とゞま)” の例文
わたくしと、日出雄少年ひでをせうねんと、ほか一群いちぐん水兵すいへいとは、りくとゞまつて、その試運轉しうんてん光景くわうけいながめつゝ、花火はなびげ、はたり、大喝采だいかつさいをやるつもりだ。
独逸ドイツ語が少しでもわかつて、そしてせめて三月みつきでも此処こことゞまることが出来たら北独逸ドイツの生活の面白さが少しは内部的にわかつたであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かげ名譽めいよたすかつた。もう出發しゆつぱつしませう。這麼不徳義こんなふとくぎきはまところに一ぷんだつてとゞまつてゐられるものか。掏摸すりども墺探あうたんども
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
よ、ほか人一個ひとひとりらぬ畑中はたなか其所そこにわびしき天幕てんとりて、るやらずのなかる。それで叔母達をばたちるとも、叔父をぢとも此所こゝとゞまるといふ。
さうした不思議はほこれにとゞまらなかつた。貧しき者は富み、乏しき者は得、病める者はえ、弱き者は力を恢復くわいふくした。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
燈火よ、客のこんはくとなりしかならざるか、飛遊して室中にはとゞまらず、なんぢなんすれぞ守るべき客ありと想ふや。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
よしや執着のとゞまりてうらみ後世こうせいに訴ふるとも、罪なき我を何かせむ、手にも立たざる幻影にさまで恐るゝことはあらじ、と白昼は何人なんぴとしかく英雄になるぞかし。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
問ひくるものとては梢を傳ふ猨猴ましらなれば、すこしとゞまることなくかへるさ急ぐ恨みなる哉。
それはかたじけない、それでは申し聞けるが、文治郎今晩これから直ぐに出てきます、今晩はお前が嫁に来たばかりだからとゞまりたいが、出てかなければならぬ、わしが出て往ったあと
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それは、廿三歳と云へば成熟しきつた女の身體の、丁度みのつた果物くだものの枝にとゞまり得ぬと同じく、あらゆる慾情を投げ掛けて凭れかゝるべき強い力のある男の腕を求める其の悶えの爲めに違ひない。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
日本の古典としての醇粋味じゅんすいみは平安朝文学にたゞよっているので、私などは、谷崎君の作品のうちでも、その風格を伝えたものを一層愛好する訳だが、谷崎君が平安朝古典の継紹者だけにとゞまっていたら
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
日本の古典としての醇粋味じゅんすいみは平安朝文学にたゞよっているので、私などは、谷崎君の作品のうちでも、その風格を伝えたものを一層愛好する訳だが、谷崎君が平安朝古典の継紹者だけにとゞまっていたら
これにて判事はお警察長に向い先刻死骸検査のむかえりたる医官等も最早もはきたるに間も有るまじければそれまでこゝとゞまられよと頼み置き其身は書記及び報告に来しくだんの巡査と共に此家より引上げたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
讀者どくしや諸君しよくん御記臆ごきおくだらう。弦月丸げんげつまるまさに子ープルスかう出發しゆつぱつせんとしたとき何故なにゆゑともなくふかわたくしまなことゞまつた一隻いつさうあやしふねを。
親友しんいう送出おくりだして、アンドレイ、エヒミチはまた讀書どくしよはじめるのであつた。よるしづかなんおとぬ。ときとゞまつて院長ゐんちやうとも書物しよもつうへ途絶とだえてしまつたかのやう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
安達夫婦、富谷とみたに判事、山崎大尉の君、赤塚ドクトル達、皆船を雇ひてかれさふらふ。私にも同行をお勧め下されしにさふらへど、心進まづしてとゞまりしにさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かけひの細きに、水の來りてその桶につること遲く、少女をとめは立ちてさま/″\の物語をせしが、果ては久しくとゞまりて石の如く動かざる我が上に及びしと覺しく、互に此方こなたを見ては
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
怪物くわいぶつといふものがあるならば、この軍艇ぐんていこそたしか地球ちきゆう表面ひやうめんおいて、もつとおそるべき大怪物だいくわいぶつとして、なが歐米諸國をうべいしよこく海軍社會かいぐんしやくわい記臆きおくとゞまるであらう。
予等は主として巴里パリイとゞまつて居た。従つてこの書にも巴里パリイの記事が多い。「巴里パリイより」と題した所以ゆえんである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かれ書見しよけんは、イワン、デミトリチのやうに神經的しんけいてきに、迅速じんそくむのではなく、しづかとほして、つたところ了解れうかいところは、とゞまり/\しながらんでく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)