老人ろうじん
ペエテル・ニコラスは七十五になつて、いろんな事を忘れてしまつた。昔の悲しかつた事や嬉しかつた事、それから週、月、年と云ふやうなものはもう知らない。只日と云ふもの丈はぼんやり知つてゐる。目は弱つてゐる。又日にまし弱つて行く。それで日の入りがぼ …
題名が同じ作品
老人 (新字新仮名)永井荷風 (著)