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腿
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もも
ふりがな文庫
“
腿
(
もも
)” の例文
それもそのはず、彼は
腿
(
もも
)
のところをピストルのたまにうちぬかれたのです。鮮血はズボンを赤く染めて、なおもひろがっていきます。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼女の
腿
(
もも
)
の下に蠢くものは、決して水鳥の筋肉ではなくて、羽毛に覆われた人間の、肉体に相違ないことを確めることが出来ました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
娘は
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
で
頸
(
くび
)
から胸、腹から
腿
(
もも
)
へと洗いながら、また湯を汲みに立ったりして、前後左右いろいろな角度と姿勢をこちらへ見せた。
追いついた夢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ずぶ濡れになったまま、与平はがっしりした
躯
(
からだ
)
つきで千穂子の前を歩いて行く。
腿
(
もも
)
のあたりに、濡れたずぼんがからみついていた。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
爺はやっと正気に返ったとみえ婦の
腿
(
もも
)
を放すと、ばつ悪そうに手をぼそぼそはたきながら起き上った。婦も手を叩いて笑いこけた。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
▼ もっと見る
緑色の怪物は、急に激しく身をもがいて君の手をすり抜け、
脆
(
もろ
)
い、取外し自在のからだが、
可憐
(
かれん
)
な
腿
(
もも
)
を一本、君の手の中に残して行く。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
三番目は肉料理ですが
腿
(
もも
)
のランプステーキ即ちランという処を百目ばかり買って
肉挽器械
(
にくひききかい
)
があればそのまま挽いて細かくしますし
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そして右手には大きな人間の
腿
(
もも
)
の骨を持っていて、
唄
(
うた
)
を歌えと言ってそいつで一座の誰か一人の者をたたいたところらしかった。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
黒犬に
腿
(
もも
)
を
咬
(
か
)
まれて驚いたなどという下らない夢を見る人は、
窹
(
さ
)
めていても、
蚤
(
のみ
)
に
猪
(
い
)
の目を
螫
(
さ
)
されて騒ぐくらいの下らない人なのである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
小時
(
しばらく
)
歩いていると今度は田舎道だった。邸宅などの気配はなかった。やはり切り崩された赤土のなかからにょきにょき女の
腿
(
もも
)
が生えていた。
雪後
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
いつのまにか、もうふくら
脛
(
はぎ
)
の
半
(
なか
)
ばまできている。まもなく膝を没するであろう。それから
腿
(
もも
)
、腹、胸、首……やがて全身水びたしに——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
胴がくびれているだけ腰の下から
立膝
(
たてひざ
)
した
腿
(
もも
)
のあたりの肉付が一層目に立って
年増盛
(
としまざか
)
りの女の重くるしい誘惑を感じさせる。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雪は
脛
(
すね
)
に及び、膝に及び、
腿
(
もも
)
におよび、あらぬ所に足ふみこめば、腰にすら及ばんとする。M君がさす金剛杖の
手許
(
てもと
)
わずかに残る所もあった。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
あるいは門前の川が
汎濫
(
はんらん
)
して道路を浸している時に、ひざまでも没する水の中をわたり歩いていると、水の冷たさが
腿
(
もも
)
から腹にしみ渡って来る
笑い
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
真木島
(
まきのしま
)
の十郎は、
腿
(
もも
)
の傷が痛まないように、そっとねがえりをうちながら、
喉
(
のど
)
のかわいたような声で、
沙金
(
しゃきん
)
にささやいた。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「きれいな子ですよ。お
腫物
(
でき
)
一つできない……。」と言って、お銀は
餅々
(
もちもち
)
したその
腿
(
もも
)
のあたりを撫でながら、ばさばさした
襁褓
(
むつき
)
を
配
(
あてが
)
ってやった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「僕らの方は毎朝
腿
(
もも
)
を強くするために、三十分ずつランニングをして、それから一時間ほど寝てこっちへやって来るんだ。君の方の呑気とは違う」
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
それが、手指ばかりでなく、腹部にも腰の回りにも、
腿
(
もも
)
にも、数は少ないが広がっている。
紛
(
まが
)
う方なく、
疥癬
(
しつ
)
である。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
こうした英雄たちはどれもこれも、ぞっとするほど太い
腿
(
もも
)
をして、前代未聞の素晴らしく大きな口髭を生やしている。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
陶はアッと叫んであおのけに倒れ、
腿
(
もも
)
脛
(
すね
)
も露わな前裾をつくろおうともせず、死んだようになって眼を閉じている。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
顔、肩、胸、腕、
腿
(
もも
)
、所
嫌
(
きら
)
わず攻めて来るので、慌てて避ける度
毎
(
ごと
)
にバタン! と云う地響きが家じゅうへ伝わる。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
山かゞしは蛇の中でも
精悍
(
せいかん
)
なやつである。蛙の
腿
(
もも
)
を啣えながら
鎌首
(
かまくび
)
をたてゝ逃げて行く。竹ぎれを取って
戻
(
もど
)
ると、
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
の畑に見えなくなった了うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
女房の話では、仏の
腿
(
もも
)
の繃帯まで解いて見たんだそうだが、あの
疵
(
きず
)
が
因
(
もと
)
で、そこから破傷風の
黴菌
(
ばいきん
)
が入って死んだと言うから、考えて見ると気味の悪い話さ
呪の金剛石
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
黒狗はわんわん追いついて来て、あわや阿Qの
腿
(
もも
)
に噛みつきそうになったが、幸い著物の中から一つの大根がころげ落ちたので、狗は驚いて飛びしさった。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
狙いたがわず、矢は、若い将軍の左の
腿
(
もも
)
にあたり、馬よりどうと転げ落ちた。——あッと、辺りの兵は驚きさわいで、将軍のまわりへ馳け寄って行く——。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仕方がないから、今度は手の方を前へ運ばせて、腰を押し出すように足を伸ばした。すると
腿
(
もも
)
の所まで
摺
(
ず
)
り落ちて、
草鞋
(
わらじ
)
の裏がようやく堅いものに乗った。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それどころか自分の腕一本、あるひは
腿
(
もも
)
一本もぎとつて、飢ゑた
虎
(
とら
)
にさつさと投げ与へさへするでせう。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そっと何か取り出して俺の
腿
(
もも
)
に置いた。手の中にはいってしまいそうな小さなマメ(ピストル)だった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
滑
(
なめ
)
らかに湯を浴び桜色に色づいた
腿
(
もも
)
の線は流し場に群れた人の
脊
(
せ
)
に区切られて見えなかった。女は浴び終ると、くるりと、脊中を向けて上り口に大股に踏み出した。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
久しく
歩行
(
ある
)
かぬためか、足の運びが鈍い、爪先が痛む、コムラが痛む、膝節がいたむ、
腿
(
もも
)
がいたむ、
終
(
つい
)
には腰までも痛む、今からこんなことではと気を鼓しつつ進む。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
彼は教師の温かい頸筋に、臭い彼の
鼻加多児
(
びカタル
)
のいきを押しつけた。そして汚れた尻から
腿
(
もも
)
を拭いてもらい、何か肉体的な幸福をぽっと面に
漲
(
みなぎ
)
らし低い声で話しだした。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼女は巨大で
腿
(
もも
)
のあたりは
猶太
(
ユダヤ
)
女の輪廓をもって、皮膚は荒れて赤らんで堅固な体躯をしていた。
飛行機から墜ちるまで
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
……ああそれからワーテルローでは、
腿
(
もも
)
にビスカイヤン銃の弾を一つ受けた。まあそれだけだ。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
腿
(
もも
)
のなかは空洞になつて、黒い
漆
(
うるし
)
が塗つてあることを考へた。膝から上が桐の木で、膝から下が
朴
(
ほほ
)
の木で作られて足の形を取る時に、かんなで削つたことを考へたのである。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
肩や
腿
(
もも
)
のへんに二三ヵ所
鈍痛
(
どんつう
)
が感じられ出したが、次郎はほとんどそれを気にしなかった。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
女は
体
(
からだ
)
を斜めにして、足を縁台の外に伸ばすと、赤い
蹴出
(
けだ
)
しと白い
腿
(
もも
)
のあたりとが見えた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
先生は
腿
(
もも
)
をつねってみた。自分の脈を握ってみた。どうしても自分の肉体は目醒めているらしかった。これが悪夢でないとしたら一体何だろう。悪夢以上に悪い夢にちがいない。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
熊城は相手が法水だけに、ほとんど
怯懦
(
きょうだ
)
に近い警戒の色を
泛
(
うか
)
べたが、検事は
腿
(
もも
)
を叩いて
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
箒
(
ほうき
)
みたいに短くなった尻尾は、蠅をおっ払うため精一杯振ってももう
腿
(
もも
)
には届かなかった。次の道中にそなえるため、すり減った
蹄
(
ひづめ
)
を削り削り何度新しい鉄を
嵌
(
は
)
め換えたか知れない。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
それから歯と耳と足は短きを欲し、胸と額と
眉間
(
みけん
)
は広きを欲し、上の口と腰と足首は狭きを欲し、
臀
(
しり
)
と
腿
(
もも
)
と
腓
(
ふくらはぎ
)
は大なるを欲し、指と髪と唇は細きを欲し、乳と鼻と頭は小さきを欲す。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
身体をねじまげた無作法な像ばかりで、その
膝
(
ひざ
)
の間には火が燃えたち、
腿
(
もも
)
には
蟇
(
がま
)
や
蛇
(
へび
)
が
匐
(
は
)
い上がっていた。彼女は自分の本能を押えつけるのに
馴
(
な
)
れ、自分自身に
嘘
(
うそ
)
をつくのに馴れた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼女は父の分と良人のぶんと二
吋
(
インチ
)
四方ほどの黒の絹はんけちを二枚、靴下の
腿
(
もも
)
のところから
摘
(
つま
)
み出して、別々のハンケチで左右の眼から桃色の
蝋
(
ろう
)
のしたたりのような涙を拭くのである。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
勇
(
ゆう
)
を
皷
(
こ
)
して皆曰く、たとひ
日
(
ひ
)
暮
(
く
)
るるとも其小屋に
到達
(
とうたつ
)
し、酒樽
若
(
も
)
しあらば之を傾け尽し、戸倉村に
帰
(
かへ
)
りて其代価を
払
(
はら
)
はんのみと、議
忽
(
たちま
)
ち一决して沼岸を
渉
(
わた
)
る
深
(
ふか
)
さ
腿
(
もも
)
を
没
(
ぼつ
)
し
泥濘
(
でいねい
)
脛
(
すね
)
を
埋
(
うづ
)
む
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
葉子はいたずら者らしくひとり笑いをしながら
立
(
た
)
て
膝
(
ひざ
)
をしてみたが、それには自分ながら気がひけたので、右足を左の
腿
(
もも
)
の上に積み乗せるようにしてその足先をとんびにしてすわってみた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
Kは安心させるように男の
腿
(
もも
)
をたたいて、言った。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
下にして寝た
方
(
はう
)
の
腿
(
もも
)
のかろきしびれを。
悲しき玩具
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
目が血ばしって赤く、
唇
(
くちびる
)
がまっ
青
(
さお
)
だった。
頸
(
くび
)
から胸にかけて、黒い血が凝固していた。頭にも胸にも
腿
(
もも
)
にもほんとうの毛が植えてあった。
悪霊物語
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
はいているのに、
腿
(
もも
)
のところまで昇って来る。日が照っても、昼までは脚が乾いたということはありません、食卓につくまではね
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それがあぐらをかいている
膝
(
ひざ
)
のあいだに落ちたので、取って捨てるまでに、
腿
(
もも
)
と
脛
(
すね
)
を
慌
(
あわ
)
てて叩いたりこすったりしなければならなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
臀
(
しり
)
の大きいのと、
腿
(
もも
)
の太いのが際立って目につく身体つき。笑ったり話をしたりする時の態度や声柄までが、姉妹ででもあるように
能
(
よ
)
く似ていた。
心づくし
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
腿
漢検準1級
部首:⾁
13画
“腿”を含む語句
腿引
太腿
大腿骨
大腿
腿立
燻腿
大腿部
内腿
両腿
腿肉
高腿
片腿
火腿
御腿
半腿引
兩腿
下腿部
下腿
腿肚
上腿