きく
昔、一人の女がいた。 女は御所につとめ、幼いころからその御所の奥ふかくに住み、中宮の御身のまわりのこまごまとした雑用をはたすのが役目だった。 中宮と主上との御仲はたいへん円満で、毎日は時の刻みのように着実に、平和に過ぎ、そのあいだ女もまた中 …