頬張ほゝば)” の例文
頸筋くびすぢぶたこゑまでがそれらしい老人らうじん辨當べんたうをむしやつき、すこ上方辯かみがたべんぜた五十幾歳位いくさいぐらゐ老婦人らうふじんはすしを頬張ほゝばりはじめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おつぎはうしろはうかくれてた。勘次かんじはしを一ぽんつて危險あぶなものにでもさはるやうに平椀ひらわん馬鈴薯じやがたらいもそのさきしては一ぱいくちいて頬張ほゝばつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と見てるとかね七八なゝやツつづゝ大福餅だいふくもちなかうへからあんもちふたをいたしてギユツと握固にぎりかためては口へ頬張ほゝばしろくろにして呑込のみこんでる。金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かれ其日そのひ役所やくしよかへけに駿河臺下するがだいしたまでて、電車でんしやりて、いものを頬張ほゝばつたやうくち穿すぼめて一二ちやうあるいたのち、ある齒醫者はいしやかどくゞつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すなはち、ぐら/\とえて、蝦夷えぞゆき板昆布いたこんぶをかぶつてをどりをどるやうなところを、ひよいとはさんで、はねをばして、あつゝとあわてて、ふツといて、するりと頬張ほゝばる。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二人は今しがた冬のをはりらしく熱いほどの麦飯を頬張ほゝばつたばかりであつた。——いま野田は立上つて和作のために茶を入れてくれた。茶道具は桜草のはちの陰にかくれた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
濁醪どぶろく引掛ひつかける者が大福だいふく頬張ほゝばる者をわら売色ばいしよくうつゝかす者が女房にようばうにデレる鼻垂はなたらしあざける、之れ皆ひとはなあなひろきをしつしりあなせまきをさとらざる烏滸をこ白者しれものといふべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
君子は義をさと下戸げこは甘きにさとる、偖こそ御里があらはれたれ、眼が近いに気が遠いと来て居るので、すんでの事に葉巻を一口に頬張ほゝばつて、まんまと耻を帝国ホテルにさらす所だつた。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ぐらぐらと煮えこぼれてゐるニュームのやかんを取つて、茶をれる。ゆき子はらつきようを一つ頬張ほゝばつた。障子の外の廊下を、二三人の女の声で、どやどやと隣りの部屋へ這入はいつて行く気配がした。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
主人しゆじんあやかりたいもとに、甘垂あまたるい金玉糖きんぎよくたう幾切いくきれ頬張ほゝばつた。これはさけみ、ちやみ、めし菓子くわしへるやう出來できた、重寶ちようはう健康けんかうをとこであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あきれたやうにおほきなくちけると、まんじ頬張ほゝばつたらしい、上顎うはあご一杯いつぱい眞黒まつくろえたさうです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夜食やしよくぜんで「あゝあ、なんだいれは?」給仕きふじてくれた島田髷しまだまげ女中ねえさんが、「なまづですの。」なまづ魚軒さしみつめたい綿屑わたくづ頬張ほゝばつた。勿論もちろん宿錢やどせんやすい。いや、あつものはず、なまづいた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其晩そのばん宗助そうすけ到來たうらい菓子折くわしをりふたけて、唐饅頭たうまんぢゆう頬張ほゝばりながら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
名物めいぶつ切干大根きりぼしだいこんあまいにほひをなつかしんで、手製てせいののりまきしか稚氣ちきあいすべきことは、あの渦卷うづまき頬張ほゝばつたところは、飮友達のみともだちわらはばわらへ、なくなつたおやどもには褒美はうびあづからうといふ
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……大福餅だいふくもちの、いたのを頬張ほゝばつて
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)