艶麗あでやか)” の例文
旧字:艷麗
得も言われぬにおいがしました。はてな、あの一軒家の戸口をのぞくと、ちらりと見えた——や、その艶麗あでやかなことと申すものは。——
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それなかには橘姫たちばなひめよりもはるかに家柄いえがらたかいおかたもあり、また縹緻きりょう自慢じまんの、それはそれは艶麗あでやか美女びじょないのではないのでした。
二人とも欲しい、いくら欲ばっていると考えてみても、たまらなく二人とも欲しいのだから、仕方がありません。艶麗あでやかは艶麗でいいし、凜々りりしいのは凜々しいので、堪らない。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
障子の破れに、顔が艶麗あでやかに口のほころびた時に、さすがにすごかつた。が、さみしいとも、夜半よなかにとも、何とも言訳いいわけなどするには及ばぬ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところ艶麗あでやかな、奥方とか、それ、人間界で言ふものが、にじの目だ、虹の目だ、と云ふものを(くちばしす)此の黒い、鼻の先へひけらかした。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これだけでは、よう御合点はなりますまいで、てまえのその驚き方と申すものは、変った処に艶麗あでやかな女中の姿とだけではござらぬ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
や、素敵なものだと、のほうずな大声で、何か立派なのとそこいらの艶麗あでやかさに押魂消おったまげながら、男気おとこッけのない座敷だから、わっしだって遠慮をしました。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜昼を分けるように、下の土は冷たく濡れて、黒くなって、裾が薄暗く見えたんで、いや、串戯じょうだんはよして余り艶麗あでやか過ぎる。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、まぼろしのなつかしい、空蝉のかような風土は、かえってうつくしいものを産するのか、柳屋に艶麗あでやかな姿が見える。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ、まぼろしのなつかしい、空蝉うつせみのかやうな風土ふうどは、かへつてうつくしいものをさんするのか、柳屋やなぎや艶麗あでやか姿すがたえる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれどもな、天守てんしゆ主人あるじは、うちに、きた、生命いのちある、ものをふ、かよふ、艶麗あでやかをんなにぎつてるのぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
邪慳じやけんに、胸先むなさきつて片手かたて引立ひつたてざまに、かれ棒立ぼうだちにぬつくりつ。可憐あはれ艶麗あでやかをんな姿すがたは、背筋せすぢ弓形ゆみなりもすそちうに、くびられたごとくぶらりとる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
美女たをやめにもうれしげに……たのまれてひとすくふ、善根ぜんこん功徳くどく仕遂しとげたごと微笑ほゝゑみながら、左右さいうに、雪枝ゆきえ老爺ぢいとを艶麗あでやかて、すゞしいひとみ目配めくばせした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
艶麗あでやか女俳優おんなやくしゃが、子役を連れているような。年齢としは、されば、そのの母親とすれば、少くとも四五であるが、姉とすれば、九でも二十はたちでも差支えはない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えらいな! その清浄しょうじょうはだえをもって、紋綸子もんりんずの、長襦袢ながじゅばんで、高髷たかまげという、その艶麗あでやかな姿をもって、行燈あんどうにかえに来たやといの女に目まじろがない、その任侠にんきょうな気をもって
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、あ、と押魂消おったまげて、ばらりと退くと、そこの横手の開戸口ひらきどぐちから、艶麗あでやかなのが、すうと出た。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
トこの天窓の上へ、艶麗あでやかに立たれた時は、余り美麗で、神々しくッて、そこいらのものの精霊が、影向ようごうしたかと思いましたて。桜の精、柳の精というようにでございますな。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私とは、ちょうど正面、かの男と隣合った、そこへ、艶麗あでやかな女が一人腰を掛けたのである。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と斜めに警官を見て、莞爾にっこり笑う……皓歯しらはも見えて、毛筋の通った、つぶし島田は艶麗あでやかである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はただその気高けだか艶麗あでやかな人を、今でも神か仏かと、思うけれど、あとで考えると、先ずこうだろうと、思われるのは、うばの娘で、清水谷しみずだにの温泉へ、奉公ほうこうに出ていたのを、祭にいて
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
緑蝶夫人ろくてふふじんといふ艶麗あでやかなのが、麹町通かうじまちどほ電車道でんしやみちむかうへ、つい近所きんじよに、家内かないともだちがあるのに——けないとぷんとしないが、香水かうすゐかをりゆかしきびんならぬ、衣裳鞄いしやうかばんりてつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
咄嗟とっさの間の艶麗あでやかな顔の働きは、たとえば口紅を白粉おしろいに流して稲妻を描いたごとく、なまめかしく且つ鋭いもので、敵あり迫らば翡翠ひすいに化して、窓から飛んで抜けそうに見えたのである。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二代以前の当城殿様、お鷹狩の馬上から——一人町里まちさとには思いも寄らぬ、都方みやこがたと見えて、世にも艶麗あでやかな女の、一行をさっと避けて、その宮へかくれたのを——とろんこの目で御覧ごろうじたわ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
俺はただ屋の棟で、例の夕飯ゆうめしを稼いでいたのだ。処で艶麗あでやかな、奥方とか、それ、人間界で言うものが、虹の目だ、虹の目だ、と云うものを(くちばしを指す)この黒い、鼻の先へひけらかした。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
リボンも顔もひとえに白く、かすりの羽織が夜のつやに、ちらちらと蝶が行交う歩行あるきぶり、くれないちらめく袖は長いが、不断着の姿は、年も二ツ三ツけて大人びて、愛らしいよりも艶麗あでやかであった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「む、これかえ。」と俯向うつむきて、胸を見て、小親は艶麗あでやか微笑えみを含みぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(あれ、嬢様ですって、)とやや調子を高めて、艶麗あでやかに笑った。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(あれ、嬢様ぢやうさまですつて、)とやゝ調子てうしたかめて、艶麗あでやかわらつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と軽く云ったが、艶麗あでやかに、しかも威儀ある座を正して
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
艶麗あでやかに座に着いたのは、令夫人才子である。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おけ申しましょう、」と艶麗あでやかに云う。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身軽に扮装いでたったが、艶麗あでやかな姿を眺めた。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火箸に手をせ、艶麗あでやか打微笑うちほほえ
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
露の垂りそうに艶麗あでやかあらわれた。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
艶麗あでやか打傾うちかたむ
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)