“詮方:せんかた” の例文
“詮方:せんかた”を含む作品の著者(上位)作品数
中里介山11
泉鏡花5
野村胡堂4
永井荷風4
樋口一葉3
“詮方:せんかた”を含む作品のジャンル比率
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 伝説・民話[昔話]10.0%
文学 > ロシア・ソヴィエト文学 > 小説 物語6.5%
芸術・美術 > スポーツ・体育 > 戸外レクリエーション5.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
詮方せんかたなさに信心をはじめた。世に人にたすけのない時、源氏も平家も、取縋とりすがるのは神仏かみほとけである。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世をびて、風雅でもなく洒落でもなく、詮方せんかたなしの裏長屋、世も宇喜川のお春が住むは音羽おとわの里の片ほとり。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
事が全く不意に出でたものですから、本人をゆすぶって、本人に事の仔細をたしかめてみるよりほかには詮方せんかたがない。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やむことを得ず米友は、その下駄を手許へ引取って、片手でぶらさげて、その場を立去るよりほかには詮方せんかたがなくなりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かゝる不自由の身となりては、今更に詮方せんかたもなく、彼の言ふがまゝに従ふにかずと閑静なる処に寓居をかま
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
ふるえてはかまの間へ手を入れ、松蔭大藏は歯噛はがみをなして居りましたが、最早詮方せんかたがないと諦め、平伏して、
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これでは高い山への憧れが、またその純白な雪のもつ魅力が如何に強くとも、全く泣寐なきね入りの外詮方せんかたないことになる。
冬の山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あんなに自分を慕っていはしたが岡も上陸してしまえば、詮方せんかたなくボストンのほうに旅立つ用意をするだろう。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
二人は、その哀れむべき、憎むべき犠牲であってみれば、この場合に弁信風情ふぜいが取付いたとて、詮方せんかたのないものであります。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
木戸銭御無用、千客万来の芝居、お神楽かぐら、其れが出来なければ詮方せんかた無しのお神酒みきまつり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わらわいてこっちへと、宣示のりしめすがごとく大様に申して、粛然と立って導きますから、詮方せんかたなしにいて行く。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
詮方せんかたなく一同が帰ってゆくと、周瑜は衣をかえて、魯粛と、孔明とを待たせてある水閣の一欄へ歩を運んできた。——どんな人物であろう?
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵野の特色なる雑木山を無惨〻〻むざむざ拓かるゝのは、儂にとっては肉をがるゝおもいだが、生活がさすわざだ、詮方せんかたは無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
下女詮方せんかたなさにその火を羊の脊に置くと羊熱くなりて狂い廻り、村に火を付け人多く殺し山へ延焼して山中のさる五百疋ことごとく死んだ。
社人は、一刻の猶予も与えずに追い立てるから、弁信も詮方せんかたなく、琵琶を抱いて立ち上りました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此下駄このげた田町たまちまでことかといまさら難義なんぎおもへども詮方せんかたなくて立上たちあが信如しんによ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
浜子は彼方あちら向いて、はるか窓外の雪の富士をや詮方せんかたなしにながむらん、
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「わからんことはあるまい、浪人して詮方せんかたなく、こうしているまでのことじゃわい」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何うぞ私のねがいかなえてください、それともかんければ詮方せんかたがない、もう此の上は鬼になって、何の様な事をしても此の念を晴さずには置かん
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
老爺が念を押してみると竜之助は首を左右に振る、火鉢をすすめても煙草をふかす様子もないし、詮方せんかたなく老爺は再びもとの座に戻って火縄にかかろうとすると、
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あゝ、てん飽迄あくまで我等われらたゝるのかと、こゝろ焦立いらだて、藻掻もがいたが、如何いかんとも詮方せんかたい。
後藤君も詮方せんかたなく私に右の趣を話して「どうしたものでしょう」との話でした。
再三呼んでも同じ言葉を繰返した後に、小うるさいと思ったのか、クルリと向きをかえてしまいました。詮方せんかたなく、米友がまた立って歩んで、そちらへ直って、さて、
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
東雲は、兵馬の心持も知らないで戦いをいどむから、兵馬も詮方せんかたなしに、
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼ももう詮方せんかたが尽きたらしく、「では、あなた。ご案内をいたしましょう」
老女は詮方せんかたなしにこう挨拶して、筑前守の奥方からの贈り物を受けました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
明日その客(すなわち相公)呉に謁す、呉飯を食わせ、その猴を求めしに諾せず、呉曰く、くれずばその首を切ろうと、客詮方せんかたなく猴を与え、呉、白金十両をむくう。
おあいは、そう厳しくいうと、内儀は、詮方せんかたなさそうにすうと垣根をはなれた。堀は、おあいの姿をみてから小さくなっていたが、それでも、内儀のあとを見送っていた。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
お絹は詮方せんかたもない姿でさう言ふのでした。それは恐らく掛引のない言葉でせう。お絹の大きい眼が何んのはゞかる色もなく信頼しきつた樣子で、平次を見入るのです。
かくのごとくしてわれらは自然の大きな力の前に詮方せんかたなく蹲いて行く。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
苦々しい思いをしながらも、兵馬は詮方せんかたなしとあきらめて手拭をかけ、
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長吉ちやうきち詮方せんかたなく疲れた眼をかははうに移した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
妾もいかゞはせむと打ち惑ひ侍りしが、かよわき身の詮方せんかたもなく、案じび候ひし折柄、此程の秋の取り入れごと相済み候ひて、やや落ち付き侍りし今宵こよいの事
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雲とは何、せっかく山中に泊って雨では困るが、これも詮方せんかたがない。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
詮方せんかたなさに一トあし二タあしゑゝなんぞいの未練みれんくさい、おもはくはづかしとをかへして、かた/\と飛石とびいしつたひゆくに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お雪は黙って婆さんの顔を見たが、詮方せんかたなげであわれである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一同いちどう詮方せんかたなく海岸かいがんいへかへつたが、まつたえたあとのやうに、さびしく心細こゝろぼそ光景くわうけい
虹汀さらば詮方せんかたなしと、竹の杖を左手ゆんでに取り、空拳を舞はして真先まっさきかけし一人のやいばを奪ひ、続いてかゝる白刃を払ひ落し、群がり落つる毬棒いがぼう
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
我はかの悪僕に追立てられて詮方せんかた無く、その夜赤城の家を出で、指して行方もあらざればその日その日の風次第、寄る定めぬ捨小舟すておぶね、津や浦に彷徨さまようて
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その夜十時頃までも稲垣は帰り来らず、もはや詮方せんかたなしとて、それぞれ臥床ふしどに入りしが、妾は渡韓の期も、既に今明日こんみょうにちに迫りたり、いざさらば今回の拳につきて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
詮方せんかたなく、物は相談と思い、カンカン寅の許を訪ね、あのボロボロの建物を心ばかりの抵当ていとうということにして(あれでは二百円も貸すまいと云われた)、一千円の借金を申込んだ。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれ詮方せんかたなくおやすみなさい、とか、左樣さやうなら、とかつてやうとすれば、『勝手かつてにしやがれ。』と怒鳴どなける權幕けんまく
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれ詮方せんかたなくおやすみなさい、とか、左様さようなら、とかってようとすれば、『勝手かってにしやがれ。』と怒鳴どなける権幕けんまく
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と、ずんぐりした男は、詮方せんかたないといった調子で、
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
詮方せんかたなさに胸の中にて空しく心をいたむるばかり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「お忘れものの御在ございませんように。」と注意したが、見るから汚いおしめの有様。といって黙って打捨てても置かれず、詮方せんかたなしに「おあぶのう御在いますから、御ゆるり願います。」
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
詮方せんかたなく川端下へ出ることは断念し、三度頂上に戻って、谷伝いに何処へでも下りられる処へ下りようと、左手の谷を目懸けて藪を潜り抜け、急峻ではあるが水のない広々した沢の上部に出た。
思い出す儘に (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
詮方せんかたなく米友は、代々木の原を立ち出でました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
郷里なる両親にはからんとせしに彼は許さず、しばらく秘して人に知らしむるなかれとの事に、妾は不快の念にえざりしかど、かかる不自由の身となりては、今更に詮方せんかたもなく
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
お仙は詮方せんかたもなく、平次に訴へるのです。品吉の方には、よしや、激しい戀心はあつても、お仙の方には、それほど激しい童心の戀をけ入れるほどの余裕も、成熟した情熱もなかつたでせう。
もはや返らぬ事に殺生せっしょうするは、かえって菊之助が菩提ぼだいのため悪し、吉兵衛もあさましや我等われらへの奉公と思いてしたるべけれども、さすが畜生の智慧ちえ浅きは詮方せんかたなし
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
王それでは馬を王以上にあがめるので大いにわが威をおとすとおもうたが、智馬が自分方におらぬとさっぱり自分の威がなくなるから詮方せんかたなく、なるほどこれまでの致し方は重々悪かった
長吉は詮方せんかたなく疲れた眼を河の方に移した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そもそも男女の恋仲、仁義道徳を説いて然る後に出来合ふものにあらず、初手の馴れ染めは唯ふとした気のまよひより起るものなれば、相手の心変りを責めて引戻すに義理を論じ人情を説くも詮方せんかたなし。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
依つて、早速検脈致し候へば、傷寒しやうかんの病に紛れ無く、且は手遅れの儀も有之、今日中にも、存命覚束なかる可きやに見立て候間、詮方せんかた無く其旨、篠へ申し聞け候所、同人又々狂気の如く相成り
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今は詮方せんかたなし、ただ借金の一あるのみ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
今のところ詮方せんかたもなき不調和である。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
竜之助がはじめて京都へ上る時に、同じこの国の鈴鹿峠すずかとうげの下で、悪い駕籠屋かごやからお豊が責められて、そのとき詮方せんかたなくお豊が駕籠屋に渡そうとした簪がこの簪と同じ物でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして詮方せんかたなく苦笑いをしながら、
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
詮方せんかたなげに微笑ほほえみたまいつ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は詮方せんかたなくもう一遍額を下げた。
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
小間使は詮方せんかたなげに、向直って、
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武男を怒り、浪子を怒り、かの時を思いでて怒り、将来をおもうて怒り、悲しきに怒り、さびしきに怒り、詮方せんかたなきにまた怒り、怒り怒りて怒りの疲労つかれにようやくねぶるを得にき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
お加奈は詮方せんかたもない姿でした。
詮方せんかたなく感心しておくと、
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
妻君その様子のあわてたるを笑い「ハイ来ておいでです、モシお登和さん」と振返りて呼びけるにお登和も詮方せんかたなく座敷へ入りしが心にはばかる事ありけん、余所余所よそよそしく大原に黙礼せしのみ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
竜之助の言葉が強くなりますので、お浜は詮方せんかたなく、よく寝ていた郁太郎を、そっと移して竜之助に渡すと、竜之助は抱き上げて、つくづくと郁太郎の面から昨夜のきずを繃帯したあたりなどを見て、今更のように、
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
——詮方せんかたないことだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
女はもう詮方せんかたきたもののように、そんなものにまですべてをまかせるほかなくなった自分の身が、何だかいとおしくていとおしくてならないような、いかにもやしい思いをしながら、その男に逢いつづけていた。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
言ひたい事は此方こなたにあるを、余りな人とこみあぐるほど思ひに迫れど、母親の呼声しばしばなるを侘しく、詮方せんかたなさに一ト足二タ足ゑゑ何ぞいの未練くさい、思はく耻かしと身をかへして、かたかたと飛石を伝ひゆくに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それを見込みて石之助、今宵を期限の借金が御座る、人の受けに立ちて判をたるもあれば、花見のむしろに狂風一陣、破落戸ごろつき仲間に遣る物を遣らねばこの納まりむづかしく、我れは詮方せんかたなけれどお名前に申わけなしなどと
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まったく素晴らしい天候、燦々と照り映える強烈な日光は、とても目をあけていられないほどだが、ところが一体どうしたことか、肝心の雪眼鏡が一夜にしてどこかへ消えてしまったので、詮方せんかたなく眼をごく細めに開いて登高を開始した。
詮方せんかた無さに町道場に押入りて他流試合を挑み、又は支那人の家に押入りて賭場荒しなぞするうちに、やがて春となりし或る日の午の刻下りのこと諏訪山下、坂道の途中にて一人の瘠せ枯れたる唐人の若者に出会ひしに、しきりに叩頭して近付き来る。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その約束は、惡戲の程度に止まり、もとより丹波樣の隱居の命までも取る意志はなかつたにしても、浪人北山習之進は腹からの、惡黨あくたうで、お國を奪られた怨みを忘れ難く、この計畫を命取り仕事にまで押しあげたのは詮方せんかたもないことでした。
アンドレイ、エヒミチはうんざりして、長椅子ながいすうえよこになり、倚掛よりかかりほうついかおけたまま、くいしばって、とも喋喋べらべらしゃべるのを詮方せんかたなくいている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
女「あれも十九になります、お耻かしい事でありますが、詮方せんかたなしに身過世渡よすぎしも福田屋龍藏ふくだやりゅうぞう親分さんの処で抱えもすると云うので、行立ゆきたたぬから、今では小峰こみねと云って芸妓げいしゃになって居ります」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
アンドレイ、エヒミチはうんざりして、長椅子ながいすうへよこになり、倚掛よりかゝりはうついかほけたまゝくひしばつて、とも喋喋べら/\しやべるのを詮方せんかたなくいてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「私はその時は詮方せんかたがありませんから、妻を伴れて諸国巡礼に出ようと思ってたんです。私のようなものではしょせん世間で働いてみたってだめですし、その苦しみにも堪ええないのです。もっとも妻がいっしょに行く行かないということは、妻の自由ですが……」
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
「何のために宿所姓名を問いたもうか、通り少きこの橋上月をながめ涼みを取るもあながち往来の邪魔にはなるまじ」とやり返せば、「御身の様子何となく疑わしく、もし投身の覚悟にやと告ぐる者ありしゆえ職務上かく問うなり」と言うに、詮方せんかたなく宿所姓名を告げ
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
年忌の法会ほうえなどならばその人を思ひ出すとか、今にまぼろしに見ゆるとか、年月の立つのは早いものとか、彼人がしんでから外に友がないとか、涙ながら霊を祭るとかいふ陳腐なるかんがえを有り難がるも常人ならば詮方せんかたなきも、文学者たらん者は今少し考へあるべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
寧児が四歳の時なりき金起は悪事を働き長崎に居ることが出来ぬ身と為りたれば妾に向いて共に神戸に逃行にげゆかんと勧めたり妾は早くより施寧には愛想尽き只管ひたすら金起を愛したるゆえらば寧児をも連れて共に行かんと云いたるに《そ》は足手纏いなりとて聞入るゝ様子なければ詮方せんかたなく寧児を残す事とし母にも告げず仕度を為し翌日二人にて長崎よりふねに乗りたり後にて聞けば金起は出足であしのぞみ兄の金を千円近く盗み来たりしとの事なりやがて神戸に上陸し一年余り遊び暮すうち
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)