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徹
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とお
ふりがな文庫
“
徹
(
とお
)” の例文
「……何ですか蘭竹なんぞ。あなたの目は
徹
(
とお
)
りました、女の乳というものだけでも、これから、きっと立派な文章にかけるんです。」
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この人はどんな朗らかに
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
るような空の下に立っても、四方から閉じ込められているような気がして苦しかったのだそうである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
透き
徹
(
とお
)
るような鼻でしょう! 余程の名工が
拵
(
こしら
)
えた人形か何かでない限り、赤ん坊の鼻だってよもやこんなに繊細ではありますまい。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鍔
(
つば
)
から七、八分どころから引き気味に深く割りつけたので、生木を裂く
雷
(
らい
)
のように、刀の
刃
(
は
)
は脳から
肋骨
(
あばら
)
の何枚かまで
徹
(
とお
)
って行った。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
細くて
徹
(
とお
)
つたきいきいといふ鳴声を挙げる。「ほい
畜生
(
ちくしょう
)
」と云つて平太郎は
巧
(
たくみ
)
に操りながら、噛みつかれないやうに翅を
延
(
のば
)
して避ける。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
こんな透き
徹
(
とお
)
るような感じの女が、どう間違って伊丹屋の駒次郎などの思い者になっていたことか、平次には不思議でなりません。
銭形平次捕物控:097 許嫁の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
百日の間に、参籠堂に
籠
(
こも
)
って、夜な夜な霊ある滝に打たれてみた時には、信心のなきものもまた、冷気の骨に
徹
(
とお
)
るものがありましょう。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
心中の深い苦悶が透き
徹
(
とお
)
らんがばかり
蒼褪
(
あおざ
)
めた顔にありありと刻まれて、しかし殿下は
身揺
(
みゆる
)
ぎもせず、ただ一度二度深く頷かれた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
よく
徹
(
とお
)
る、しかし意地の悪くない高笑いに追われながら、
一目散
(
いちもくさん
)
に自分の部屋へ
逃
(
に
)
げ
込
(
こ
)
んで、ベッドにころがり込むと、両手で顔を
隠
(
かく
)
した。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
直接に先方に射込むようなよく
徹
(
とお
)
る声でまッ直ぐに云った。よろこびが彼の顔にみなぎった。
小皺
(
こじわ
)
にかこまれた瞳がしっとりと湿って来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「さようさ」と云ったが太郎丸、いくばくか
躊躇
(
ちゅうちょ
)
の色を見せた。「男子の本懐と致しては、思い立った一念
徹
(
とお
)
すが正当……」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、その液体の匂いであろうかそれとも鉢の花の匂いであろうか、
快
(
こころよ
)
い
牛蒡
(
ごぼう
)
の
匂
(
におい
)
のような匂が脳に
浸
(
し
)
み
徹
(
とお
)
るように感じた。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
外へ出て
其処
(
そこ
)
らを見廻しながら立っていると、まだ夜の気の
彷徨
(
さまよ
)
うている谷の向う河岸や此方の林の中で、
青蜩
(
ひぐらし
)
が
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
るような声で鳴き初めた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
お迎いお迎えという触れ声が外にしていて、七月十七日の朝の
爽
(
さわ
)
やかな風が、一夜のうちに姿をかえた少女の透き
徹
(
とお
)
るような白い額を
撫
(
な
)
でていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「人の体も形が形として面白いのではありません。霊の鏡です。形の上に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
って見える内の
焔
(
ほのお
)
が面白いのです。」
花子
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
感情と知性と誠実がすっきり透き
徹
(
とお
)
るように
融
(
と
)
け合えば夫婦親子は勿論、我子の嫁とも一切の他人とも愛し得られるものであろうと私は思っている。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
この大きな、古風な、どこか
厳
(
いかめ
)
しい
屋造
(
やづくり
)
の内へ静かな光線を導くものは、高い
明窓
(
あかりまど
)
で、その小障子の開いたところから青く透き
徹
(
とお
)
るような空が見える。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
燃え狂う真紅の
焔
(
ほのお
)
が
鎮
(
しず
)
まったかとおもうと、やがて、あの冷たい透き
徹
(
とお
)
った不思議な焔がやって来た。飢餓の焔だ。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
流石
(
さすが
)
にそういう作品は、肉合とか、そういうものに神経が
徹
(
とお
)
っているから死んだところがない訳で、父のものは父なりにちゃんと出来ているのである。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
既にその時すらも余程堪え難くなって来て長者の着て居った毛皮の着物を二枚も借りて着て居ってもなお夜分は随分寒気が
膚
(
はだえ
)
に
徹
(
とお
)
す位でありますから
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
緑色に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
った小天地、白い帆かけ舟が一つ中にともした
生命
(
いのち
)
の火のつゞく限りいつまでもと其
表
(
おもて
)
を
駛
(
はし
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そのとき、藤田家の門から、ひとりの肥えた逞しいからだつきの武士が出て来て、「なにをしているんだ」とよく
徹
(
とお
)
る、ひびきの美しい声で呼びかけた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
生長後親類などの話で聞くと、それというが幾分か境遇の然らしめた所も有ったらしい——というのは、早く祖父に死なれて若い時から後家を
徹
(
とお
)
して来た。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
苦しさに堪えかねて、
暫時
(
しばし
)
路傍
(
みちのべ
)
に
蹲
(
うずく
)
まるほどに、夕風
肌膚
(
はだえ
)
を侵し、
地気
(
じき
)
骨に
徹
(
とお
)
りて、
心地
(
ここち
)
死ぬべう覚えしかば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
そして君たち二人は顔を見合って溶けるように
笑
(
え
)
みかわす。寒さはしんしんと背骨まで
徹
(
とお
)
って、戸外には風の落ちた空を黙って雪が降り積んでいるらしい。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「人の体も形が形として面白いのではない。霊の鏡です。形の上に
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
って見える内の
焔
(
ほのお
)
が面白いのです。」
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
と清い清い澄み
徹
(
とお
)
るような声で唱い出されたのが聞えた。もとより聞えるはずが有ろう訳は無いのであるが。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
医者の声は低かったが、みんなの耳によく
徹
(
とお
)
った。次郎は、半ば開いたお祖父さんの眼をじっと見つめながら、死が何を意味するかを、子供心に考えていた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
しかし生きてはいたが、私はちょっと見たところ、その裂傷は、骨までは
徹
(
とお
)
ってはいないものだと思った。
自転車嬢の危難
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
骨までも文化が
徹
(
とお
)
っている。東海岸の国土、たとえばモザンビクの海岸においても状態は同じであった。
アフリカの文化
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
次は、肉を刻み油でいため、
蕃荷菜
(
はくか
)
をかけたものだ。これも、乙である。その次は、テキである。これは硬くて歯が
徹
(
とお
)
らなかった。カツも出たが、カツも同様だ。
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
それでいながら、
例
(
たと
)
えば、
舷側
(
げんそく
)
に
沸
(
わ
)
きあがり、
渦巻
(
うずま
)
き、泡だっては消えてゆく、太平洋の水の
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
る淡青さに、生命も
要
(
い
)
らぬ、と思う、はかない気持もあった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
春の朝は
心地
(
ここち
)
が好い。日がうらうらと照り渡って、空気はめずらしくくっきりと
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
っている。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その霧を
徹
(
とお
)
して、月のあかりが水色にしずかに
降
(
ふ
)
り、電信柱も
枕木
(
まくらぎ
)
も、みんな
寝
(
ね
)
しずまりました。
シグナルとシグナレス
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
事理の
徹
(
とお
)
った
退引
(
のっぴき
)
ならぬ青年の問に、母が何と答えるか、美奈子は胸を
顫
(
ふる
)
わしながら待っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
更に日を
歴
(
へ
)
ると、皮膚は薄膜のやうに透き
徹
(
とお
)
りはじめた。学校の実験室で見た
繭
(
まゆ
)
の透き
徹
(
とお
)
りを思はせた。明子はねばねばした幼児の四肢がそこに透いて見えるのを想像した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
この音が
亦
(
また
)
感慨無量である。「ちゃん」と鳴ると鹿山の静かな天地に響きわたる、そうして無字で苦しんでおる胸の底へえぐるように
徹
(
とお
)
って行く、その時の心持は何とも云えぬ。
鹿山庵居
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
格言を意訳すると「決心は
巌
(
いわお
)
でも
徹
(
とお
)
す、我々が一緒になれぬことがあろうか」となる。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
三度まで射たる故にや依りけん、この矢眉間の
只中
(
ただなか
)
を
徹
(
とお
)
りて、喉の下まで、
羽
(
は
)
ぶくら責めてぞ立ちたりける、二、三千見えつる焼松も、光たちまち消えて、島のごとくにありつる物
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その寒い、鋭い音響が私の骨の髄まで沁み
徹
(
とお
)
って、又も気が遠くなりかけたところへ、私の背後の月の下からオドロオドロしい靴の音が湧起って来たので、私は又ハッと気を取直した。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
見ればまっ
蒼
(
さお
)
になった女は
下唇
(
したくちびる
)
を噛んだなり、神父の顔を見つめている。しかもその眼に
閃
(
ひらめ
)
いているのは神聖な感動でも何でもない。ただ冷やかな
軽蔑
(
けいべつ
)
と骨にも
徹
(
とお
)
りそうな
憎悪
(
ぞうお
)
とである。
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
段々中二階の方へ
行
(
ゆ
)
くから、孝助はいよ/\源次郎に違いなしとやり
過
(
すご
)
し、戸の
隙間
(
すきま
)
から脇腹を狙って、物をも云わず、力に任せて
繰出
(
くりだ
)
す槍先は
過
(
あやま
)
たず、プツリッと
脾腹
(
ひはら
)
へ掛けて突き
徹
(
とお
)
す。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そのとき身体中に
森
(
しん
)
としたある不思議な寒さが、骨の髄まで
徹
(
とお
)
ってくるような気がしたそうです。しかもその最後に見た障子の内のかげはまるで鼠の尾のような細い、鋭い影だったそうです。
不思議な国の話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「防弾チョッキを着てやがるんだ。生命には別条ない。昨夜彼奴の防弾チョッキを見たが、君の呪いの弾丸が二発
鋼鉄
(
はがね
)
の上に浅い凹みを造っていたぜ。もし
徹
(
とお
)
りぬけりゃ、心臓を射留めたろう」
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幽
(
か
)
そけくも底力ある、あやしい調べが、忍びやかに脳底に刺し
徹
(
とお
)
る……
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
用ゆる時は
鉄網
(
てつあみ
)
の上へ魚を載せて今のサラダ油とバターとを
更
(
かわ
)
る
更
(
がわ
)
る匙で
滴
(
たら
)
しながら火の
徹
(
とお
)
るように焼きます。もしや魚の
脂
(
あぶら
)
が火へ落ちて燃え上ったらば塩を少し火の中へ入れると燃えが
熄
(
や
)
みます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
冬の夜、戸を開くとそれが聞こえないことはめったになかった。ホーホーホー、ホーラーホー——よく
徹
(
とお
)
る声で初めの三綴はハウ・ダー・ドゥー(御機嫌いかが)のアクセントにいくらか似ていた。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
それは、鼻の奥に痛いような、
徹
(
とお
)
った感じのするものであった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それは透き
徹
(
とお
)
ったヴェネチアの
玻璃
(
ビイドロ
)
で
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
沼尻の川なので、浅そうに
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
っては見えるけれど、
底泥土
(
そこどろ
)
がやわらかで、仮橋から墜ちた子供などが、何人もそこでは死んでいた。
下頭橋由来
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
徹
常用漢字
中学
部首:⼻
15画
“徹”を含む語句
透徹
貫徹
徹宵
徹夜
夜徹
澄徹
徹頭徹尾
徹底
一徹
徹底的
見徹
虎徹
大悟徹底
冷徹
押徹
石徹白
一徹者
途徹
徹書記
明徹
...