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挫
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くじ
ふりがな文庫
“
挫
(
くじ
)” の例文
お組の声はすっかり
萎
(
しお
)
れて居ります。お園と張合って、一寸も退けを取らなかったお組にしては、それは思いも寄らぬ
挫
(
くじ
)
けようです。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それでもいい塩梅に頭を
撲
(
ぶ
)
たなかったんですけれど、左の足を少し
挫
(
くじ
)
いたようで、すぐにお医者にかかってゆうべから寝ているんです
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「足を
挫
(
くじ
)
いたのさ。立つことに定めてあった朝、道子さんの大切にしていた九官鳥が逃げ出した。ロマンスといえば先ずあれだろうね」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
でも、その手つきにいつものような力がなく、途中で腰を折られたように
挫
(
くじ
)
けた。いつも無遠慮なコーリヤに珍らしいことだった。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
伸子は、彼の気を
挫
(
くじ
)
く気はなかった。佃が、重い筆を働かして、それだけの仕事をしたのは、彼女も悦びと感じているのであった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
『ナニ、
挫
(
くじ
)
くと
云
(
い
)
ふのか』
公爵夫人
(
こうしやくふじん
)
は
愛
(
あい
)
ちんやが、
地軸
(
ちゞく
)
と
云
(
い
)
つたのを
挫
(
くじ
)
くと
聞
(
き
)
き
違
(
ちが
)
へて、『
娘
(
むすめ
)
の
頭
(
あたま
)
を
捩斷
(
ちぎ
)
つて
了
(
しま
)
へ』と
云
(
い
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
外国公使らの専横を
挫
(
くじ
)
いて、
凜然
(
りんぜん
)
とした態度を持ち続けたことにかけては、老中の右に出るものはなかったと言い出したものもあった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
僕は相手の気勢を
挫
(
くじ
)
くつもりで、その言出すのを待たず、「お金のはなしじゃないかね。」というと、お民は「ええ。」と
顎
(
あご
)
で
頷付
(
うなず
)
いて
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし多くのばあい戦の成敗は微妙なある瞬間に懸っている、全滅を期した源七郎の戦気が、ついに敵の
鋭鋒
(
えいほう
)
を
挫
(
くじ
)
くときがきた。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
コンナ連中を
片端
(
かたっぱし
)
からタタキたおして、逃げ出すくらいの事は何でもないとも思ったが、親方の死骸を見ると妙に勇気が
挫
(
くじ
)
けてしまった。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「ぬけぬけと、ようそんな顔ができたものだ。
彼方
(
かなた
)
の僧房を覗いてみよ、汝のために手足を
挫
(
くじ
)
かれた
怪我
(
けが
)
人が、枕を並べて
呻
(
うめ
)
いておるわ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
独
(
ひと
)
り仏の文豪ヴィクトル・ユーゴーはいうた、神はこの朝二、三十分間の小雨を降らしてナポレオンの勢威を
挫
(
くじ
)
いたのであると。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
泥鉢は
一堪
(
ひとたま
)
りもなく
踏潰
(
ふみつぶ
)
された。あたかも甚平の魂のごとくに
挫
(
くじ
)
けて、真紅の雛芥子は処女の血のごとく、めらめらと
颯
(
さっ
)
と散る。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かれはこの能力の
為
(
ため
)
に、今日まで一図に物に向って突進する勇気を
挫
(
くじ
)
かれた。
即
(
つ
)
かず離れず現状に立ち
竦
(
すく
)
んでいる事が
屡
(
しばしば
)
あった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葉子の計画も惨敗におわり、立て直そうとした小説道への精進も
挫
(
くじ
)
けたとなると、彼女の運命も庸三の手には支えきれなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
飛び上がる方ももちろんかないませんでしたが、飛び下りる方になると、
大抵
(
たいてい
)
の者は足を
挫
(
くじ
)
いたり
腰
(
こし
)
の骨を折ったりして、逃げ戻りました。
彗星の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
木の芽はいくら
摘
(
つ
)
んでも摘んでも生える。正義はどんなことがあってもやり通す。爆弾事件なぞが
幾度
(
いくたび
)
あったって志士の決心は
挫
(
くじ
)
かれない。
青年の天下
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
これで日本人の出鼻を
挫
(
くじ
)
こうとしたのである。彼女の計は見事
的
(
まと
)
に当って、日本人は蒼白な顔に苦笑を浮べたきり黙り込んだ。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
殊にこの返事にもあるように、
先
(
さき
)
は一途に人形を見に来たと思って、直ぐその手柄話になるであろう。そうしたらいよいよ出鼻を
挫
(
くじ
)
かれる。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
脊骨
(
せぼね
)
を
挫
(
くじ
)
いた人が三人程に、
火傷
(
やけど
)
の人や、三階や二階から落ちた人や、
盲腸炎
(
もうちょうえん
)
の人や、なか/\種々な種類の患者が居ります。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
起
(
た
)
ちあがろうとしたけれど、駄目です。折れ曲った両脚がもう利かなくなっています。転ぶ拍子に何処ぞ
挫
(
くじ
)
いたのでしょう。
十時五十分の急行
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
むしろこのごろは毎日、九州の飛行場を爆撃に来るという
執拗
(
しつっこ
)
さ、熱心さである。わが特攻隊の出鼻を
挫
(
くじ
)
かんためであることはいう迄もない。
海野十三敗戦日記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
するとその同志は奇妙な顔をした。案に違わず五日目にアジトを襲われた。その時同志は窓から飛んだ。飛びは飛んだが足を
挫
(
くじ
)
いてしまった。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
どうかしてあの鼻先を
挫
(
くじ
)
いて、この際、思い入り恥辱を与えてやりたいものだと、番組を持つ手先がブルブルと慄えるほどに残念がりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ともすれば
挫
(
くじ
)
けようとする気力を、正統を信ずる心によって
鞭
(
むち
)
打ちつづけた厳しくもわびしい感触をあたえているのである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
剣付鉄砲
(
けんつきでっぽう
)
を肩にして調練に三ヶ年の長の月日をやられては、第一技術の進歩を
挫
(
くじ
)
き、折角のこれまでの修業も
後戻
(
あともど
)
りする。
幕末維新懐古談:22 徴兵適齢のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その苦痛を忍びてわが志を
挫
(
くじ
)
くことなく、一寸の兵器を携えず片手の力を用いず、ただ正理を唱えて政府に迫ることなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この時我身いかばかり
冷
(
ひ
)
えわが心いかばかり
挫
(
くじ
)
けしや、讀者よ問ふ勿れ、
言
(
ことば
)
及ばざるがゆゑに我これを
記
(
しる
)
さじ 二二—二四
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼は左の手を
挫
(
くじ
)
いていた。動かすことが出来なかった。
劇
(
はげ
)
しい痛みに堪えられなかった。で、彼は転げ廻った。土佐犬が悲しそうに吠え立てた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
だが、筋々が
断
(
き
)
れるほどの痛みを感じた。骨の節々の
挫
(
くじ
)
けるような、
疼
(
うず
)
きを覚えた。……そうして尚、じっと、——じっとして居る。
射干玉
(
ぬばたま
)
の闇。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
自分の命を投げ出したこともあり、強きを
挫
(
くじ
)
き弱きを
扶
(
たす
)
くるを主義とし、
義
(
ぎ
)
を見ればいかなることにも
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しなかった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
文麻呂 何が駄目だ! おい、しっかりしろ! 勇気を出すんだ! そんなことでへなへな気が
挫
(
くじ
)
けるようでどうする。……戦いはこれからだぞ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
その他山田長政が威を
暹羅
(
シャム
)
に振いたる、
天竺
(
てんじく
)
徳兵衛が印度に渡りたる、浜田弥兵衛が台湾にある
和蘭
(
オランダ
)
人を
挫
(
くじ
)
きたる、みな
元和
(
げんな
)
、寛永の間にありとす。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ところが、日がたつにつれて、反撥する気持が
挫
(
くじ
)
け、ふと眼に浮ぶ彼の面影にわけもなく心をときめかすやうになると、もうどうにもしようがない。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
が、その内に素戔嗚と争ったものは、手を折られたり、足を
挫
(
くじ
)
かれたりして、だんだん浮き足が立つようになった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今春の議会に海軍拡張案を提出した政府が
頻
(
しきり
)
に日本を例に引いて反対党の気勢を
挫
(
くじ
)
いたのは
目覚
(
めざま
)
しい現象であつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そして彼の本心は、彼を
挫
(
くじ
)
き苦しめ打ち折った後、恐ろしい
煌々
(
こうこう
)
たる落ち着いた姿をして彼の上につっ立ち、彼に言った、「今は平和に歩くがいい!」
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
勇は首だけミチの方へ向けたが、横坐わりしたピンクの裾からあざやかに
覗
(
のぞ
)
いた白く豊かな線の暗い奥に眼がぶつかると、
挫
(
くじ
)
けた様に荒い言葉を呑んだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
「あいや、
伊達
(
だて
)
侯……先刻よりお見受けするところ、御貴殿、首をまっすぐに立てたきり、曲がらぬようじゃが、いかがめされた。寝
挫
(
くじ
)
きでもされたか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
己は後見になって、弱きを助け強きを
挫
(
くじ
)
き、不当者のある時は仲へ入って弱い者を助けて遣り
度
(
た
)
いとの志を立てまして、幼い時から剣術を習いましたが
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この信條を持つてゐれば、私の心はどんな場合でも
復讐
(
ふくしう
)
に惱まされたり、墮落に
甚
(
ひど
)
く
傷
(
きずつ
)
けられたり、不義の爲めにぺしやんこに
挫
(
くじ
)
かれたりしないで濟むの。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
その人たちはこの物語を気違い
沙汰
(
ざた
)
だと思って、極力彼女の名声を
挫
(
くじ
)
こうとするとともに、一方には狼狽してその物語を一笑にふしてしまおうと努めている。
世界怪談名作集:07 ヴィール夫人の亡霊
(新字新仮名)
/
ダニエル・デフォー
(著)
生の意志を
挫
(
くじ
)
いて無に入らせようとする、ショオペンハウエルの
Quietive
(
クヰエチイフ
)
に服従し兼ねてゐた自分の意識は、或時
懶眠
(
らんみん
)
の中から
鞭
(
むち
)
うち起された。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
太
(
いた
)
くもこの弁論に感じたる彼の妻は、
屡
(
しばし
)
ば直道の顔を
偸視
(
ぬすみみ
)
て、あはれ彼が
理窟
(
りくつ
)
もこれが為に
挫
(
くじ
)
けて、
気遣
(
きづか
)
ひたりし口論も無くて止みぬべきを想ひて
私
(
ひそか
)
に
懽
(
よろこ
)
べり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
昼間の、灼かれようとも
挫
(
くじ
)
けない
人道主義
(
ヒューマニズム
)
の天使が、夜は、想像もされない別貌をしてあらわれたのだ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鷲郎に助けられて、黄金丸は漸く棲居へ帰りしかど、これより
身体
(
みうち
)
痛みて堪えがたく。
加之
(
しかのみならず
)
右の前足
骨
(
ほね
)
挫
(
くじ
)
けて、物の用にも立ち兼ぬれば、
口惜
(
くや
)
しきこと限りなく。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
颶風
(
ぐふう
)
の勢少しく
挫
(
くじ
)
けたるとき、こゝに坐したる
女子
(
をみなご
)
の、彼恢復せられたるエルザレム中の歌を歌ひ、耳を傾けて夫の聲のこれに應ずるや否やを
覗
(
うかゞ
)
ひしこと幾度ぞ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「飲め」傍の二人に聞かすように、「俺だちは、強きを
挫
(
くじ
)
き弱きを
授
(
たす
)
ける
性分
(
しょうぶん
)
だから、しかたがない」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
泉原は家主の婆さんからその話をきいて、すっかり気を
挫
(
くじ
)
かれて
了
(
しま
)
った。
稍
(
やや
)
明るくなりかけていた気持が大きな
掌
(
たなごころ
)
で押えつけられたように、
倏忽
(
たちまち
)
真暗になって了った。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
が、瀕死の瀬戸際に臨んでも少しも
挫
(
くじ
)
けなかった知識の向上慾の盛んなるには推服せざるを得なかった。紅葉は真に文豪の器であって決してただの才人ではなかった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
挫
常用漢字
中学
部首:⼿
10画
“挫”を含む語句
挫折
打挫
挫傷
頓挫
一頓挫
取挫
引挫
捻挫
大頓挫
厄挫
抑揚頓挫
一挫
轢挫
踏挫
設使幾回遭挫折
突挫
撲挫
挫骨
仕挫
再挫
...