生意気なまいき)” の例文
旧字:生意氣
燃えさかるストオヴの前へ立ったまま、精神的にも肉体的にも、火炙ひあぶりにされている先生へ、何度も生意気なまいきな笑い声を浴びせかけた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一人の男がよろめきながら『腰の大小伊達だてにゃあささぬ、生意気なまいきなことをぬかすと首がないぞ!』と言って『あははははッ』と笑ッた。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
彼は取るにも足らぬ生意気なまいき書生を相手に大人気おとなげもない喧嘩を始めたのである。「もっと下がれ、おれの小桶に湯が這入はいっていかん」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生意気なまいきな、どうするかみておれ……。」といって、こんどは、かわいらしいはなあたまうえまですっかりあみってしまいました。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「へ、生意気なまいきな、上段と来たな。今に見ていろひっくり返してやるから」じっと様子を窺った。相手の全身は隙だらけであった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、そこのうすぐらい土間どまのすみに、生意気なまいきなかっこうをした少年がひとり、樽床几たるしょうぎにこしかけ、頬杖ほおづえをつきながらはしを持っていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生意気なまいきをいうな。ちっぽけなくにまれた小狐こぎつねのくせに。よし、そこにじっとしていろ。一つおれがうなってみせてやるから。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ものつもつて考へて見ろ、それに此頃このごろ生意気なまいきになつて大分だいぶ大人おとなにからかふてえが、くないぞ、源蔵げんぞうたやうなかたい人をおこらせるぢやアねえぞ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
生意気なまいきおいいでないよ。なんにもわかりもしないくせに。そうそう安売りした日にゃあ商売になりゃあしないよ。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
(お前達は生意気なまいきだよ、)と激しくいいさま、腋の下からのぞこうとしたくだんの動物の天窓あたま振返ふりかえりさまにくらわしたで。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一芸一能の人間に逢って見るのが楽しみだと、生意気なまいきなことをいっていたが、三斎め、妙な道楽を持っていやがるな。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
何でも娘の時分は我儘わがままな心と生意気なまいきな心をつつしんで老功者の教えにしたがうものと心掛けなければならん。老功者の唱える理想を実行するものと覚悟しなければならん。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
腰掛こしかけ食いが驚くほど増えて来て、男と同じように「わたしはトロがいい」「いや赤貝あかがいだ」「うにだ」と生意気なまいきをやって、噴飯ふんぱんさせられることしばしばという次第だ。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「まあ、この鳥、たくさんですわねえ、あらまあそらのきれいなこと」女の子はジョバンニにはなしかけましたけれどもジョバンニは生意気なまいきな、いやだいと思いながら
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「うん、生意気なまいきなことをやりったわい」と大江山捜査課長は天の一角をにらんでいたが「よオし、誰か羽田航空港はねだこうくうこうに電話をして、すぐに飛行機であの気球を追駈けさせろッ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、皆は子供のくせにと思って、キーシュの生意気なまいきなのにあきれかえりました。
負けない少年 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
生意気なまいきナヿヲ云ウノハ止セ。親ニ対シテ云ッテヨイヿト悪イヿトアル。ソンナヿヲ云ウ貴様コソアプレダ。貴様コソ汚レタ奴ダ。用ハナイカラサッサト帰レ」「帰ルワ」ト云ウト
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お父さんも開けて来たと言わないばかりの生意気なまいきざかりな年ごろになっていた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ややに安んぜんとするを、造化はなお生意気なまいきなりと思いしか、たまたさらに予をこころみんとてか、今回は趣向を変えて、極めて陰険なる手段を用いジリジリ静かに攻め来りたり、そは他にあら
「をばさん。わたし、もう煙草たばこむやうになつたのよ。生意気なまいきでせう。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
生意気なまいきをしてみるがいい……葉子はいらだっていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
御行 (興奮して、大喝だいかつする)生意気なまいきを云うなッ!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「その花が生意気なまいきだから枯らしてみましょうよ」
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
こいつ 生意気なまいきな!
生意気なまいきいえ!」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
そんな生意気なまいき口応くちごたえをするもんじゃありません。言葉だけでひとをやりめればどこがどうしたというんです、馬鹿らしい。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生意気なまいき鉦叩かねたたむしめ! ぞうさはねえ、その女も一しょにつまみだして、二本松の枝へさかづるしにつるしてぶんなぐれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為朝ためとも総追捕使そうついほしだなんぞといって、いばっているが、いったいだれからゆるされたのだ。生意気なまいき小僧こぞうじゃないか。」
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
(お前達まへだち生意気なまいきだよ、)とはげしくいひさま、わきしたからのぞかうとしたくだん動物どうぶつ天窓あたま振返ふりかへりさまにくらはしたで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長命寺の桜餅を糞臭いとは、——僕はいまだに生意気なまいきにもこの二人を田舎者ゐなかものめと軽蔑したことを覚えてゐる。長命寺にも震災以来一度も足を入れたことはない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「なあんだ、田舎いなかっぺの女中じょちゅうか。」と、孝二こうじおもって、生意気なまいきをいったら、なぐろうとかんがえました。
子供どうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
お気の毒な、子供衆こどもしゆだもんですから、なにも知らずむしや/\べてましたが、本当にきたない事をするぢやアりませんか、それに此頃このごろでは生意気なまいきになつて、大人おとなに腹を立たせますよ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「その方、身分ちがいの身を以て、生意気なまいきに、剣技を誇るなぞ、奇怪至極だ。今宵は、江戸剣者一同の名誉のため、さんざんな目に逢わせて、御府内に姿を現さぬようにいたしつかわすぞ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そのころ僕は学校の餓鬼大将だけにすこぶる生意気なまいきで、少年のくせに大沢先生のいばるのがしゃくにさわってならない。いつか一度はあの頑固じじいをへこましてくりょうと猪古才ちょこざいなことを考えていた。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
生意気なまいきをいうな。我々われわれがせっかくつけたきつねが、このまくの中にんだからさがすのだ。はやきつねせ。」
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
役員らは生意気なまいきやつだと云った。町の新聞は無能の教師が高慢な不平をくと評した。彼の同僚すら余計な事をして学校の位地を危うくするのはだと思った。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
王 (嘲笑あざわらう)生意気なまいきな! わたしのマントルの力を見るが好い。(マントルを着る。同時に消え失せる)
三つの宝 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
生意気なまいきにもかかわらず、親雀がスーッと来てしかるような顔をすると、喧嘩のくちばしも、生意気な羽も、たちまちぐにゃぐにゃになって、チイチイ、赤坊声あかんぼごえで甘ったれて、うまうまを頂戴と
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねこは、びっくりして、をさますと、とんぼが、はなうえにとまっているので、生意気なまいきな、おれをばかにしているなと、のようにおこり、ひとつかみにしようとしたが、とんぼは
春の真昼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「何者だなんて、生意気なまいきをいうまえに、おじさんこそ、何者だかいうのが本来ほんらいだよ。おいらはこの山に住んでる者だし、おじさんはだまって、人の山へはいってきた風来人ふうらいじんじゃないか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「実に気楽さ。知ってるのは僕らを煽動せんどうした教師ばかりだろう。何でも生意気なまいきだからやれって云うのさ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、生意気なまいきったらないのね。——だから姉さんがいつでも云うんだわ、民雄さんは莫迦ばかだって。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
匡房まさふさがこんなことをいっていました。なにもわからない学者がくしゃのくせに、生意気なまいきではありませんか。」
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
生意気なまいきだね、おかあさんに、いいつけておやりよ。」と、おとうとも、つづいてがると、もう風船球ふうせんだまのことなどはわすれて、二人ふたりは、廊下ろうかけて、彼女かのじょのいったあといました。
おさくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
生意気なまいきでございますわ。」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると乗客の降り終るが早いか、十一二の少女が一人、まっ先に自働車へはいって来た。褪紅色たいこうしょくの洋服に空色の帽子ぼうし阿弥陀あみだにかぶった、妙に生意気なまいきらしい少女である。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「もう生意気なまいきなことはいわんな。はいといえばつれていってやる。」と、いいました。
小さな弟、良ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
なにを、ねずみのくせに生意気なまいきなやつだ。」
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
生意気なまいき云うな」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕等の彼をいぢめたのは格別理由のあつたわけではない。若し又理由らしいものを挙げるとすれば、唯彼の生意気なまいきだつた、——或は彼は彼自身を容易にげようとしなかつたからである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)