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幟
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のぼり
ふりがな文庫
“
幟
(
のぼり
)” の例文
「主人を殺した鍼は、あの部屋の壁の中に叩き込んであったよ。番頭を殺した剃刀は、多分あの
幟
(
のぼり
)
の竿の割れ目に入っているだろう」
銭形平次捕物控:089 百四十四夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
其家は大正道路から
唯
(
と
)
ある路地に入り、汚れた
幟
(
のぼり
)
の立っている伏見稲荷の前を過ぎ、溝に沿うて、
猶
(
なお
)
奥深く入り込んだ処に在るので
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
世界的団長自ら広告
幟
(
のぼり
)
を
担
(
かつ
)
いで、ビラを配って、浅草
界隈
(
かいわい
)
を歩いているなんて、なんとまあインチキな、人を喰ったしわざであろう。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
かなり遠方からやつて来たといふ栗毛の馬と
競
(
せ
)
り合つたあげく、相沢の馬は優勝を
獲
(
か
)
ち得て、賞品の
幟
(
のぼり
)
と米俵とを悠々と持つて行つた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
船田ノ入道はまっさきに登って行って一引両の
幟
(
のぼり
)
を立て、また
螺手
(
らしゅ
)
に命じて貝を吹かせた。つづいては堀口、世良田、里見などの一族。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
その家の軒端の
幟
(
のぼり
)
が、ばたばたばたばたと、烈風にはためいている音が聞えて淋しいとも
侘
(
わ
)
びしいとも与兵衛が可愛そうでならなかった。
音に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
白っぽい
街路
(
みち
)
の上に瓦の照返しが蒸れて、行人の影もまばらに、角のところ天屋の
幟
(
のぼり
)
が夕待顔にだらりと下っているばかり——。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そうした町も今は屋根瓦の間へ挾まれてしまって、そのあたりに
幟
(
のぼり
)
をたくさん立てて芝居小屋がそれと察しられるばかりである。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
往還
(
わうくわん
)
よりすこし
引入
(
ひきい
)
りたる
路
(
みち
)
の
奥
(
おく
)
に
似
(
に
)
つかぬ
幟
(
のぼり
)
の
樹
(
た
)
てられたるを何かと問へば、
酉
(
とり
)
の
市
(
まち
)
なりといふ。
行
(
ゆ
)
きて見るに
稲荷
(
いなり
)
の
祠
(
ほこら
)
なり。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
むしろを垂れた小屋のまえには、弱々しい冬の日が
塵埃
(
ほこり
)
にまみれた絵看板を白っぽく照らして、色のさめた
幟
(
のぼり
)
が寒い川風にふるえていた。
半七捕物帳:02 石灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
村に入って見ると、祭なるがためにかえって静かで、ただ遠く
高柱
(
たかはしら
)
の
徴
(
しる
)
しの
幟
(
のぼり
)
が、定まった場所に白く
翻
(
ひるが
)
えるを望むのみである。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
三大節、
歌留多
(
かるた
)
会、豆撒き、彼岸、釈迦まつり、
雛
(
ひな
)
と
幟
(
のぼり
)
の節句、七夕の類、クリスマス、復活祭、
弥撒
(
ミサ
)
祭なぞと世界的である。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
坂下
(
さかした
)
では菊人形が二三日前開業したばかりである。坂を
曲
(
まが
)
る時は
幟
(
のぼり
)
さへ見えた。今はたゞ声丈聞える。どんちやん/\遠くから
囃
(
はや
)
してゐる。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
霜刻に近い夜ふけの楽屋の中は、いたって火の気も乏しく、外の凍りが室内にも及んで、
幟
(
のぼり
)
のはためきに、歯の音も合わぬほどの寒さだった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
氏神
(
うじがみ
)
である
白山
(
しらやま
)
神社の境内には、「四海泰平」「徳光遍世」などと書かれた白い
幟
(
のぼり
)
が、七月の風に、パタパタと鳴っている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
その
幟
(
のぼり
)
の蔭から、盆の上のリキュウグラスに手を出して無料じゃ無料じゃという赤いのを一杯試し飲みして見たところで
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
おびただしく市川
某
(
なにがし
)
の
幟
(
のぼり
)
を立てた芝居小屋の前を通ると、小屋の窓から首を出していた一人の
気障
(
きざ
)
な男を道庵先生が見て
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
三、差出すに名刺あり翻すに
幟
(
のぼり
)
あり。『極楽荘』が所在するタラノの谿谷は、
金山
(
モンテ・ドロ
)
という高い山の
麓
(
ふもと
)
の、石ころだらけの荒涼たる山地の奥にある。
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
幟
(
のぼり
)
や旗がはためいており、また反対の片側には、隅田川に添って土地名物の「梅本」だの「うれし野」だのというような、水茶屋が軒を並べていた。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
人通りがなく、少しの風が出て、呉服屋の
幟
(
のぼり
)
がはためいていた。伸子は万世橋まで素子と一緒の電車で行った。伸子は赤坂へ、素子は牛込に帰った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その町々の名を
記
(
しる
)
した紙の
幟
(
のぼり
)
を押し立て、富有な町人などの店先に来て大道にひざまずき、米価はもちろん諸品
高直
(
たかね
)
で露命をつなぎがたいと言って
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
修羅
(
しゆら
)
に大
綱
(
つな
)
をつけ左右に
枝綱
(
えだつな
)
いくすぢもあり、まつさきに本願寺御用木といふ
幟
(
のぼり
)
を二本
持
(
も
)
つ、信心の老若男女
童等
(
わらべら
)
までも
蟻
(
あり
)
の如くあつまりてこれをひく。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
散らばった
幟
(
のぼり
)
の
破片
(
はへん
)
、まだぷすぷすといぶっている木材、なにを見ても胸がせまる。生きのこった団員は、どこにいるのであろうか。その姿が見えない。
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この錯雑せる俗人事を表面より直言せば固より俗に
堕
(
お
)
ちん。裏面より如何なる文学的人事を探り得たりとも、千両
幟
(
のぼり
)
は
終
(
つい
)
に俳句の材料とは為らざるなり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
秋晴の薄日に乱れた中に、——其の釣鐘草が一茎、丈伸びて高く、すつと咲いて、たとへば月夜の村芝居に、青い
幟
(
のぼり
)
を見るやうな、色も
灯
(
とも
)
れて咲いて居た。
玉川の草
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
孰
(
いづ
)
れも古い
家屋
(
かをく
)
ばかりで、
此処
(
こゝ
)
らあたりの田舎町の特色がよく出て
居
(
ゐ
)
た。町の中央に、芝居小屋があつて、青い白い
幟
(
のぼり
)
が
幾本
(
いくほん
)
となく風にヒラヒラして
居
(
ゐ
)
た。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
入営者の弟の沢ちゃんも、銀笛を吹く
仲間
(
なかま
)
である。次ぎに送入営の
幟
(
のぼり
)
が五本行く。入営者の附添人としては、岩公の兄貴の村さんが弟と並んで歩いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「さやう、どうもあの
幟
(
のぼり
)
にあるRといふ字が臭いですよ」と応じたのは、鼻
眼鏡
(
めがね
)
をかけた学者ふうの紳士で
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
上野駅に近い大きいビルディングの四階からは、「水害援助金募集」と書いた大きい
幟
(
のぼり
)
が垂れ下っていた。
亡び行く国土
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
其処にはまだ見世物の景色らしい特別な雑沓は見られなくて、ただ薄汚い数本の
幟
(
のぼり
)
だけが立ち並んでゐた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
五月の節句に、
幟
(
のぼり
)
を建てるのに、巨大な、天にも届かんばかりな材木が用ひられた。一つの赤ん坊が生れたために、そんなに大袈裟に祝福すべきものであらうか。
幼少の思ひ出
(新字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
そして、
舳
(
みよし
)
には、旗を立てたり古風な
幟
(
のぼり
)
を立てたりしている。中にいる人間は、皆酔っているらしい。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
見えるのは軒なみにはためいている「中元大売り出し」という
幟
(
のぼり
)
くらいなものだ。それと、チョコチョコとさも用事ありげに歩きまわっている多すぎるほどの人間。
ジャンの新盆
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
筋向うの芝居の前には、赤い
幟
(
のぼり
)
が出て、それに大入の人数が記されてあつた。其処らには人々が真ツ黒に集まつて、花電燈の光を浴びつゝ、絵看板なぞを見てゐた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
黄色い
幟
(
のぼり
)
を立て並べたやうにポプラの木がスク/\と立つてゐます。陽がキンキラと照つてゐます。
文化村を襲つた子ども
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
罪状および刑罰の宣告を記した
捨札
(
すてふだ
)
を立て、罪人を
引廻
(
ひきまわ
)
す時にも、罪状と刑罰とを記した
幟
(
のぼり
)
を馬の前に立てて市中を引廻したものであるから、法規はこれを秘密にし
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
屋外
(
そと
)
は、もう、いつか初冬らしい、木枯じみた、黒く冷たい風が吹きとおしている。立ちつづく、芝居小屋前の
幟
(
のぼり
)
が、ハタハタと、吹かれて鳴るのも、寒む寒むしい。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
神輿の御座船は一
際
(
きわ
)
美しい屋形船で、旗
幟
(
のぼり
)
や、玉
串
(
くし
)
などの立ち並ぶ下に、礼装した神官たちがいずまい正し、伶人が楽を奏でるなかに、私の鈴子は美しい巫女の装いして
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
頭の上から垂れ下った招牌や
幟
(
のぼり
)
が、日光を
遮
(
さえぎ
)
り、その下の家々の店頭には、
反
(
そ
)
りを打った象牙が林のように並んでいた。参木はこの異国人の混らぬ街を歩くのが好きであった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
馬に跨り
天鵞絨
(
びろうど
)
の
幟
(
のぼり
)
を建て、
喇叭
(
らつぱ
)
を吹きて、祭の
前觸
(
まへぶれ
)
する男も、ことしは我がためにかく晴々しくいでたちしかと疑はる。ことしまでは我この祭のまことの樂しさを知らざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
また従来最寄りの神社参詣を宛て込み、果物、駄菓子、
鮓
(
すし
)
、茶を売り、
鰥寡
(
かんか
)
貧弱の生活を助け、祭祀に行商して自他に利益し、また旗、
幟
(
のぼり
)
、幕、衣裳を染めて租税を払いし者多し。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
老人も至極
道理
(
もっとも
)
のことゝ、ある住職にたのみ、岩次を仏門に帰依いたさせますると、それから因果塚建立という
文字
(
もんじ
)
を染ぬきました
浅黄
(
あさぎ
)
の
幟
(
のぼり
)
を杖にいたし、二年余も
勧化
(
かんげ
)
にあるき
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お茶屋のボンボリの
仄
(
ほの
)
白い光の中から、芝居小屋にかかげられた
幟
(
のぼり
)
の列を
俯瞰
(
ふかん
)
する。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
幟
(
のぼり
)
を立てたり
大鼓
(
たいこ
)
を叩いたり
御神酒
(
おみき
)
を上げてワイ/\して居るから、私は
可笑
(
おか
)
しい。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
文句はよくわからなかったが、千両
幟
(
のぼり
)
の櫓太鼓の曲弾を子供ながら面白く感じた。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
昔は小芝居などもあったらしく、芝公園の山の上から、
幟
(
のぼり
)
なども見えたらしい。
芝、麻布
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
太鼓を
舁
(
かつ
)
いだり、
幟
(
のぼり
)
をさしたり、一張羅の着物を着てマチへ出る村の人々は、何等か興味をそゝって話の種になったものだが、東京の街で見るものは彼等にとって全く縁遠いものだった。
老夫婦
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
町へ入って少し行くと、汚い、薄い板で囲って、板屋根を
葺
(
ふ
)
いただけの小屋があった。表に、
幟
(
のぼり
)
が一本立っていて、扇風舎桃林の名が、紅を滲ませていた。南玉が、入口から、真暗な中へ
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
新緑の間に鯉
幟
(
のぼり
)
のはためく、日の光に矢車のきらめく、何と心よいものではないか。
檐
(
のき
)
の菖蒲こそ今は見えぬが、菖蒲湯のすが/\しい香り、これも一寸古俗に心ゆかしさを感じさせられる。
菖蒲湯
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
ある日もアンポンタンはおまっちゃんと四ツ角で、その大人の、
目覚
(
めざま
)
しい
狂奔
(
きょうほん
)
を見物していた。すると、
帝釈様
(
たいしゃくさま
)
の剣に
錦地
(
にしきじ
)
の
南無妙法蓮華経
(
なむみょうほうれんげきょう
)
の
幟
(
のぼり
)
をたてた
出車
(
だし
)
の上から声をかけたものがある。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“幟”の解説
幟(のぼり)は、日本における旗の形式のひとつ。長辺の一方と上辺を竿にくくりつけたものを指す。
(出典:Wikipedia)
幟
漢検1級
部首:⼱
15画
“幟”を含む語句
旗幟
五月幟
鯉幟
紙幟
大幟
幟旗
標幟
馬幟
幟町
古幟
菖蒲幟
竿幟
贔負幟
関取千両幟
御幟
立幟
目幟
白幟
日幟
旗幟鮮明
...