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ふさ
ふりがな文庫
“
閉
(
ふさ
)” の例文
醜いもの、汚れたもの、正しくないものに眼を
閉
(
ふさ
)
ぐことの出来た其頃の頭脳には、天然は唯美しいもの清いものとしてのみ映つた。
春雨にぬれた旅
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
私は
開
(
あ
)
いた口が
閉
(
ふさ
)
がらなかった。その神秘的な髪の恰好と、若林博士の荘重な顔付きとを
惘々然
(
ぼうぼうぜん
)
と見比べない訳に行かなかった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
川手氏は
最早
(
もは
)
や見るに忍びなかった。今二人の男女が殺されようとしているのだ。目を
閉
(
ふさ
)
いでも、断末魔の悲痛なうめき声が聞えて来る。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
別れに
献
(
さ
)
した盃を、清葉が、ちっと仰向くように、天井に目を
閉
(
ふさ
)
いで飲んだ時、世間がもう三分間、もの音を立てないで、死んでいて欲しかった。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
やがて自分も目を
閉
(
ふさ
)
いだけれど、さつきこの人たちについてあれこれと取りとめもないことを考へてゐたあとの気分が、何だか人のことではなくて
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
▼ もっと見る
藤六は
遥
(
はる
)
かの方、筵で
閉
(
ふさ
)
いだ鳥の巣のように憐れな自分の家を眺めて、ポロポロと砂浜に大きな涙をこぼすのです。
銭形平次捕物控:092 金の茶釜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
聞きしぞよもや白洲で話したでも有まいと尋ねられしかば節はハツと
語
(
ご
)
が
閉
(
ふさ
)
がり只もぢ/\して居る故藤八は又進み
出
(
いで
)
右の一件は一昨日
御慈悲
(
おじひ
)
願ひに節を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ほろろ寒い
戦
(
わなな
)
きが私の胸のうちに起った。私はそれにじっと眼を
閉
(
ふさ
)
いだ。そして運命を信ずると自分に叫んだ。
運命のままに
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
(老女は用捨なく娘と阿難を一体にして毛綱で捲きにかかる。娘は反狂乱の態になり老女の前に立ち
閉
(
ふさ
)
がる。)
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
頭取 これでは、半左衛門の人々も、あいた口が、
閉
(
ふさ
)
がらぬことでござりましょう。この評判なら百日はおろか二百日でも、打ち続けるは
定
(
じょう
)
でござりまするのう。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
隙間
(
すきま
)
もなう
黒
(
くろ
)
い
帳
(
とばり
)
を
引渡
(
ひきわた
)
せ、
戀
(
こひ
)
を
助
(
たす
)
くる
夜
(
よる
)
の
闇
(
やみ
)
、
其
(
その
)
闇
(
やみ
)
に
町
(
まち
)
の
者
(
もの
)
の
目
(
め
)
も
閉
(
ふさ
)
がれて、ロミオが、
見
(
み
)
られもせず、
噂
(
うはさ
)
もされず、
予
(
わし
)
の
此
(
この
)
腕
(
かひな
)
の
中
(
なか
)
へ
飛込
(
とびこ
)
んでござらうやうに。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
「
何
(
ど
)
うなツて
了
(
しま
)
うのだらう、
豈夫
(
まさか
)
消えて了うのでも無からうけれども、
何處
(
どこ
)
へ行くんだらう。
逃
(
に
)
げるツたツて、
逃口
(
にげぐち
)
が
閉
(
ふさ
)
いであるのだから、其樣な事は無い
筈
(
はず
)
だ。」
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
前を
閉
(
ふさ
)
ぐのは武家だが、雪之丞、大したことには思わない。右手の方の男に、隙が多いと見たから。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と云われたから、今まで眼を明けて居たおかくは急いで眼を
閉
(
ふさ
)
いでしまい、小平もまご/\して
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
行く手には、岬のように
出張
(
でば
)
った山の鼻が、真黒い
衝立
(
ついたて
)
となって立ち
閉
(
ふさ
)
がり、その仰向いて望む凸凹な山の脊には、たった一つ、
褪朱色
(
たいしゅいろ
)
の火星が、チカチカと引ッ掛っていた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
雲飛
(
うんぴ
)
は三年の
壽命
(
じゆみやう
)
位
(
ぐらゐ
)
は
何
(
なん
)
でもないと
答
(
こた
)
へたので老叟、二本の
指
(
ゆび
)
で一の
竅
(
あな
)
に
觸
(
ふれ
)
たと思ふと石は
恰
(
あだか
)
も
泥
(
どろ
)
のやうになり、手に
隨
(
したが
)
つて
閉
(
と
)
ぢ、
遂
(
つひ
)
に
三個
(
みつゝ
)
の
竅
(
あな
)
を
閉
(
ふさ
)
いで
了
(
しま
)
つて、さて言ふには
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
私は気味が悪かったが、眼を
閉
(
ふさ
)
いで口の中で
一
(
いち
)
ッ、
二
(
に
)
ッとかけ声を出して、
自
(
みず
)
から勇気をはげまして駆け出した。私の下駄の力の入った踏み音のみが、
四境
(
あたり
)
の寂しさを破って響いた。
黄色い晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
然し彼等ならざる吾々は、此れに反していかに見まい聞くまいとしても、自然と見え聞える国民生活の物音に対して街道のほとりに立つ猿の彫刻のやうに耳と目と口とを
閉
(
ふさ
)
いでゐる事は出来ない。
海洋の旅
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
鰹節の産地で、田子節というのは此処から出るのだと老人は説明した。宿屋は高屋と云った。ところが、生憎と部屋がいま全部
閉
(
ふさ
)
がっていて合宿で我慢して頂くわけには行くまいかという事である。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
風吹き
荒
(
すさ
)
み熱砂顔にぶつかる時
眼
(
め
)
を
閉
(
ふさ
)
ぎてあゆめば、
邪見
(
じゃけん
)
の
喇叭
(
らっぱ
)
気
(
き
)
を
注
(
つ
)
けろがら/\の馬車に
胆
(
きも
)
ちゞみあがり、雨降り
切
(
しき
)
りては
新道
(
しんどう
)
のさくれ石足を
噛
(
か
)
むに
生爪
(
なまづめ
)
を
剥
(
はが
)
し悩むを
胴慾
(
どうよく
)
の車夫法外の
価
(
ね
)
を
貪
(
むさぼ
)
り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
祥雲氏はこんな事を考へながら、気を落ちつけて目を
閉
(
ふさ
)
いだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
とまた扉がギーと鳴って出入口を
閉
(
ふさ
)
いだのである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そこでヤット
仔細
(
わけ
)
がわかりかけた呉青秀は、芬子さんを取り落したまま、
開
(
あ
)
いた口が
閉
(
ふさ
)
がらずにいると、その膝に両手を支えた芬子さん
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
三谷房夫
(
みたにふさお
)
は(それが美青年の名だ)とうとう右側のグラスを
掴
(
つか
)
んだ。目を
閉
(
ふさ
)
いでその冷たい容器をテーブルから持上げた。もう取返しがつかぬのだ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
行きがけに、係りの醫者のところへ車を
下
(
おろ
)
して、その事を話して置くと、醫者は傷や目に風が當つてはいけないからと言つて、繃帶をして、兩方の目を
閉
(
ふさ
)
いで了つた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
と、勝手口は
閉
(
ふさ
)
がっていたが、そこから一間ばかり向うの半間ほどの入口の
扉
(
ドア
)
が開いていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
地に
転
(
まろ
)
びたる犬の首は、歯
露
(
あらわ
)
れ舌を吐き、串に刺したる猫の面は、
眼
(
まなこ
)
を
閉
(
ふさ
)
がず
髯
(
ひげ
)
動く。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
八五郎も喜八も開いた口が
閉
(
ふさ
)
がりません。
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ば致せしやと云ふに粂之進は喜八が火附盜賊に
陷
(
おちい
)
りし
始末
(
しまつ
)
も殘らず話しければお梅はハツとばかりに
胸
(
むね
)
閉
(
ふさ
)
がり
暫
(
しば
)
し
詞
(
ことば
)
もなかりしが偖々
情
(
なさけ
)
なしと思ひ粂之進に
對
(
むか
)
ひ何卒私しに御暇下さるべし
夫
(
をつと
)
と共に
御所刑
(
おしおき
)
に
成
(
なり
)
申べし
科人
(
とがにん
)
の女房を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
閉
(
ふさ
)
ごうなんて——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
水溜りに湧いたお
玉杓子
(
たまじゃくし
)
でゲス。それがみんな
丸裸体
(
まるはだか
)
の人間ばっかりなんですから
開
(
あ
)
いた口が
閉
(
ふさ
)
がりませんや。相当に広い部屋でしたがね。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「助けて」の「た」が口を出ぬ先に、何者かが照子の口を
閉
(
ふさ
)
ぎ、スルスルと窓のブラインドをおろした。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その時
悚然
(
ぞっ
)
として、目を
閉
(
ふさ
)
いで
俯向
(
うつむ
)
いた——
挨拶
(
おじぎ
)
をしたかも知れない。——
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は、父の言葉を聴くと、胸が
閉
(
ふさ
)
がって言葉が出ないのです。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
八五郎も喜八も開いた口が
閉
(
ふさ
)
がりません。
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
唐渡り黒
繻子
(
じゅす
)
の丸帯に金銀二艘の
和蘭陀船
(
オランダぶね
)
模様の
刺繍
(
ぬいとり
)
、眼を驚かして、人も衣裳も共々に、
実
(
げ
)
に千金とも万金とも
開
(
あ
)
いた口の
閉
(
ふさ
)
がらぬ派手姿。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「アア、ま、もる、
君
(
くん
)
か。わしは、ひ、ひどい、めに遭った」と、もつれる舌で、やっとそれだけ云うと、ガッカリと疲れた様に、目を
閉
(
ふさ
)
いで、又
幽
(
かすか
)
に唸り始めた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
眼を
閉
(
ふさ
)
いで會話を讀むのを聞くと、十七八の娘か六十幾歳の老婆か分らぬなどは心細い。當りさはりがあるから例は出さぬが、ひどいのは、口に出して讀んで見ると、男か女か分らぬのさへある。
文章の音律
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
俺の口を
閉
(
ふさ
)
ごうという
巧
(
たく
)
らみの
下
(
もと
)
に、わざわざこの
室
(
へや
)
まで押しかけて来て……イヤッ……ソ……そうじゃないんだッ……。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
大鳥氏は、余りのことに、あいた口が
閉
(
ふさ
)
がらぬ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
旅僧
(
たびそう
)
は
半眼
(
はんがん
)
に
閉
(
ふさ
)
ぎたる
眼
(
め
)
を
開
(
ひら
)
きて
旅僧
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は
開
(
あ
)
いた口が
閉
(
ふさ
)
がらなかった。正木、若林の両博士が、何のためにコンナ奇妙なイタズラをするのかと思い迷った。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
宿屋の主人は驚き
呆
(
あき
)
れて、開いた口が
閉
(
ふさ
)
がらぬ位でしたが、やっと落ち付いて無茶先生に向って
豚吉とヒョロ子
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
三鳥山人
(著)
という言葉は、道路工事で入り口を
閉
(
ふさ
)
がれた商店の人々が一様に云う不平である。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
鍵穴まで
閉
(
ふさ
)
がっているんだ。その秘密の相談というのを聞こうじゃないか。何だ何だ。何だって服を脱ぐんだ。ハハア。裏に縫い込んだな。
G
(
ゲー
)
・
P
(
ペー
)
・
U
(
ウー
)
の指令か。フウン。暗号だな。ウム。
焦点を合せる
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうして開いた口が
閉
(
ふさ
)
がらずにいる彼女に「天罰思い知れ」とか何とかいう、いい加減な文句をタタキ付けて、泥の中に蹴たおして、手も足もズタズタに切れ
千切
(
ちぎ
)
れるような眼に会わしたら
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
現に後家さんは私を疑って、時々そんな口ぶりを洩らしている位ですから、後家さんから頼まれている地面の売れ次第、その金を捲上げて、後家さんの口を
閉
(
ふさ
)
いで、高飛びするつもりでした。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そのあとから三人の刑事が次々に飛び降りてしまうと、後は又ギイと閉まって
旧
(
もと
)
の通りになった。……私は開いた口が
閉
(
ふさ
)
がらなかった。こんな教会にこんな仕掛がしてあろうとは夢にも思わなかった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は開いた口が
閉
(
ふさ
)
がらなかった。茫然と妻木君の顔を見ていた。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“閉”の意味
《名詞》
(とず) 暦注の十二直の一つ。堤を築くことなどに吉、柱立て、婚姻、鍼灸などに凶という日。
(出典:Wiktionary)
閉
常用漢字
小6
部首:⾨
11画
“閉”を含む語句
閉塞
閉籠
幽閉
閉口
開閉
閉場
閉切
戸閉
閉込
閉鎖
開閉器
密閉
閉出
閉伊川
閉店
上閉伊郡
密閉室
大閉口
閉扉
本開閉器
...