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貯
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たくわ
ふりがな文庫
“
貯
(
たくわ
)” の例文
家を堅くしたと言われる祖父が先代から
身上
(
しんしょう
)
を受取る時には、銭箱に百文と、米蔵に二俵の
貯
(
たくわ
)
えしか無かった。味噌蔵も空であった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
少しばかりの
貯
(
たくわ
)
えを廻して三十年の間
安穏
(
あんのん
)
に暮し、主取りをする気もなく、江戸の下町に住んだのが、私の仕合せだったかも知れません
銭形平次捕物控:087 敵討果てて
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
三月に入ってから、彼の妻は到頭女の児を産んだ。譲吉は色々の出費で
貯
(
たくわ
)
えの過半を費した。妻は猿のように赤い赤ん坊を抱きながら
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
残っている五つのたいまいを作り終ったら、御禁制の解けるまで生地作りはやめるつもりでいるし、そのために少しは
貯
(
たくわ
)
えもある。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そのために百の力を持っていながらも、後の機会のことを思って、九十の力を
貯
(
たくわ
)
え、十の力を出すようなやり方を極端に排撃するのだ。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
其處
(
そこ
)
は
乘組人
(
のりくみにん
)
の
御勝手
(
ごかつて
)
次第
(
しだい
)
、
他
(
た
)
の
區劃
(
くくわく
)
は
彈藥
(
だんやく
)
や
飮料
(
いんれう
)
や
鑵詰
(
くわんづめ
)
や
乾肉
(
ほしにく
)
や
其他
(
そのほか
)
旅行中
(
りよかうちう
)
の
必要品
(
ひつえうひん
)
を
貯
(
たくわ
)
へて
置
(
お
)
く
處
(
ところ
)
で、
固定旅櫃
(
こていトランク
)
の
形
(
かたち
)
をなして
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
平尾さんのお志は感謝しますが、実は、私も貧乏の中で娘を亡くし、いろいろ物入りもして、今日の処少しの
貯
(
たくわ
)
えもありません。
幕末維新懐古談:74 初めて家持ちとなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
可厭
(
いや
)
らしく
凄
(
すご
)
く、不思議なる心持いまもするが、あるいは山男があま
干
(
ぼし
)
にして
貯
(
たくわ
)
えたるものならんも知れず、
怪
(
け
)
しからぬ事かな。
遠野の奇聞
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
別に一文の
貯
(
たくわ
)
えあるでは無し、朝から晩まで内職をして其の日/\の煙を立てゝ居りました、それが為に手前は始終不在勝でございまして
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
厚い皮革製の
胡服
(
こふく
)
でなければ
朔北
(
さくほく
)
の冬は
凌
(
しの
)
げないし、肉食でなければ胡地の寒冷に
堪
(
た
)
えるだけの精力を
貯
(
たくわ
)
えることができない。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「まこと旅用の
貯
(
たくわ
)
えなど、多分に所持はいたしませぬが、せっかくのご所望わずかなりと、妾がご用立ていたしますゆえ……」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十貫を利用して資本力が十五貫にましたなら、その時に十二貫出すと、つねに
余裕
(
よゆう
)
を
貯
(
たくわ
)
えておいてこれを
種
(
たね
)
として進みたいと思うのである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
それが一段
劇
(
はげ
)
しくなると
忽
(
たちま
)
ち「何を生意気な」という言葉に変化した。細君の腹には「いくら女だって」という
挨拶
(
あいさつ
)
が何時でも
貯
(
たくわ
)
えてあった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
床の間の
脇
(
わき
)
、押入の中の手箱には、
些少
(
さしょう
)
ながら金子
貯
(
たくわ
)
えおき候えば、
荼毗
(
だび
)
の費用に御当て下されたく、これまた頼入り候。
興津弥五右衛門の遺書(初稿)
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自分の
貯
(
たくわ
)
えの中から、お産の金を出すと云う事は、隆吉に顔むけならない気持ちで、自分の自転車は
盗
(
ぬす
)
まれた事にすればよいと思っていたのだ。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
かれは盗賊に殺されたのか
道連
(
みちづれ
)
に殺されたのか、それらの事情も判然しなかつたが、
彼女
(
かれ
)
のふところには
路銀
(
ろぎん
)
らしいものを
貯
(
たくわ
)
へていゐなかつたので
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ただにこれを得て一時の満足を取るのみならず、
蟻
(
あり
)
のごときははるかに未来を図り、穴を掘りて居処を作り、冬日の用意に食料を
貯
(
たくわ
)
うるにあらずや。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その上になお一つ、我々日本人の民間暦の進歩、すなわち輸入暦法の文字知識以前に、自然の体験によって少しずつ、覚え
貯
(
たくわ
)
えていた法則があった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
すると、
乙
(
おつ
)
の
貯
(
たくわ
)
えておいた
水
(
みず
)
の
尽
(
つ
)
きかかったころ、にわかに
空
(
そら
)
が
曇
(
くも
)
って
大雨
(
おおあめ
)
が
降
(
ふ
)
ってきました。そして一
時
(
じ
)
に
井戸
(
いど
)
には
水
(
みず
)
が
出
(
で
)
て、
草木
(
くさき
)
が
蘇返
(
よみがえ
)
りました。
神は弱いものを助けた
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
現に我々の
使用
(
しよう
)
する
水瓶
(
みづがめ
)
に比しては其
容量
(
ようりやう
)
誠に小なりと云ふべし。
思
(
おも
)
ふにコロボツクルは
屋内
(
おくない
)
に數個の瓶鉢類を
並列
(
へいれつ
)
して是等に水を
貯
(
たくわ
)
へ
置
(
お
)
きしならん。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
そして地中で養分を
貯
(
たくわ
)
えている役目をしているから、それで
多肉
(
たにく
)
となり、多量の
澱粉
(
でんぷん
)
を含んでいる
御蔵
(
おくら
)
をなしているが、それを人が食用とするのである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
良平
(
りょうへい
)
の
家
(
うち
)
では蚕に食わせる桑の
貯
(
たくわ
)
えが足りなかったから、父や母は
午頃
(
ひるごろ
)
になると、
蓑
(
みの
)
の
埃
(
ほこり
)
を払ったり、古い
麦藁帽
(
むぎわらぼう
)
を探し出したり、畑へ出る
仕度
(
したく
)
を急ぎ始めた。
百合
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もっとも
平生
(
へいぜい
)
は往々士官の身にあるまじき所行も内々
有之
(
これあり
)
、陣中ながら身分不相応の
金子
(
きんす
)
を
貯
(
たくわ
)
え居申し候。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
研究材料の方は、運んでくればよいので、事実、アラスカの氷河から、大きい氷の単結晶を何トンと運んできて、それを低温室の中に
貯
(
たくわ
)
えておいて使うことになった。
ウィネッカの冬
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
◎
京都
(
きょうと
)
の某壮士或る事件を頼まれ、
神戸
(
こうべ
)
へ赴き三日
斗
(
ばか
)
りで、帰る
積
(
つも
)
りのところが十日もかかり、その上に示談金が取れず、
貯
(
たくわ
)
えの旅費は
支
(
つか
)
いきり、帰りの汽車賃にも
差支
(
さしつか
)
え
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
大空をわたる雲の一片となっているか、谷河の水の一滴となっているか、
太洋
(
たいよう
)
の
泡
(
あわ
)
の一つとなっているか、又は思いがけない人の涙堂に
貯
(
たくわ
)
えられているか、それは知らない。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
元禄の
半頃
(
なかごろ
)
から、西国方面の
密貿易
(
ぬけがい
)
仲間は、急激に、数と力を加え、莫大な利をしめて、巨財をもつと共に、外国製の武器、火薬なども、ひそかに、諸所の島へ
貯
(
たくわ
)
え出した。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
田舎とはいえ大阪神戸に近いために、都会なみの物価高の中で、一坪の土地も
貯
(
たくわ
)
えもない女はその日から働かねばならぬ。そして働く前に食糧や燃料のことを考えねばならぬ。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
一人いた下女も暇をとって出て行き、少しばかりあった
貯
(
たくわ
)
えもすっかりなくなって、心細いうちに享徳四年が暮れた。年はあらたまったが、世の乱れは依然としておさまらない。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
貯
(
たくわ
)
えの一切を焼いてしまった上に、せめて、頭の飾りとかなんとかひとくさでも残っていれば、多少とも急場を救うの金目にならないとも限らないが、それすら無いのですから
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
死・愛・孤独・夢……そうした抽象観念ももはやわたしにとって何になろう。わたしの吐く息の一つ一つにすべての記憶はこぼれ墜ち、記号はもはや
貯
(
たくわ
)
えおくべき場を
喪
(
うしな
)
ってゆく。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
幕府にて
下
(
しも
)
ノ
関
(
せき
)
償金
(
しょうきん
)
の一部分を払うに際し、かねて
貯
(
たくわ
)
うるところの
文銭
(
ぶんせん
)
(一文銅銭)二十何万円を売り
金
(
きん
)
に
換
(
か
)
えんとするに、文銭は
銅質
(
どうしつ
)
善良
(
ぜんりょう
)
なるを以てその
実価
(
じっか
)
の高きにかかわらず
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
それを
貯
(
たくわ
)
えて置いて夏になると各地へ輸送していたが、東京の方に大きな製氷会社が出来るようになると次第に誰も手を出す者がなくなり、多くの氷室がその儘諸方に立腐れになった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「この店譲ります」と
貼出
(
はりだ
)
ししたまま、陰気臭くずっと店を閉めたきりだった。柳吉は浄瑠璃の稽古に通い出した。
貯
(
たくわ
)
えの金も次第に薄くなって行くのに、一向に店の買手がつかなかった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
貯
(
たくわ
)
えの
金子
(
きんす
)
ほとんど全部をふところにねじ込み、逃げるようにして家を出た。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
別に収入の道はなさそうであったが、幾らか
貯
(
たくわ
)
えがあると見え、
稼
(
かせ
)
ぐということをしないで、本を読む
間々
(
あいだあいだ
)
には、世間の隅々に隠れている、様々な秘密をかぎ出して来るのを
道楽
(
どうらく
)
にしていた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
とやかく暮らしてゆくのでさえ非常に困難ではあったが、二人はたがいに心を合わして、
貯
(
たくわ
)
えることのできる金はまず何よりも、母がポアイエ家から借りてる負債を返すのにあてることとした。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
こっちに移って来てからというもの、不運つづきで、少しばかりの
貯
(
たくわ
)
えで買った田地は大水で流れるし、松若は病気をするし、なかなか楽な渡世ではないよ。優しくしていればきりがつかないのだ。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
主従二人は、精を出して買い
貯
(
たくわ
)
えた夥しい柴を、家の四方へ積んだ。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
母は
悴
(
せがれ
)
の心尽くしですから、魚もきらいな人がこれだけは喜んで食べ、
味噌
(
みそ
)
や
醤油
(
しょうゆ
)
につけなどして
貯
(
たくわ
)
えて食べたりしました。
幕末維新懐古談:23 家内を貰った頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その前年の不作は町方一同の
貯
(
たくわ
)
えに響いて来ている。田にある稲穂も
奥手
(
おくて
)
の分はおおかた実らない。凶作の評判は早くも村民の間に立ち始めた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
余裕のあることはまことに結構であるが、一生余裕の
貯
(
たくわ
)
えだけで発揮せずに宝の持ち腐れで終わることはどうであろうか。はなはだ惜しく思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その人は
髭
(
ひげ
)
を
貯
(
たくわ
)
えて、洋服を着けたるより、
渠
(
かれ
)
はかく言いしなるべし。官吏?は吸い
窮
(
つ
)
めたる巻煙草を車の外に投げ
棄
(
す
)
て、次いで
忙
(
いそが
)
わしく
唾
(
つば
)
吐きぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「これは私ども商人に限らず、自分に
貯
(
たくわ
)
えがあり友人知己に頼まれれば、どなたでもなさることだと存じますが」
改訂御定法
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
またはこの島が船の交易によって、かねてから輸入して
貯
(
たくわ
)
えてきたことを意味するか、どちらかの一つであろう。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
アヽ私もね
茲
(
こゝ
)
にいる気はさら/\無いから、
形見分
(
かたみわけ
)
のお金も有るのだけれども、四十九日まで待ってはいられないから、少しは私の
貯
(
たくわ
)
えも有るから、それを
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一人は富田という市病院長で、東京大学を卒業してから、この土地へ来て洋行の費用を
貯
(
たくわ
)
えているのである。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この戦車の中には、食料品の
貯
(
たくわ
)
えがないことは、はじめからしっていた軍曹だった。だから、黄いろい幽霊のことばは、パイ軍曹の腹へ、大砲のごとく、こたえた。
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あるいはたまたま
身本
(
みもと
)
慥
(
たし
)
かにして相応の身代ある者も、金銭を
貯
(
たくわ
)
うることを知りて子孫を教うることを知らず。教えざる子孫なればその愚なるもまた怪しむに足らず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
日傭取
(
ひようとり
)
の子で金を目当てにさらわれるはずもなく、お新の母親のお豊は武家の
後家
(
ごけ
)
で、少しは
貯
(
たくわ
)
えもあるようですが、長いあいだ賃仕事をして、これも細々とした暮しです。
銭形平次捕物控:140 五つの命
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
貯
常用漢字
小5
部首:⾙
12画
“貯”を含む語句
貯蓄
貯金
貯藏
貯蔵
貯金帳
貯水池
貯蔵庫
御貯
貯蓄心
貯髯
貯金筒
貯蔵高
貯蔵部屋
貯蔵槽
貯蓄債券
貯水溝
貯水桶
貯水
貯林檎
貯叢
...