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突立
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つった
ふりがな文庫
“
突立
(
つった
)” の例文
そうして「御気の毒ですが、ただいま来客中ですからまたどうぞ」と云って、敬太郎の前に
突立
(
つった
)
っていた。敬太郎も少しむっとした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
白襯衣君が、肩を
聳
(
そび
)
やかして
突立
(
つった
)
って、窓から
半身
(
はんしん
)
を
乗出
(
のりだ
)
したと思うと、真赤な
洋傘
(
こうもり
)
が一本、矢のように窓からスポリと
飛込
(
とびこ
)
んだ。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身繕
(
みづくろ
)
いしてやゝしばし
寝床
(
ねどこ
)
に
突立
(
つった
)
って居ると、忍び込んだと思った人の
容子
(
ようす
)
は無くて、戸の
外
(
そと
)
にサラ/\サラ/\忍びやかな音がする。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
何時
(
いつ
)
の間に登って来たのか、白ズボンをよれよれにし、紺の
開襟
(
かいきん
)
シャツの胸をはだけた勇が三尺の
登口
(
のぼりぐち
)
に不機嫌に
突立
(
つった
)
って居た。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
「葉子さんおはよう!」光子はわざと意地悪く葉子の前へ
突立
(
つった
)
ってお辞儀をした。そして「葉子さん、今日は
廻
(
まわ
)
り道をしていらしたのね」
先生の顔
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
▼ もっと見る
その次の瞬間、弦三の眼の前に、
瓦斯
(
ガス
)
タンクほどもあるような太い
火柱
(
ひばしら
)
が、サッと
突立
(
つった
)
ち、爪先から、骨が砕けるような地響が
伝
(
つたわ
)
って来た。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ガタピシと板戸を開けると、
薪
(
まき
)
や炭を積んだ小暗い物置の隅っ子に、人間程の大きさの藁人形が、いかめしく
突立
(
つった
)
っていた。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ただ
茫然
(
ぼうぜん
)
として私は、
眼前
(
がんぜん
)
の不思議に雨に濡れて
突立
(
つった
)
っていた。花の吉野の落花の雨の代りに、大和路で金銀の色の
夕立雨
(
ゆうだちあめ
)
にぬれたのであった。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
木の葉は
何時
(
いつ
)
か知らぬ間に散ってしまって、
梢
(
こずえ
)
はからりと
明
(
あかる
)
く、細い黒い枝が
幾条
(
いくすじ
)
となく空の光の中に高く
突立
(
つった
)
っている。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、
急
(
きゅう
)
に
来
(
き
)
た
人
(
ひと
)
の
院長
(
いんちょう
)
だと
解
(
わか
)
ったので、
彼
(
かれ
)
は
全身
(
ぜんしん
)
を
怒
(
いかり
)
に
顫
(
ふる
)
わして、
寐床
(
ねどこ
)
から
飛上
(
とびあが
)
り、
真赤
(
まっか
)
になって、
激怒
(
げきど
)
して、
病室
(
びょうしつ
)
の
真中
(
まんなか
)
に
走
(
はし
)
り
出
(
で
)
て
突立
(
つった
)
った。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
セーニャと黒い牝牛とが、ぽつりぽつりと、砂浜の
叢
(
くさむら
)
に残されてしまった。いつまでもいつまでも黒く
突立
(
つった
)
っていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
戸を叩こうか、叩いたらきっと開けてくれるには相違ない。しかし彼はこの事をなすことが出来なかった。彼は木像のように息を凝らして
突立
(
つった
)
っている。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
相手の男を柱に縛りつけ、その鼻先の畳の上に
白刃
(
しらは
)
を
突立
(
つった
)
て女に酌をさせながら一人で得意になっている光景を描いた芝居絵を、私は見たことがあった。
武州公秘話:02 跋
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「ソラ、天狗様の御立腹だ」と、一同は眼玉を
円
(
まる
)
くする。ヌット
雲表
(
うんぴょう
)
に
突立
(
つった
)
つ高山の
頂辺
(
てっぺん
)
の地震、左程の振動でもないが、余り
好
(
い
)
い気持のものでもない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
相手の男を柱に縛りつけ、その鼻先の畳の上に
白刃
(
しらは
)
を
突立
(
つった
)
て女に酌をさせながら一人で得意になっている光景を描いた芝居絵を、私は見たことがあった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
熊がこの小さな球を呑み込むと脂肉はとける、さきのとんがった鯨髭がしゃっきり
突立
(
つった
)
って、熊のはらわたに突きささります。そこで熊は病気になるのです。
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
樫田刑事が駈けつけて見ると、夫人の化粧室の外に、
蒼白
(
まっさお
)
な顔をして例の秋山という紳士が
突立
(
つった
)
っていた。
謎の頸飾事件
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その石の
割目
(
われめ
)
には、色々のものが挟まっておるが、あるものはピンと
突立
(
つった
)
ち、あるものはまだ動いている。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
大叫喚の地鳴りを立てている岩石の上に、赤い湯もじ一つにされ、
突立
(
つった
)
たせられている一人のうら若い女性がある。
丈
(
たけ
)
なす髪はかの女の
踵
(
くびす
)
まで届くかに見える。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
或日の夕暮、一人の若い品の
佳
(
い
)
い洋服の紳士が富岡先生の家の前えに
停止
(
たちど
)
まって、
頻
(
しき
)
りと内の様子を
窺
(
うかが
)
ってはもじもじしていたが遂に門を
入
(
はい
)
って玄関先に
突立
(
つった
)
って
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そうして
室
(
へや
)
のまん中に立ち止まって、そこいらをジーイと見まわしながら
突立
(
つった
)
っているようなの。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
矢比
(
やごろ
)
を測つて
兵
(
ひょう
)
と放てば。
竄点
(
ねらい
)
誤たず、
他
(
かれ
)
が右の
眼
(
まなこ
)
に
篦深
(
のぶか
)
くも
突立
(
つった
)
ちしかば、さしもに
猛
(
たけ
)
き黄金丸も、何かは
以
(
もっ
)
てたまるべき、
忽
(
たちま
)
ち
撲地
(
はた
)
と倒れしが四足を
悶掻
(
もが
)
いて
死
(
しん
)
でけり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
又
一刀
(
ひとかたな
)
あびせたから惣次郎は残念と心得て、脇差の鞘ごと投げ付けました、一角がツと身を
交
(
かわ
)
すと肩の処をすれて、
薄
(
すゝき
)
の
根方
(
ねがた
)
へずぽんと刀が
突立
(
つった
)
ったから、一角は
血
(
のり
)
を拭いて鞘に収め
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
叔母に一礼して文三が起上ッて、そこそこに部屋へ戻ッて、
室
(
しつ
)
の中央に
突立
(
つった
)
ッたままで坐りもせず、
良
(
やや
)
暫くの間と云うものは
造付
(
つくりつ
)
けの
木偶
(
にんぎょう
)
の如くに黙然としていたが、やがて
溜息
(
ためいき
)
と共に
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私は何んだか言葉をかけるのさえためらわれて黙ったまま
突立
(
つった
)
っていました。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
顔を
赧
(
あか
)
らめ、しばらく孔子の前に
突立
(
つった
)
ったまま何か考えている様子だったが、急に雞と豚とを
抛
(
ほう
)
り出し、頭を
低
(
た
)
れて、「
謹
(
つつ
)
しんで教を受けん。」と降参した。単に言葉に窮したためではない。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
氏の家へ半月程前の夕刻
玄関
(
げんかん
)
稼
(
かせ
)
ぎの盗人が入りました。ふと気が付いた
家人
(
かじん
)
は
一勢
(
いっせい
)
に騒ぎ立てましたが、氏は逃げ行く盗人の
後姿
(
うしろすがた
)
を見る
位
(
くらい
)
にし
乍
(
なが
)
ら
突立
(
つった
)
ったまま一歩も追おうとはしませんでした。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
すぐ目の前に、懐中電灯を持った一人の男が
突立
(
つった
)
っていた。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
炬燵櫓
(
こたつやぐら
)
を
跨
(
また
)
いだ同然、待て待て禁札を打って、先達が登山の印を残そうと存じましたで、携えました金剛を、一番
突立
(
つった
)
てておこう
了簡
(
りょうけん
)
。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小暗
(
こぐら
)
いレールを踏み越えて、ヒラリとプラットホームに飛びあがった大江山警部の鼻先に、ヌックリ
突立
(
つった
)
った男があった。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
年久しく
風霜
(
ふうそう
)
と闘うて
皮
(
かわ
)
は大部分
剥
(
は
)
げ、葉も落ちて、
老骨
(
ろうこつ
)
稜々
(
りょうりょう
)
たる
大蝦夷松
(
おおえぞまつ
)
が唯一つ峰に
突立
(
つった
)
って居るのであった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
娘の方でも番台を間に兼太郎の顔を見るといかにも不審そうに、手にした湯銭をそのまま
暫
(
しばら
)
く土間の上に
突立
(
つった
)
っていたが、やがて肩で
呼吸
(
いき
)
をするように
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
妙な事にこの男は主人と同じく懐手をしたまま、無言で
突立
(
つった
)
っている。何だか見たような顔だと思ってよくよく観察すると、見たようなどころじゃない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
で、そいつをつづけているうちに、急に熊がまっすぐに
突立
(
つった
)
ちあがり、弓のように体をまげて、痛がってうなりたてて、気が変になったようにまえあしを振りまわし始めたもんだ。
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
ミチは超然として
蛇口
(
じゃぐち
)
の前に
突立
(
つった
)
ち、ざあざあと
手桶
(
ておけ
)
の湯を幾杯となく浴びる。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
と
仁王立
(
におうだち
)
に
突立
(
つった
)
ちました。此の
態
(
てい
)
を見るより先に立ちたる
大
(
だい
)
の男が
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
妾のすぐ傍に
突立
(
つった
)
って、
先刻
(
さっき
)
から何か話していたらしいの……。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
鯨の口の外にボンヤリ
突立
(
つった
)
った刑事が意味ありげに云った。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
方太太は突然押掛けて来て
床
(
とこ
)
の前に
突立
(
つった
)
った。
端午節
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そのまま
突立
(
つった
)
って志村の方を見ていた。
画の悲み
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
桂河探偵は顔色を変えて
突立
(
つった
)
った。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
家、いやその長屋は、
妻恋坂下
(
つまごいざかした
)
——明神の崖うらの穴路地で、二階に
一室
(
ひとま
)
の
古屋
(
ふるいえ
)
だったが、物干ばかりが新しく
突立
(
つった
)
っていたという。——
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何くわぬ顔をして下へ降りて来ると、誰も居ないと思った二階に四宮理学士が
突立
(
つった
)
っていたので、僕はギクッとした。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分は何事が起ったのかほとんど判じかねて、
敷居際
(
しきいぎわ
)
に
突立
(
つった
)
ったまま、ぼんやり部屋の中を
見回
(
みまわ
)
した。
途端
(
とたん
)
に下女の泣声のうちに、泥棒という二字が出た。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
遠くの沖には
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
に
澪
(
みお
)
や
粗朶
(
そだ
)
が
突立
(
つった
)
っているが、これさえ岸より眺むれば
塵芥
(
ちりあくた
)
かと思われ
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
鍬柄
(
くわづか
)
ついて畑の中に
突立
(
つった
)
った時は、天も見ろ、地も見ろ、人も見てくれ、吾れながら天晴見事の百姓振りだ。額の汗を拭きもあえずほうと
一息
(
ひといき
)
入れる。曇った空から冷やりと来て風が額を撫でる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ちょっとの間、四人は気まずい思いで
突立
(
つった
)
っていた。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
「
取舵
(
とりかじ
)
だい‼」と叫ぶと見えしが、早くも
舳
(
とも
)
の
方
(
かた
)
へ
転行
(
ころげゆ
)
き、疲れたる
船子
(
ふなこ
)
の握れる
艪
(
ろ
)
を奪いて、
金輪際
(
こんりんざい
)
より生えたるごとくに
突立
(
つった
)
ちたり。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
御返しよ、
放
(
ほう
)
っておくれよ、よう、と精一杯にせっついたが与吉は毬を持ったまま、上を見て威張って
突立
(
つった
)
っている。
詫
(
あや
)
まれ、詫まったら返してやると云う。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
博士は相変らず、銅像のように部屋の
真中
(
まんなか
)
に
突立
(
つった
)
って居り、そして、首にかかったシャンデリアの
枠
(
わく
)
を、面倒くさそうに外して床の上に放りだしただけであった。
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
突
常用漢字
中学
部首:⽳
8画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“突立”で始まる語句
突立上
突立状