出来でか)” の例文
旧字:出來
斯かる例を見るからは、最早や如何なる怨魔出で来るとも、退散させて弥陀の念仏。一宗再興疑いなし。出来でかしたぞ堅田の源右衛門。
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
外国交際又は内国の憲法政治などについれと云う議論は政治家の事として差置さしおき、私の生涯の中に出来でかして見たいと思う所は
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
(分ったか、何、分った、偉い! 出来でかす、)と云ってね、ふふん、と例のいや笑方わらいかたをして、それ、直ぐに芸妓連げいこれんの顔をぎょろり。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折節ね旦那のお供でね沖釣などに出来でかける事もありますがね、馬作は竿も餌も魚任むこうまかせにして只御酒ごしゅを頂くばかりいえも何うせいけません
「さうだよ僕は見得坊だから。見得坊だから見得の為めには随分犠牲を払つてゐる。だからそのお蔭で何をし出来でかすか分らない」
芥川竜之介を憶ふ (新字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
さても出来でかしたり黄金丸、また鷲郎も天晴あっぱれなるぞ。その父のあだうちしといはば、事わたくしの意恨にして、深くむるに足らざれど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
出来でかしたところで、到底最初のようなものが出来るわけはありませんから、ついお話しだけで、実物は出来ずじまいになっておるようなわけです。
虹と感興 (新字新仮名) / 上村松園(著)
出来た事なら仕様が有りませんと……誰れが出来でかしたこったエ、誰れが御免になるように仕向けたんだエ、皆自分の頑固かたいじから起ッたこっじゃアないか。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
機先を制して、われから彼をくじくとすれば、今は絶好な潮時ですし、また鼓上蚤こじょうそう出来でかした些事さじも、かえって、いいッかけと名分に相成りましょう
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大坂沖で舟の中で酒場喧嘩をし出来でかし、海へ飛び込んで逃げて来て抱へて呉れと云ふから家来にしたのです。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
よしまたのつそりに命けらるればとて彼奴あれめに出来る仕事でもなく、彼奴の下に立つて働く者もあるまいなれば見事出来でかし損ずるは眼に見えたこととのよしなれど
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
今年は今年で、お鳥(女房の名)が指さあ、れもの出来でかして、岩佐様さあ七十日がな通いましただ。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
団十郎・菊五郎など役者揃いの千本桜の時に、立女形の岩井半四郎の替り役として、木の実の小せん、鮨屋すしやのお里をした。これで、始めて出来でかしたという評判を得た。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
出来た後で評定する事で、出来でかすのに考える筈のものではない。作家をして、日本人たる事を忘れさせたい。日本の自然を写しているという観念を全く取らせてしまいたい。
緑色の太陽 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
ナントおつ出来でかしたではござらぬか、此詩このし懐中くわいちうしたれば、もんたゝいておどろかしまをさんかとは思ひしが、夢中むちう感得かんとくなれば、何時いつ何処どこにても、またやらかすとわけにはかず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
わたくしを生きながら元の道へお帰らせなさることのお出来にならないのも、同じ道理でございます。幾らあなたでも人間のおことばで、そんな事を出来でかそうとは思召おぼしめしますまい。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
インド等で野象を馴らすも似いるがそれは徐々出来でかすのだから馬擾しほどに眼を驚かさぬ。
それも今日こんにち母上おっかさんいもとの露命をつなぐ為めとか何とか別に立派なつかみちでも有るのなら、借金してだって、衣類きものを質草にたって五円や三円位なら私の力にても出来でかして上げるけれど
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この句を芭蕉が丈草出来でかされたりとか何とか言ってめたという事がある。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
文学博士喜田貞吉さだきち氏は国史の専攻学者である。一体歴史家といふものは、この世界に起きた事は、どんな些細なものでも、神様がみんな自分達に相談して出来でかしたかのやうに吹聴するものである。
『並木先生は偉い。出来でかした、出来した、なアる程それが一番だ。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
国を立って東京へ出てから、まだ二箇月余りをけみしたばかりではある。しかし東京に出たら、こうしようと、国で思っていた事は、ことごと泡沫ほうまつの如くに消えて、積極的にはなんのし出来でかしたわざも無い。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
、これからし出来でかそうってつもりでもあるのかね?
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
わたし共は大きい事をし出来でかす連中です。
「忠三郎、あっぱれ出来でかしたぞ」
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
出来でかした——見上げたぞ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「ウムッ。出来でかいたッ」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
出来でかした」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
これが出来上った時、しかも玉虫色の皆絹裏かいきうらがサヤサヤと四辺あたりを払って、と、出立いでたった処は出来でかしたが、懐中むなしゅうして行処ゆくところがない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「強敵、戸波隼人を討ったのは、出来でかしたが、それが精いッぱいか、貴様、少し逆上あがっているぞ。——その首、敵兵にり返されぬように気をつけろ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから又坂ア下って又登って向山までにゃア向うの奴は逃げて仕舞うからぶたれ損で、此の体にきず出来でかしたら貴方其の創を癒す事は出来ねえだろうが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
十兵衞涙に浮くばかりのつぶらの眼を剥き出し、まじろぎもせでぐいと睨めしが、おゝ出来でかした出来した、好く出来た、褒美を与らう、ハッハヽヽと咽び笑ひの声高く屋の棟にまで響かせしが
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お勢がこのような危い境に身をきながら、それには少しも心附かず、私欲と淫欲とがれきして出来でかした、軽く、浮いた、けがらわしい家内の調子に乗せられて、何心なく物を言っては高笑たかわらいをする
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
万一とんでもないことを仕出来でかしたりすると申訳ありませんからね……
牡丹 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
吸物すいもの出来でかされし水前寺 蕉
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
大川を出来でかしてくれなかったら
「おまえの云うことが根も葉もない証拠は、こうして村人たちが証明するだけで充分でしょう、それとも動かない証文でもあるとお云いか、あるなら出して見せるがよいどうじゃ」うまいぞおせん出来でかした権右衛門は感嘆のあまりこう叫びかけた
「いや、見事よ、あれほどな築塁ちくるいと布陣は、まず、家康ならでは、こう短時日に、出来でかしうるものはあるまい」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清「むゝう……此の人とわれがと二人ながら屋敷にられねえ事を出来でかして仕様がなく、駈落をして来たな」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの棄鉢すてばちな気紛れものと、このあねさんでなくッちゃ、当節では出来ない仕事。また出来でかされちゃ大変でがすのに、とうとう見事みんごと仕出来した。何という向不見むこうみずな寄合でしょうな。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誠にお前様を見るとわしおめえ出しますが、若草もお前様のまで出来でかして何うも案じるとも案じねえとも、昼夜お前様の事をいい/\泣明しておッんだアから
「妙案妙案。出来でかしたぞ李逵。——だが百尺の地底からでは声も合図もとどくまい。その辺へ銅鈴すずを二ツ三ツくくり付けてゆけ。銅鈴が鳴ったら上から綱を引き上げてやる」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝手かつて木像もくざうきざまばきざめ、天晴あつぱ出来でかしたとおもふなら、自分じぶんそれ女房にようぼうのかはりにして、断念あきらめるが分別ふんべつ為処しどころだ。見事みごとだ、うつくしいと敵手あひてゆるは、其方そつち無理むりぢや、わかつたか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
塩梅あんべえが悪くってッ転がって寝て居るでごぜえますから、私も魂消たまげて塩梅がわりいかと尋ねますと、叔母さん面目ねえが勤めの中で赤子ねゝっこ出来でかしたよと云うから、私も魂消て
「なに、風呂小屋へ入れておいたと? そいつは出来でかした。……よしっ、今夜は捕えたぞ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お蔦 おお、出来でかした、宿のおまえさん。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よしたがよい、なんのざまじゃ、それは……。折角、出来でかしおったとめているのに」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はいうだろうと思って……知って居りやす、わしはもうとても助からぬ、こんな事もあろうかと思ったから、私は此家こけえ間違の出来でかさねえように頼みに来ただけれども、最早仕様がねえが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「オオ、お出来でかしなさいました。——が油断をしていると、足業あしわざにかけられますぞ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何うして赤子を出来でかしたかと尋ねると、伊之助さんと夫婦約束をして、ほかのお客へは出ねえから、素人同様の身体ゆえ赤子が出来できたが、主人の慈悲なさけで養生しろってえから、こうやってるが