あの美しい、しかし誰も見馴れている霜柱などを、改めて物理の研究の対象として、本気で取り上げようとする人は今まで余りなかった。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出―― (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
たがいに顔を見馴れてる一家族の人々のように、フランス人はその類似さに気づかないでいた。しかしクリストフはそれにびっくりして、それを誇張していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
意慾的創作文章の形式と方法 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「詳しく言へば八五郎の叔母さんの家だよ。お里がゐるに違ひ無い。今、お前の家の前を通る時、格子の内に、見馴れない赤い鼻緒の下駄があつたやうだ。——お月樣の良いのも惡くないよ」
銭形平次捕物控:252 敵持ち (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
呉羽之介は毎日見馴れたおのが絵姿を眺めつつ、一体何を驚いたのでしょう! これが驚かずにいられようか——今朝見るあの絵姿の面影は、きのうのそれとは確かに変った表情をしているのです。
お綱の畑は村の西と北角の山ふところに、十数町の距離をおいて散在したが、お綱の姿を探して段々畑をうろうろと距離一杯にうろついている坊主の姿を山の人々は見馴れていた。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
到着したとき彼は、駅のホームの上に見馴れたなつかしい友の顔がありはすまいかと、車窓からながめてみた……。だれもいなかった。列車から降りながら、やはりあたりをながめまわした。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)