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漕
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こ
ふりがな文庫
“
漕
(
こ
)” の例文
したが、とうとうここまで
漕
(
こ
)
ぎつけた、自分のこの手で、おまえを介抱してやれるようになったんだ、——十六年、まる十五年以上だ
ひとでなし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その一隻の屋形船には、不思議にも
燈火
(
ともしび
)
がついていない。で、真っ暗な船である。
漕
(
こ
)
いでいる船頭の姿さえ、陰影のように真っ黒だ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
(左様だ、今頃は
弥六親仁
(
やろくおやじ
)
がいつもの
通
(
とおり
)
、
筏
(
いかだ
)
を流して来て、あの、船の
傍
(
そば
)
を
漕
(
こ
)
いで通りすがりに、
父上
(
ちゃん
)
に声をかけてくれる時分だ、)
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あの晩の
夜釣
(
よづり
)
に限つて、船頭を歸してしまひ、一人で
漕
(
こ
)
ぎ出して行つたとか、誰にも逢はなかつたとか、まことにたよりない話で」
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
思いきり力をこめたためか、木部の手が舟を
漕
(
こ
)
いだためだったか、とにかく二人の手は握り合わされたまま小刻みにはげしく震えた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
そしてようやく、復職のめどもつき、あとは
殿帥府
(
でんすいふ
)
最高の大官、
高
(
こう
)
大将の一
印
(
いん
)
が書類に
捺
(
お
)
されれば……というところまで
漕
(
こ
)
ぎつけて
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やはり
上代
(
じょうだい
)
から
漕
(
こ
)
ぎ出して、順次に根気よく人文発展の
流
(
ながれ
)
を下って来ないと、この突如たる
勃興
(
ぼっこう
)
の真髄が
納得
(
なっとく
)
出来ないという意味から
マードック先生の『日本歴史』
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はホテルの十日間を、何の
屈託
(
くったく
)
もなく、
腕白小僧
(
わんぱくこぞう
)
の様にほがらかに暮した。ホテルのボートを借りて湖水を
漕
(
こ
)
ぎ
廻
(
まわ
)
るのが日課だった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
大橈
(
おおかい
)
を
漕
(
こ
)
ぐのにも、あとで魚をとるときにも、よほど助けになったでしょうが、どうしたものか、自分たちはそんな冒険をしていても
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
その真中に立って見渡しますと、さっき乗った渡舟が上流をゆるゆる
漕
(
こ
)
いで通ります。鴎が幾つか、せわし気に舞っていたりしました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
対岸の商船学校から、オールを
揃
(
そろ
)
えて
短艇
(
ボート
)
を
漕
(
こ
)
ぎ出してくるのが、家鴨とは反対に
隅田川
(
すみだがわ
)
の上流の方へむかって
辷
(
すべ
)
るように行く。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
岩
(
いは
)
はなをば、
漕
(
こ
)
ぎ
廻
(
まは
)
つて
行
(
ゆ
)
くごとに、そこに
一
(
ひと
)
つづゝ
展
(
ひら
)
けて
來
(
く
)
る、
近江
(
あふみ
)
の
湖水
(
こすい
)
のうちのたくさんの
川口
(
かはぐち
)
。そこに
鶴
(
つる
)
が
多
(
おほ
)
く
鳴
(
な
)
き
立
(
た
)
てゝゐる。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
承知して私は道を下り始めましたが、
姉妹
(
きょうだい
)
は湖でボートでも
漕
(
こ
)
ぎながら私が曲り角近くまで下ってゆくのを計っていたのかも知れません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それは、伝馬を、どんどん
漕
(
こ
)
いでって、上陸して直江津の女郎買いを「後学のため」にして、朝帰って来ようというのであった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
ボートの
舳
(
かじ
)
を返して
燈台
(
とうだい
)
の方へ
漕
(
こ
)
いだが、霧は
愈
(
いよいよ
)
深くなり、海はますます暗くなり、ともすれば暗礁に乗り上げそうであった。
おさなき灯台守
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
私は、この小説を当然の存在にまで
漕
(
こ
)
ぎつけるため、泣いたのだ。私は、死ぬるとも、
巧言令色
(
こうげんれいしょく
)
であらねばならぬ。鉄の原則。
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
国貞は
爰
(
ここ
)
から大川橋へ廻って
亀井戸
(
かめいど
)
の
住居
(
すまい
)
まで
駕籠
(
かご
)
を雇い、また鶴屋は
両国橋
(
りょうごくばし
)
まで船を
漕
(
こ
)
ぎ戻して
通油町
(
とおりあぶらちょう
)
の店へ帰る事にした。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
白丘
(
しらおか
)
ダリアの
入所後
(
にゅうしょご
)
はやくも五日のちには、赤外線テレヴィジョン装置がもう一と息で出来上るというところまで
漕
(
こ
)
ぎつけた。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
団扇掛
(
うちわかけ
)
に長い
尺度
(
ものさし
)
の結び着けたのが
櫓
(
ろ
)
の代りになり、
蒲団
(
ふとん
)
が舟の中の
蓆莚
(
ござ
)
になり、畳の上は小さな船頭の舟
漕
(
こ
)
ぐ場所となって
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
太平洋のまんなかの波にうかぶ、小さな
伝馬船
(
てんません
)
には、風はすこし強すぎたが、雲の切れめにかがやく星をたよりに、波をおしわけて
漕
(
こ
)
いだ。
無人島に生きる十六人
(新字新仮名)
/
須川邦彦
(著)
船宿の二階は、戸は開け放してあっても、一ぱいに押し込んだ客の人いきれがしていたが、舟を
漕
(
こ
)
ぎ出すと、すぐ
極
(
ごく
)
好い心持に涼しくなった。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
寝たと思うとすぐに起こされたような感じで、朝はひどく眠かったが、宿の前から小舟に乗って淀川を
漕
(
こ
)
ぎ出すと、気持ちははっきりしてきた。
巨椋池の蓮
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
その範囲において「かかる難境を無難に
漕
(
こ
)
ぎ抜けるにはどうしたら好いかという問題を中心としている」といわれたのは
平塚・山川・山田三女史に答う
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
野に立てば温度や花の香などで野の心持ちもわかり、ひとりで湖に舟を
漕
(
こ
)
いでは、
藻
(
も
)
の
香
(
かお
)
りや風のあたりぐあいなどで、舟の方角を定めました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
もう一と息というところまで
漕
(
こ
)
ぎ付けながら、その大望を水の泡にして、年上の女と駈け落ちなどをする気はありません。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
童話時代のうす明りの中に、一頭の兎と一頭の狸とは、それぞれ白い舟と黒い舟とに乗つて、静に夢の海へ
漕
(
こ
)
いで出た。
かちかち山
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
帆をあげた舟、発動汽船、ボート、
櫓
(
ろ
)
で
漕
(
こ
)
ぐ舟、それらのものが春のぽかぽかする陽光をあびて上ったり下ったりした。
国境
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
一首の意は、今、参河の
安礼
(
あれ
)
の
埼
(
さき
)
のところを
漕
(
こ
)
ぎめぐって行った、あの
舟棚
(
ふなたな
)
の無い小さい舟は、いったい何処に
泊
(
とま
)
るのか知らん、というのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
春の水に浮んでいる一
艘
(
そう
)
の舟が水上を
漕
(
こ
)
いで行くと、その水面に起った波動が
終
(
しまい
)
に岸まで及んで、その岸根をちゃぶちゃぶと打つというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
だん/\
漕
(
こ
)
いでまいりますと、
俄
(
にわ
)
かに
空合
(
そらあい
)
が悪くなりまして、どゝん/″\と打寄する浪は山岳の如く、舟は天に
捲上
(
まきあ
)
げられるかと思う間もなく
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この荒い波の上を、小さいはしけは木の葉のやうに波に揉まれながら、宮の浦の淋しい岸壁へ
漕
(
こ
)
ぎつけようとしてゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
果して、汽笛の音を聞きつけると、
彼方
(
かなた
)
の入江、
此方
(
こなた
)
の島影から、
端艇
(
ボート
)
が姿を現わし、本船目指して
漕
(
こ
)
ぎ寄せてくる。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
水軍の連中思い切ったる元就の言分かな、所詮戦は毛利の勝なるべしと言って二百余艘の軍船が毛利方へ
漕
(
こ
)
ぎ寄せた。
厳島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
だから、恩給恩給、と云うが、何んと私は、岡山へ行って、試験の日、半日、旭川で、ボートを
漕
(
こ
)
いでいたのである。
死までを語る
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
しかし、この時は結婚というところまで
漕
(
こ
)
ぎつけるのに、ヘンリイ・ウイリアムズもかなりの努力を要したのだった。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
あなたは、
薄紫
(
うすむらさき
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
に、黄色い三尺をふッさりと結んでいた。そして、「ボオトはきれいねエ」と言いながら、
袖
(
そで
)
をひるがえして
漕
(
こ
)
ぐ
真似
(
まね
)
をした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
船腹の板をはがして作った
橈
(
かい
)
で
漕
(
こ
)
ぐ船あしは、のろのろとしてもどかしかったが、椰子の茂った海岸へたどって行けそうな岩礁はもう目の前だった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そういう日には特にカイツブリはヤマニンジンの綿毛のようなすがたで湖水に下りているものであるが——わたしが北の岸あたりを
漕
(
こ
)
いでいるとき
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
風流韻事
(
ふうりゅういんじ
)
で、いい気持になりきった田山白雲が船を
漕
(
こ
)
ぎ戻させて、宿へ帰って見ると、果して非常事がありました。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
我々を海岸まではこぶ二マイルを彼等は物凄い程の元気で
漕
(
こ
)
いだ。そして、彼らは実に不思議な呻り声を立てた。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「とこしへに民安かれと祈るなる
吾代
(
わがよ
)
を守れ伊勢の
大神
(
おおかみ
)
」。その
誠
(
まこと
)
は天に
逼
(
せま
)
るというべきもの。「取る
棹
(
さお
)
の心長くも
漕
(
こ
)
ぎ寄せん
蘆間小舟
(
あしまのおぶね
)
さはりありとも」
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
余等は
導
(
みちび
)
かれて紅葉館の
旗
(
はた
)
を
艫
(
とも
)
に立てた小舟に乗った。宿引は
一礼
(
いちれい
)
して去り、船頭は
軋
(
ぎい
)
と
櫓声
(
ろせい
)
を立てゝ
漕
(
こ
)
ぎ出す。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
こいつを
機
(
しお
)
に、戯作で飯が食えるように
漕
(
こ
)
ぎ着けざアなるまい——まず正月早々、今年ア
恵方
(
えほう
)
が当ったぞ。——
曲亭馬琴
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
兎
(
と
)
にも
角
(
かく
)
にも彼女の誇りを満足させ、許しを得る迄に
漕
(
こ
)
ぎ着けたやゝこしい経路を、宜しく想像すべきである。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
高官であっても若い好奇心に富んだ人は、小船を
漕
(
こ
)
がせて集まって来る遊女たちに興味を持つふうを見せる。源氏はそれを見てにがにがしい気になっていた。
源氏物語:14 澪標
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「ここまで
漕
(
こ
)
ぎつけて、今一ト息と云うところで、あの財産を
放抛
(
うっちゃ
)
って出るなんて、そんな奴があるものか」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼らがもし自分の力にのみ
便
(
たよ
)
って歩いたら、きっと踏みはずしたり
躓
(
つまず
)
いたりしたでありましょう。荒波を一人で
漕
(
こ
)
いで横切ることは、難しいからであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
さて何んの業でもその道に這入っても成功という所まで
漕
(
こ
)
ぎつけるはなかなか難事であって、途中何かと故障があって一家を成すに到る人は甚だ
稀
(
まれ
)
であります。
幕末維新懐古談:79 その後の弟子の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その甘ったるい夕方の夢のなかで、わたくしはまだあの茶いろななめらかな昆布の干された、イーハトーヴォの岩礁の間を小舟に乗って
漕
(
こ
)
ぎまわっていました。
ポラーノの広場
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
遠洋航海の汽船のボートは、懸命に
漕
(
こ
)
いでいる水夫たちによって進められていくが、船客でいっぱいだ。
火夫
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
漕
漢検準1級
部首:⽔
14画
“漕”を含む語句
漕出
競漕
漕手
端艇競漕
阿漕
漕付
廻漕
回漕
漕寄
運漕
力漕
漕入
漕刑
漕刑場
漕艇
漕戻
舟漕
補欠漕手
独漕
湯漕
...