こは)” の例文
新字:
それらの器物きぶつ今日こんにちではたいていつちうづもれてえなくなつたり、こはれてなくなつてしまつて、のこつてゐるものははなはすくないのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
こはれた壁に圍まれた狹い平地、夕ぐれ時を示す、昇りはじめた新月しんげつにつきまとうた感情を、私は、云ひあらはすことが出來ない。
のぞくと、やまさかひにした廣々ひろ/″\としたにはらしいのが、一面いちめん雜草ざつさうで、とほくにちひさく、こはれた四阿あづまやらしいものの屋根やねえる。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
手桶てをけ一提ひとさげ豆腐とうふではいつものところをぐるりとまはれば屹度きつとなくなつた。かへりには豆腐とうふこはれでいくらかしろくなつたみづてゝ天秤てんびんかるくなるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とある小山の麓に僅かに倒れ殘つた荒屋あばらやが即ちそれで、茅葺かやぶきの屋根は剥がれ、壁はこはれて、普通の住宅すみかであつたのを無理に教場らしく間に合せたため
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
平次はさう言はれて二軒長屋のさかひの壁を見ました。成程多の市の部屋の柱寄り、丁度疊から五六寸上が、向うからこはされたやうに、ポコリと土が落ちて居るのです。
昔風むかしふうもんはひると桑園くはゞたけあひだ野路のみちのやうにして玄關げんくわんたつする。いへわづか四間よま以前いぜんいへこはして其古材そのふるざいたてたものらしくいへかたちなしるだけで、風趣ふうちなにいのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この村を通り過ぎると、次の村まではまた暫くの間人家じんかが無かつた。次の村の入口には、こはれた硝子戸がらすどを白紙でつくろつた床屋とこやがあつた。其の村は前の村よりも貧しさうであつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
つい此間このあひだまでまばらな杉垣すぎがきおくに、御家人ごけにんでもふるしたとおもはれる、物寂ものさびいへひと地所ぢしよのうちにまじつてゐたが、がけうへ坂井さかゐといふひと此所こゝつてから、たちま萱葺かやぶきこはして、杉垣すぎがきいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十數年來の自信を、まつたくこはされてしまつたのである。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
此方の計劃もこはされてしまひます。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
いまおはなしした古墳こふんからかゞみ青銅せいどうつくつてあるので、青色あをいろさびてをつても、くさつたものはすくなく、たいていこはれないでつちなかからます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
私はこはれかけた壁を狂氣のやうに危く急いで這ひのぼりました、たゞ一目頂上からあなたを見たいと夢中になつて。
「その百兩の茶碗、五十兩の茶入といふエテ物を、片つ端から叩きこはした奴があるんですよ」
田圃たんぼしぎなにおどろいたかきゝといて、刈株かりかぶかすめるやうにしてあわてゝとんいつた。さうしてのちしろとざしたこほり時々ときどきぴり/\となつてしやり/\とこはれるのみでたゞしづかであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「へい、殿樣とのさまへ、御免ごめんなせいまし。」としりからげのしまつた脚絆きやはん。もろにそろへてこしかゞめて揉手もみでをしながら、ふとると、大王だいわう左右さいう御傍立おわきだちひとつはちたか、こはれたか、大破たいは古廟こべうかたちめず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにぶんうすてついたでつくり、これをかはひもむすあはせたものでありますから、いまではぼろ/\にこはれて、完全かんぜんのこつてゐるものはまれであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それで、私が火を眺めて描いてゐた剪嵌細工モザイクはすつかりこはされて、それと一緒に獨りぽつちの寂しさを襲ひはじめてゐた、なんとなく重い嫌な氣もまた散つて了つた。
「八、後ろへ廻つて窓をブチこはせ。中に人間が二人居るぞツ、危いから氣をつけろ」
彼等かれら漸次しば/\家族かぞくあひだこと夫婦ふうふあらそひに深入ふかいりしてかへつ雙方さうはうからうらまれるやうなそん立場たちばはまつた經驗けいけんがあるので、こはれた茶碗ちやわんをそつとあはせるだけの手數てすうたくみ方法はうはふ機會きくわいとをつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
利かせる氣ぢやブチこはしだ。町方の者とさとつたら最後、何んにも教へちやくれまい。それより評定所や下馬先や、大名方のお供の大勢集まるところへ首を突込んで、精一杯お前の耳を働かせるんだ
「蓋を開けちやならねえよ、瓶をこはさないやうに、そつと掘出すんだ」
「この縁談をこはしたいと思ふ者があるに相違ないが——」