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項
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うなじ
ふりがな文庫
“
項
(
うなじ
)” の例文
お靜が丹精した新しい
袷
(
あはせ
)
、十手を懷ろに忍ばせて、おろし立ての麻裏の
草履
(
ぞうり
)
をトンと踏みしめると
項
(
うなじ
)
から、切火の鎌の音が冴えます。
銭形平次捕物控:290 影法師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
すると父は
突嗟
(
とつさ
)
に振向きしなに人力車夫の
項
(
うなじ
)
のところをつかまへて、ぐいぐい横の方に引いたから人力車がくつがへりさうになつた。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そうして、声も立てられぬほどの嵐の底から、弥陀の称号を高く/\唱えて、手に持って居た水晶の数珠を彼女の
項
(
うなじ
)
にかけてやった。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夫人この時は、
後毛
(
おくれげ
)
のはらはらとかかった、江戸紫の襟に映る、雪のような
項
(
うなじ
)
を
此方
(
こなた
)
に、
背向
(
うしろむき
)
に
火桶
(
ひおけ
)
に
凭掛
(
よりかか
)
っていたが、
軽
(
かろ
)
く振向き
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上なるものは下なるものゝ
腦
(
なう
)
と
項
(
うなじ
)
とあひあふところに齒をくだし、さながら饑ゑたる人の
麪麭
(
パン
)
を貪り食ふに似たりき 一二七—一二九
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
▼ もっと見る
項
(
うなじ
)
には銀の
頸飾
(
くびかざり
)
をかけて、手に一本の
刺又
(
さすまた
)
をかまえて一
疋
(
ぴき
)
の
猹
(
チャー
)
(西瓜を食いに来るという獣、空想上の獣で、猹の字は作者の造字)
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
歩行者たちは後ろへ
方向
(
むき
)
をかへた。風が
項
(
うなじ
)
へ吹きつけるばかりで、渦巻く吹雪をとほしては何ひとつ見わけることも出来なかつた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
太郎は、我を忘れて、叫びながら、険しく
眉
(
まゆ
)
をひそめて、弟を見た。次郎も片手に
太刀
(
たち
)
をかざしながら、
項
(
うなじ
)
をそらせて、兄を見た。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
小さな二輪車が丘のやうな赭牛の
項
(
うなじ
)
に牽かれて、夏ならば瓜を積み、秋ならば薪を載せ、徐ろに、楼門の方へと歩み去るのを見るだらう。
測量船
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
それで
頸
(
くび
)
を押えて、
項
(
うなじ
)
まで棒を転がして行って、頭の直ぐ根の処を掴むのです。これは俗に云う青大将だ。棒なんぞはいらない。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お下げをやめさせて、
束髪
(
そくはつ
)
にさせた
項
(
うなじ
)
とたぼの所には、そのころ米国での流行そのままに、
蝶
(
ちょう
)
結びの大きな黒いリボンがとめられていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
目に出来る丈の努力をさせて見ると、ペピイの赤い頭が、だぶ/\した
項
(
うなじ
)
の上に、力なく載つてゐて、次第に色が褪めて行くやうに見える。
老人
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
さし伸ばされた雪のような
項
(
うなじ
)
にかかる
後毛
(
おくれげ
)
、唇を喰いしばって外向けた横顔の美しさ……いまの湛左衛門にとってこれ以上の
肴
(
さかな
)
は無かった。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その着物をきて
項
(
うなじ
)
におさげを垂らしている千代ちゃんの姿は、年よりも大人びていて、私などよりはずっと姉さんに見えた。
栞
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そのとき父の手がごく自然に百合さんの肩へと伸びてゆき、百合さんの
項
(
うなじ
)
が心もち前の方へ傾いた。私は(なぜか)思はず室内へ駈け戻つた。
恢復期
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
鞘翅虫が一匹飛んで来て、セルギウスの頭に打つ付かつて、
項
(
うなじ
)
へ這ひ込んだ。セルギウスはその虫を掴んで地に投げ付けた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
総髪を長く肩に掛け、オースチン師の献上物、
西班牙
(
イスパニア
)
産の
金剛石
(
ダイヤモンド
)
を黄金の鎖にからませて、
項
(
うなじ
)
から胸へ垂らしたのさえ異国めいていて物凄い。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この良心の基礎から響くような子供らしく意味深げな調を聞けば、今まで己の
項
(
うなじ
)
を
押屈
(
おしかが
)
めていた古臭い錯雑した
智識
(
ちしき
)
の重荷が卸されてしまうような。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
若し私が彼女の
項
(
うなじ
)
にあの妙なものを発見しなかったならば、彼女はただ上品で優しくて弱々しくて、触れば消えてしまいそうな美しい人という以上に
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
後
(
のち
)
阿利吒は薪を取らんと山に行きしが、道にて一匹の
兎
(
うさぎ
)
を見ければ
杖
(
つえ
)
ふり上げて
丁
(
ちょう
)
と
撩
(
う
)
ちしに、
忽
(
たちま
)
ち兎は死人と変じて阿利吒の
項
(
うなじ
)
に
搦
(
から
)
み着きたり。
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
藤蔓に
頸根
(
くびね
)
を抑えられた櫂が、
掻
(
か
)
くごとに
撓
(
しわ
)
りでもする事か、
強
(
こわ
)
き
項
(
うなじ
)
を
真直
(
ますぐ
)
に立てたまま、藤蔓と
擦
(
す
)
れ、舷と擦れる。櫂は一掻ごとにぎいぎいと鳴る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長なす黒髪を
項
(
うなじ
)
の中から分けて豊かに垂れ下げ、輪廓の正しい横顔は、無限なるものを想うのみ、
邪
(
よこしま
)
なる想いなしといい放った
皎潔
(
きょうけつ
)
な表情を保ちながら
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
千登世を
慈
(
いつく
)
しんでくれてゐる大屋の醫者の未亡人への忘れてはならぬ感謝と同時に、千登世に向つても心の中で手を支へ、
項
(
うなじ
)
を垂れ、そして
寢褥
(
ねどこ
)
に入つた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
項
(
うなじ
)
に吊すように、ふん縛られ、足は大きな
足枷
(
あしかせ
)
で錠をかけられていながら、真中の
洋車
(
ヤンチョ
)
にふんぞりかえって、俥夫と、保安隊士を等分に呶鳴りつけていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
広い肩、円い
項
(
うなじ
)
、丈夫な手、ふつくりして日に焼けた頬、
天鵝絨
(
びろうど
)
のやうに柔い目、きつと結んだ、薄くない唇、それに
背後
(
うしろ
)
で六遍巻いてある、濃い、黒い髪。
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
彼はもう去年プラットホームで私のために工学士を突き飛ばした工夫頭ではなくて、立派な一かどの学者だ、感にうたれ
項
(
うなじ
)
を垂れて聴きとれている私の姿が
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
前なる父が
項
(
うなじ
)
の
白髪
(
しらが
)
を見つめて、浪子は思いに沈みぬ。
良人
(
おっと
)
に別れ、不治の
疾
(
やまい
)
をいだいて、父に伴なわるるこの遊びを、うれしといわんか、
哀
(
かな
)
しと思わんか。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
彼等はその無分別を
慙
(
は
)
ぢたりとよりは、この
死失
(
しにぞこな
)
ひし見苦しさを、天にも地にも
曝
(
さら
)
しかねて、
俯
(
ふ
)
しも仰ぎも得ざる
項
(
うなじ
)
を
竦
(
すく
)
め、
尚
(
なほ
)
も為ん方無さの目を閉ぢたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
低く
項
(
うなじ
)
のところで束ねてある薄茶色の髪は、滑らかになでつけられていて、ただ右のこめかみのあたりで、縮れた後れ毛がひとふさ、額のほうへかかっている。
トリスタン
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
フロルスは寝台の上に、
項
(
うなじ
)
を反らせて、真つ黒になつた顔をして動かずにゐる。ルカスは今離れたばかりと見える寝台に、又駆け寄つて、無言で
俯伏
(
うつぶし
)
になつた。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
「東門に人有り。その
顙
(
ひたい
)
は堯に似、その
項
(
うなじ
)
は皐陶に類し、その肩は子産に類す。しかれども腰より以下は禹に及ばざること三寸。
纍々
(
るいるい
)
として
喪家
(
そうか
)
の
狗
(
いぬ
)
の
若
(
ごと
)
し。」
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
磯五のことばに、おせい様が
黯然
(
あんぜん
)
とうつむくと、磯五は、そのほっそりした
項
(
うなじ
)
へそっと
唇
(
くちびる
)
を持って行った。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
膝の上まで
截
(
き
)
り開きたる短衣は裂け
綻
(
ほころ
)
び、
鬆
(
ゆる
)
く肩に纏へる外套めきたる
褐色
(
かちいろ
)
の布は垢つきよごれ、長き黒髮をば
項
(
うなじ
)
に束ね、美しき目よりは恐ろしき光を放てり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
所謂
(
いわゆる
)
首すじである。顔面では年齢をかくせるが首すじではごまかせない。あらゆる年齢に従って首すじは最も微妙に人間らしい味を見せる。赤坊のぐらぐらな
項
(
うなじ
)
。
人の首
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
「南方異物志」に、本当のろくろ首の
項
(
うなじ
)
の上には、いつでも一種の赤い文字が見られると書いてある。そこに文字がある。それはあとで書いたのではない事が分る。
ろくろ首
(新字新仮名)
/
小泉八雲
(著)
そこで女房は死のうと決心して、起ち上がって元気好く、
項
(
うなじ
)
を
反
(
そら
)
せて一番近い村をさして歩き出した。
女の決闘
(新字新仮名)
/
ヘルベルト・オイレンベルク
(著)
そこで女房は死のうと決心して、起ち上がって元気好く、
項
(
うなじ
)
を
反
(
そら
)
せて一番近い村をさして歩き出した。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は世界各国の宗教の教理に通じていると云われ、又、その弁舌の妙、音声は朗々とたなびいて
項
(
うなじ
)
をまき懐に入り手をくぐり、妙香の空中を漂うごとくであると云う。
明治開化 安吾捕物:04 その三 魔教の怪
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
頭髪
(
かみ
)
は
項
(
うなじ
)
の
辺
(
あたり
)
で
切
(
き
)
って
背後
(
うしろ
)
に
下
(
さ
)
げ、
足
(
あし
)
には
分厚
(
ぶあつ
)
の
草履
(
ぞうり
)
を
突
(
つ
)
かっけ、すべてがいかにも
無造作
(
むざうさ
)
で、どこをさがしても
厭味
(
いやみ
)
のないのが、むしろ
不思議
(
ふしぎ
)
な
位
(
くらい
)
でございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
それは大きな尾の長い、
項
(
うなじ
)
の青い、金色の
翅
(
はね
)
をした虫であった。成は大喜びで篭へ入れて帰った。
促織
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
折々は
項
(
うなじ
)
を反せて、どの家かの美しい装飾を見ている。そして格別面白がらずに、並んで歩いている男に、「あれ、御覧なさいよ、
綺麗
(
きれい
)
ではありませんか」などと
云
(
い
)
う。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
白い
項
(
うなじ
)
の伸びかたといい、全姿に浮いた玉の
脂
(
あぶら
)
といい、瑠璃子がいったのは、お世辞ではない。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その六人の跡から、ただ一人忙しい、不揃な足取で、そのくせ
果敢
(
はか
)
の行かない歩き方で、老人が来る。丈が低く、がっしりしていて、背を真直にして歩いている。
項
(
うなじ
)
は広い。
鴉
(新字新仮名)
/
ウィルヘルム・シュミットボン
(著)
この姉妹は、額のところに、少しばかりアイロンをかけて、髪を渦巻にしているほか、あとはすらりと
項
(
うなじ
)
のところへ、黒髪を垂らし、髪のすそを、ふっくらと裏にまげていた。
車中有感
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
『摩訶僧祇律』七に雪山水中の竜が仙人の行儀よく座禅するを愛し七
巾
(
まき
)
巻きて自分の額で仙人の
項
(
うなじ
)
を覆い、食事のほか日常かくするので仙人休み得ず身体
萎
(
くたびれ
)
羸
(
や
)
せて瘡疥を生ず
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
敵対すると思ったのでしょう、犬は
項
(
うなじ
)
の毛を逆立てて、眼を
瞋
(
いか
)
らせて、いよいよ
獰猛
(
どうもう
)
な唸りを立てて、飛びかかって来ます。まだ私は、こんな恐ろしい犬を見たことがありません。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
多分体格の立派なのと、
項
(
うなじ
)
を
反
(
そら
)
せて、
傲然
(
ごうぜん
)
としているのとのためであっただろう。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
見えるのは只髪を短く刈つた頭と
項
(
うなじ
)
と丈である。併し体は女で、それがレオネルロに違ひない。木の幹を攫むやうにしてゐる、小さい、優しい手は、見覚えのあるレオネルロの手である。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
しかるにこの民は
項
(
うなじ
)
の固き民であって、モーセを苦しめ、怒らせ、退けました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
僅に
項
(
うなじ
)
の皮
少許
(
せうきよ
)
にて首と胴と連りゐたる故、屍体を
擡
(
もた
)
ぐる時、首は胴より離れたり。首もその他の体部も甚しく損傷しあり。
就中
(
なかんづく
)
胴と手足とは、殆ど人の遺骸とは認められざる程変形せり。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
項
常用漢字
中学
部首:⾴
12画
“項”を含む語句
項垂
項羽
事項
前項
項低
強項
項頸
項荘
項羽本紀
頑項
項目
項梁
項戴
項懸
鵝項椅
項充
鶏項草
項伯
花項虎
第一項
...