)” の例文
その月よりも青い死色がみるまに面上へみなぎって来たとき、ふしぎにも少しのみだれもない小声で、光秀は、のあとを、こうつづけた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時に空中に天ありを説いていわく、〈宜しく審諦に観察すべし、卒なる威怒を行うなかれ、善友恩愛離れ、枉害おうがい信に傷苦〉と。
月とか梅とか一字ずつは読めても、文句の全体は校長にもわかるまいと思うようなを、遠慮もなくいずれの凡人の墓にも書いて立てている。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私はこの頃、箱の裏に品物への(短い詩句)を書きつけることを始めた。永く別れていた品物にこう記した。「ヤスラフヤ、フルサトニ」と。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
大寺の間に行はれた講式讃歌の元々として独立もして居た部分、此が宮寺の巫女の法文歌として独立する訣はある。
罵詈毀辱我ばりきじよくが、と今しも勧持品くわんぢぼんを称ふる時、夢にもあらず我が声の響きにもあらで、正しく円位〻〻と呼ぶ声あり。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
且つ仕舞船を漕ぎ戻すに当っては名代の信者、法華経第十六寿量品じゅりょうぼん自我得仏来じがとくぶつらいというはじめから、速成就仏身そくじょうじゅぶつしんとあるまでを幾度いくたびとなく繰返す。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は三論宗りんしゅうという宗旨を開いた高僧でありますが、その臨終のに、こんな味わうべき偈文ことばがのこされているのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「ええ、ありがとう、ですからマグノリアの木は寂静じゃくじょうです。あの花びらは天の山羊やぎちちよりしめやかです。あのかおりは覚者かくしゃたちのとうとを人におくります。」
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それには紙の上に一つの円が力をこめて書きあらわしてあり、その奥には禅家らしいも書き添えてある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
続いて貧道座に上り、くわしく縁起の因果を弁証し、六道りくどう流転るてん輪廻転生りんねてんしょうことわりを明らめて、一念弥陀仏みだぶつ即滅無量罪障そくめつむりょうざいしょう真諦しんたいを授け、終つて一句のを連らぬ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小夜衣の返歌は彼に対する最後の一で、しょせん自分の望みは遂げられないものと覚りながらも、彼の根強い執着心はまだこの恋を思い切ることが出来なかった。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
常に冥福を祈っていたが、慶長七年十月朔日、三玄院に於いて故人の三回忌を営んだ時のに曰く
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一夜例の如く発熱詩の如くの如き囈語げいご一句二句重畳ちょうじょうして来る、一たび口を出づればまた記する所なし。中につきて僅かに記する所の一、二句を取り補ふて四句となす。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
朦朧とをとなえていると、テンバが精気の霊薬だというコカの葉を智海の口もとにさしつける。
新西遊記 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
死を求める雪山童子せつさんどうじが鬼に教えられたの文も得たい、それを唱えてこの川へ身を投げ、き人におうとかおるが思ったというのは、あまりに未練な求道者というべきである。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おもむろにを唱えながら楼門の上にたたずんで焚死ふんしして節義を全うし英雄の名をほしいままにした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
を説いていうには、「身現円月相、以表諸仏体、説法無其形、用弁非声色」[身に円月相を現じ、以て諸仏の体をひょうす、説法かたち無し、用弁ようべん声色しょうしきに非ず]。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
経のにいうがごとし、『一人の一劫いちこうのなかに、受くるところのもろもろの身の骨、常に積みて腐敗せずは、毘布羅山びふらせんのごとくならん』と。一劫すらなおしかり、いわんや無量劫むりょうこうをや
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
というのような言葉があった。石の中に火がある、打たなければ出ない、どう打つか、いかに打って火を発せしめるか。そういう意味であって、伊兵衛の武芸の真髄がそこにあった。
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それから、——それから如来のを説いたことは経文きょうもんに書いてある通りである。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と云って弘法大師の十住心論のはじめ異生羝羊心いしょうていようしんから終りの秘密荘厳心まで一々そのを誦して道理を述べ、弘法大師の主意と自分の解釈のしようを細かに申し述べると、法橋がそれを聴いて
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湖南の浄慈寺じょうじじに来てわしを尋ねるがいい、今、わしがを言って置くから、覚えているが宜い、本是れ妖蛇婦人に変ず、西湖岸上婦身を売る、汝欲重きに因って他計に遭う、難有れば湖南老僧を見よ
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
というを読んで、尊慧に与えた。尊慧はひどく喜んだ。
坊主は難有ありがたそうにの本に挟んで持つ。
のけはひ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
である。
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
上人は、おごそかにまた、次の一をくだして、度牒を書記にわたし、書記は筆を取って「法名」をそれに書きこむ。にいわく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸天これを見てを説いていわく、〈瞋恚しんい闘諍間、中において止むるべからず、羝羊ていよう婢とともに闘い、村人獼猴びこう死す〉と。
棄恩入無為、真実報恩者のは、定基の胷のうちにも断えず唱えられたろうが、定基の母にも恩愛の涙と共に随喜の涙によって唱えられたことであったろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
摩訶まか般若波羅蜜多は、諸仏の母なり。四句の等を受持し、読誦どくじゅすれば、福寿を得ること思量すべからず。之を以て、天子念ずれば、兵革、災難、国裡こくりに入らず。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
しかも和尚は天正四年の三月に、たくましい一篇のとどめて円寂えんじゃくし、墓もその寺にあるにかかわらず、その後なお引続いて、常陸坊が生きているという説は行われた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
むぐらの中に日が射して、経巻きょうかんに、蒼く月かと思う草の影がうつったが、見つつ進む内に、ちらちらとくれないきたり、きたり、むらさきり、しろぎて、ちょうたわむるる風情ふぜいして、斑々はんはんいんしたのは
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
を唱えて火中に入定にゅうじょうしたというような話は、有名な話であります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湖南こなん浄慈寺じょうじじに来てわしを尋ねるが宜い、今、わしがを云って置くから、覚えているが宜い、もとこれ妖蛇ようじゃ婦人に変ず、西湖せいこ岸上がんじょう婦身ふみを売る、なんじよく重きにって他計たけいう、なん有れば湖南こなん老僧を見よ
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
俊基は、添え小刀を取って、にぎりの髪を切り、それを妻の文殻にくるんで助光に託してから、べつな懐紙へこう辞世のをしたためた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
合掌してうやうやしく敬礼すべしとを説き、釈迦牟尼世尊五濁の悪世に衆生を教化きょうけした時、千二百五十弟子の中で頭陀第一、身体金色で、金色の美婦を捨て
をくを造るに巧妙たくみなりし達膩伽尊者たにかそんじやの噂はあれど世尊在世の御時にも如是かく快き事ありしを未だきかねば漢土からにもきかず、いで落成の式あらば我を作らむ文を作らむ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
私はその臨終のが、徹底していることよりも、むしろ獄中に囚われの身でありながら、悠々ゆうゆうとして『法蔵論』というりっぱな一巻の書物を、書き残していったという所に、学者として
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
左右のれんを……失礼ながら、嬉しい、御籤みくじにして、おもいの矢のまとに、線香のたなびく煙を、中の唯一条ひとすじ、その人の来る道と、じっと、時雨しぐれにも濡れず白くほろほろとこぼれるまで待ちましたが
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
古い仏典のなかに、そのカギはありはしないか”そうして参籠さんろう百日近いある夜、聖徳太子の夢告の一を見たというのです。
親鸞聖人について (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの牝虎の自選をゆるせと、時に一牛王あり牝虎に向いてを説く、〈世人皆我の糞を取り持ち用いて地に塗りて清浄と為す、この故に端正なること㹀虎にまされり
おくを造るに巧妙たくみなりし達膩伽尊者たにかそんじゃの噂はあれど世尊せそん在世の御時にもかく快きことありしをいまだきかねば漢土からにもきかず、いで落成の式あらば我を作らん文を作らん
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
またもや念ずる法華経の一節ひとふし
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またべつな辻では、塩飽しあくノ入道聖恩せいおんが、禅僧みたいに、辞世のをのこして割腹し、その子忠頼も、父にならって自害した。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへ往って見ると何の事はない樹が水に落ちたのと判ったんでこんな事に愕くなかれと叱って諸獣一同安静おちついた、爾時そのときを説いて曰く、もろもろの人いたずらに他言を信ずるなかれ
衆聖中尊しゆじやうちゆうそん世間之父せけんしふ一切衆生いつさいしゆじやう皆是吾子かいぜごし深着世楽しんぢやくせらく無有慧心むうゑしん、などと譬喩品ひゆぼんを口の中にふつ/\と唱へ/\、従ふ影を友として漸やく山にさしかゝり、次第/\に分け登れば
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「近くの山僧たちです。ご最期の手向たむけに、つどうて来たもの。無下むげにも追えません。お心をなだめられ、彼らの往生おうじょうを、受けておやりくださいまし」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時諸天を説いて曰く、頭を断たぬ内は殺したと言えぬ、また起ちて能くかくのごとき業をす、事宜じぎに随って他を損ずるも害と名づけず、白膠王の子を害したもののごとしと。
猶其上に道理無き呵責かしやくを受くる憫然あはれさを君は何とか見そなはす、棄恩きおん入無為にふむゐを唱へて親無し子無しの桑門さうもんに入りたる上は是非無けれども、知つては魂魄たましひを煎らるゝ思ひに夜毎の夢も安からず
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)