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上総
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かずさ
ふりがな文庫
“
上総
(
かずさ
)” の例文
旧字:
上總
生前、お前のお父様は大抵夏になると、私と子供たちを
上総
(
かずさ
)
の海岸にやって、御自分はお勤めの都合でうちに居残っていらっしゃった。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その日は主人の神津右京は、金策のため
上総
(
かずさ
)
の知行所へ行って留守。用人の佐久間仲左衛門、代って平次と八五郎に応対しました。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただ北陸では富山県でミヨーシ、関東では
上総
(
かずさ
)
房州の方でミヨセというのがやはり粃のことらしく、ミヨサの方が類例は多いのである。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
上総
(
かずさ
)
の九十九里の海浜にて、一夜海上に怪物の現れたることがある。そのときは暗夜であって、
提灯
(
ちょうちん
)
を携えなければ歩くことができぬ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
おや、
白眼
(
にら
)
んだね。おかしな顔だからおよしよ。忘れやしまいね、はばかりながらあたしゃ
上総
(
かずさ
)
のお鉄だ。仕事にぶきがあるもんかね。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
「御記憶はないでしょう。しかし私には充分な覚えがあります。数年前、
上総
(
かずさ
)
の
夷隅
(
いすみ
)
の浜へお上りになったことがありましょう」
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後世
(
ごせ
)
こそ大事なれと、
上総
(
かずさ
)
から六部に出た老人が、善光寺へ
参詣
(
さんけい
)
の途中、浅間山の麓に……といえば、まずその
硫黄
(
いおう
)
の
香
(
におい
)
と
黒煙
(
くろけぶり
)
が想われる。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一男は、縦横に組み上げられた鉄材の間から、遠く澄んだ空へ眼を
放
(
はな
)
った。
上総
(
かずさ
)
房州
(
ぼうしゅう
)
の
山波
(
やまなみ
)
がくっきりと、
彫
(
きざ
)
んだような
輪廓
(
りんかく
)
を見せている。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
もともと
上総
(
かずさ
)
の
木更津
(
きさらづ
)
の生れである彼は、関東者らしい熱血漢で、親分肌の、
情誼
(
じょうぎ
)
に厚いところのある、一風変った性格の持主なのであった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
東京を中心にして関東の地図を見ますと、その中には
相模
(
さがみ
)
、
武蔵
(
むさし
)
、
安房
(
あわ
)
、
上総
(
かずさ
)
、
下総
(
しもうさ
)
、
常陸
(
ひたち
)
、
上野
(
こうずけ
)
、
下野
(
しもつけ
)
などが現れます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
もう一人は丹後村の兼吉、こいつは年上だけに巧く逃げたと見えて、容易に見付かりませんでしたが、その年の秋に
上総
(
かずさ
)
の方で挙げられました。
半七捕物帳:64 廻り灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
房州で駒井甚三郎の厄介になっていたことを
逐一
(
ちくいち
)
物語ると、お角も自分が
上総
(
かずさ
)
へ出かけて行った途中の難船から、駒井の殿様の手で救われたこと
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
淡島氏の祖の服部喜兵衛は今の寒月から四代前で、
本
(
も
)
とは
上総
(
かずさ
)
の
長生
(
ちょうせい
)
郡の
三
(
さん
)
ヶ
谷
(
や
)
(今の鶴枝村)の農家の子であった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
一たび幕府の倉吏となったが、天保の初
梁川星巌
(
やながわせいがん
)
が詩社を開くに及びこれに参し、職を辞して後
放蕩
(
ほうとう
)
のため家産を失い、
上総
(
かずさ
)
東金
(
とうがね
)
の漁村に
隠棲
(
いんせい
)
した。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人は
房州
(
ぼうしゅう
)
の鼻を
廻
(
まわ
)
って向う側へ出ました。我々は暑い日に
射
(
い
)
られながら、苦しい思いをして、
上総
(
かずさ
)
のそこ
一里
(
いちり
)
に
騙
(
だま
)
されながら、うんうん歩きました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
気候は海へはいるには涼し過ぎるのに違いなかった。けれども僕等は
上総
(
かずさ
)
の海に、——と言うよりもむしろ暮れかかった夏に
未練
(
みれん
)
を持っていたのだった。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いずれも戦にかけては恐ろしく強い者等に武蔵、上野、
上総
(
かずさ
)
、
下総
(
しもうさ
)
、
安房
(
あわ
)
の諸国の北条領の城々六十余りを一月の間に
揉潰
(
もみつぶ
)
させて、小田原へ取り詰めた。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一人が
嶮
(
けわ
)
しい
山谿
(
やまあい
)
を
駈
(
かけ
)
る呼吸で松の木に登り、桜の幹にまたがって
安房
(
あわ
)
上総
(
かずさ
)
を眺めると、片っぽは
北辰
(
ほくしん
)
一刀流の構えで、木の根っ子をヤッと割るのである。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
上総
(
かずさ
)
は春が早い。人の見る所にも見ない所にも梅は盛りである。菜の花も咲きかけ、麦の青みも
繁
(
しげ
)
りかけてきた、この頃の天気続き、毎日
長閑
(
のどか
)
な
日和
(
ひより
)
である。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
どうかして心を入れ替えたいと思いまして、
上総
(
かずさ
)
の国、
富津
(
ふっつ
)
というところに保養に行っている知り人をたずねながら、小さな旅を思い立ったこともあります。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
上総
(
かずさ
)
の方の郷里へ引っ込んでいる知合いの詩人が、旅鞄をさげて、ぶらりと出て来たのはそのころであった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
続日本紀、元正天皇霊亀二年五月の条に、「駿河、甲斐、相模、
上総
(
かずさ
)
、下総、
常陸
(
ひたち
)
、
下野
(
しもつけ
)
の七国の高麗人一千七百九十九人を武蔵の国にうつし、高麗郡を置く」
安吾の新日本地理:10 高麗神社の祭の笛――武蔵野の巻――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
お馨さんは、
上総
(
かずさ
)
の九十九里の海の音が
暴風
(
しけ
)
の日には遠雷の様に聞ゆる或村の小山の
懐
(
ふところ
)
にある家の娘であった。四人の兄、一人の姉、五人の妹を彼女は
有
(
も
)
って居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
千葉、
木更津
(
きさらづ
)
、
富津
(
ふっつ
)
、
上総
(
かずさ
)
。
安房
(
あわ
)
へはいった
保田
(
ほた
)
、
那古
(
なご
)
、
洲崎
(
すさき
)
。野島ヶ岬をグルリと廻り、最初に着くは
江見
(
えみ
)
の港。それから前原港を経、上総へはいって勝浦、
御宿
(
おんじゅく
)
。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
チャーレを
千島禮三
(
ちしまれいぞう
)
という金森家の
御納戸役
(
おなんどやく
)
にいたし、
巴里
(
パリー
)
の都が江戸の世界、カライの港が相州浦賀で、
倫敦
(
ロンドン
)
が
上総
(
かずさ
)
の
天神山
(
てんじんやま
)
、鉄道は
朝船
(
あさふね
)
夕船
(
ゆうふね
)
に成っておりますだけで
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
圓遊の逃げた先が
上総
(
かずさ
)
の木更津だったとのことだが、かの切られ与三郎を待つまでもなく、江戸末年から明治へかけての木更津は、ひと頃の横浜ぐらいに、繁華な文明な
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
命はそのおかげでようやく船を進めて、
上総
(
かずさ
)
の岸へ無事にお着きになることができました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
けさになって、
上総
(
かずさ
)
屋というこの並びの
履物屋
(
はきものや
)
さんに聞いたのですが、その娘さんは、手前の店を出てから、その上総屋さんで、
草履
(
ぞうり
)
を一足買って行ったらしゅうございますよ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おやおや、弁天様のお宮の屋根が蘆の穂のスレスレに隠れて、あの松林よりも
澪
(
みお
)
の棒杭の方が高く見えますな。おや川尻は、さすがに浪が荒い、
上総
(
かずさ
)
の山の頂きを見せつ隠しつは妙々。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
石段
(
いしだん
)
の
上
(
うえ
)
からは
海
(
うみ
)
を
越
(
こ
)
えて
上総
(
かずさ
)
房州
(
ぼうしゅう
)
が
一
(
ひ
)
と
目
(
め
)
に
見渡
(
みわた
)
されたように
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
お
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
妻君「そうでございますかね、牛は全体どういうのが
美味
(
おいしゅ
)
うございましょう」お登和嬢「場所で申せば神戸牛といって中国筋の者が良いので
上総
(
かずさ
)
房州
(
ぼうしゅう
)
から出る
地廻
(
じまわ
)
りは味が悪うございます。 ...
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
相模
(
さがみ
)
、
上総
(
かずさ
)
、
安房
(
あわ
)
等の海浜にて漁船中の最も
堅牢
(
けんろう
)
快速なるもの五十
艘
(
そう
)
ばかりに
屈竟
(
くっきょう
)
の
舸子
(
かこ
)
を併せ雇い、士卒に各々小銃一個を授けて、毎船十名ばかりを載せ、
就中
(
なかんずく
)
大砲を善くする者を択び
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
上総
(
かずさ
)
の
日在
(
ひあり
)
に賀古氏の別荘が出来た時、兄もその隣の松山に造りました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
この屋根の
箱棟
(
はこむね
)
には雁が五羽
漆喰
(
しっくい
)
細工で塗り上げてあり、立派なものでした(雁鍋の先代は
上総
(
かずさ
)
の
牛久
(
うしく
)
から出て
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
で
紫蘇飯
(
しそめし
)
をはじめて仕上げたもの)。隣りに天野という大きな
水茶屋
(
みずぢゃや
)
がある。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その一方で
上野
(
こうずけ
)
から武蔵、
上総
(
かずさ
)
にかけて散在する北条氏の属城を攻めさせた、総帥は石田三成、その下に大谷吉継、長束正家らを将とした兵三万は、草原を踏みにじる如く上野から武蔵へ殺到した。
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
上総
(
かずさ
)
しりがいかけてかいなし
現代語訳 平家物語:05 第五巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
○
上総
(
かずさ
)
にて山林を持つ人の話
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「あれが
安房
(
あわ
)
上総
(
かずさ
)
の山々、イヤ、絵にかいたような景色とは、このことでしょうナ。海てエものは、いつ見ても気持のいいもので」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
上総
(
かずさ
)
の
守
(
かみ
)
だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに
東
(
あずま
)
に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だった。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
では、どうせ土用の辰の日には、
鹿野山
(
かのうざん
)
で顔をそろえる約束のあること、ここをひきあげて、一先ず
上総
(
かずさ
)
の方へ足を抜こうか。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ
安房
(
あわ
)
や
上総
(
かずさ
)
の国で特筆されてよいと思いますのは、日蓮宗のお寺で名高い
清澄
(
きよすみ
)
山やまた風光のよい
鹿野
(
かのう
)
山に
建具
(
たてぐ
)
を職とする者が集っていて
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
汐干に遠く現われる東
上総
(
かずさ
)
の磯の石畳は、ヒジキの薄緑が地の色をなし、その隙々にトサカノリの幽かな紫を交えている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「それがあたしの性分ですから。それがために東京にもいられなくなって、
上総
(
かずさ
)
三界までうろ付いているんですから。」
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
が、彼の想像は
上総
(
かずさ
)
の或海岸の漁師町を描いていた。それからその漁師町に住まなければならぬお芳親子も。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鹿野山は
上総
(
かずさ
)
と房州の両国にまたがっている山です。わたしの越した峠はその山つづきで、峠の上に一軒屋のあるようなところでした。通る人もまれでした。
力餅
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
昔し
房州
(
ぼうしゅう
)
を
館山
(
たてやま
)
から向うへ突き抜けて、
上総
(
かずさ
)
から
銚子
(
ちょうし
)
まで浜伝いに
歩行
(
あるい
)
た事がある。その時ある晩、ある所へ
宿
(
とまっ
)
た。ある所と云うよりほかに言いようがない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
幾千年の昔からこの春の音で打ちなだめられてきた
上総
(
かずさ
)
下総
(
しもうさ
)
の人には、ほとんど沈痛な性質を欠いている。秋の声を知らない人に沈痛な趣味のありようがない。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
江州
(
ごうしゅう
)
の彦根、越後の高田、南部の盛岡、
岩代
(
いわしろ
)
の二本松、伊予の西条、
羽後
(
うご
)
の秋田、
上総
(
かずさ
)
の大多喜、長州の山口、越前の福井、紀州の和歌山、
常陸
(
ひたち
)
の水戸、四国の高松
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
十七歳の十二月はじめに
上総
(
かずさ
)
の
木更津
(
きさらづ
)
の
鳥飼
(
とりかい
)
というところの料理兼旅館の若主人の妻となった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
……どこと申して行く処に当は無いので、
法衣
(
ころも
)
を着て
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
くと、直ぐに両国から江戸を離れて、
安房
(
あわ
)
上総
(
かずさ
)
を諸所
経歴
(
へめぐ
)
りました。……
今日
(
こんにち
)
は、薬研堀を通ってこっちへ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“上総”の意味
《固有名詞》
上総(かずさ)
旧国名。東海道に位置する。上総国。現在の千葉県中部。
(出典:Wiktionary)
“上総(
上総国
)”の解説
上総国(かずさのくに、歴史的仮名遣:かづさのくに)は、かつて日本の地方行政区分だった令制国の一つ。東海道に属し、現在の千葉県中央部に位置する。
常陸国・上野国とともに親王が国司を務める親王任国であり、国府の実質的長官は上総介であった。
(出典:Wikipedia)
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
総
常用漢字
小5
部首:⽷
14画
“上総”で始まる語句
上総介
上総戸
上総屋
上総国
上総守忠清
上総掘
上総者
上総女
上総沖
上総房州