トップ
>
羅
>
うすもの
ふりがな文庫
“
羅
(
うすもの
)” の例文
紫紺の
羅
(
うすもの
)
に白博多の帯という、ひどく小粋ななりをしていた。戸口に立ったまま葵のほうを眺めていたが、すらすらと寄ってくると
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
裸体に蓑をかけたのが、玉を編んで
纏
(
まと
)
ったようで、人の目には
羅
(
うすもの
)
に似て透いて肉が甘い。脚は
脛
(
はぎ
)
のあたりまでほとんどあらわである。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中の品物の見えないのも感じがいいのである。椅子の前には置き物の卓が二つあって、
支那
(
しな
)
の
羅
(
うすもの
)
の
裾
(
すそ
)
ぼかしの
覆
(
おお
)
いがしてある。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その時彼は鳥に説教した聖フランシスを、思ひ出した。彼の家の軒端からのぼる朝の煙が、光を透して紫の
羅
(
うすもの
)
のやうに柿の枝にまつはつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
芳紀
(
とし
)
のほども、美しさに過ぎて、幾つぐらいとも計りがたいが、
蘭瞼細腰
(
らんけんさいよう
)
の
羅
(
うすもの
)
すがたは、むしろ天女に近いと云ってもいい。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
臥
(
ね
)
ようとすると、蒼白い月光が隈なく
羅
(
うすもの
)
を敷たように仮の
寝所
(
ふしど
)
を照して、五歩ばかり先に何やら黒い大きなものが見える。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
「そうですか。もうじきです。」三人は
向
(
むこ
)
うを
向
(
む
)
きました。
瓔珞
(
ようらく
)
は黄や
橙
(
だいだい
)
や
緑
(
みどり
)
の
針
(
はり
)
のようなみじかい光を
射
(
い
)
、
羅
(
うすもの
)
は
虹
(
にじ
)
のようにひるがえりました。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
青磁色の
羅
(
うすもの
)
をもれて来る、香ばしい美女の魅力は、羽がいの下のぬくめ鳥のように深井少年を押え付けてしまったのです。
焔の中に歌う
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
みやこの女はまだ
市女笠
(
いちめがさ
)
を
被
(
かぶ
)
り
壺装束
(
つぼしょうぞく
)
のままだったが、突然、貝ノ馬介がそばに寄るとその
羅
(
うすもの
)
を、さすがに手荒いふうではなく物穏かに
引剥
(
ひきは
)
いだ。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と、大納言の歩く行くてに、
羅
(
うすもの
)
の白衣をまとうた女の姿が、月光をうしろにうけて、静かに立っているのであった。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
夫婦は
羅
(
うすもの
)
の裾をひきずりながら出たが、泣くこともできなかった。曾は歩くのが苦しいので悪い車でも手に入れて乗ろうとしたがそれもできなかった。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
空は
研
(
と
)
ぎ上げた
剣
(
つるぎ
)
を
懸
(
か
)
けつらねたごとく澄んでいる。秋の空の冬に変る
間際
(
まぎわ
)
ほど高く見える事はない。
羅
(
うすもの
)
に似た雲の、
微
(
かす
)
かに飛ぶ影も
眸
(
ひとみ
)
の
裡
(
うち
)
には落ちぬ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
Operaglass で ballet を踊る女の
股
(
また
)
の間を覗いて、
羅
(
うすもの
)
に織り込んである金糸の光るのを見て、失望する紳士の事を思えば、罪のない話である。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
画題は〈楊貴妃〉それもあの湯上りの美しい肌を柔らかな
羅
(
うすもの
)
に包んで
勾欄
(
てすり
)
に凭れながら夢殿の花園を望んで見ると言った構図で、尤も湯上りと言いますと何だか意気に
芙蓉の花にも似た美しい楊貴妃を
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
月を見て涼を入れようと半裸体の麗人が高殿へ登つてゆく、いくら夏でも上層は冷い、そこで髪の上からトルコの女のするやうに
羅
(
うすもの
)
を一枚被いて残りの階を登つて行く。
晶子鑑賞
(新字旧仮名)
/
平野万里
(著)
彼がしきりに否定しようとするにも
拘
(
かゝわ
)
らず、月の面を
蔽
(
おゝ
)
うていた雲の
羅
(
うすもの
)
が少しずつ
剥
(
は
)
がれて行くに従い、だん/\とその人影は刻明になって来て、半信半疑であったものが
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
冷えびえと
蠢
(
うごめ
)
いているこの
羅
(
うすもの
)
の陰には何事かがある? 本当に、何事かが起こっているに相違ない?——彼は東京の靄が濃くなるごとに、この抽象的な観念に
捉
(
とら
)
えられるのだった。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
羅
(
うすもの
)
ひとつになって圓朝は、この
間内
(
あいだうち
)
から貼りかえたいろいろさまざまの障子のような小障子のようなものへ、河岸の景色を、藪畳を、
廓
(
よしわら
)
を、大広間を、
侘住居
(
わびずまい
)
を、
野遠見
(
のとおみ
)
を、浪幕を
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
羅
(
うすもの
)
に包まれていた時から目を悦ばせて、今は
目映
(
まばゆ
)
いように光って君臨している
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
男神
(
をがみ
)
は萌黄の
羅
(
うすもの
)
を著流して手に短き杖を持ちながら透明なる卓にもたれ
花枕
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
黄金
(
こがね
)
を
織作
(
おりな
)
せる
羅
(
うすもの
)
にも似たる
麗
(
うるはし
)
き日影を
蒙
(
かうむ
)
りて、
万斛
(
ばんこく
)
の珠を鳴す谷間の清韻を楽みつつ、
欄頭
(
らんとう
)
の山を枕に
恍惚
(
こうこつ
)
として消ゆらんやうに覚えたりし貫一は、
急遽
(
あわただし
)
き
跫音
(
あしおと
)
の廊下を
動
(
うごか
)
し
来
(
きた
)
るに
駭
(
おどろか
)
されて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
一日のあらゆる心の
静謐
(
せいひつ
)
を
希
(
ねが
)
って、『古今集』『源氏物語』へのおだやかな共感を、桜花や月光の織りなす情緒的な自然へ、そのまま流れこませ、想いうるかぎり甘美な気分の
羅
(
うすもの
)
を織りなすために
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
半身にうすくれなゐの
羅
(
うすもの
)
のころもまとひて月見ると言へ
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
清
(
すゞ
)
しい
羅
(
うすもの
)
の揺らぐやうに地の上を籠める。
修道院の月
(新字旧仮名)
/
三木露風
(著)
羅
(
うすもの
)
に日をいとはるゝ
御
(
おん
)
かたち 水
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
羅
(
うすもの
)
に人肌見えて尊とけれ
普羅句集
(新字旧仮名)
/
前田普羅
(著)
月なき暗い夜に、
羅
(
うすもの
)
の
膚
(
はだ
)
が白く透く、
島田髷
(
しまだ
)
と、ひさし髪と、一人は
水浅葱
(
みずあさぎ
)
のうちわを、一人は銀地の扇子を、胸に袖につかって通る。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
例の
兵部卿
(
ひょうぶきょう
)
の宮も来ておいでになった。
丁子
(
ちょうじ
)
の香と色の
染
(
し
)
んだ
羅
(
うすもの
)
の上に、濃い
直衣
(
のうし
)
を着ておいでになる感じは美しかった。
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
その子供らは
羅
(
うすもの
)
をつけ
瓔珞
(
ようらく
)
をかざり日光に光り、すべて
断食
(
だんじき
)
のあけがたの
夢
(
ゆめ
)
のようでした。ところがさっきの歌はその子供らでもないようでした。
マグノリアの木
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そのとき烈しい香料の匂いが、溝の臭気を
圧
(
あっ
)
しながら、ふうわりと
羅
(
うすもの
)
のように漂いながら匂っていることをかんじた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
青磁色の
羅
(
うすもの
)
はやや崩れて、黒髪もあやうく乱れて居りますが、その美しい面には、何んかしら必死の色があって、深井少年に一言の反抗も許しません。
焔の中に歌う
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして
根際
(
ねぎわ
)
になったところも
尽
(
ことごと
)
く内へ入って、前の盆のように
濶
(
ひろ
)
かった腫物とは思われなかった。そこで
羅
(
うすもの
)
の小帯から
佩刀
(
はいとう
)
をぬいた。その刀は紙よりも薄かった。
嬌娜
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は、周泰の功を平常にも
耀
(
かがや
)
かすべく、
羅
(
うすもの
)
の青い
蓋
(
がい
)
を張らせ、「陣中に用いよ」と与えた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや、うちかけをかけてやるふりをして、
羅
(
うすもの
)
の白衣すら、ぬがせたい思いであった。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
若き空には星の乱れ、若き
地
(
つち
)
には
花吹雪
(
はなふぶき
)
、一年を重ねて二十に至って愛の神は今が
盛
(
さかり
)
である。緑濃き黒髪を
婆娑
(
ばさ
)
とさばいて
春風
(
はるかぜ
)
に織る
羅
(
うすもの
)
を、
蜘蛛
(
くも
)
の
囲
(
い
)
と五彩の軒に懸けて、
自
(
みずから
)
と引き
掛
(
かか
)
る男を待つ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
細かに編んだ
羅
(
うすもの
)
の奥に隠してしまった。6920
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
半身に
薄紅
(
うすくれなゐ
)
の
羅
(
うすもの
)
の衣纏ひて月見ると云へ
晶子鑑賞
(新字旧仮名)
/
平野万里
(著)
しかも、晶子の
動悸
(
どうき
)
は
羅
(
うすもの
)
を
透
(
とほ
)
して
慄
(
ふる
)
へ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
さてその夜は、取って返して、両手に雑巾を持って、待合の女房が
顕
(
あらわ
)
れたのに、染次は
悄
(
しお
)
れながら、
羅
(
うすもの
)
の袖を開いて見せて
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青磁色の
羅
(
うすもの
)
は波打って、安楽椅子に身も浮くばかり、仔細は知らず、その歎きには容易ならぬ深刻さがあります。
焔の中に歌う
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
袴野のいいつけで一頭の馬が用意され、すてはそれに
跨
(
またが
)
ると例の
羅
(
うすもの
)
の虫の
垂衣
(
たれぎぬ
)
を抱えて、それを証拠に四条院の
邸
(
やしき
)
と聞いたみやこに、山の塞を去って行った。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
大人は
唐衣
(
からぎぬ
)
、童女は
袗
(
かざみ
)
も上に着ずくつろいだ姿になっていたから、宮などの御座所になっているものとも見えないのに、白い
羅
(
うすもの
)
を着て、手の上に氷の小さい一切れを置き
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
白い衣の上にやはり白い
羅
(
うすもの
)
の
衣被
(
うわぎ
)
を著て、古文字のような物を書いた
木簡
(
もっかん
)
を読んだ、読み終るとそれを石の下に置いて、今度は剣を舞わして身を躍らしたが、
恰
(
あたか
)
も電光のようであった
美女を盗む鬼神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし、この老書家は、行儀がわるく、夏など、冠だけはかぶっているが、
羅
(
うすもの
)
の
直衣
(
のうし
)
の袖などたくしあげて、話に興ずると、すぐ立て膝になり、毛ぶかい
脛
(
すね
)
や腕をムキ出しに談じるのである。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふと私は私の前に三人の天の
子供
(
こども
)
らを見ました。それはみな
霜
(
しも
)
を
織
(
お
)
ったような
羅
(
うすもの
)
をつけすきとおる
沓
(
くつ
)
をはき私の前の
水際
(
みずぎわ
)
に立ってしきりに東の空をのぞみ
太陽
(
たいよう
)
の
昇
(
のぼ
)
るのを
待
(
ま
)
っているようでした。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
時々鏡の面を
羅
(
うすもの
)
が過ぎ行
様
(
さま
)
まで横から見える。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その軽い
羅
(
うすもの
)
のような中から、調子の
好
(
い
)
い
歩様
(
あるきざま
)
で
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
さて、寝る段になって、そのすっと軽く敷いた床を見ると、まるで、花で織った
羅
(
うすもの
)
のようでもあるし、
虹
(
にじ
)
で染めた蜘蛛の巣のようにも見える——
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不思議な友情をはっきり見てから、すても永い間経験したことのない女の気持をむさぼるよう、むねにかき
搉
(
いだ
)
いた。すては元来た道を、
羅
(
うすもの
)
で
面
(
おもて
)
を蔽うたまま馬をはしらせた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
非常に
崇厳
(
すうごん
)
な仏事であった。五日の間どの日にも仏前へ新たにささげられる経は、宝玉の軸に
羅
(
うすもの
)
の絹の表紙の物ばかりで、外包みの装飾などもきわめて精巧なものであった。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
“羅”の意味
《名詞》
薄く織った織物。
男陰の古語。魔羅の略。(『隠語辞典集成』21巻, 『大辞林』)
(出典:Wiktionary)
“羅”の解説
羅(ら、うすもの)は絡み織を用いた、目の粗い絹織物の一種。
(出典:Wikipedia)
羅
常用漢字
中学
部首:⽹
19画
“羅”を含む語句
欧羅巴
羅馬
羅漢柏
羅衣
歐羅巴
羅宇
保羅
羅曼的
紅羅
羅紗
暹羅
新羅
修羅場
綾羅
森羅万象
黒羅紗
羅針盤
伽羅油
羅刹女
青羅紗
...