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鑿
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のみ
ふりがな文庫
“
鑿
(
のみ
)” の例文
カチ、カチ、カチ! たえまのない
石工
(
いしく
)
の
鑿
(
のみ
)
のひびきが、炎天にもめげず、お城のほうから聞えてくる。町人の
怠惰
(
たいだ
)
を
鞭
(
むち
)
うつようだ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
指さした縁側には、
誂
(
あつら
)
へたやうに泥足、
鑿
(
のみ
)
でこじ開けたらしい雨戸は、
印籠
(
いんろう
)
ばめが痛んで、敷居には滅茶々々に傷が付いてをります。
銭形平次捕物控:269 小判の瓶
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ところが、それから数日の後、ミケランゼロは、人夫を雇って、その石を自分のアトリエに運びこみ、セッセと
鑿
(
のみ
)
をふるいはじめた。
青年の思索のために
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
彼は、自分の口から出る一語一語が、きき手の心臓へ
鑿
(
のみ
)
を打ちこむ程の苦痛を与えていることなどにはまるで気がついていないらしい。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
それはおそらく鬼とか
夜叉
(
やしゃ
)
とかいうのであろう。からだは
藍
(
あい
)
のような色をして、その眼は円く
晃
(
ひか
)
っていた。その歯は
鑿
(
のみ
)
のように見えた。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
この現代の進歩のために、このような生活の装飾物の鮮明な
鑿
(
のみ
)
のあとはなくなり、その活気のある浮彫は取り去られてしまった。
クリスマス
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
眼の鋭い、
禿鷲
(
はげわし
)
のような男が訪ねてきて、欽二の行動について、お松の知ってる限りを
鑿
(
のみ
)
のような舌の先きでほじくっていった。
反逆
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
「最後の
鑿
(
のみ
)
を打つまでは、人に見せぬというのが、わしの心願じゃ。この山奥へこもっておるのもそのため。ごぞんじであろう」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
石工
(
いしや
)
が入って、
鑿
(
のみ
)
で
滑
(
なめらか
)
にして、
狡鼠
(
わるねずみ
)
を防ぐには、何より、石の扉をしめて祭りました。海で拾い上げたのが
巳
(
み
)
の日だった処から、巳の日様。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いまお前がはいって来たあの木戸から左へ廻るんだ——いいか、
鑿
(
のみ
)
の音や、
鉋
(
かんな
)
の音がしているだろう、あっちへ行くんだよ」
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ベルククリスタル Bergkristall と云う題で、水晶の周りに、髯の長い
小人
(
ツウェルク
)
が三人かたまって、
鑿
(
のみ
)
で削ってる置き物である。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
殊に彼女の口は、彫刻家の
鑿
(
のみ
)
の力を借りなければ開かぬものゝやうにかたく
緊
(
しま
)
り、
額
(
ひたひ
)
は次第に石のやうな
峻嚴
(
しゆんげん
)
さに
据
(
すわ
)
つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そして盛んな火炎に満ちた
火鉢
(
ひばち
)
が現われ、中には白熱して所々まっかになってる
鑿
(
のみ
)
があるのが、はっきり捕虜の目にはいった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それがいまわたしはわたしの恋ごころを必死の
鑿
(
のみ
)
としておまえの肉体の壁にわたしのいのちを彫り止めようと企てさした大きな原因らしい。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、その一瞬の間に一目見た青年の顔は、美奈子の心に、名工が
鑿
(
のみ
)
を振ったかのように、ハッキリと刻み付けられてしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「何と何だって、たしかにあるんだよ。第一爪をはがす
鑿
(
のみ
)
と、鑿を
敲
(
たた
)
く
槌
(
つち
)
と、それから爪を
削
(
けず
)
る小刀と、爪を
刳
(
えぐ
)
る
妙
(
みょう
)
なものと、それから……」
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鑿
(
のみ
)
のような
刃
(
やいば
)
のついてゐる
一寸
(
いつすん
)
ぐらゐの
小
(
ちひ
)
さい
石斧
(
せきふ
)
もありますが、これは
石斧
(
せきふ
)
といふよりも、
石鑿
(
いしのみ
)
といつた
方
(
ほう
)
が
適
(
てき
)
してゐるように
思
(
おも
)
はれます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
木取りは御造営の方で出来ていて、材料はチャンと彫るばかりになって私の手へ廻されておりますので、こっちは
鑿
(
のみ
)
を下せば好いわけであります。
幕末維新懐古談:52 皇居御造営の事、鏡縁、欄間を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
杜甫
(
とほ
)
の詩は、
彫琢
(
ちょうたく
)
の
鑿
(
のみ
)
のあとが覗えるけれども、一方には思い切って、背を向けて立ち去る者の、あの爽やかさがある。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
ときたま
鉋
(
かんな
)
か
鑿
(
のみ
)
を持つと、棟上げの済んだ柱へ穴をあけたり、紙のように薄くなるまで四分板を削るというような、とんでもないことをやりだす。
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
普通の
鑿
(
のみ
)
ではやれないので、正次さんという正宗系統の非常にうまい刀
鍛冶
(
かじ
)
に頼んで、いろいろな特別な鑿を拵えて仕事をしたことを覚えている。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
あれは宝の木といわれた綾模様の木目を持つ赤樫の古材で、日本中に私の
鑿
(
のみ
)
しか受け付けない木だ。その上に外側の
蒔絵
(
まきえ
)
まで宝づくしにしておいた。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
墓はあの通り白い大理石で、「吾人は
須
(
すべから
)
く現代を超越せざるべからず」が、「
高山林次郎
(
たかやまりんじろう
)
」という名といっしょに、あざやかな
鑿
(
のみ
)
の
痕
(
あと
)
を残している。
樗牛の事
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
住むべき家を建てるんだからなあ。だからお前さん達も刀を捨て、
鑿
(
のみ
)
やカンナや金鎚や、
鋸
(
のこぎり
)
や
錐
(
きり
)
を持って来るがいい。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まるで
鑿
(
のみ
)
ででも仕上げたように、繊細をきわめた顔面の諸線は、容易に求められない儀容と云うのほかはなかった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
仕事場で、コツコツと
鑿
(
のみ
)
を使いながら、釘を打ちながら、或は、
刺戟
(
しげき
)
の強い塗料をこね廻しながら、その同じことを、
執拗
(
しつよう
)
に考え続けるのでございます。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
工匠
(
こうしょう
)
の家を建つるは労働なり。然りといへども
鑿
(
のみ
)
鉋
(
かんな
)
を手にするもの
欣然
(
きんぜん
)
としてその業を楽しみ時に覚えず
清元
(
きよもと
)
でも口ずさむほどなればその術必ず
拙
(
つたな
)
からず。
一夕
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彫み手はさきの鋭い小刀を、しっかりと手に持ち、それを手前へ素速く動かして、紙ごと木を彫む。字の輪郭を彫り終ると、円
鑿
(
のみ
)
で間にある木を取り去る。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
市街の大半を占めてゐる焼跡には、
仮屋
(
かりや
)
建ての
鑿
(
のみ
)
の音が急がしく響き合つて、まだ何処となく物の
燻
(
くすぶ
)
る
臭気
(
にほひ
)
の残つてゐる空気に新らしい木の香が流れてゐた。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
外は
隈
(
くま
)
なく
冴
(
さ
)
え渡った月夜である。で、僕は和やかな波の合間に耳を澄して見ると、
遥
(
はる
)
かの
彼方
(
かなた
)
からカチン、カチンと
頻
(
しき
)
りに響いている
鑿
(
のみ
)
の音が伝って来る。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
行灯の灯がさし入る小部屋には、なるほど厚い木地の仕事机、いちいち
鞘
(
さや
)
をかけた、小形の
鑿
(
のみ
)
やら、小刀やらが、道具箱のなかにおさまっているのが見えた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
後に『草枕』のモニューメントを築き上げた巨匠の
鑿
(
のみ
)
のすさびに
彫
(
きざ
)
んだ小品をこの集に見る事が出来る。
夏目先生の俳句と漢詩
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかしこの二つになるとすばらしくうまく彫刻する。そしてどこであろうと
鑿
(
のみ
)
を入れる場所さえあれば、実に不思議なくらい器用にそいつを方々彫り散らすのだ。
鐘塔の悪魔
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
それによって私はあの山地のほうにできかけている農家の工事が
風呂場
(
ふろば
)
を造るほどはかどったことを知った。なんとなく
鑿
(
のみ
)
や
槌
(
つち
)
の音の聞こえて来るような気もした。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二百年
前
(
ぜん
)
に作つたと云ふが
何
(
ど
)
の室も
未
(
ま
)
だ
煤
(
すゝ
)
びずに白く
鑿
(
のみ
)
の
痕
(
あと
)
が光つて居る。何より寒い今夜の
御
(
ご
)
馳走は火が先だとエジツが倉から小柴を抱へて出て炉を
焚
(
た
)
きつける。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
偉大な思想家には必ず骨というようなものがある。大なる彫刻家に
鑿
(
のみ
)
の骨、大なる画家には筆の骨があると同様である。骨のないような思想家の書は読むに足らない。
読書
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
それでもつて
撲
(
ぶ
)
ち殺してある、
鉋
(
かんな
)
や
鑿
(
のみ
)
や鋸や、または
手斧
(
ておの
)
や
曲尺
(
まがりかね
)
や
凖
(
すみ
)
縄や、すべての
職業道具
(
しようばいどうぐ
)
受け出して、明日からでも立派に仕事場へ出て、一人の母にも安心させ
もつれ糸
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
普請場には
鑿
(
のみ
)
や、
手斧
(
てうな
)
や、
鉞
(
まさかり
)
や、てんでんの音をたててさしも沈んだ病身ものの胸をときめかせる。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
鑿
(
のみ
)
を
把
(
と
)
る事があるとも、その趣味はいつしか消えて見えなくなり、それに代つて全身の心が現はれ
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
此山は東南の方向に狭い頂上を展開しているので、東京からは真竪に望む為に
鑿
(
のみ
)
のように鋭く尖って見えるが、少し東北から眺めると可なり秀麗な富士形を呈示する。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
若い者は、
鋸
(
のこぎり
)
、
鑿
(
のみ
)
、棒を持って、走り出した。近所の若い者が、それについて、同じように走った。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
それでもいつとはなしに
鋸
(
のこぎり
)
が見えなくなっているのだ。四分
鑿
(
のみ
)
が消えたり、二枚
鉋
(
がんな
)
の台だけが残っていたりした。置き忘れた陣笠が川口に浮ぶくらいは我慢も出来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
万力のような顎は依然として強く張りだし、握力も、むかし南方の海底で、十五ポンドの鑿岩用の
鑿
(
のみ
)
棒でダイバーの背柱を突き砕いて殺しまわったあのころと変らない。
三界万霊塔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
秋はことに晴れやかな墓地の彼方に、色づいた
櫟
(
くぬぎ
)
の梢が空高く連っているのが見えた。線香と菊の香がほんのり彼等の歩いている往来まで漂った。石屋の
鑿
(
のみ
)
の音がした。
一本の花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
少年の時から読書の
外
(
ほか
)
は俗な事ばかりして俗な事ばかり考えて居て、年を
取
(
とっ
)
ても
兎角
(
とかく
)
手先
(
てさ
)
きの
細工事
(
さいくごと
)
が面白くて、
動
(
やや
)
もすれば
鉋
(
かんな
)
だの
鑿
(
のみ
)
だの
買集
(
かいあつ
)
めて、何か作って見よう
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
障子は、
鑿
(
のみ
)
で、上皮の薄膜を剥ぎ取って、中から夜の黒い地肌を露出したように無残に見えた。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ていねいに
鑿
(
のみ
)
でやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、
昔
(
むかし
)
はたくさん居たさ。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
茶微塵
(
ちゃみじん
)
松坂縞
(
まつざかじま
)
の
広袖
(
ひろそで
)
に
厚綿
(
あつわた
)
の入った八丈木綿の半纒を着て、
目鏡
(
めがね
)
をかけ、
行灯
(
あんどん
)
の前で其の頃
鍜冶
(
かじ
)
の名人と呼ばれました神田の地蔵橋の
國廣
(
くにひろ
)
の打った
鑿
(
のみ
)
と、浅草田圃の
吉廣
(
よしひろ
)
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
やつと
灌木
(
くわんぼく
)
の高さしか無い
柊
(
ひひらぎ
)
よ、
僞善
(
ぎぜん
)
の尻を刺す
鑿
(
のみ
)
、
愛着
(
あいぢやく
)
の
背
(
せ
)
を
刻
(
きざ
)
む
鏨
(
たがね
)
、鞭の
柄
(
え
)
、
手燭
(
てしよく
)
の
取手
(
とつて
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
石工の
鑿
(
のみ
)
でも、工夫の鶴嘴でも、鋤でも、其他物を切つたり、刻んだり、裂いたり、板にしたり、綴ぢたり、強い打撃を加へたり、受けたりする種々の道具は、皆鉄なのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
“鑿”の解説
鑿(のみ)は、木材、石材、金属などに穴を穿ったり、彫刻したりするのに用いる切削加工の工具。部材に対して尾部をハンマーなどで叩く叩き鑿と、両手で突く突き鑿に大別される。
(出典:Wikipedia)
鑿
漢検1級
部首:⾦
28画
“鑿”を含む語句
穿鑿
掘鑿
鑿岩機
一鑿
大鑿
鑿胝
鑿孔機
開鑿
石鑿
丸鑿
斧鑿
不穿鑿
開鑿者
鑿入
鑿打
鐔鑿
穴鑿
神斧鬼鑿
鑿岩車
鑿竿
...