刄物はもの)” の例文
其時そのとき宗助そうすけこれはならんとおもつた。けれどもはたして刄物はものもちひて、かたにくいていものやら、わるいものやら、けつしかねた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乘行のせゆき丑刻過やつどきすぎに歸り候處町内の天水桶にて刄物はものあらふ者あり其形容そのかたち勘太郎に髣髴よくにたりとは存じながら私しども見屆けるにも及ばざる事ゆゑ路次を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
切れ物は鋭き石の刄物はものなるべく、はりは骨にて作りたるものなるべし。是等の器具に付きては別に記す所有るべし。共に石器時代の遺跡ゐせきより出づ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
刄物はものもつつあしてもどう一である。蛸壺たこつぼそこにはかならちひさなあな穿うがたれてある。しりからふつといきけるとたこおどろいてするとつぼからげる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
多「アはゝゝゝゝすんでに八十両という大金をられる処だった、去年われおれ刄物はもの突付けて、すんでのことで殺される処を助かって此処にいるだが、われはまアだ悪事がまねえのか」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
患者等かんじゃら油虫あぶらむし南京虫なんきんむしねずみやからてられて、んでいることも出来できぬと苦情くじょうう。器械きかいや、道具どうぐなどはなにもなく外科用げかよう刄物はものが二つあるだけで体温器たいおんきすらいのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
出したつて話ですから、いづれ、そんな事で刄物はものまいになつたんぢや御座いませんか
「それから二つの口はあんまり鋭くない刄物はもので切ってあるけれども、他の二つは丈夫な歯でくい切ってある。——レーナー君、これは何だね、自殺じゃないね。これは実に巧妙に仕組んである、冷酷な殺人だよ」
入院患者 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
「なぜ、いきなり刄物はものを突きけねえんだ、」
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二に曰く人骨の外面ぐわいめんことに筋肉の付着點に刄物はものきづ有り。三に曰く人骨は他動物の遺骨ゐこつと同樣に人工を以てくだかれたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
おのれもにがさぬぞとげん八へ突掛つきかゝるに源八はおもひも寄ぬことなればおどろ周章あわてみぎの手をいだして刄物はもの挈取もぎとらんとせし處を切先きつさきふかく二のうで突貫つきとほされヤアと躊躇たちろく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かれ熱火ねつくわかれてひとりめたなたかますべての刄物はものはもうやくにはたなかつた。かれ完全くわんぜんたもたれたものはかれ自分じぶんたのんで唐鍬たうぐはのみである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
器械きかいや、道具だうぐなどはなにもなく外科用げくわよう刄物はものが二つあるけで體温器たいをんきすらいのである。浴盤よくばんには馬鈴薯じやがたらいも投込なげこんであるやうな始末しまつ代診だいしん會計くわいけい洗濯女せんたくをんなは、患者くわんじやかすめてなんともおもはぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「お前が今朝主人の死骸を見付けた時、刄物はものを見なかつたか?」
光る刄物はもののかなしさか。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
殺したりと白状はくじやういたせどもぬすみたる金も見えず又女を殺したる刄物はものもなしとるに旅僧頭を上げ其せつぬすみし金子きんす刄物はものにげせつ取落とりおとし身一つになり候處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鹿猪等の骨を見るに筋肉きんにく固着こちやくし居りし局部にはするどき刄物にてきづを付けしあと有り。此は石にてつくれる刄物はものを用ゐて肉を切りはなしたる爲にしやうぜしものたる事疑ふ可からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「昨夜、大野田の伜を殺した刄物はものは何んだ」