえぜ。此女これあおめえ、俺んとこのかかあじゃねえか。
あとで泥棒が贋銭と気がついて、あすこの亭主は贋銭使つかいだ贋銭使だって方々振れて歩くんだ。常公つねこうめえだが、どっちが罪が重いと思う」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小さな叫び声で「おっかあ、おめえつくばろうとしてるな。——おうい、とうちゃん!」と言い、そして、そういういつわりの警報を発してから
家のめえには、この長屋に用もありそうのねえ、りっぱな駕籠が、止まっているし、屋内なかにはまた、抹香まっこうくせえお談議が始まっていらア。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ジンバラハラバイタァが後生ごしょうになるちゅうじゃねいか」仁左衛門さんが真面目に口を入れた。「辰さん、おめえ音頭おんどうをとるンだぜ」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「でも、おめえ様、小麦が高くなつたのは、小麦自身が高くなつた訳ぢやござりましねえだよ。」農夫ひやくしやうは言ひ訳がましく口を切つた。
だいだいのかずをよけいくゞって来ているだけに、おめえなんぞよりいろんなことがヒョイ/\とわけもなく俺たちには感じられるんだ。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「どうしたもんだおとつゝあは、おひら盛換もりけえするもなんめえな、馬鈴薯じやがいもめえいくらでもんのに」おつぎはさらたしなめるやうに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どこをどうしたか、それをこのごろおめえが引っかけて物にしているということが、いつまでがんりきの耳へ入らずにいると思っているのだ。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おい、御出役、おめえのくるのを今迄しびれを切らして待っていたんだ。顔の揃ったところで、早速、改めにかかろうじゃねえか
金五郎 やってもいいがおめえ、金は前取してあるからとて斬り合いになってうしろを見せる気じゃあるめえな。(金をやる)
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「坊主だつて油断ならねえですだ。河内山宗俊かうちやまそうしゆんて坊主は、おめえさんも芝居で見て御存じだらうけが、えらい大騙おほかたりでしただ。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
まあ、へえ、よし坊は十円け? よっぱら割がええなあ、らげんなあおめえんげと同じい年でも、いまちいっとやせえわ。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ジェイ・ファースト(志村のぶ子)を締めた時の手で、芝浦からモーター・ボートでずらかってもいい……おめえはなかなか色男……あはははは。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「いんね、そうじゃごぜえません。噂で聞けばおめえさんの所へ化物が出るということで。ひとつおいらがその化物を退治してやろうと思いましてね」
日置流系図 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『暑いとも、暑いとも。恁麽こんな日におめえみたいな垢臭い婆さんが行くと、如来様も昼寝が出来ねえで五月蠅うるさがるだあ。』
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「学問は上達しても、踊が、あれじゃあなってねえな。おめえたちのは、踊ってるんじゃなくて、畳をめてるんだ。」
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ティンなんて(7)あいつにゃあちっともへえっていねえんでがす、ウィル旦那。わっしはめえから言ってるんでがすが」
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
慰物にしたんかしねえんか、そんなことあ考えてもみねえから自分でも分らねえ、どうともおめえの方で好なように取りねえ、昨日は昨日、今日は今日よ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「こう仙果さん。どうしたもんだな。おめえこそ気でもちがったんじゃねえか。いてえ痛え。まア放してくんな。懐中ふところから大事な書きものがおっこちるぜ。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
前クウリ沢というのは、標高千六百二十六米の天ヶ立の西北側から発する沢で、今はめえグリウと呼ばれている。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
放鳥の機嫌きげんを取つて貰はにやならないのだからつて——わたしだつて、赤児あかんぼの時から手塩にかけたおめえのことだもの、厭だつてもの無理にと言ひたかないやね
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「おい、おめえが腕を貸せっていうから、おれ達は加勢に来たんだ。こんな穴ん中へくすぶりに来たんじゃねえ」
「源さのいかくなったには、わし魂消たまげた。全然まるで、見違えるように。しかし、おめえには少許ちっとていねえだに」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おめえは別だが、お前のほかじゃ、いっそあの盲目の阿呆陀羅坊主がこの一座じゃ罪がなくていい」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
しゅはずんで、糠袋ぬかぶくろせてもらうどじはあるめえぜ。——おめえいまなんてッた。おせんのゆきのはだからった、天下てんかに二つと代物しろものおがませてやるからと。——
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
野村の悪友達は、二川の事を野村にいう場合には、極って、「おめえの華族の友達」といった。
めえアノ大鞆が何時出て行たか知ないか(小)何でもおめや様が出為でさしってから半時も経たんべい
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「あんなもなあ己あ真っ平御免だ。第一おめえ、月謝を二十円も取るなんて、まるでたけえや」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「春吉あ、菊も、いい稼人かせぎにんになったぞ。今朝刈った草なんか、一人めえ以上だぞ、ありゃ。」
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「そら、第二章の終りの所だ。まあおめえは分つてゐようけれど読んで見るから聞きねえ。」
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「おめえみてえな色男が今からそんなこと言ってるこったら、親方あ店じまいだよ。なあ」
凍雲 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
「さあ、ねえちゃん、おめえさんはもとのところへけえるんだ。おれたちも、もう引揚げるからな……、そうだ、こんど来る時は何かうめえものを持って来てやらあ、はっはっは」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「若松というところは、おめえのおふくろから聞いてたよりも、もっと、ひでえ街だなあ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
『オイ、ジルベール。此夜こんやの仕事を計画したなあおめえか、それともボーシュレーか?』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
B おめえも中々隅へは置けないよ。あの時、俺がソッと窓から投げ出した蜜柑のことを一言も云わないで、見当をつけて置いて、後から拾いに出掛けるなんざあ、どうして、玄人くろうとだよ。
指環 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おめえは酔っているようだ。早く帰らッせえよ。」と、七兵衛はほうきめてみかえった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
殿様が清国あっちからおけえりなさるそのめえに、東京におけえりなさったでごぜエますよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
御前のめえのろけらしくなりやすが、ちっとばかり粋筋いきすじ情婦いろがごぜえやしてね、ぜひに顔を見てえとこんなことを吐かしがりやしたので、ちょっくら堪能させておいてけえろうとしたら
「お銀が嫌いなものを、おめえがいくら気に入ったって仕様があるもんか。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
めえのめえだがの。おめえのとこのおはねさんがの。例の後家の内へきやアがって。今きている山中というやツをさそい出して。向島むこうじままでおしのびという寸法で。一しょに出かけたと思いねえ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
「おめえ、そんなこと云って、旦那にすむと思うか。」と平助は云った。
土地 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)