)” の例文
「ええ、驚かしゃあがるな。」と年紀としにはない口を利いて、大福餅が食べたそうに懐中ふところに手を入れて、貧乏ゆるぎというのをる。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姫様によくた娘をどこからか借りて来て、姫様に仕立ててお目にかけたらば、奥方のお気も少しは鎮まろうかということになった。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いずれも探求する意力、新をあばく精神が漲っている。た風姿を作って満足しているような弱い造型本能の能くするところではない。
本邦肖像彫刻技法の推移 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
本人よりもよく米友にているこの小坊主が、先に立って案内に歩き出したところを見ると、どうでしょう、これが跛足びっこなのです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
吐息に蒸されてしずくを結んだ羽根毛がつめたく鼻のあたりを湿しめした。それが情感のり場のない涙の感触にてゐたのかも知れない。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)
「竹ちやんも大けなると、腎張じんばりになるんやろ。……親にん子は鬼子や。」と言ふかと思ふと、大きな聲でゲラ/\と笑ひ續けた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それに引かえ僕のおとと秀輔ひですけは腕白小僧で、僕より二ツ年齢としが下でしたが骨格も父にたくましく、気象もまるで僕とはちがって居たのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その石碑は今なお芝西ノ久保光明寺の後丘に残存している。匡温は曾祖父星渚にて学を好み十二、三歳にしてはやく詩を賦した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それとよくてゐるのは、松平大進たいしんといふ武士さむらひのやり方で、酒宴さかもりになると、きまつて長羅宇ながらうで、すぱりすぱりと煙草をふかし出す。
『やつた。さうして一箇月の停學ぢや。體操の教師は免職よ。——其奴がよ、何處か思ひ出して見ると高橋にとるんぢや。』
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
尤もその肖像の体勢が、私よりも不折氏の方にているという事はその席上での笑柄に上って、少数ながら面白い会であった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
それはどういうときだというと、おまえにた青年の後姿を見たとき、おまえの家へ残して行った稽古用品や着古した着物が取出されるとき。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
わしにかえ。彼奴は私に肖ねえで、亡くなった祖父じじいたと見える。私は彼奴を見ると、祖父を思出さずにはおられやせん」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その児は男の子に有り勝ちの母親で、実に可愛らしく丸々と肥っておりましたが、どうしたものか生れ落ちると間もなく
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ながめても眺めてもきないのです。そのわけは、雲のみねといふものは、どこか蛙の頭の形にてゐますし、それから春の蛙の卵に似てゐます。
蛙のゴム靴 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
まるで碁を打つやうなカラクリを仕てゐた其の間に、同じやうな族類系統のたものをいろ/\求めて、何様かして甘い汁を啜らうとして居た。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
唯円 放蕩ほうとうな上に、浄土門の救いを信じない滅びの子だと申しています。父上にぬ荒々しい気質だと言っていましたよ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
得忘れぬ面影にたりとはおろかや、得忘れぬその面影なりと、ゆくりなくも認めたる貴婦人のグラス持てる手は兢々わなわな打顫うちふるひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
未来永劫此の世に遺したさに、すがたを描こうと思いつき、到頭とうとうこの一面の肖像すがたえをかいたことを話してきかせました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
なるほど、そういえばお父さんにておいでなさる。若旦那、わたくしはあなたのお父さんをよく存じておりますよ。
田舎の縁類の人のうわさも出た。お庄はどこか父親にているとか、ここが母親に肖ているとか言って、顔をじろじろ見られるのが、むずかゆいようであった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
街ではよく彼の顔が母にてゐるといつて人々がわらつた。釣針のやうに脊なかをまげて、母はどちらの方角へ、点々と、その足跡をつづけていつたのか。
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
おかみは行々ゆくゆく彼をかゝり子にする心算つもりであった。それから自身によく太々ふてぶてしい容子をした小娘こむすめのお銀を、おかみは実家近くの機屋はたやに年季奉公に入れた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わけいおさむれえが腰掛けて一ぺいやっていた、其の人の年頃はそうさ廿二三で、ちょうど其処に入らっしゃる丹三郎様ぐれえの年恰好で、貴方あんたているお方サ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わが此裝置を一瞥しをはりし時、彼のベルナルドオにたる男はこなたに向ひて足の運び輕げに歩み來たり。
その空隙すきをふさぐ幾億兆の群集。——わたしは「ほとけの畠」の、あの目こぼれを啄む、一羽の禽に、どうやらてきてゐる。しかも、零落おちぶれた一羽のからすに。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
まず正に言あり、鬼は人の影なり、人は鬼の形なり、影と形と相る。人の寿は百有二十、鬼の寿はまた百有二十、五世してその主をうずめ、その諸、もって取るあり。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「おまえによくていると思わないかい、鼻つきにしろ目にしろ大そうよくおまえに似ている。」
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
どうもわが邦にも交合に先だって一足が特に長くなり体を離れてなお蠕動ぜんどうする、いわゆる交接用の足(トクユチルス(第五図))が大いに発達活動して蛇にた蛸あり。
その天資、慷慨こうがいにして愛国の至情に富む、何ぞその相たるのはなはだしき。しこうしてその文章をなげうち去りて、殉国じゅんこく靖難せいなんの業につきたるが如き、二者ともにそのてつを同じうせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
併し色が生白なまつちらけて眉毛がチヨロけて眼尻が垂れ、ちつと失礼の云分だがやまと文庫の挿絵の槃特はんどくに何処かてゐた。第一いやな眼付をして生緩なまぬるくちかれるとぞうつと身震が出る。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
私のかお何処どこ幼顔おさながおて居ると云うそのうちには、私に乳をましてれた仲仕なかし内儀かみさんもあれば、又今度こんど兄の供をして中津から来て居る武八ぶはちと云うごく質朴な田舎男いなかおとこ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さうして夫人は、その見知らない少女がその頃の自分にひどくてゐることに、そして、その少女が實は自分の娘であることに、なんだか始めて氣づいたかのやうに見えた。
聖家族 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
其処に飾付かざりつけて在ッた木像にんぎょうの顔が文三の欠伸あくびをした面相かおつきているとか昇の云ッたのが可笑しいといって、お勢が嬌面かおに袖をてて、勾欄てすりにおッかぶさッて笑い出したので
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
女が木彫職人にたのんだのは、等身大のあの若者のすがたにせた木の彫刻であった。
(新字新仮名) / 山川方夫(著)
主人は不審に思うらしい様子で、「へえ、あんなに好くてお出になって」
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むしろ彼の寂寥にた面影をもつ人、彼は野々宮を訪ねてみやうと思つたのだ。その野々宮が、文子に好感をもたないことが分つてゐたが、不思議に左門はそれが気掛りにならないのだつた。
令孃といふのは鶴子さんといつて主人公には低いが顏立は美人だ。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
現に第二の法王の顔がそのメトーケーサンによくて居るという話です。しかしその事は世人一般の認定の説でなくって、ただセラ大学に居る私の知合の博士が言ったのですから真偽は保し難い。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「知らなくつて。それ、其所に木につ掛つて居るのがリツプさ。」と云はれて、リツプは驚き乍ら、人の指ざす方を見れば、成程自分によくた、同じ様に貧乏らしい、屹度きつとまた同じ様に無性な男が
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
ハテな、此の美人、叔父の知って居る何人にて居るのだろう
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
わがおもの母にるよと人いへばなげし鏡のすてられぬかな
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
惜しい事にはおっかさんにて少し反歯そっぱだが——
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
白髪しらがをうなにさもてる。
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
「いくら衛生のためだって、あの髯だけは廃止よせば可いなあ。まるで(ちょいとこさ)にてるものを、髯があるからなおそっくりだ。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(それを孝子は、写真版などで見た奈勃翁ナポレオンの眼にたと思つてゐた。)——その眼が此学校の精神たましひでゞもあるかの様に見えた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それはどういうときだというと、おまえにた青年の後姿うしろすがたを見たとき、おまえの家へ残して行った稽古けいこ用品や着古きふるした着物が取出とりだされるとき。
巴里のむす子へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「どうだい、あすこの隅つこにゐる毛唐は恐ろしく日本人にてるぢやないか。僕はすつかり見違つて、今あすこへ割り込んだぢやないか。」
ながめても眺めてもきないのです。そのわけは、雲のみねというものは、どこか蛙の頭の形にていますし、それから春の蛙の卵に似ています。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まるでを打つようなカラクリをしていたその間に、同じような族類系統のたものをいろいろ求めて、どうかしてあまい汁をすすろうとしていた。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)